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カテゴリ:TPP反対( 14 )

 TPP交渉に関する「黒塗り」資料提示、という国民を侮辱する行為に、なぜ大手メディアが抗議しないのか。
 その理由、背景を日刊ゲンダイの記事から引用。
日刊ゲンダイの該当記事

西川TPP暴露本 新聞&テレビが“黒塗り”を批判しないワケ
2016年4月12日

 衆院TPP特別委員会の西川公也委員長が出版する予定だった“暴露本”「TPPの真実―壮大な協定をまとめあげた男たち」をめぐる与野党の攻防は一向に収まる気配がない。

 野党は「適切な情報開示をしろ!」と追及しているが、自民党は「条約に関するものであれば、TPPに限らず、交渉過程の資料はどのようなものでも“黒塗り”のものを出す」(小野寺五典政調会長代理)などとすっとぼけ続けている。ところが大新聞・テレビから舌鋒鋭い批判の声は聞こえてこない。

「そりゃそうでしょう。西川氏のTPP本には、夜な夜な記者たちと“懇親会”を開いていたという一節まで出てきますからね」と話すのは、西川本のゲラに目を通したというある野党議員だ。

 何でも、こんなことが書かれているらしい。

 西川氏らはTPP交渉に初参加して以来、自民党派遣団の滞在ホテルに自民党やTPP担当の番記者たち数十人を集め、連日連夜9~11時まで大宴会。参加者それぞれが酒を持ち寄り、記者は大半が免税店で買ってきたウイスキー。議員が持参した沖縄の泡盛は大変な人気だったとか、ゲーム形式の質問タイムを設け、議員の司会が上手だったから記者懇は大いに盛り上がったなんてことまで記されているという。

 「そこには、ニュースのニュアンスは記者のさじ加減で変わるといった内容の一文も出てきます。記者懇の目的は、推して知るべしでしょう。さらに西川本には、赤坂の居酒屋で記者たちと仲良く撮った写真まで載っている。その一方で、TPP反対運動の中核的な役割を果たしていた日本農業新聞については、社長の実名まで挙げ、厳しすぎるときもあるなどと暗に批判しています」(前出の野党議員)

 これじゃあ懇親会じゃなくて接待、西川氏らと番記者が“ズブズブの仲”だと勘繰られても仕方があるまい。元NHK政治部記者で評論家の川崎泰資氏はこう憤る。

「勘繰りどころか、そのものズバリでしょう。西川氏本人も政府・与党もきちんと答えていない。野党が審議拒否したのは当然だと批判してしかるべきなのに、大マスコミは自分たちが安倍政権に取り込まれていることがバレるのを恐れて、肩を持っているだけです」

 ダメだ、こりゃ。

 まったく「ダメだ、こりゃ」なのである。

 アメリカでは、TPP交渉の情報がどうなっているか調べたら、Exciteニュースに週プレnewsにある、こんな記事が載っていた。
Exciteニュースの該当記事

極秘のはずのTPP交渉内容が米議員に全面公開! 日本はまた「不平等条約」に泣くのか
週プレNews 2015年4月20日 06時00分 (2015年5月17日 06時03分 更新)

交渉に参加している国12ヵ国に課された「厳しい守秘義務」によって、具体的な中身は一切明らかにされないまま水面下で交渉が続くTPP(環太平洋パートナーシップ)協定。

メディアはもちろん、その内容に直接関連する業界団体関係者や各国の国会議員にすら「極秘」なのだが、ところが今アメリカでは国会議員に対してTPP交渉の内容が全面的に開示され、議員なら誰でも文書を閲覧できるようになっているという。

「極秘」とされているはずの交渉内容が、なぜアメリカの議員にだけ「全面開示」で、日本の議員には公開されないのか? そのウラ事情を探った。

■交渉内容を開示してオバマが得たいもの

3月18日、アメリカ通商代表部(以下、USTR)のマイケル・フロマン代表がTPPの交渉内容を自国の国会議員に対して全面開示する方針を明らかにした。

USTRのホームページによれば、アメリカの国会議員は交渉に関するすべての文書はもちろん、今後アメリカが提案する内容についてもチェックできるようになるのだという。

これまで「秘密交渉」が原則といわれていたTPP。なぜ、アメリカは議会への情報開示に踏み切ったのか?

