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幸兵衛の小言

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電力不足の嘘、早くも露呈—“デインジャー”大飯は即時停止せよ!

政府と関電、あるいは原子力ムラ一同による大飯再稼動のための嘘が、すでに露呈しつつある。
中日新聞 CHUNICHI Webの該当記事

関電、大飯再稼働なくても電力供給に余力 
2012年7月18日 09時49分

電力不足の嘘、早くも露呈—“デインジャー”大飯は即時停止せよ!_e0337865_16394544.jpg


 政府の節電要請から16日までの2週間の関西電力管内の電力需給で、最大需要は2301万キロワットにとどまり、出力118万キロワットの大飯原発3号機(福井県おおい町)が再稼働しなくても、供給力を9%下回っていたことが分かった。猛暑となり17日の最大需要はこの夏一番の2540万キロワットに達したが、10%以上の供給余力があった。政府は夏場の電力不足を理由に強引に大飯原発の再稼働に踏み切ったが、節電効果など需要の見通しの甘さが浮き彫りになった。

 関電は5月にまとめた試算で、原発ゼロのままなら7月前半は8・2%の供給力不足が生じるとし、再稼働の必要性を強調した。政府は大飯の再稼働を決めた上で、関電管内に猛暑だった2010年夏比で15%の節電を求め、3号機のフル稼働後も節電目標を10%に設定している。

 政府は2日に節電要請を開始。関電の資料などによると、16日までの2週間の最大需要は10年同時期と比べて平均で12%低下。最大需要の2301万キロワットを記録した瞬間は供給力を344万キロワット下回り、大飯3号機の118万キロワットを差し引いても余裕があった。需給が最も逼迫(ひっぱく)した時間帯でもさらに209万キロワットの供給が可能だった。

 一方、関電に平均36万キロワットを融通している中部電力も2週間の最大需要は2139万キロワットで、供給力を9%下回った。中電管内の節電目標は当初は5%で、現在、4%に設定されているが、安定した供給体制を確保している。

 関電広報室の担当者は「雨や曇りの日が多く供給が安定したが、今後は気温が平年より高くなるとの予報がある。大飯原発4号機が稼働しても需給の見通しは厳しい」とコメント。中電広報部の担当者も「火力発電所のトラブルリスクなどがあり、電力供給は厳しい」と話した。

 千葉商科大の三橋規宏名誉教授(環境経済学)は「政府や電力会社が、原発を再稼働させるため、電力需要を恣意(しい)的に過大に見積もった結果だ。今後、猛暑になっても電力は足りると思うが、脱原発の機運を高めるため、引き続き企業と家庭で節電の努力が必要」と話した。
(中日新聞)



 “5月にまとめた試算で、原発ゼロのままなら7月前半は8・2%の供給力不足が生じるとし、再稼働の必要性を強調した”関電。
 それは、“需要の見通しの甘さが浮き彫りになった”のではなく、三橋という大学教授が指摘するように、“政府や電力会社が、原発を再稼働させるため、電力需要を恣意(しい)的に過大に見積もった結果”だろう。確信犯だからね、彼らは。
 
「電力需要のピークは、これからじゃないの?」という声もあるだろう。しかし、まず心配はいらない。現状の企業と家庭の節電モードを続ければ、大飯など再稼動させなくても電力不足になど、ならないのだ。

 以前紹介したが、「週刊朝日EXデジタル」のサイトに「週刊朝日UST劇場 in ロフトプラスワン」という企画で6月7日に放送された「原発問題 そうだ、広瀬さんに聞いてみよう!」で使われた資料が掲載されており、コピーなどが自由にできるセキュリティのかかっていないPDFがダウンロードできる。
週刊朝日EX DIGITALの該当ページ

 まず、その中から、今年の電力需要予測の“変遷”を振り返る。まさに、政府や電力会社が、原発を再稼働させるため、電力需要を恣意(しい)的に過大に見積もった結果、大きく見積もりすぎて叩かれると少し減らしたり、また少し上げたりと、彼らの涙ぐましい(?)努力の跡が見える。
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 一昨年8月の3,000万KWを超える需要は、同じような猛暑でも、今日の節電モードを続ければありえない数字。

 次に、昨年の関電の発電能力がどうだったかを振り返る。
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 実は、原発なしでも、十分に3,000万KWの能力があったのだ。今年、この能力を発揮できないとしたら、本来稼動可能な火力を意図的に休止しているとか、他の電力会社や民間からの電力手配を意図的に行わないなどの、いわば「サボタージュ」のせいとしか言えないだろう。彼らは、大飯再稼動なしの発電能力の試算を拒んだ。それは、試算することで、原発なしでも間に合うという事実を何が何でも隠匿したかったのである。

