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幸兵衛の小言

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20ミリシーベルト基準撤回への議論を再燃させよう!

 あれから6年が経とうとしている。

 問題が風化しつつあることの象徴が「年間20ミリシーベルト以下なら安全」という新たな「神話」づくりだろう。

 国の避難区域の設定は、次のようになっている。
 (1)50ミリシーベルトを超え、自由に立ち入りできない「帰還困難(きかんこんなん)区域」
 (2)20ミリシーベルト超50ミリシーベルト以下で、日中の出入りは自由にできるが宿泊はできない「居住制限区域」
 (3)20ミリシーベルト以下だがインフラの未整備などの理由で宿泊ができない「避難指示解除準備区域」

 (3)は、裏返すとインフラが整えば避難解除する、ということになる。
 そして、国はそのインフラ整備を、地元に押し付けようとしている。

 こんな出鱈目な基準を元に、もう戻れると国が言ったところで、危険性や生活基盤を考え、旧ふるさとへ帰るかどうか決めるのは、一人一人の人間であるべきだ。

 そんなまだ危険な場所に戻ることを強制するようなことを言っている主長がいる。
 楢葉町の町長だ。
 河北新報から引用する。
河北新報の該当記事

<避難解除>帰町しない職員 昇格させない
河北新報 3/7(火) 11:19配信


 東京電力福島第1原発事故に伴う避難指示が2015年9月に解除され、今春を「帰町目標」に掲げる福島県楢葉町の松本幸英町長が、町職員への対応で「帰町しない場合、昇格・昇給させないようにしたい」との趣旨の発言をしていたことが6日、分かった。
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 町議会一般質問で松本清恵議員が「町民から(発言への)問い合わせがあった。職員も避難者。行き過ぎではないか」と指摘。松本町長は「オフィシャルな席で、ある意味、伝わるように話をした」と認めた。

 同議員によると、発言があったのは2月の町長の私的新年会。別の議員らによると、昨秋の庁議などでも同様の考えを示し、「辞めてもらっても構わない」とも話しているという。

 松本町長は答弁で(1)環境がある程度整い、帰町目標を掲げた(2)昨年11月の地震の際、職員がすぐに集まれなかった(3)町民から職員が戻っていないとの声がある-などと説明。「守るべき責任の重さがある。やり過ぎとの声はあろうと思うが、基本的考え方として行政執行に当たっている」と強調した。

 人事への影響について大和田賢司副町長は取材に「町に住まないと支障が出る職場もあり配置で考慮することもあり得るが、昇格も含め人事は適材適所で判断する」と説明した。

 町によると、本庁舎の職員約100人のうち帰町者は35人で、今月末には43人に増える見込み。町は職員が業務外扱いで、輪番で町内に宿泊している態勢を終えたい考えを示した。

 自治労県本部は「職員が町内に居住しないことが公共の福祉に反していると言えず、居住の自由は認められる。居住地を人事の評価対象にするのは問題がある」と指摘した。

 とんでもない町長だ。

 国が避難解除の基準としているのは、国際放射線防護委員会(ICRP)が、原発事故からの復旧期には年1〜20ミリシーベルトを「許容範囲」としていることに頼っている。
 これは、とんでもないことだ。
 1ミリシーベルトより少ない被曝量でさえ、内部被曝には危険性がある。

 2011年5月28日の記事は、これまで何度か引用してきた本『内部被曝の脅威-原爆から劣化ウラン弾まで』を元に書いたものだが、久しぶりにその内容を再度紹介したい。
2011年5月28日のブログ

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肥田舜太郎・鎌仲ひとみ著『内部被曝の脅威-原爆から劣化ウラン弾まで』
 
 20ミリどころか、1ミリシーベルトでも安全とは言えず、正解に近い答えは、「内部被曝は、ごく低線量の放射線でも危険性はある。放射能は浴びないにこしたことはない」ということになるのである。

 まるで、20ミリシーベルトが国民のコンセンサスも得ているようなメディアの論調だが、とんでもないことである。

 ちくま新書から2005年6月に初版が発行された本書は、ヒロシマで自らも軍医としてその日を迎え、その後、数多くの内部被曝患者の診療を経験した肥田舜太郎さんと、湾岸戦争で使用された劣化ウラン弾の内部被曝によるイラクの人々の被害を明らかにしたドキュメンタリー映画「ヒバクシャ」を制作した鎌仲ひとみさんの共著。内部被曝に関して数々の有益な情報を提供してくれる。「第4章 被ばくは私たちに何をもたらすか」からの引用。