「USTRの狙いは、議会が貿易交渉の権限を大統領に委ねるTPA(大統領貿易促進権限)の取得です。情報開示に踏み切り、議会からTPAの同意を得たいのです。TPP早期妥結を図りたいアメリカ政府がそれだけ追い詰められているともいえます」

そう語るのはTPP交渉をウオッチし続けているアジア太平洋資料センター(PARC)の内田聖子(しょうこ)事務局長だ。

「アメリカの議員はこれまで自分に関係のある分野に限定して、交渉内容の要約を見ることしか許されませんでした。それもUSTRの部屋に招き入れられ、持ち出し禁止の条件をつけられていました。

それでも、何も知らされていない日本の国会議員に比べればマシだったわけですが、今回はアメリカの全議員がTPP交渉に関する文書を全面的に閲覧できるというのですから私も驚きました。

TPP交渉は今、オバマ大統領が議会からTPAを取得できていないために暗礁に乗り上げています。秘密交渉に不満を持つ議会に対して情報を開示し、TPA取得のための突破口にしたいというのがUSTRの本音でしょう」(内田氏)

 TPPを締結したいがために、議員への情報公開を行うアメリカ政府。

 その逆に、TPPに関連するものなら、すべからく「黒塗り」しようとする、日本政府。

 そして、この問題について、何らジャーナリスティックな対応ができない、牙を抜かれた新聞記者たち。

 「記者クラブ」の閉鎖性による問題や、番記者と担当官庁や大臣などとの“ズブズブの仲”である実態への批判は今さらながらだが、一向に改善される兆しはない。

 西川TPP暴露本は、出版元の中央公論によると、現在発行未定状態にあるらしいが、それを一番喜んでいるには、もしかすると、接待づけにされた番記者たちかもしれない。

 野党関係者は、元々「出版」という「公開」を行おうとしていた西川の本の内容を、なんとか手に入れ、政府の事前交渉の内容など、国民を欺く行為を糾弾して欲しいものだ。
 大手新聞は、アメリカのTPP情報の議員への公開という事実ですら、伝えようとしない。
 
 まったく、ダメだ、こりゃ!


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 大手メディアがそろって、TPP交渉妥結に好意的な記事を掲げている。
 
 こういう時には、政府に忖度などしない貴重なメディアとなった日刊ゲンダイの記事を紹介しよう。

 10月19日付けの記事から引用。
日刊ゲンダイの該当記事

TPP交渉に首藤信彦氏「日本はイカサマ麻雀にハメられた」
2015年10月19日

米、カナダ、メキシコはグル

 4日間も延長し、「大筋合意」したとされるTPP交渉。安倍首相は「国家百年の計」「国益にかなう最善の結果を得た」と悦に入り、大マスコミは〈巨大経済圏の誕生〉〈参加12カ国の経済活性化〉と手放しでホメちぎっているが、真に受けたらダメだ。衆院議員時代からTPPの危険性を指摘し、米アトランタで開かれた閣僚会合をウオッチした反対派の急先鋒、TPP阻止国民会議事務局長の首藤信彦氏は、「安倍政権はTPPの罠に見事に引っかかり、タヌキの葉っぱを買わされた」と断じる。

――甘利TPP担当相が行司役として「大筋合意」をまとめたと伝えられています。

 甘利大臣は行司すらやってませんし、日本は交渉なんかしていません。他国は2国間協議で丁々発止やりあっているのに、日本は蚊帳の外だった。日本の交渉団メンバーは所在なさげに街中をぷらついたり、近くのホテルでコーヒーを飲んで時間を潰すありさまだったんです。アトランタ会合は猿芝居、つまりヤラセだった。開催前から内閣府が自民党議員や農業関係団体などに「必ず決めますから、ぜひ現地入りしてください」と触れ回っていたんです。おかしな話でしょう。自動車の原産地規制をはじめ、新薬のデータ保護期間や農産品など、問題は山積みなのに。前回のハワイ会合から2カ月足らず、たった2日間でまとまるなんて考えられない。「大筋合意らしきモノ」をつくりたかった日本の強い働きかけで形式的に集まっただけだったんです。

