廃炉と一緒に「電源三法」も廃止すべし!
双葉町長、首相の突然表明を批判 廃炉指示「事前説明なく遺憾」
安倍晋三首相が東京電力に福島第1原発5、6号機の廃炉を指示したことについて、5、6号機がある福島県双葉町の伊沢史朗町長は19日、「廃炉は当然のことだが、事前に説明もなく、頭ごなしの総理判断は遺憾だ」と強く批判した。
伊沢町長は「真意を確認する必要がある」とした上で「原発事故直後の対応や、その後の収束作業と同じで、(政府は)避難者や地元自治体を全く見ていない。ばかにされているようだ」と語気を強めた。
2013/09/19 17:14 【共同通信】
「廃炉は当然」だが、なぜ「事前に説明」を希望するか。
それは、双葉町そして全国の原発立地市町村が電源三法の交付金に頼ってきたことが背景にある。
原発を誘致した市町村は、「原発を立地するけど、悪いようにはしないから」という国と東電の甘い囁きにのって原発建設を許し、海や自然や雇用機会を失い、加えて共同体を賛成派と反対派の対立状態に陥れる代わりに、財政的な援助を得ていた。そういった構造的な問題が廃炉によってどう変わるのかが、地元の最大の関心事なのは当然だろう。
共同通信は、伝統的に連載企画でジャーナリストとしての気骨を時折見せてくれる。
3.11以降の連載企画原発編「原発と国家」の第二部「『立地』の迷路」の第五回は「財政危機でも依存続く-交付金“中毒”に-」から引用。
*文中の太字は当ブログの管理人による。
共同通信連載企画「原発と国家」の該当記事
財政危機でも依存続く-交付金“中毒”に-
立地に伴う交付金や固定資産税、核燃料税、電力会社の寄付金。財政規模に見合わない巨額の原発マネーが流れ込む。福島県双葉町には1980年代、後戻りのできない変化が表れ始めた。
自治体に交付金を手厚く配る「電源3法交付金制度」が生まれたのは、田中角栄内閣の74年、第1次石油ショックの翌年だった。「ありがたいという話だったよ。地元はそれは喜んだ」。福島県出身の民主党最高顧問、渡部恒三(わたなべ・こうぞう)(79)は振り返る。交付金という"蜜"で立地を促進するシステムの確立だった。
2基の原発を抱える双葉町への交付金は87年度までの14年間で約34億円。固定資産税は多い年で約18億円で、歳入の半分を占めた。町は下水道や町道、図書館整備など公共工事に突き進む。
地元の建設会社社長は「先に原発ができ、4基がそろった隣の大熊町に比べ、双葉町は2基で交付金が少ない。大熊が立派な施設をつくると聞けば、こっちも負けてはいられないという雰囲気があった」と話す。
ツケ
80年代後半以降、交付金の適用期限は切れ、固定資産税は年を追うごとに減価償却が進み、減収が続く。過大な公共事業のツケと施設運営費で財政難に陥った。町議会は91年、原発増設を求める決議を可決。財政の穴を新たな「立地」で埋める道を選んだ。
当時の町長は岩本忠夫(いわもと・ただお)。社会党県議時代は「反原発のリーダー」と言われたが、85年に町長になると推進派に転向。決議後も「できてもいないのに増設で入る金をあてにして、先に金を使っていた」(町幹部)という。
知事だった佐藤栄佐久(さとう・えいさく)(71)は「麻薬中毒患者が『もっと薬をくれ』と言っているのと同じではないか」と振り返る。
改ざん
東電は第1原発に7、8号機の増設を目指す。94年、社長の荒木浩(あらき・ひろし)(80)は知事公舎を訪問し、今は原発事故対策の拠点となったサッカーのトレーニング施設「Jヴィレッジ」建設を持ち掛けた。元幹部は「増設の突破口だった」と明かす。
2001年の地方博「うつくしま未来博」。開催に合わせ、東電は、県内に電力を供給する東北電力より寄付額を少なくしたいと打診。するとある県幹部は「それだったら福島から原発は出て行ってください」と言い放つ。東電は県の意向に神経をとがらせていた。
02年には長年にわたる東電の原発検査記録の改ざんが発覚。隠蔽(いんぺい)体質に対する批判が高まり、佐藤は検査のため停止している原発の再起動容認にかたくなな姿勢を見せ、町も決議を凍結せざるを得なくなった。
町長が井戸川克隆(いどがわ・かつたか)(65)に代わり、佐藤も弟の逮捕で辞職した後の07年、町議会は凍結を解除する。町は建設予定地への初期交付金を国に申請、約39億円を手に入れた。「結局、次も原発だった」と建設会社社長。
「未来永劫(えいごう)、原発に頼れるわけではない」と考えていた井戸川は05年の就任直後、総務課長に「予算を組めません」と訴えられたという。財政状況は想像以上に深刻で、09年までに、原発立地自治体として全国初の財政健全化団体に転落した。
頼みの原発による事故で避難を強いられ、町は存続の危機にある。「これから脱原発の百年計画を立てようとしていたのに」と井戸川。東電が増設中止を表明したのは事故から2カ月たった5月20日だった。(敬称略)(山内和博)
電源三法をあらためて確認。
“原子力教育を考える会”による「よくわかる原子力」というサイトでは、非常に丁寧に原子力や放射能、原発のことが説明されている。使われているデータは今では若干古いものも含まれてはいるが、原発をめぐる基本的な仕組みは変わらない。同サイトから「電源三法」と交付金について引用したい。
「よくわかる原子力」サイトの該当ページ
電源三法交付金
いわゆる電源三法とは、1974年6月3日に成立した次の3つの法律をさしています。
•電源開発促進税法
•電源開発促進対策特別会計法
•発電用施設周辺地域整備法
