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幸兵衛の小言

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原発の運転再開を許すな!  “原子力による地域振興”の実態

1983年1月26日に石川県羽咋郡志賀町で開かれた「原発講演会」(地元の広域商工会主催)で、当時の高木孝一敦賀市長が行った講演について、“とらちゃん”が管理人のブログ「晴天とら日和」が、内橋克人さんの『原発への警鐘』(初版は講談社文庫、4月に朝日新聞出版より改題された復刻版が発行)からの引用として紹介している。私は、この本をまだ読んでいないので、同ブログから引用させていただく。“原発は地域振興になる”という神話を作り出そうとしてきた電力会社が行う「地域振興」の実態がわかる。「晴天とら日和」さんのブログ

 一昨年もちょうど4月でございましたが敦賀1号炉からコバルト60がその前の排出口のところのホンダワラに付着したというふうなことで、世界中が大騒ぎをいたした訳でございます。私は、その4月18日にそうしたことが報道されましてから、20日の日にフランスへ行った。いかにも、そんなことは新聞報道、マスコミは騒ぐけれど、コバルト60がホンダワラに付いたといって、私は何か(なぜ騒ぐのか)、さっぱりもうわからない。そのホンダワラを1年食ったって、規制量の量(放射線被曝のこと)にはならない。そういうふうなことでございまして、4月20日にフランスへ参りました。事故が起きたのを聞きながら、その確認しながらフランスへ行ったわけです。ところがフランスまで送られてくる新聞には毎日、毎朝、今にも世の中ひっくり返りそうな勢いでこの一件が報じられる。止むなく帰国すると、“悪るびれた様子もなく、敦賀市長帰る”こういうふうに明くる日の新聞でございまして、実はビックリ。ところが 敦賀の人は何食わぬ顔をしておる。ここで何が起こったのかなという顔をしておりますけれど、まあ、しかしながら、魚はやっぱり依然として売れない。あるいは北海道で採れた昆布までが…。

 敦賀は日本全国の食用の昆布の7~8割を作っておるんです。が、その昆布までですね、敦賀にある昆布なら、いうようなことで全く売れなくなってしまった。ちょうど4月でございますので、ワカメの最中であったのですが、ワカメも全く売れなかった。まあ、困ったことだ、嬉しいことだちゅう…。そこで私は、まあ魚屋さんでも、あるいは民宿でも100円損したと思うものは150円貰いなさいというのが、いわゆる私の趣旨であったんです。100円損して200円貰うことはならんぞ、と。本当にワカメが売れなくて、100円損したんなら、精神的慰謝料50円を含んで150円貰いなさい、正々堂々と貰いなさいと言ったんでが、そうしたら出てくるわ出てくるわ、100円損して500円欲しいという連中がどんどん出てきたわけです(会場爆笑、そして大拍手?!)。

 100円損して500円貰おうなんてのは、これはもう認めるもんじゃない。原電の方は、少々多くても、もう面倒臭いから出して解決しますわ、と言いますけれど、それはダメだと。正直者がバカをみるという世の中を作ってはいけないので、100円損した者には150円出してやってほしいけど、もう面倒臭いから500円あげるというんでは、到底これは慎んでもらいたい。まあ、こういうことだ、ピシャリとおさまった。


 「原電」は日本原子力発電のことで、日本の電力会社の連合体。主要株主と株式構成は次の通り。茨城県東海村と敦賀が、原電の管轄である。
・東京電力株式会社(28.23%)
・関西電力株式会社(18.54%)
・中部電力株式会社(15.12%)
・北陸電力株式会社(13.05%)
・東北電力株式会社(6.12%)
・電源開発株式会社(J-POWER)(5.37%)

 さて、金を代償に大事な海や自然を失った後に残ったものは何だったのか。電力会社による「地域振興」とは、まるで電力会社という“売人”が、金という“麻薬”を地元に与え続け、本来まともな人をドランカーにしてしまうことであるようだ。「毒まんじゅう」では死んでしまう、生かさず殺さずの「麻薬」あるいは「覚醒剤」に似ている。
 高木孝一市長の講演を聞いて会場で爆笑している志賀の原発誘致派も、すでにドランカー予備軍であったと言えるだろう。高木市長による、地域ぐるみのドランカーとしてのタカリの実態について講演は続いている。

