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幸兵衛の小言

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70年前の‘大地震’は、どう報道されたか-東京新聞のコラム「筆洗」より。

70年前の1月13日、三河地区に大地震があったのも関らず、その情報が戦争遂行のため抹殺されていたが、そのことについて、東京新聞がコラム「筆洗」で取り上げていたので引用したい。
東京新聞のコラム「筆洗」の該当記事

筆洗
2014年1月13日

一九四五年の一月十三日午前三時三十八分、三河地震と呼ばれる震災が起きた。阪神大震災と同じ内陸直下型地震が、空襲におびえる人々を足元から揺らした▼被災した人々は、どんな思いで新聞を手にしたろうか。七十年前の記事を読んでみる。一月十四日付一面に並ぶのは、<撃破実に一千機>といった記事ばかり。震災を報じる記事は二面に載っている。見出しが勇ましい。<再度の震災も何ぞ/試煉(しれん)に固む特攻魂>▼<十三日早暁一部電灯線が切断する程度の可成(かなり)の地震が東海地方を襲ったが、(昨年十二月)七日の激震に較(くら)べると震度は遥(はる)かに小さく…若干全半壊の家屋があり死傷者を出しただけで…工場その他の重要施設には殆(ほとん)どこれといふ被害のなかったのは不幸中の幸…>▼十二月七日の激震とは、千二百人以上の死者を出した東南海地震のこと。それに比べて「遥かに小さい」と書かれているが、三河地震の最大推定震度は7。全半壊二万戸以上で、二千三百人余の命が奪われていた▼戦時中、政府は厳しい情報統制を敷いていた。だが当時、現場にいた記者たちはこうも語っていた。「最初は本当のことを書いても載らないなぁと思っていた。だがそのうち、どうせ載らないならと取材もあまりしなくなった」▼政府が情報を支配し、新聞がそれに馴(な)らされればどうなるか。七十年前の紙面が、教えてくれる。



<十三日早暁一部電灯線が切断する程度の可成(かなり)の地震が東海地方を襲ったが、(昨年十二月)七日の激震に較(くら)べると震度は遥(はる)かに小さく…若干全半壊の家屋があり死傷者を出しただけで…工場その他の重要施設には殆(ほとん)どこれといふ被害のなかったのは不幸中の幸…>
 という記事が、震度7、二千三百人余の命を奪った地震の記事なのである。前年12月の東南海地震より小さい、という嘘もついている。

 ずいぶん前だが、同じ毎日の記事を元に、この二つの地震の資料が見つかったことを書いた。
2011年8月13日のブログ

 すでにリンクが切れているので、再度、古いブログの記事から紹介したい。

「隠された」地震:昭和東南海地震と三河地震の詳細記録
2011年8月13日 15時0分

 太平洋戦争末期に近畿・中部地方に大きな被害をもたらした昭和東南海地震(1944年12月7日)と三河地震(45年1月13日)の詳細な被災状況が、「帝国議会衆議院秘密会議事速記録集」に記載されていることが分かった。二つの地震は、報道管制によって「現存する資料がほとんどない隠された地震」とされており、速記録集を入手した兵庫県立大学の木村玲欧准教授(防災教育学)は「被害の全体像を把握できる唯一の資料ではないか」と評価している。

 45年2月9日に開かれた決算委員会秘密会で、木村准教授は政府関係者から速記録集を入手した。

 それによると、政務次官に次ぐ内務参与官が2地震の被害状況を報告。東南海地震の規模を「関東大震災より大きい」とし、静岡、愛知、三重、和歌山など2府14県で死者977人、負傷者1917人があったと明かした。橋梁(きょうりょう)172カ所、道路773カ所、堤防351カ所の損壊に加え、工場全壊1731棟、同半壊1281棟、流失81棟があったと報告。「重要軍需工場の被害が非常に多い」と懸念を示した。

 三河地震については死者2652人と報告。未明の発生で「人的被害が非常に大きかった」とした。

 報道管制のため、当時の大手新聞は昭和東南海地震を最終面などで小さく報じただけで、12月8日の太平洋戦争開戦記念日の記事を大々的に掲載した。被害を小さく見せて国民の戦意喪失を回避し、敵国への情報漏えいを防ぐ狙いがあったとみられる。

 木村准教授は「被害実態が公表されず、各県は適切な対応ができなかったのではないか。関東大震災と違って各地からの義援金も全く集まらず、結果的に被害の拡大を招いたと思う」と指摘している。

 2地震の被害について、これまでの研究では各地に残された記録などを集計し、東南海地震(マグニチュード7.9)の死者・行方不明者は計1223人、三河地震(同6.8)は死者2306人とされている。【山下貴史】


 被害の状況について「筆洗」と2011年の記事での若干の食い違いがあるが、いずれにしても、けっして小さな被害ではない。
 
 政府の情報統制は、70年後の今も存在する。強制的だろうが、忖度による自粛だろうが、本当のことがメディアから発信されにくい世の中なってきた。

 「筆洗」の文章を使うなら、志のある記者が残っていたとしても、‘どうせ載らないならと取材もあまりしなくなった’という状況が、情報統制でもっとも怖いことなのではなかろうか。

 正月番組で爆笑問題の政治家ネタをボツにしたり、NHK大河ドラマで安倍晋三にヨイショで長州ネタを、歴史を捏造してまで放送するNHKが、今もっとも政府の統制に従順なメディアのようだ。

 また。自民党の機関紙とも言える読売や産経も、ほとんど戦中の大本営と大差ない状態に堕している。

 果たして、今の福島第一で何が起こっているか、本当のことを知らせるメディアは存在しない。

 このまま、日本はどこに向かって行くのか。
 
 戦後70年を振り返るに当たり、70年前の今日の地震のことも、十分に考えるべき歴史だと思う。
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by koubeinokogoto | 2015-01-13 07:46 | 戦争反対 | Comments(0)

人間らしく生きることを阻害するものに反対します。


by 小言幸兵衛