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幸兵衛の小言

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米ロに核兵器削減を主張すべき国の体たらく—北海道新聞の社説など。

北海道新聞の3月30日の社説をご紹介。北海道新聞サイトの該当記事

社説
核サミット 日本の責任も問われる
(3月30日)

 オランダ・ハーグで開かれた第3回核安全保障サミットは、核兵器に転用可能なプルトニウムや高濃縮ウランの保有量を最小限に抑えることを各国に促すコミュニケを採択した。

 オバマ米大統領の提唱で始まった同サミットは、核物質を使用したテロの防止が最大の目的だ。

 第1回サミットは核物質の管理を4年以内に徹底することを決めた。今回、保有量の削減に合意したのは前進と言える。

 ハーグ・コミュニケは、核物質の輸送の安全強化、サイバー攻撃への対応なども求めている。

 各国はこれを順守し、リスクの低減に努めなければならない。

 この方針に沿って、日本政府は、冷戦時代に米国などから研究用として提供されたプルトニウムと高濃縮ウランの計数百キロを返還することを表明した。

 しかし、これとは別に、日本は重大な問題を抱えている。

 日本は核燃料サイクル計画に基づき、原発の使用済み核燃料を再処理して抽出したプルトニウム約44トンを保有する。原爆5千発分にも相当する量だ。

 だが、抽出されたプルトニウムをウランと混ぜた混合酸化物(MOX)燃料を使用する高速増殖炉に実用化の見込みはない。

 窮余の策として、通常の原発でMOX燃料を使うプルサーマル発電が登場したが、安全性、経済性の両面で疑問がある。

 使うあてのないプルトニウムをため込む日本に対し、海外の視線は厳しさを増すばかりだ。

 この上、青森県六ケ所村の再処理工場を稼働させ、プルトニウムを増やしてはならない。

 唯一の被爆国であり福島第1原発事故を引き起こした国として、安倍晋三首相が「核セキュリティー強化を主導する」と言うのであれば、破綻した核燃サイクルからの撤退を決断すべきだ。

 一方、オバマ大統領が目指す「核なき世界」の実現に、ウクライナ問題をめぐる米国とロシアの対立が影を落としている。

 米ロ両国は、核兵器削減の先頭に立つ責任がある。核軍縮の流れを停滞させてはならない。

 近年、旧ソ連圏では、核物質の密輸が相次いでいる。

 核テロの防止にもロシアの協力は欠かせない。

 現在、イラン核開発問題の解決を目指し、米ロなど6カ国はイランと協議している。話し合いを通じた核不拡散の成功例とするためにも緊密な協調を求めたい。



 まさに、真っ当な主張。要点は次の内容に部分にされている。

“唯一の被爆国であり福島第1原発事故を引き起こした国として、安倍晋三首相が「核セキュリティー強化を主導する」と言うのであれば、破綻した核燃サイクルからの撤退を決断すべきだ”

 日本が明確に、脱原発と核兵器につながるプルトニウムに分かれを告げることで、“米ロ両国は、核兵器削減の先頭に立つ責任がある。核軍縮の流れを停滞させてはならない”と強く主張できる。


 原発を稼動させ、使用済み核廃棄物からプルトニウムを取り出そうなどとしている状況では、とても核軍縮についての指導的な役割は果たせない。

 原子力資料情報室のサイトから、六ヶ所村の再処理による危険性を図とともに引用。
原子力資料情報室サイトの該当ページ

再処理工場は、原発で発電を終えた使用済み核燃料を化学的に処理して、プルトニウムとウランを取り出す施設です。放射能を原料とした巨大な化学プラントですから、核施設として臨界事故、放射能漏れ、被ばく事故などの危険性と、化学工場として火災・爆発事故などの危険性を合わせ持つことになります。