電力会社は販売電力量に応じ、1,000キロワットアワーにつき425円を、電源開発促進税として国に納付しています(電源開発促進税法)。このうち、 190円が電源立地勘定で、235円が電源多様化勘定(2003年10月法改正により「電源利用勘定」に名称変更)となります。2003年予算で、この税の総額は4855億円になります。(電源開発促進税率は、今後段階的に引き下げられる予定。)
もちろん最終的にこの税金の負担は、消費者が電力料金に上乗せされて支払っています。
納められた税金は、特別会計に組み込まれ、発電所など関連施設の立地及び周辺市町村に対し交付金などの財源にあてられます(電源開発促進対策特別会計法)。
我々の電力料金には、この交付金分も含まれているのだ。その交付金がどんな性格のものか、引き続き引用。
そもそも「電源三法交付金」とは・・・・迷惑料
交付金制度の制定は1974年。そのころ通産省(当時)資源エネルギー庁の委託で作られた立地促進のパンフレットには、次のように書かれていました。
「原子力発電所のできる地元の人たちにとっては、他の工場立地などと比べると、地元に対する雇用効果が少ない等あまり直接的にメリットをもたらすものではありません。そこで電源立地によって得られた国民経済的利益を地元に還元しなければなりません。この趣旨でいわゆる電源三法が作られました(日本立地センター「原子力みんなの質問箱�)。」 つまり本来三法交付金は、原発が地域開発効果を持たないことに対する補償措置以外のなにものでもないのです(清水修二福島大教授「原発を誘致する側の論理」1988)。しかし、「雇用効果がない」などとあからさまにいってしまうと、元も子もないので、その後の歴史の中で「地域振興」というまやかしの姿が与えられてきました。そして現在の交付金のしくみでは、電力やエネルギーとは全く無縁の「地域振興」がまさに目玉になった内容へと変身しています。
東京などの都会の電力をまかなうために、自然や共同体の破壊をいう「迷惑」のために交付されているのが、電源三法による交付金である。
そして、双葉町を含む福島第1エリアでは「原発事故」というあまりにも大きな「迷惑」も被った。
もう少し、この交付金の問題について紹介。
従来の交付金は、「箱物」行政の典型で、公民館・体育館など半恒久的な建築物建設にしか使えず、建てることは建てられても、維持運営費などには使えないものでした。その結果、そうした建築物の維持運営費が、自治体予算を圧迫している状況が生じていました。改訂によりほとんど自治体の独自予算のように、何にでも使える交付金になりました。交付金という名前の、甘いアメを用意して、原発を誘致してもらおうという作戦でしょう。 またこの改訂で、これまでこの交付金の対象であった火力発電所の立地地域を、対象から外しました。原発立地の地元へのアピールをより鮮明にするためだそうです。
個々の自治体にどれくらいの交付金が支払われるかというと、出力135万kwの原発が建設される場合が、資源エネルギー庁のホームページに紹介されています。
◎建設費用は約4500億円。建設期間7年間、という前提
◎運転開始10年前から、10年間で391億円。
◎運転開始後10年間で固定資産税も入れて計502億円。
この説明で分かる通り、交付金は時限制である。これは、交付金を継続的にもらうためには、どんどん原発を増設させることを目論んでいるからだ。まさに“麻薬”的な存在だ。
そして、我々が支払う電気代の一部は、もはや日本しかやろうとしていない「核燃料サイクル」のためにまで使われている。
実現不可能な事業へ、多額の予算
電源開発促進税の電源利用勘定からは、核燃料サイクル開発機構に対して補助金が出資されています。ここ数年減額されてきているとはいえ、2003年度予算で1171億円の予算がつけられて、核燃料サイクルの開発が行われています。核燃料サイクルはまだ実用化していませんから(実用化される見通しもあまりありませんが)、純粋に研究開発・技術開発に関わる政府予算でこれほどの厚遇を受けているものはそうはありませんし、核燃料サイクルの構想自体が袋小路に陥っていながら、これほどの予算をつけるのは不可解としかいいようがありません。ちなみに、ロケット打ち上げなどを行っている「宇宙航空研究開発機構 (JAXA)」(宇宙科学研究所(ISAS)航空宇宙技術研究所(NAL)宇宙開発事業団(NASDA)を吸収統合)の2003年予算総額は約1730億円です。
「もんじゅ」の問題は、今さら書くまでもないだろう。つい最近もモニターシステムが稼働していないことが報道されていた。
なぜ特定地域に数多くの原発が建設されるのか。その構造の底辺に「電源三法」が存在している。そして、国民が支払う電気代に、交付金のための金額が上乗せされている。
「火力発電の燃料費高騰で、電気料金を値上げしたい」などという電力会社の言い分には、「電源三法交付金のための上乗せ分を使ってくれ」と言いたいではないか。当り前だが、原発がなくなれば、まったく必要のない費用なのである。
安倍が福島第1の5・6号機廃炉を主張するなら、「電源三法」に替わる、原発推進という構図から脱した地域再生の仕組みも検討しなければ片手落ちというものだ。
フクシマ以降でも、原発再稼動に賛成する地元市町村がある理由は、「電源三法」による交付金で“麻薬漬け”にされている構造があるからである。
原発の地元には、もはやかつて大漁を誇った豊かな海も、夕焼けをながめた海岸も存在しない。あるのは、「原発を動かさなくては食べていけない」という焦燥感のみであろう。それは、決して地元のせいではない。原発の建設も廃止も、「国策」として取り組むべき課題だ。