幸兵衛の小言

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安倍晋三の詭弁について-「内田樹の研究室」より。

 「内田樹の研究室」、久しぶりの更新。
 
 安倍晋三の言葉について、明快にその詭弁性を解き明かしている。

 神奈川新聞の記事の‘ロングヴァージョン’とのこと。
「内田樹の研究室」の該当記事

 まず、「日本近海」という怪しい言葉について。
安倍首相の声明は、聞く人、読む人を欺くための作文です。これほど不誠実な政治的文書が公的なものとして通用するということは、それ自体が日本国民と日本の政治文化にとって屈辱的なことだと思います。
安倍首相の言葉は詭弁の典型です。キーワードのすべてが読者の誤読を当てにして選択されている。例えば「日本近海」という言葉がそうです。
〈日本が攻撃を受ければ、米軍は日本を防衛するために力を尽くしてくれる。そして、安保条約の義務をまっとうするため、日本近海で適時、適切に警戒、監視の任務に当たっている。私たちのため、その任務に当たる米軍が攻撃を受けても、私たちは日本自身への攻撃がなければ、何もできない。何もしない。これがこれまでの日本の立場だった。本当にこれで良いのでしょうか〉
「日本近海」とは何を意味するのか。近い、遠いというのは主観です。外交の用語でもないし、国際法上の概念でもない。東シナ海でも南シナ海でもマラッカ海峡でもインド洋でも、どこでも「日本にとって死活的に重要な海域」であると首相が認定すれば、それは「日本近海」になる。これは中国大陸侵略を正当化した「満州は日本の生命線」と同じレトリックです。
 「日本近海」という言葉を聴けば、日本国民の多くはそれは日本の「領海」のことだと理解するでしょう。しかし、日本領海なら、そこで米軍が攻撃を受けたら、それは安保条約で規定されたとおり、日米共同で対処すべき事態です。「何もできない、何もしない」というはずがない。
だとすれば、ここで安倍首相が言った「日本近海」は日本領海外の公海や他国の領海内のことだということになる。そこで米軍が攻撃されたときに、「何もできない、何もしない」のはそれが日本領土内での出来事でない以上、当たり前のことです。
日米安保条約5条にはこう書かれています。
「日本の領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和および安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定および手続きに従って共通の危険に対処する」
安倍首相が日本領海外や外国の領海内にいる米軍への攻撃に対しても、日米が共同的に対処したいと願っているのであれば、何よりもまず日米安保条約第五条を「日本は世界中どこでも米軍への攻撃に対して共同的に対処する」と改定するのがことの筋目でしょう。
安保条約の条文を知らない日本人が首相の会見を聞いたら、日本の現状を「日本領海内で米軍が攻撃を受けても、共同的に対処することができない(九条のせいで)」と誤解することでしょう。「日本近海」という語は法律をよく知らない国民をミスリードするために意図的に選択されたものです。

 安倍晋三の「日本近海」という言葉の詭弁性に、大手新聞などで噛みついたところはあったのだろうか。
 九条どころではなく、安保の条文すら度外視しているのが、安倍晋三なのだ。

