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幸兵衛の小言

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「原燃料費調整制度」という悪法-値上げの前にするべきことがある!

“原子力ムラ”の問題はいくらでもあるが、彼らが主張する「燃料費高騰による電気料金の値上げ」にも、いろいろとその前に、電力会社と政府が努力すべきことがあるようだ。
 さまざまな問題提起のブログを紹介しているブログ「薔薇、または陽だまりの猫」を見ていて、次の2月25日の中日新聞の社説を知った。
「薔薇、または陽だまりの猫」さんの該当ページ
中日新聞サイトの該当記事

電気値上げ 燃料高値買いは背信だ

 火力発電の主力燃料、液化天然ガス(LNG)を世界一の高値で買えば電気料金も自(おの)ずと高くなる。唯々諾々と産ガス国の言い値に従い、消費者にツケを回す電力業界の構造は限りなく背信に映る。

 東京電力は企業向け料金の値上げ発表に続き、家庭向けも国に値上げ申請する。原発が失った発電能力を火力で補っているため、燃料費が年八千億円以上増え赤字経営に陥るからだという。

 日本が保有する原発は計五十四基。福島以外の原発も周辺自治体の反対などで定期検査終了後も再稼働できず、今や動いているのはわずか二基だ。

 その結果、日本の総発電量に占める原発の割合は著しく低下し、火力発電は49%から72%へと膨らんだ。東電以外も遅かれ早かれ料金を引き上げるのだろうが、値上げ理由をうのみにはできない。

 火力発電にはLNGや石炭、石油が使われ、LNGが四分の三を占めるが、そのLNG調達には不可解な点があまりに多い。輸入LNGの六割は電力向けで、昨年十二月の購入価格は百万Btu(英国熱量単位)当たり約十六ドル。ところが、欧州は約十ドルで輸入し、米国は自国の地中に堆積した頁岩(けつがん)層からのシェールガス生産が始まり、三ドル前後と極めて安い。

 ドイツはパイプラインで輸入するロシア産と、LNGで輸入するカタール産などを競わせて値引きを迫れるが、日本には産ガス国との間を結ぶパイプラインがない。

 電力業界は高値の理由をこう説明しているが、同じ条件下の韓国は日本企業が投資したロシアのサハリン2から日本の半値以下で輸入し、三年後にはガス輸出国に転じる米国とも安値で契約済みだ。なぜ電力業界は、のほほんと大手を振っていられるのか。主たる理由は原燃料費調整制度の存在だ。

 産ガス国が値上げしても、為替変動で輸入価格が上昇しても、上がった分を電気料金に自動的に上乗せできる制度なので、過保護を見抜かれた電力業界は産ガス国の言い値で押し切られてしまう。

 産業界からの批判を避けるため、大口企業と割引契約を結んでいるともいわれている。中小・零細企業や家庭など、力の弱い需要家ばかりにツケを回し、声の大きい企業は割引で黙らせる。

 こんなあしき構造を許しては原燃料費調整制度を続ける政府も背信のそしりを免れない。円高を活用した海外ガス田の権益獲得など燃料調達も視野に入れた料金制度のゼロからの見直しを求める。



 「総括原価方式」といい、この「原燃料費調整制度」といい、まったく国民無視の制度といってよいし、放置しておくことで、どんどん市民生活を圧迫させるものと言えるだろう。
 原燃料のコスト削減努力を放棄し、高い燃料で購入したとしても値上げして電力会社の利益は確保できる。これは、電力会社のみを優遇する不平等制度であろう。

 どんなにコストをかけようが、もっと言えばコストをかければかけるほど利益が増える、そんな産業は他に存在しない。

 今、日本の製造業は、市場とモノづくり構造のグローバル化の中、涙ぐましいコスト削減をすすめている。政治家は、簡単に「産業の空洞化を防ぐ」などと言っているが、部品会社は客であるメーカーの海外進出に呼応して日本の工場を閉鎖しアジアに進出しなければ、現地企業に仕事を奪われるのだ。そして、タイなどアジアで製造された製品は、日本に輸出もされる。だから、一国の貿易収支のみを見て、その国の経済を語ることのできない時代になっている。中国にある台湾系EMS(製造請負企業)が、iPodやiPad、スマートフォンの相当部分を製造し、その製品が全世界に輸出されているのが、今日の世界のモノづくりの姿である。それは、まさしくバウンダリフリー(障壁のない)競争と協調への構造変化なのだが、電力会社だけは、いまだに彼らを守ってくれる壁に囲まれているようだ。

 品質(Q)、コスト(C)、スピード(D)、そして環境への配慮(E)という各課題の解決を目指し、過酷な競争の中で戦っている製造業と、電力会社の優遇された環境との落差は、あまりも大きい。そして、彼らの利益を付与するための値上げは、特に中小企業や家庭への大きな負担となる。

 電力会社のみ、まったく違うルールで、野球に例えるなら、他の産業はスリーアウトでチェンジだが、電力会社のみテンアウトまで許されているような、そういった差があると言ってもいいだろう。

 こんな制度があるから、コスト削減という意識は働かない。そして、「総括原価方式」と「原燃料費調整制度」、少なくともこの制度自体にメスを入れない限り、原発再稼動にも電気料金の法外な値上げにも応じることはできない。
 そういったことを中央のマスコミが主張しないのなら、こんなちっぽけなブログでも、出来る限り地方紙やネット上の正論を紹介したいと思う。地方紙のジャーナリズム本来の視点に立脚した記事に接すると、大マスコミの醜態が、何とも情けない。過去のプロ野球選手の報酬を巡って、何百万部もの発行を誇る大新聞同士が、くだらない喧嘩をしている暇はないはずだ。「球団」ではなく、悪事の「糾弾」をするのが、ジャーナリズムの重要な役割の一つであったはずだ。
Commented by ほめ・く at 2012-03-22 11:39 x
反原発というと直ぐに自然エネルギー問題と結びつく傾向がありますが、当面もっと大きな問題として化石エネルギーを安定的に安価で調達するという課題があります。
「エネルギー安保」という言葉があるように、この問題は外交政策とも関係し、政府の重要課題としてー特に対米関係がネックとなっている—取り組まねばならぬ事柄でもあります。
先ずは「総括原価方式」を見直させ、電力会社に値上げ阻止のプレッシャーを掛ける必要があるでしょう。
国民が声を上げて政府のケツを叩くしか手がなさそうですね。

Commented by 小言幸兵衛 at 2012-03-22 13:06 x
東電との“契約問題”という、“問題”でもなんでもない、当たり前の商慣習についてすら、当事者が指摘しないとニュースとして掲載しようともしない、大手マスコミは、もうあてにできませんね。
「総括原価方式」も「原燃料調整制度」も、市場ルールを度外視した不平等な電力会社保護制度です。
せいぜいブログしか武器はありませんが、適宜書くつもりです。

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by koubeinokogoto | 2012-03-20 09:00 | 原発はいらない | Comments(2)

人間らしく生きることを阻害するものに反対します。


by 小言幸兵衛