幸兵衛の小言

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2017年 02月 06日 ( 1 )


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ロバート・B・ライシュ著『最後の資本主義』
 ロバート・B・ライシュの『最後の資本主義』からの二回目。

 ヒラリー・クリントンが大統領選で敗れたのは、彼女がウォール街の金持ちの仲間とみられてきたことが要因の一つだろう。

 富の二極分化の事例として、本書「第十二章 ウォール街の高額報酬のカラクリ」から引用する。
 ウォール街の金融機関で働く人々が、2013年に267億ドルもの賞与を得ることができたのは、彼らが他の大多数のアメリカ人よりも一生懸命働いたわけでも、彼らが優秀だったからとか洞察力があったからというわけでもない。彼らが賞与をもらうことができたのは、たまたま米国の政財界において特権的な立場にある企業で働いていたからだ。

この年、ヘッジファンド・マネージャーの所得番付上位25人の報酬は平均で10億ドル。大手ヘッジファンドのごく普通のポートフォリオ・マネージャーでさえ平均220万ドル。

 なぜ、大多数のアメリカ人が、所得減少のなかで、いわゆるワーキング・プア化しているのに、生産性のない、株の売買のみで利益を得るウォール街の人間が、こんな高額な富を得ることができるのか。
 経済学者エリック・フォルケンスタインは「ポートフォリオ・マネージャーは一番よい価格を知っている。部外者はそれを知らない。それだからこそ彼らは高い報酬を得ているのである。流動性にある市場と流動性に乏しい証券(例えば、不動産担保証券)の世界では、実際にどの程度のお金が手元に残っているのか正確にはわからない。だが、個人のレベルで、眼前にニンジンがぶら下げられればみな自らの利益のために行動するのである」と述べた。

 まさに、「インサイダー」なのである。
 では、なぜインサイダー取引が許されているのか。
 アンソニー・チアソン(彼はSACキャピタルの元社員)の弁護士が2014年、チアソンが別のインサイダー取引で起訴されたとき(控訴裁判所は一審の有罪判決を覆して無罪とすることに同意した)に主張したように、ウォール街では極秘情報は「法貨」であるというなら、SACの行為が特段異常というわけではない。
 ヘッジファンド・ビジネスの下で大量の資金が流動していること、そこに極秘情報があること、そしてそれらの情報を活用した取引で莫大な利益がもたらされていることから、この業界はすべてとは言わないが、極秘情報を前提にしているとみなしても過言ではないだろう。
ヘッジファンド・マネージャーはこのような法貨を容易に入手し、それを堂々と現金に換えることが可能な立場にある。
彼らの巨額の報酬は、異なる二種類の大金を反映することになる。
一つは、投資家がだまされないことを願って払う合法的な賄賂、もう一つは極秘情報を利用した取引を通して投資家からもらう非合法な(百歩譲って法的に問題のある)手数料だ。
彼らはまた、これまで述べたように、他の人々には使えない税制の抜け穴も活用できる。ヘッジファンド・マネージャーやプライベート・エクイティ投資のマネージャーは自らの所得を、通常の所得税よりも税率が低いキャピタルゲイン課税を使って納税できる。

 現在のアメリカで、インサイダー取引による法律や規制は、政治、経済において影響力を持つウォール街人脈たちにより、自分たちに有利な方向にねじ曲がられている。

 国民は、こういったウォール街にごく近い人物としてヒラリー・クリントンをみなしている。

 いわば二極化した富の象徴なのだ。

 では、トランプは金持ちじゃないのか・・・・・・。

 彼は、ある意味でアメリカン・ドリームの象徴でもあり、少なくとも“実業家”として受け入れる有権者が多かった、ということだろう。


 政治的、経済的支配力を持ち、何ら汗をかかずに巨額の富を得るウォール街と蜜月関係にあるヒラリーは、ラストベルトの人々に象徴される、職を失ったり薄給によって日々の生活もままならない大多数の国民の支持を得ることはできなかった。

 トランプ大統領が誕生した背景には、二人の候補者の比較において、「ウォール街とつながっているヒラリーでは、何も変わらない」という思いが、叩き上げ実業家という像を持つトランプへの支持の力となったということだろう。

 ライシュは、大企業や金融業界により、所得と富の「事前配分」を是正しない限り、アメリカの明日はない、と主張する。

 トランプの政策は、果たしてこの事前配分をなくしていけるのか・・・・・・。

 イスラム七か国からの入国禁止、メキシコ国境へ壁の構築などは、彼が世界の反応を見るための“ブラフ”かもしれない。

 もしそうなら、それはポーカーでのそれより、あまりにも人騒がせすぎる。

 すべからく“大統領令”で物事を進めようとする姿は、まさに独裁者ではないのか。

 米国の不幸は、これから本格的に始まろうとしているのかもしれないが、そんな人間のご機嫌をとるリーダーは、我々の国にいることも、これまら不幸だ。

 しかし、希望を捨てては、辺野古の人々に申し訳ない。

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by koubeinokogoto | 2017-02-06 21:36 | 市場原理主義、新自由主義に反対! | Comments(0)

人間らしく生きることを阻害するものに反対します。


by 小言幸兵衛