 そして、昨年の最大需要は、8月9日の2,784万KW。
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 この日は、夏の甲子園の一回戦四試合が行われ、関西のチームや沖縄のチームが出場したことも、電力需要が上がった原因の一つだと思う。しかし、それでも、2,784万KW。

 もし、昨年同様に、ある特定の日の午後二時頃に、最大需要が2,800万KW程あっても、大飯の再稼動などは必要なく電力不足になならないはずだ。

 「再稼動ありき」で突っ走った原子力ムラは、「デインジャー」と「リスク」の違いを知らない。ここからは、ここ最近更新の多い「内田樹の研究室」から。
 内田が著作やブログで何度か繰り返している主張だが、「デインジャー」と「リスク」の違いは知っておくにこしたことはない。
「内田樹の研究室」の該当ページ

2012.07.18
デインジャーとリスク(しつこい)

ある雑誌にまたまた「デインジャーとリスク」について書いた。
もうその話はいいよという読者も多いと思うけれど再録。

国際関係論では「危険」を「リスク」と「デインジャー」に使い分ける。
リスクというのは「マネージ」したり、「コントロール」したり、「ヘッジ」したりできる危険のことである。デインジャーというのは、そういう手立てがまったく効かない種類の危険のことである。
サッカーの試合で、残り時間5分で1点のビハインドというのはリスクである。サッカースタジアムにゴジラが来襲してきて、人々を踏みつぶし始めるというのはデインジャーである。
デインジャーとはまさかそんなことが起こるとは誰も予測しなかったために、そのためのマニュアルもガイドラインもない事態のことである。


原発事故はデインジャーである。いつ、どういう様態で起きて、どのような被害をもたらすかについて予測が立たない。
それについて備えをするというのは、事故が起きたときにどうやって人命を守るかという「対症的」措置のことである。
住民の避難経路を確保し、収容施設を設置し、事故対策のための施設や機材を全原発に配備しておくということ、それがデインジャーに対してできる最大限である(それでもデインジャーには対応できない)。
同じ話を繰り返すが、「予防できる」危険はデインジャーとは呼ばない。

原発が停止したままでは電力が不足するというのはリスクである。
停電が頻発する、電力料金が高騰する、医療機関で十分なケアができなくなる、製造業が生産拠点を海外に移す、雇用機会が失われる・・・というのが想定されるリスクのシナリオである。どれも平たく言えば「金の話」であり、「金で解決できる話」である。
ただ、金を出したくない人にとっては、デインジャーよりも大事な案件である。

「命より金の方が大事だ」というのが、装飾を剥ぎ取って言えば、再稼働を進めた人々のロジックである。


野田首相と原発再稼働推進派の人々は、目先の銭金を失うことを恐れて、「デインジャーなどというものは存在しない(するかも知れないけれど、われわれの身にはたぶん訪れないだろう)」という楽観的希望に国運を賭けた。
これほどに視野の狭い人々に、これから先の混迷を深めるはずの国際社会の舵取りを任せることに私は同意しない。



 今になってようやく大飯と志賀の活断層「再調査」が決まったようだ。
時事ドットコムの該当記事

大飯、志賀の再調査指示=原発敷地「活断層」で−保安院

 経済産業省原子力安全・保安院は18日、敷地内に活断層がある可能性が指摘された関西電力大飯原発(福井県おおい町)と、北陸電力志賀原発(石川県志賀町)について、再調査を指示することを決めた。
(2012/07/18-17:09)



 活断層の存在が指摘されたのは、最近のことではない。再稼動前に関電は調査資料を「紛失」したなどと誤魔化してきた。調査をするなら、大飯は一旦止めるべきだ。調査中にだって何があるかは分からない。そして、調査は、本来は再稼動前に行うべきことである。
 今になって安全・保安院が再調査を指示したのは、専門委員の指摘や市民団体の根強い運動の成果とも言えるが、最新の電力需要データを見たこととも無縁とは思えない。「止めても、大丈夫じゃないの・・・・・・」と思ったのではなかろうか。関電は止めずに調査をしたがるだろうが、再調査は稼動を中止して関電に任せっ切りにせず、専門家の知恵と力を総動員して行うべきである。


 原発という“デインジャー”な賭けに国民を巻き込んで、電力不足という“リスク”をヘッジする努力など考えもしなかった原子力ムラ。もし起こったら取り返しのつかない「デインジャー」について楽観し、あくまで「金」のために、直下に活断層がある可能性を持つ大飯を再稼動させた野田ドジョウ政権などに、私も国の舵取りを任せたいとは思わない。
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by koubeinokogoto | 2012-07-18 18:05 | 原発はいらない | Comments(0)

人間らしく生きることを阻害するものに反対します。


by 小言幸兵衛