 次に、ネットでは結構話題になっている、「絶対」について。
〈米国の戦争に巻き込まれることは、絶対にあり得ません〉
その直前に首相は「米軍が攻撃を受けても、私たちは何もできない。本当にこれで良いのでしょうか」と言っています。では、米軍が攻撃を受けたときに、日本は何をする気なのか。まさか「祈る」とか「後方から声援を送る」とか言うことではないでしょう。「ともに戦う」以外のどういう行動がありうるのか。「戦争をすること」以外のなにをする気なのでしょう。たしかにそれなら日本がみずから進んで主体的に「戦争に参加する」ことになります。だから、これを「戦争に巻き込まれた」とは言えない、と。首相はそう強弁したいのでしょうか。
もう1点、気になる言葉があります。
〈今回、PKO協力法を改正し、そして新たに国際平和支援法を整備することにした。これにより、国際貢献の幅を一層広げていく。我が国の平和と安全に資する活動を行う米軍を始めとする外国の軍隊を後方支援するための法改正も行う〉
「後方支援」とは軍事用語では「兵站」業務のことです。武器弾薬の輸送、衛生、糧食、兵員の補給・教育、そして情報、通信管理もここには含まれます。現代の戦争では情報と通信は戦争の核心部分です。距離的に前線からどれだけ離れていようと、情報、通信を管轄する部門は敵からの攻撃の最重要目標となります。
「後方支援」という言葉の「後方」から、聴く人は前線のはるか彼方で燃料を補給したり、医療活動をしたりする「非戦闘的」なボランティア活動のような微温的なものを想像するかもしれませんが、兵站は軍事活動の重要な一環であり、それに従事する兵員は端的に「殺すべき敵」です。戦闘兵科の兵員と補給兵科の兵員に対しては攻撃の強度が違うというようなことは現実にはありません。
後方支援とは、端的に軍事活動です。「米軍を始めとする外国の軍隊を後方支援する」ということは、まさに「米国が行う戦争に参加する」ということ以外の何ものでもありません。そのための法整備を「戦争法案」と呼ぶ以外にどう呼べばいいのか。「戦争法案などといった無責任なレッテル張りは全くの誤りです」というのは全くの誤りです。
安倍政権は安保条約に手を付けるつもりもないし、日米地位協定に手を付けるつもりもありません。安保条約に手を着けないまま、安保体制の根本的な変更を国内法だけで処理しようとしている。そこに今回の安保法制の根源的な難点があります。

 「絶対」という言葉の不適切なことよりも重要なのは、「戦争に巻き込まれる」のはなく、「積極的に戦争する」国を安部政権が目指している、ということだ。
安保条約と矛盾する安保法制はどうやっても整合的には説明できません。だから、首相は嘘をつく以外にないのです。安全保障法制関連法案の閣議決定を受けた会見で、安倍首相は法整備がなぜ緊急に必要なのかの根拠をついに説明しませんでした。そればかりか、いくつもの点で、事実ではないことを述べています。
〈平和安全法制の整備は不可欠だと確信している。例えば、海外で紛争が発生し、そこから逃れようとする日本人を、同盟国であり、能力を有する米国が救助し、わが国へ輸送しようとしているとき、日本近海で攻撃を受けるかもしれない。このような場合でも、日本自身が攻撃を受けていなければ、救出することはできない〉
去年7月に集団的自衛権行使容認の閣議決定した際もこれと同様の説明をしていました。しかし、調べてみたら、そもそも過去に紛争国から在留邦人が米軍艦船で脱出したケースは一つもありませんでした。米軍からもそのような事態は想定できないと指摘されている。こういった反証をすべて無視して、「起こり得ない事態」に対処するために法整備が必要だと首相は述べているわけです。これは「同じ嘘でも何度も繰り返すと聴く人は信じるようになる」という詐欺師の経験則を適用しているのでしょうか、それとも国民は短期記憶しかないので、去年の7月に言ったことが反証されたこともすっかり忘れていることを当てにしているのでしょうか。

 「あり得ない」という言葉が、一時流行したような気がするが、その言葉は、国民が、安倍の上のような発言に対し、一斉にぶつけるべき言葉かもしれない。

 次に、一部の新聞が指摘した、とんでもない詭弁が次のものだ。
〈まるで、自衛隊の方々が殉職していない方がおられるという認識を持っている方がいらっしゃるかもしれないが、自衛隊発足以来、今までも1800人の方が殉職されている〉
これは、一体どういう命題を帰結したくて口にした言葉なのでしょうか。
自衛隊の年間殉職者数はここ数年ほぼ一桁台で推移しています。ほとんどが災害派遣と訓練中の事故です。22万人の隊員で事故死者一桁というのは、かなり安全管理の徹底した職場だと言っていいと思います。
首相が「これからどうやって殉職者をゼロにするのか」という実践的課題に取り組むために「殉職者は1800人いる」という数字を挙げたのであれば、話はわかります。でも、これから先もこれまで通り災害復旧に参加し、訓練も続けながら、それに加えて、これまでしたことのない海外での米軍の戦闘行動への参加に踏み切るとしたら、いったいどうやって「殉職者数を減らす」つもりなのか。これまでしなかった軍事活動を行うことで、殉職者数が減るということは誰が考えてもありえない。だとすれば、ここで引かれた18000人という数字には、「もう1800人も死んでいるのだから、このあと100人や200人死んでも大騒ぎするような話ではない」という方向に世論をリードする以外に目的はありません。