――アトランタ会合前に話はついていたということですか。

 要するに“シャンシャン総会”だったんです。閣僚会見後に行われた渋谷内閣審議官によるブリーフィングで、内閣府と農水省が大量のペーパー資料を配布したことでも分かるように、東京でお膳立てしてあったんです。来夏の参院選での争点化を避けたい安倍政権は、一刻も早く「大筋合意」という形をつくって予算をバラまき、批判の矛先をそらそうと焦っていた。それで、7月に開催された前回のハワイ会合ですべてのカードを切って決着させようとしたんです。ところが、思わぬ誤算が生じた。乳製品の輸出拡大を狙うニュージーランドと自動車の原産地規制にこだわったメキシコです。日本から見れば、最後の瞬間に会合をブチ壊され、米国はそれを止めようともしなかった。結果、ハワイは見送り。9月21~22日にサンフランシスコで日本、米国、カナダ、メキシコの4カ国が自動車をめぐって協議した。パニクった日本が折れて、部品の域内調達率を45%程度とすることになったのです。

 甘利大臣は、大筋合意をフライングして発表しようとしていたが、それも“デキレース”であり、“シャンシャン総会”だったからだ。

 まだ、アメリカは立法府の議会が機能しているので、TPPが発効しない可能性もある。その点についても、次のように首藤信彦は語っている。
過去にも、国連の前身の国際連盟や40年代のITO(国際貿易機構)など、主導した米国が議会に拒否されて参加しなかった例はいくつもある。米国はTPPにこだわる必要がありませんから、発効しない可能性が高いとみています。しかし、日本は日米並行協議を背負わされてしまった。全産業がリスクにさらされ、国のあり方そのものが変容する危機に直面しているのです。

 ゲンダイの記事はもっと長いので、ご参照のほどを。

 国のあり方そのものが変容する危機に直面している、という指摘には、まったく同感だ。

 マスコミ報道が、その本質的な問題を避けていることに対して、『わたくしは日本国憲法です。』の著者鈴木篤弁護士がブログで明確に指摘している。
 一部引用する。
「弁護士鈴木篤のつれづれ語り」の該当記事

なぜ「私たち消費者」なのか?ー消費者主義の落とし穴

TPPの合意成立を受けてのマスコミの報道のほとんどは、「TPPが成立したら、『私たち消費者』の生活にどういう影響があるか」という切り口の報道となっている。だが、ちょっと待ってくれ。TPPで問題となっているのは、各国の関税であり、TPPは、その関税を基本的には撤廃させようとするもののはずだ。
だからTPPはアメリカを中心に進められてきたグローバリゼーションを更に大きく進め、巨大資本が、世界中どこでも自由きままに振る舞えるようにすることを目的とするものだという指摘がされていることは、御存知のことと思う。ここでは、そのことについては、論じることを控える。
関税は、それによって、農業・漁業はもちろん、鉱工業や製造業などの産業を守り、それぞれの国の経済の自立性を守るために設定されるのが本旨である。
従って、TPPの合意による影響を報じるなら、何よりもまず、農業、漁業、鉱工業、製造業などの国内産業にとって、これがどういう意味を持つのか、食糧自給率は更に悪化するのか、それとも改善するのか、国内産業は、しっかりした土台の上に成り立つようになっていくのか、それとも自立経済はますます危うくなってしまうのか、こうしたことを、この国を支えている「生産者」の視点にたって議論し、報じることこそ求められているはずである。

 メリットvsデメリット論で語る問題ではない、ということだ。

 その議論の大半は、「消費者」にとって、という但し書きがつくものだから。

 「生産者」の視点や国の食の安全をいかに守るかという考え方、製造業の長期的かつ継続的な発展という視野での議論が求められる。

 輸入品が少しくらい安くなることで、この国の基盤が揺らぐことを看過するわけにはいかない。
 
 

 
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 甘利や安倍は、まるでTPP交渉が上手くいった、と嘯いているが、とんでもない。

 自民党が2012年12月の衆議院選挙の公約(拙ブログ掲載ポスター参照)違反であり、「聖域は守る」とした国会決議違反であり、重要なその内容や意図について明らかにし議論の場を設けようとしないのは、説明責任の放棄だ。

