「関西広域連合」ではなく、「関西広域談合」なのか!?
まず、今回の「声明」全文を紹介する。関西広域連合サイトの該当ページ
原発再稼働に関する 声明
関西地域は、40年以上にわたって、若狭湾に立地する原子力発電所から安定的な電力を受け続け、産業の振興と住民生活の向上が図られてきた。また、その安全確保のため、立地県である福井県が独自に特別な安全管理組織と専門委員会を設置し、常時厳しい監視体制がとられてきた。関西の現在の発展は、こうした取組がなければありえなかったといっても過言ではない。
そのようななか、関西電力大飯原子発所第3号機・第4号機が定期検査を終え、再稼働の時期を迎えているが、関西広域連合は、東京電力福島第一原子力発電所の事故を踏まえ、安全性が確認できなければ再稼働すべきではないとの立場から、政府に対し三度にわたる申し入れを行い、これに基づいて、5月19日と本日の広域連合委員会において説明を受けた。
「原子力発電所の再起動にあたっての安全性に関する判断基準」は、原子力規制庁等の規制機関が発足していない中での暫定的な判断基準であることから、政府の安全判断についても暫定的なものである。従って、大飯原発再稼働については、政府の暫定的な安全判断であることを前提に、限定的なものとして適切な判断をされるよう強く求める。
平成 24 年 5月 30 日
関西広域連合
連合長 井 戸 敏 三 (兵庫県知事 )
副連合長 仁 坂 吉 伸 (和歌山県知事 )
委員 嘉 田 由紀子 (滋賀県知事 )
委員 山 田 啓 二 (京都府知事 )
委員 松 井 一 郎 (大阪府知事 )
委員 平 井 伸 治 (鳥取県知事 )
委員 飯 泉 嘉 門 (徳島県知事 )
委員 橋 下 徹 (大阪市長 )
委員 竹 山 修 身 (堺市長 )
「暫定的」だから「限定的」とあるが、この「限定的」は具体的に何を意味するのか、この声明文には明記されていない。「稼動期間」のニュアンスはあるのだが、それなら明確にするべきだ。これでは、政府側はどうにでも言い逃れできる“隙”を与えている。
しかし、あれだけ反対していた京都府や滋賀県の知事がメンバーに入っていながら、なぜこうなったのだろう。その背景に“何か”あると思わないわけにはいかない。
次に、この「連合」の会長の挨拶。
広域連合長挨拶
広域連合長
井戸 敏三(兵庫県知事)
関西から新時代をつくる。志を同じくする関西の2府5県が結集し、平成22年12月1日、関西広域連合を設立しました。
複数府県により設立される全国初の広域連合として、府県域を越える広域課題に取り組むことはもとより、地方分権の突破口を開き、わが国を多極分散型の構造に転換することをめざします。
当初は、防災、観光・文化振興、産業振興、医療、環境保全、資格試験・免許等、職員研修の7分野の広域事務からスタートしますが、「成長する広域連合」として、将来的には港湾の一体的な管理や国道・河川の一体的な計画・整備・管理等に拡大していくことも視野に入れています。
とりわけ重要な課題は、国の出先機関の受け皿として、国からの権限、事務の移譲を受け、制度疲労を起こしている中央集権体制に風穴を開けることです。移譲に向けた具体的な工程や条件等について国との協議を進め、何としても早急に実現していきたいと考えています。
自ら政策を決定、実行できる自立した関西、そして西日本の拠点として人、モノの交流のアジアのハブ機能を有する関西の実現をめざし、関係府県一丸となって取り組んでいきます。皆様のご支援ご協力をお願いします。
「わが国を多極分散型の構造に転換」しようとして、結局は東京-中央-政府の意のままになってしまって、この「連合」の存在意義はあるのか。
「とりわけ重要な課題は、国の出先機関の受け皿として、国からの権限、事務の移譲を受け、制度疲労を起こしている中央集権体制に風穴を開けることです。」の文句が泣く。まさに“原子力ムラ”という中央集権体制に、利用されているだけだったのではないか。風穴を開けられたのは、どっちなのだ。
そもそも、この「連合」結成にあたって関西電力が関わっているとも言われている。また、奈良県は、いくつかの理由で参加していない。「府県域を越える広域課題」に、結果として“連合”としてのシナジーを発揮できなかったわけで、何のための組織かが、これから問われることになるだろう。
さて、橋下は、「大阪府市エネルギー戦略会議」に、相応の顔ぶれを集めた。そして、このメンバーからは、原発再稼動がなくても、電力は不足しないというレポートを受けていた。その「会議」について、大阪府のサイトから引用する。
大阪府サイトの該当ページ
大阪府市エネルギー戦略会議
大阪府と大阪市は、大阪府市統合本部(以下「統合本部」という。)における決定に基づき、「新たなエネルギー社会の形成による新成長の実現」に向けた戦略を検討するため、平成24年2月27日に「大阪府市エネルギー戦略会議」を設置し、以下の事項について検討していきます。
(1)エネルギー需給構造の転換にかかる研究・提案に関すること。
(2) 府市エネルギー戦略のとりまとめに関すること。
(3)その他統合本部が指定する事項に関すること。
そして、その委員の顔ぶれ。
----------------------------------------------------------------------
委員名簿 (五十音順・敬称略)
座 長 植田 和弘(特別参与、京都大学大学院経済学研究科 教授)
座長代理 飯田 哲也(特別顧問、特定非営利活動法人環境エネルギー政策研究所 所長)
古賀 茂明(特別顧問、元経済産業省大臣官房付)
大島 堅一(特別参与、立命館大学国際関係学部 教授)
河合 弘之(特別参与、さくら共同法律事務所 弁護士)
佐藤 暁 (特別参与、原子力コンサルタント)
高橋 洋 (特別参与、株式会社富士通総研経済研究所 主任研究員)
長尾 年恭(特別参与、東海大学海洋研究所地震予知研究センター長)
圓尾 雅則(特別参与、SMBC 日興証券株式会社 マネージングディレクター)
村上 憲郎(特別参与、村上憲郎事務所代表)
----------------------------------------------------------------------
この「会議」では、大飯再稼動がない場合の電力供給策の提出を関電に要請したが、関電は再稼動ありきなので、その宿題に答えなかった。
これだけのメンバーを集めて、結局「再稼動やむなし」ということなのか・・・・・・。
このメンバーの奮起を期待したいが、どうも野田と連合とは、事前に結論を出していたに違いない。政府から連合メンバーへの、何らかの圧力を感じないわけにはいかない。
結果として、個々の県との交渉をすることなく、この「連合」による“奥歯に物が挟まった”ような声明で、再稼動の承諾をとったと広言する政府に、まんまと利用されたのではないか。
このままなら「関西広域連合」ではなく、「関西広域談合」と言われてもしょうがない。