 実は敦賀に金ケ崎宮というお宮さんがございまして(建ってから)随分と年数が経ちまして、屋根がボトボトと落ちておった。この冬、雪が降ったら、これはもう社殿はもたんわい、と。今年ひとつやってやろうか、と。そう思いまして、まあたいしたカネじゃございませんが、6000万円でしたけれど、もうやっぱり原電、動燃へ、ポッポッと走って行った(会場ドッと笑い)。あっ、わかりました、ということで、すぐカネが出ましてね。それに調子づきまして、今度は北陸一の宮、これもひとつ6億で修復したいと、市長という立場ではなくて、高木孝一個人が奉賛会長になりまして、6億の修復をやろうと。今日はここまで(講演に)来ましたんで、新年会をひとつ、金沢でやって、明日はまた、富山の北電(北陸電力)へ行きましてね、火力発電所を作らせたる、1億円寄付してくれ(ドッと笑い)。これで皆さん、3億円既に出来た。こんなの作るの、わけないなあ、こういうふうに思っとる(再び笑い)。まあそんな訳で短大は建つわ、高校は出来るわ、50億円で運動公園は出来るわね。火葬場はボツボツ私も歳になってきたから、これも今、あのカネで計画しておる、といったようなことで、そりゃあもうまったくタナボタ式の街づくりが出来るんじゃなかろうか、と、そういうことで私は皆さんに(原発を)お薦めしたい。


 この講演会で高木市長は、他にもとんでもない問題発言をしており、ネットで検索すると結構探しやすいのだが、「晴天とら日和」さんは継続的に脱原発的な内容を取り上げているので、あえて引用しリンクさせていただいた。「晴天とら日和」では、これらの引用の後で、次のように引用書からの情報を補足している。

原発に限らずこうした事業を誘致した政治家が懐に入れるリベートは、投資金額の1~3%と言われています。原発1基3000億円とすれば、リベートは30~90億円と言うことです。この講演が効を奏してか、会場となった志賀には北陸電力の志賀原発1号機が建設され、運転を開始しています



 実は、本来紹介したかったのは、同じ高木でも高木仁三郎さんの著『原子力神話からの解放-日本を滅ぼす九つの呪縛』(講談社+α文庫から5月20日発行、初版の2000年8月発行の光文社カッパ・ブックス版を一部訂正し編注をつけた内容)なのだ。
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高木仁三郎著『原子力神話からの解放』

 このブログを書く前に高木孝一元市長の名前を検索した結果、「晴天とら日和」にめぐり合って、11年のギャップを挟んだ原発誘致自治体の長の発言の両方を紹介できた次第。それでは『原子力神話からの解放』の「第7章 『原発は地域振興に寄与する』という神話」から、志賀の講演から11年後の高木敦賀市長の発言を紹介したい。

敦賀市長の率直な発言
 地域振興という神話を考えるときに、まず私の頭に浮かぶのは1994年に経験した出来事です。94年に原子力長期計画、いわゆる「長計」と言われるものですが、この長計の改定が行なわれたときに、「長期計画改定に関するご意見をきく会」というのが開かれました。94年3月の4日、5日と二日間にわたって開かれた会合に、私も呼ばれて、おもにプルトニウム政策についての意見を述べました。そこにたまたま自治体の意見を代弁するというかたちで、青森県の北村正哉知事(当時)と敦賀市の高木孝一市長(当時)が同席しました。その高木さんが地域の意見として述べたことが、たいへん印象的だったのです。その記録がありますので引用してみましょう。
「私どもは、ずっと何十年前から、いわゆる日本国の政府等が日本国家としてどうしてもこれをやっていかなければならないところの国策であるというふうに、原子力発電所の推進方についていろいろ言われまして、そのことに相呼応してやっておるというのが最大の基本理念であります。(中略)こうしたことで最近特に地域社会から迷惑施設とまで言われておりますけれども、こうしたものも私の敦賀市にも4基ございます。日本では45基が稼動いたしておりますし、さらに7基が建設中でありますが、私どもの、福井県の嶺南地方と言っておりますけれども、いわゆる若狭地区であります。若狭地区には、あの狭い土地柄において15基の発電所が実はあるわけでございまして、これもなかなか本当に大変でございましたけれども、ただ今申し上げましたような理念に基づいてこれに協力そてまいったものでございます。
 ですから国策ということを最重点においてもらわなきゃならない。ところが、一つの例を挙げてみましても、やはり若狭には旧態依然たる国道27号一本しかないわけであります」(「長期計画改定に関するご意見をきく会」会議録、平成六年三月四日、五日)
 こういう発言でした。原子力発電所の建設に国策だというので協力しているのだけれども、地域には満足な道路すら通っていない、地域振興ということでプラスのものがないと、彼は縷々述べておりまして、さながら、この会が政府に対するお金の要求の場であるような印象を受けたわけです。
 彼の発言が終わったあと、あるブロックでの質疑になったところで、さらに彼はこんなことを言っています。
「先ほど太陽光等の話がありましたけど(注・別の方がその場で太陽光発電が望ましいという話をした)、私どもも、いつ頃になったらこうしたところのエネルギー開発ができるんだろうなという強い関心を持っていますよ。こんなものがここ10年や15年でもしかしてその目的を達成することができるなら、今から私どもも原子力発電所はいやです。今、私のところでやっている3、4号炉(注・増設)の問題でも、もう10年後に太陽光の発電ができると言ったら、今からでもお断りしたいですよ、本当に。(中略)私どもも決して、原子力発電がいい、ほれ込んでやっているんじゃないんですよ」(前掲・会議録)
 この発言は愚痴というか、ある種の物乞いになっていくわけなんですが、高木さんという人の個性にもよるでしょうけれど、原発を受け入れた自治体の気持ちをかなり率直に出している感じがあります。