① 剪断・溶解工程:
工場ではまず使用済み燃料を燃料の鞘ごとブツブツと切断し、それを高温の硝酸に溶かして、ウラン・プルトニウム・死の灰の混ざった硝酸溶液が作られます。以降の工程は溶液の状態で作業が進められます。

② 分離工程:
最初に硝酸溶液から死の灰を分離します。死の灰の部分は濃縮され高温のガラス原料と混ぜ、ステンレスの容器にいれて冷やし固められます。これが高レベルガラス固化体で、専用の貯蔵建屋で30~50年間貯蔵されます。人間が近づけば即死してしまうような非常に強力な放射線と熱を出す危険なものです。

③ 精製工程:
さらにウラン溶液とプルトニウム溶液を分離します。

④ ウランは硝酸を抜き、酸化ウラン粉末の状態で貯蔵されます。

⑤ プルトニウム溶液は、一度分離したウラン溶液と1:1の割合で混合され、硝酸を抜き、ウラン・プルトニウム混合酸化物粉末の状態で貯蔵されます。これが六ヶ所再処理工場の製品です。このプルトニウム(ウラン・プルトニウム混合酸化物)を、再び原発の燃料として利用しようというのがプルサーマルです。

下の図は再処理工程の簡略図です。これらの工程全体でたとえ事故が起きなくても、「原発1年分の放射能を1日で出す」といわれるほど、大量の放射能が環境中へ放出されます。またひとたび大事故が起これば、放射能の被害は日本全体におよぶ可能性があります。

米ロに核兵器削減を主張すべき国の体たらく—北海道新聞の社説など。_e0337865_16402593.jpg



 “「原発1年分の放射能を1日で出す」といわれるほど、大量の放射能が環境中へ放出”する再処理工場など、百害あって一利なしなのである。

 もちろん、原発は、ウラン燃料採掘という初期段階から、使用済み燃料の処理まであらゆる工程で危険性を孕んでいる。

 「よくわかる原子力」サイトに、核燃料サイクル全体の問題点がもとめられているので、ご紹介。(太字は管理人)
「よくわかる原子力」サイトの該当ページ

核燃料サイクル全体の問題点をまとめてみます。

1.ウランの採掘から廃棄物の処理・処分にいたるまでの、どの過程からも放射能を出すということ、被曝する労働者が出るということ(原発で働く人々参照)。そしてそれぞれの工程で各種の放射性廃棄物が蓄積し、残されていくということ。
2.各施設の間で行われる放射性物質の輸送時の事故が起きる可能性、原子力発電所・再処理工場での放射能放出や事故の危険性などをはらみ、一旦過酷事故、原発震災などが起きれば、その地理的広がりは世界的規模のものになる可能性を持つこと。
3.放射性物質によってはその半減期が数十万年以上にも及び、汚染が広範囲に広がれば遥か先の未来の生命をも脅かすこと。その上、地球規模の汚染を取り除く方法はないこと。
4.ウラン採掘や再処理などを押し付けられる地域と電力を消費する地域、それによって利潤を得る企業と被曝を押し付けられる労働者との間に、大きな差別を生むこと。
5.核物質を核兵器や他の危険な用途への転用、盗難などから防ぐための特別な管理体制が敷かれ、核テロを防ぐという口実で、個人生活が極端に監視・制限される可能性があること。
6.再処理は技術的に難しいだけでなく、大事故の危険性がつきまとうこと。そして使用済み燃料を直接処分するよりも、経済的に大幅に高くつくこと。



 これだけの危険を承知で原発再稼動、核燃料サイクルの推進などを考えている安倍政権には、長期的な視点も地球的視野も存在しない。
 もちろん、米ロに対して、核兵器削減のための提言をする意欲も、資格もない。

 下手な韓国語での挨拶などを覚えるより、やるべきことはいくらでもある。
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by koubeinokogoto | 2014-03-31 07:00 | 原発はいらない | Comments(0)

人間らしく生きることを阻害するものに反対します。


by 小言幸兵衛