幸兵衛の小言

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メルトダウン、現場の“人災”に誘導するマスコミ報道に要注意!

調査が進むうちにいろいろなことが分かる訳だが、ここ数日のフクシマを巡る報道には、危険な香りを感じる。18日夜のNHKスペシャル(「シリーズ原発危機 メルトダウン~福島第一原発 あのとき何が~」)NHKスペシャル シリーズ原発危機 メルトダウン~福島第一原発 あのとき何が~でもそうだったが、「非常用復水器」(IC、通称イソコン)のオペレーションのミスは、確かに大きいかもしれない。しかし、NHK他のテレビ報道や、下記のような新聞報道を目にすると、現場作業員や管理者、東電幹部の“人的ミス”を強調することで、その根本的問題が“原発の存在”自体にあることを、“人災”に誘導しようという意図を強く感じるのだ。asahi.comの該当記事

原発幹部、非常用冷却装置作動と誤解 福島第一1号機

 東京電力福島第一原発の事故で最初に炉心溶融した1号機の冷却装置「非常用復水器」について、電源が失われると弁が閉じて機能しなくなる構造を原発幹部らが知らなかったことが、政府の事故調査・検証委員会(畑村洋太郎委員長)の調べで分かった。委員会は、機能していると思い込んでいた幹部らの認識不足を問題視している。また、その結果、炉心溶融を早めた可能性があるとみて調べている。

 このほか3号機について、委員会は、緊急時に炉心を冷やすための注水装置を3月13日に停止させたことが事故拡大につながった可能性があるとみている。こうした点をまとめた中間報告を26日に公表する。

 非常用復水器は、外部電源や非常用発電機などの交流電源を使う通常のポンプを動かせなくなった時に炉心を冷やす手段。原子炉圧力容器内の蒸気を冷やして水に戻し、再び炉心に入れるのに使う。装置は2系統あり、水を満たしたタンク内に通した配管に蒸気を送る。直流電源(蓄電池)を失うと、操作不能になって外へ蒸気とともに放射性物質が漏れるのを防ぐため、蒸気を送る配管の弁のうち格納容器の内側の弁が自動的に閉じ、蒸気が通らなくなる設定になっていた。


 昨夜のNHKスペシャルでは、海外の原発では「非常用復水器」(イソコン)の弁を開ける訓練を行っているが、福島第一原発では、その訓練は行われなかった、とか、事故後いったん弁が閉じているにも関わらず、現場も幹部も「イソコン」は稼動していると思っていた、とか、弁が閉じられていることが判明した後に正しく稼動させたにも関わらず、水蒸気を発生しなくなったため危険を感じてまた弁を閉じてしまった、と振り返っていた。また、水位計データへの判断ミスも指摘されていた。

 調査の結果こういう実態が分かったのでレポートする、ということなのだろうが、ちょっと演出としては適切ではなかったと思う。「イソコン」や「水位計」、そして「人的ミス」が“主役”であることに、私は違和感を拭えない。なぜ「津波や地震対策の不備」という本質的な問題にもっと論及しないのか・・・・・・。もっと言えば、地震国日本にこれだけの原発をつくることになった、その原子力村にメスを入れることが、広告主を気にすることのないはずのNHKならできるのではないのか・・・・・・。NHKや大手新聞社の報道の背後に、どうしても政府を含めた原子力村の存在を感じる。

 もし、“「イソコン」の正常な稼動をできなかったことがメルトダウンの大きな原因だ”というロジックが受け入れられれば、原子力村には都合がいい。その当時の東電幹部や現場の管理者、作業員をスケープゴートにすることで、東電は新たな顔ぶれで、「今後は安全対策に十分留意し、万が一の場合の非常用復水器の稼動訓練を行います。」とかなんとか言ってお茶を濁そうとしているのだ。

 「イソコン」の稼動など必要としない状態をつくることこそ重要なはずだ。たしかに、「イソコン」が真っ当に機能していれば、被害はより小さくなっていたかもしれない。水位計の状態への適正な判断があったなら、同様に被害を減少させることはできたかもしれない。しかし、スリーマイル島もチェルノブイリもそうだが、あれだけのパニック状態で、人間がミスを起さないほうが不思議なのである。全電源喪失で、被害状況を確認しようにもすでに放射能が蔓延しつつある現場である。そういった現場をつくりだす「原発」そのものの存在にこそ問題があるのだ。

 もし、“人災”を指摘したいのなら、その相手は“現場”ではないはずだ。
 たとえば、震災翌日3月12日に、次のように、「正しく」メルトダウンを指摘した人物がいたにも関わらず、“縁起でもない”とか“国民に不安を与える”などという“感情”のままに当の中村審議官を広報担当から左遷し、その後も枝野にウソの発表を続けさせた菅の「罪」こそ問うべきであろう。日経のサイトの記事がかろうじて残っていたので、今のうちに文章のみ全文引用しておく。nikkei.comの該当記事

