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トランプ大統領を生んだ、アメリカの病理(3)ーライシュ『最後の資本主義』より。


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ロバート・B・ライシュ著『最後の資本主義』
 ライシュの『最後の資本主義』からの三回目。

 今回は、大企業やウォール街がロビー活動や政治献金をテコに、政治的、経済的な支配力を強化し、所得や富の「事前配分」をしている仕組みを、どう変えるかということについて。

 「第二十一章 企業を改革する」から、引用。

 市場に埋め込まれた所得と富の下位層から上位層への事前配分を終焉させるのと同時に、拮抗勢力が市場における配分が「より公正に」なるよう求めることで、課税や社会保障給付も抑えることができる。それには、現代の資本主義の中心組織である大企業を再構築することが必要となる。
 すでに述べてきたように、この30年間、企業を動かす誘因のほぼすべてが、一般労働者の賃金を引き上げ、CEOをはじめとする取締役らの報酬を引き上げる結果につながった。問題はそうした誘因をいかに反転させるかだ。
 一つの可能性としては、法人税率を決める際に、その企業の平均的労働者の賃金に対するCEOの報酬の比率と連動させる方法が考えられる。この比率が低い企業には低い法人税率を、比率が高い企業には高い法人税率を適用するということだ。一例としてカリフォルニア州議会が2014年に導入した法律が挙げられる。
 本書で紹介されるカリフォルニア州の法律では、CEOの報酬とその会社の平均的労働者の賃金の比率で、法人税が次のように定められている。

 CEO報酬が平均的労働者賃金の100倍-->法人税は8%
 CEO報酬が平均的労働者賃金の25倍 -->法人税は7%
 もし、
 CEO報酬が平均的労働者賃金の200倍-->法人税は9.5%
 CEO報酬が平均的労働者賃金の400倍-->法人税は13%

 これは、CEO及び経営者の報酬への抑止力となる。

 ウォルシュは、「会社は誰のものか」という根源的な問いを提示する。

 1980年代に定着した株主資本主義が何をもたらしたかを精査してみると、大多数のアメリカ人の賃金が停滞するか減少し、仕事のアウトソーシングが進み、地域社会が荒廃し、CEOの報酬は天文学的数字に達し、四半期の収益ばかりが近視眼的に注目され、カジノの様相を呈した金融セクターが2008年に破綻しかけて大多数のアメリカ人を巻き添えにするなどの負の遺産ばかりだった。
 いわゆる「ステークホルダー(利害関係者)」は、株主だけではない。
米国経済のステークホルダーは私たち全員であり、そのステークホルダーの大多数は潤っていないのだ。おそらくより必要とされているのはステークホルダー資本主義であり、株主資本主義の類ではないだろう。
 ドイツの企業のガバナンスに関する法律や規制は、このアプローチが取られている。
企業規模にもよるが、監査役会の半数までが従業員の代表者で構成される。さらに、店舗で働く販売員は「事業所委員会」と呼ばれる労働者協議会によって代表される。
 労働組合をはじめ、拮抗勢力の弱体化は、米国のみならず、日本でも顕著だ。
 いかに働く人々が、企業運営にかかわっていくべきか、ドイツに見習うべきことは多い。
 引用を続ける。
 有効な拮抗勢力が存在すれば、米国企業を再構成し改革することができる。法律によって、従業員を代表する組織の設置だけでなく、利害に比例した投票権を従業員に与えることが義務づけられ、一個人や一人の株主が投票権の大半を独占するという事態を防げるだろう。さらに、米国の法人が持つ法的特権の数々、例えば、有限責任や企業永続性、契約締結のための法人格、憲法で定められた権利の享受といった特権は、成長による利益を労働者と共有しつつ、地域社会や環境の利害を考慮する主体にのみ認められることとなろう。

 ウォルシュが提示する案は、民主主義に裏付けされた本来の資本主義への回帰を指向するものと言えるだろう。

 ウォルシュは、富の集中が、現行のルールでは永続性を持つことの問題も指摘する。
 「第二十三章 市民の遺産」から。

政治経済学者ピーター・バーンズによると、アメリカ人が手にする所得の三分の一は利子や配当、キャピタルゲイン、相続財産が占めている。そしてその大部分が上位1%に集中している。他方、遺産税は夫婦の遺産が1068万ドルを超えない限りは課税されず、法律の中には、抜け目のない遺産相続専門の弁護士がさらなる遺残を信託ファンドに隠しておく余地が十分にある。また、住宅、株式、債券、宝石、絵画、骨董品、土地など、一生の間に価値が上がる試算は、相続人が含み益に対してキャピタルゲイン税を払うことなく相続されていく。相続人は自分の一生の間にそうした資産から収入を得て、さらに次の世代の相続人に資産を引き継ぐ。この間、誰もキャピタルゲイン税を払うことはないのだ。

 知的財産の早期のパブリック・ドメイン化などのルールの変更、それを実現するためにも中間層が拮抗勢力となって復活することが求められている。

 トランプ大統領を生んだ大きな要因の一つは、ウォルシュがデータや法律の実態で明らかにする格差社会を生み出す構造的な問題だ。

 しかし、彼がその問題を真剣に解決しようとしない場合、ラストベルトを中心とする貧しい人々は、期待が大きかっただけ、その反作用が大きくなるだろう。

 トランプも確実に富裕層の代表なのである。

 安倍晋三と自らが所有するゴルフ場で遊んでいる様子をツィッターで見る人々は、いったい何を思っているのか、そういった国民の視点に立てるどうかが、今後のアメリカ政権の課題だろう。

 彼のツイッターによる発言は、首尾一貫性を欠いている。
 飽きっぽい性格が反映していると察する。
 いつ、「辞~めた」と言い出しかねないのではなかろうか。

 今のアメリカの病理を根治しようと思うのなら、もっと腹を据えてかからねばならないはずだ。

 大企業やウォール街からの圧力に、トランプは勝てるのかどうか。
 ツイッターで呟くくらいでは、なかなか勝てそうな相手ではないのだ。

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by koubeinokogoto | 2017-02-13 12:47 | 市場原理主義、新自由主義に反対! | Comments(0)

人間らしく生きることを阻害するものに反対します。


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