*高木敦賀市長の発言の引用における(中略)は、私によるものでなく、本書オリジナルのままです。

 11年前の志賀での講演で、漁業を失ってもそれ以上の金がタカレル、要求すればお宮の修復にでもなんでも金を出す、とおもしろおかしい語りで会場を爆笑させていた高木市長との違いが、明らかである。

 「原子力による地域振興」とは、原子力をPRするための無用のハコ物以外は、大半が問題発生後あるいは要求を受けてから後付けで金をばら撒くことであって、結果として幹線道路一本整備されやしなかったのだ。整備されるのはあくまで原発施設の周辺のみ。本来の地域振興や活性化のためにインフラを構築することなどは、毛頭考えていない。そして、原発が運転開始になってしばらくたつと、多額の固定資産税を支払っていることを盾に、自治体にばら撒かれる“小遣い”は減っていき、自治体は地方交付税がなくなるなど、次第に財政が悪化する。すると、また原発増設という“悪魔のささやき”が始まる、という具合だ。

 「ヤクが切れたから、くれ」「しょうなねえなぁ、ほれ」という構造とどこが違うのか。ドランカーの体がボロボロになるように、原発立地自治体も、放射能汚染と“金という麻薬”で、ボロボロになる。

 だから、禁断症状になった自治体は、地場産業も農業も自然も失ってしまった後で、食べていくための「麻薬」の誘惑を断わるのは難しい。今日、定期点検中の原発の運転再開にあたっても、間違いなく地元自治体には原子力村からさまざまな形の「麻薬」が目の前にぶらさげられているはずだ。

 各自治体は、なんとか辛い禁断症状をこらえて欲しい。「麻薬」を絶ち、脱原発で本来の人間らしい生き方を取り戻すために、“悪魔のささやき”を拒絶してくれ。

 少し長くなったが、高木孝一元敦賀市長の発言から「原子力による地域振興」の実態を紹介したかったので、お許しを。高木仁三郎著『原子力神話からの解放』からは、今後より詳しく紹介したいが、すでに落語ブログ仲間の佐平次さんのブログ「梟通信」で、初版のカッパ・ブックスを元に丁寧に紹介されているので、ぜひご覧くだい。佐平次さんのブログの該当ページ
Commented by 佐平次 at 2011-06-19 11:27 x
政治とは国民のためにある、がいつのまにか俺たちに金をもってきてくれるのが好い政治家になってしまうのですね。
病根は根深いですね。

Commented by 小言幸兵衛 at 2011-06-19 19:27 x
「毒まんじゅう」や「麻薬」で身動きできなくしてしまうのが彼らの手口。
「金」で自然や兼好や安全は買えないということを、今こそ日本国民が学ぶ時なのでしょう。

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by koubeinokogoto | 2011-06-18 09:34 | 原発はいらない | Comments(2)

人間らしく生きることを阻害するものに反対します。


by 小言幸兵衛