福島第1原発「炉心溶融が進んでいる可能性」 保安院
2011/3/12 15:30

 経済産業省の原子力安全・保安院は12日午後2時、東京電力の福島第一原発1号機で原子炉の心臓部が損なわれる「炉心溶融が進んでいる可能性がある」と発表した。発電所の周辺地域から、燃料の核分裂に伴うセシウムやヨウ素が検出されたという。燃料が溶けて漏れ出たと考えられる。炉心溶融が事実だとすれば、最悪の原子力事故が起きたことになる。炉心溶融の現象が日本で確認されたのは初めて。

*写真(動画)のキャプション:記者会見する経済産業省原子力安全・保安院の中村幸一郎審議官(12日午後)

 保安院は同日午後3時半、圧力が高まって爆発による放射性物質の大量放出を防ぐため、格納容器内の減圧作業を実施した。圧力が「午後2時を境に急激に下がりはじめた」(保安院)という。

 周辺地域から検出された種類は、いずれも本来は金属容器で封じ込めている物質。炉心溶融で大量に放射性物質が出れば、被曝(ひばく)の被害が広がる恐れもある。

 保安院は今回の炉心溶融について「放射性物質の広がりを計算した結果、現時点では半径10キロを対象とする住民避難の範囲を変更する必要はないだろう」と話している。

 震災にあった1号機は、核燃料棒を冷やしていた水位が下がり、露出していたとの報告もあった。

 燃料を包む金属容器は高温に耐えるとされる。溶けたとなれば、燃料周辺が相当の高温にさらされたとみられる。金属容器ばかりか原発の圧力容器や格納容器を溶かせば、放射性物質が外に漏れ出す。

 原発の運転中は、炉心で核燃料が核分裂を起こしている。発熱反応が連鎖し、冷却水を蒸気に変えてタービンを回し、発電している。

 冷却水があるうちは熱が一定に保たれるが、本来の水位が下がると燃料が生む熱の行き場が無くなる。最悪の事態では、原子炉の心臓部である炉心溶融が起きる。

 この事態を受け、保安院は自衛隊に給水支援を要請した。大量の水を使って熱を冷ますためだ。

 過去の大きな原子力災害も、炉心溶融が原因のものがあった。1979年には、米ペンシルベニア州のスリーマイルアイランド原発にトラブルが発生。緊急炉心冷却装置が働かず、高温になった燃料が炉心を溶かす大事故につながった。


 さすがに、もう動画を見ることはできないが、3月12日のこの報告を正しく受け止めた上で、その後の対策を施していたら、それこそ被害を大幅に減らすことができたはずだ。
 しかし、何度も言うが、原発そのものが存在しないにこしたことはない。地震大国日本で原発の安全性はどうしたって確保できないはずだし、もし目一杯の対策をしようと思えば、経済的に原発は算盤の合わないエネルギーになるはずだ。

 18日のNHKスペシャルは、現場の“人災”への誘導を感じる点では大いに疑問があるが、メルトダウンのシミュレーションについては、見るべきものはある。再放送は12月22日の午前0:15~1:04(12月21日の夜)なので、興味のある方はご覧のほどを。

 「冷温停止(状態?)宣言」「20ミリシーベルトで安全」という一連の政府のキャンペーンの片棒を、マスコミはかつごうとしているようだが、国民はそう馬鹿ではないよ。
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Commented by 佐平次 at 2011-12-19 10:56 x
見え見えですね。
見苦しい、弱いモノいじめ。

Commented by 小言幸兵衛 at 2011-12-19 11:31 x
こうなるとは予想しましたが、あまりにも露骨です。
マスコミが、「冷温停止(状態?)宣言」「20ミリシーベルトで安全」などの政府キャンペーンの片棒をかついでいるとしか思えません。
「片棒」は落語だけでたくさん^^

Commented by at 2017-03-15 01:02 x
老害が原発を動かしてるって本当こわい
Commented by koubeinokogoto at 2017-03-15 12:22
>あ さんへ

古い記事へのコメント、ありがとうございます。
原発は、そもそも人間が扱える範囲を超えた超巨大システムですね。
先日のNHKスペシャルで、なぜ一号機の冷却が遅れたか、イソコンの問題などを含め、吉田所長他東電の人たちのやりとりの分析がありました。
一度トラブルが発生したら、とても、優秀なメンバーであっても対処できないことが、よく分かった番組です。
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by koubeinokogoto | 2011-12-19 09:11 | 原発はいらない | Comments(4)

人間らしく生きることを阻害するものに反対します。


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