 人類史上、最大の人体実験ともいわれる広島・長崎への原爆投下があっても、内部被曝そのものに関しては長い間、言及されることはなかった。近年、ようやく内部被曝の存在が注目され、国際放射線防護委員会(ICRP)の見解とヨーロッパの科学者グループ、欧州放射線リスク委員会(ECRR)が出した見解がはっきりと二つに分かれるようになった。前者は内部被曝も体外被曝と同様に許容量を定め、後者は内部被曝の許容量をゼロ以外は安全ではないとしている。
 たとえば、たった一粒のプルトニウムが体内に入った場合、ECRRは体内で放出されるアルファ放射線がその人間に癌を発症させる可能性は十分にある、というのだ。ちなみに、この一粒はたばこの煙の粒子の20分の1の大きさしかない。
 ヨーロッパの科学者グループであるECRRが2003年に公表した報告によると、1945年から89年までに放射線被ばくで亡くなった人の数は6160万人になる。ICRPのこれまでの計算では117万人ということになっている。ECRRは現行の国際放射線防護委員会が設定する一般人の許容限度、1ミリシーベルト/年を0,1ミリシーベルト/年以下に、労働者の限度も50ミリシーベルト/年から0.5ミリシーベルト/年に引き下げるべきだと主張している。もし、これが実現すれば、原発の労働者だけでも100倍の人員が必要になる計算だ。これによって増加する人件費が原子力産業にとって経済的に見合わないことは明白だろう。
 だからこそ、ICRPは「合理的に達成できる限り低く保つ」と許容限度を勧告しているのだ。


 “6160万人 対 117万人”の差は、あまりにも大きい。

 ECRRとICRPと、どちらの主張を信じるかは人それぞれだろうが、もちろん私はECRRに軍配を上げる。

 3.11以降、市民や企業で、子どもから放射能を守ろうとして地道に活動を続けている組織がある。
 その中の一つが「ほうきネット」だ。
 サイトから、引用する。
ほうきネットについて

放射能から子どもを守る企業と市民のネットワーク(通称:ほうきネット)は、原発事故で放出された放射性物質による被ばくから子どもたちや若い世代の健康を守ること及び放射能から子どもを守るために脱原発に取り組むことに賛同・協力する企業と市民のネットワークです。

【活動内容】

1.医療支援と被ばく軽減の支援

●検診の拡充
・福島県外の放射能汚染地(年1ミリシーベルト以上の汚染地)でも、事故当時19歳以上の人も、甲状腺検査の実施。
・移動検診のためのポータブルエコー(超音波診断装置)の購入。検診を受けやすいように医師がエコーを持って動きます。

●被ばくを減らす活動
・保養の拡充(現在、夏休みや春休みに全国で行われている取り組みですが、多くの団体が資金不足に苦しんでいます)
・子ども留学・疎開(家族みんなで避難はできない、子どもだけでも避難させたい方を対象に) まつもと子ども留学など。
・移住のサポート(移住を希望される方のサポート)。

●子どもたちを放射能から守るために重要な情報の収集と発信

・マスコミの問題でもありますが、重要な情報が一般に知られていないことが多いので、メディアの役割も担っていきます。

・独立系メディアの支援。

2.企業と市民のネットワークで基金を創設

上記活動が拡充していくために多額の資金が必要です。少しでも多くの企業や市民の方々が参加する基金の創設を目指していきます。

その他、必要な支援を行っていきます。

 その「ほうきネット」では、福島における、今もそこにある被害について報告している。

 「ほうきネット」の該当ページ


 この記事でも紹介されている内容で、国連人権理事会で健康問題を担当する弁護士のアナンド・グローバーの指摘を掲載した毎日新聞の記事を引用する。

 報告書は、県民健康管理調査で子供の甲状腺検査以外に内部被ばく検査をしていない点を問題視。白血病などの発症も想定して尿検査や血液検査を実施するよう求めた。甲状腺検査についても、画像データやリポートを保護者に渡さず、煩雑な情報開示請求を要求している現状を改めるよう求めている。また、一般住民の被ばく基準について、現在の法令が定める年間1ミリシーベルトの限度を守り、それ以上の被ばくをする可能性がある地域では住民の健康調査をするよう政府に要求。国が年間20ミリシーベルトを避難基準としている点に触れ、「人権に基づき1ミリシーベルト以下に抑えるべきだ」と指摘した。


 本来この20ミリシーベルト基準を問題にすべきなのだ。

 チェルノブイリ事故から五年後1991年に、ソ連(正確にはロシア・ウクライナ・ベラルーシ)で設定された避難基準には2段階あって、一つは公衆被曝の1mSv/年を超えると「移住権利」が発生する。もう一つ5mSv/年を超える場合、「移住義務」になる。

 20ミリシーベルトで安全、などという基準は、チェルノブイリから何も学んでいない、ということだ。

 南相馬では、この基準を撤回すべく訴訟を起こしている人々がいる。
「南相馬・避難20ミリシーベルト基準撤回訴訟支援の会」のサイト

 六年の月日の中で風化しつつある20ミリシーベルトの問題は、もっともっと論議されて然るべきだ。

 あれから六年経っても、福島原発事故から日本は復興などしていないし、事態は決して好転していない。

 国家や市町村が、内部被曝の危険性のある場所に人々を戻そうとしている。

 とんでもない暴挙だ。



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by koubeinokogoto | 2017-03-07 21:31 | 原発はいらない | Comments(0)

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