 この「殉職1800人」には、たまげた。

 北海道新聞からも、この件への反論を引用する。
北海道新聞の該当記事

首相「殉職自衛隊員1800人いる」 「戦死者」への批判かわす狙い
北海道新聞 5月16日(土)7時30分配信

大半は任務中の事故死 「論理のすり替え」

 新たな安全保障関連法案を閣議決定した14日の記者会見で、安倍晋三首相が自衛隊員のリスクについて「今までも1800人の隊員が殉職している」と述べたことに波紋が広がっている。殉職者の大半は任務中の事故によるもので、戦闘に巻き込まれて亡くなった隊員は、過去1人もいない。隊員に「戦死者」が出かねないとの批判をかわす狙いとみられるが、性質の違う数字を挙げる首相の論法に、専門家は「論理のすり替えだ」と批判している。

 「まるで今まで殉職した隊員がいないかのように思っている方もいるかもしれないが、1800人が殉職している。私も遺族とお目にかかっており、殉職者が全く出ない状況を何とか実現したい」。首相は14日の会見で、新たな法整備によって隊員が死亡するリスクが高まると指摘した質問に対し、こう述べた。

 防衛省によると、自衛隊の前身である警察予備隊が発足した1950年以降、殉職者数は今年3月末現在で1874人。車両や航空機、艦船による訓練など任務中の事故が7割以上を占め、残りは過剰業務による病気などが原因のケースが目立つという。

確実に高まる隊員のリスク

 首相はまた「自衛隊は日ごろから日本人の命、幸せな暮らしを守るために苦しい訓練を積んでいる。こういう任務をこれからも同じように果たしていく」と強調した。

 だが、関連法案が成立すれば「非戦闘地域」に限定されていた他国軍への後方支援が、より戦場に近い地域でも可能になる。法人救出や「駆け付け警護」などの任務で攻撃を受ける可能性は高まり、危険性は格段に増す。政府高官も15日、「自衛隊の活動場所や内容は広がり、隊員のリスクは確実に高まる」と認める。

 憲法9条の下、戦後、自衛隊員が戦闘で殉職した例はなく、野党は「今回の法整備によって、戦闘に巻き込まれて死亡する隊員が出かねない」と危惧する。専門家からも「首相は戦死者が出ても驚くことではないと言っているようだ」「自衛隊員の殉職はやむを得ないとも聞こえる」と批判の声も上がる。

 自衛隊の幹部は、こういう安倍の詭弁、嘘に、何ら反論できない存在なのだろうか・・・・・・。
 彼らこそ、安倍内閣の「解釈」一つで生命の危機を迎えている当事者なのだ。
 ぜひ、発言して欲しい。

 安倍晋三の詭弁や嘘が、今に始まったことではないことを指摘し、国民への警鐘を鳴らす内田樹の文章で、締めたい。
安倍首相は年金問題のときに「最後のひとりまで」と見得を切り、TPPについては「絶対反対」で選挙を制し、原発事故処理では「アンダーコントロール」と国際社会に約束しました。「あの約束はどうなったのか?」という問いを誰も首相に向けないのは、彼からはまともな答えが返ってこないことをもうみんな知っているからです。
ここまで知的に不誠実な政治家が国を支配していることに恐怖を感じない国民の鈍感さに私は恐怖を感じます。

 いつから、日本国民は、こんなに「鈍感」になったのだろうか・・・・・・。
 
 このブログには、「TPP断固反対」の自民党ポスターを掲示しているが、まさに、これは自分自身が「鈍感」にならないためなのだ。

 「解釈」と「詭弁」で、この国を危うくさせている安部政権の暴走を、許すことはできない。
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by koubeinokogoto | 2015-05-21 12:44 | 戦争反対 | Comments(0)

人間らしく生きることを阻害するものに反対します。


by 小言幸兵衛