 平成25年の第183回国会4月19日農林水産委員会の決議が衆議院のサイトに掲載されている。
衆議院サイトの該当ページ

 次のことが掲げられている。前段を省いて決議事項部分を引用する。


政府は、これらを踏まえ、TPP協定交渉参加に当たり、左記の事項の実現を図るよう重ねて強く求めるものである。

               記

一 米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物などの農林水産物の重要品目について、引き続き再生産可能となるよう除外又は再協議の対象とすること。十年を超える期間をかけた段階的な関税撤廃も含め認めないこと。

二 残留農薬・食品添加物の基準、遺伝子組換え食品の表示義務、遺伝子組換え種子の規制、輸入原材料の原産地表示、BSEに係る牛肉の輸入措置等において、食の安全・安心及び食料の安定生産を損なわないこと。

三 国内の温暖化対策や木材自給率向上のための森林整備に不可欠な合板、製材の関税に最大限配慮すること。

四 漁業補助金等における国の政策決定権を維持すること。仮に漁業補助金につき規律が設けられるとしても、過剰漁獲を招くものに限定し、漁港整備や所得支援など、持続的漁業の発展や多面的機能の発揮、更には震災復興に必要なものが確保されるようにすること。

五 濫訴防止策等を含まない、国の主権を損なうようなISD条項には合意しないこと。

六 交渉に当たっては、二国間交渉等にも留意しつつ、自然的・地理的条件に制約される農林水産分野の重要五品目などの聖域の確保を最優先し、それが確保できないと判断した場合は、脱退も辞さないものとすること。

七 交渉により収集した情報については、国会に速やかに報告するとともに、国民への十分な情報提供を行い、幅広い国民的議論を行うよう措置すること。

八 交渉を進める中においても、国内農林水産業の構造改革の努力を加速するとともに、交渉の帰趨いかんでは、国内農林水産業、関連産業及び地域経済に及ぼす影響が甚大であることを十分に踏まえて、政府を挙げて対応すること。

 右決議する。

 これらの「決議事項」を忘れてはならない。

 国会無視、閣議決定優先、内閣の横暴、という安倍内閣による民主主義崩壊の一連の流れが、このあたりから始まったのかもしれない。

 この後紹介する北海道新聞の記事によれば、まっさきに取り上げられている「米」に関するアトランタでの合意事項は次のようになっている。 

米国向けに当初年5万トン(13年以降7万トン)、豪州向けに同6000トン(同8400トン)の無税輸入枠を新設。既存の輸入義務の枠内でも米国産の米を追加輸入。

 関税は維持した、と言うのが政府の言い分なのだろが、この「無税輸入枠」っていうのは、非課税で輸入するということで、実態としては完全な国会決議違反ではないか。

 こういった行為を、常識的には“ごまかし”と言う。

 自動車などでの輸出上の便宜や輸入食材が安くなるということと引き換えに、日本の農業は大きな試練を迎えることになる。

 北海道新聞から引用。
北海道新聞の該当記事

生産者「メリットない」「国会決議違反」 道内に懸念の声
10/06 06:15、10/06 08:08 更新

 収穫の秋たけなわの道内を5日、環太平洋連携協定(TPP)交渉の大筋合意という激震が見舞った。コメや小麦、乳製品や牛肉、豚肉など広範な品目で、関税が段階的に引き下げられたり輸入枠が拡大されたりする。今後、外国産の安価な農産物との厳しい競争に直面することが、一気に現実味を帯びてきた。生産者からは「メリットがない」「国会決議違反だ」などと、懸念の声が出た。

 「厳しい結果だ。地域の存続にもかかわる」。旭川市郊外の東旭川町瑞穂地区で水田13ヘクタールを営農する大橋政美さん(58)はこう話す。大橋さんは東旭川農協の稲作協議会長。同農協は自家精米や天然有機肥料で栽培したブランド米を販売し、東京都内にも販路を広げる努力を続けてきたという自負がある。ところが今後は外国産米が大量に流入してくることも予想され「(市場が)値段の安さばかりを求めることにならないか」と危惧する。

 主食用のコメは関税こそ維持される一方、米国とオーストラリアに無関税の特別輸入枠が設定される。空知管内新十津川町で水稲約23ヘクタールを作付けする井向一徳さん(53)も「コメの消費は毎年減って余っており、昨年産の米価暴落で農家は苦しんでいる。今回の交渉結果は輸入を増やして米価を押し下げる可能性があり、政府の姿勢は理解できない」と憤る。

 小麦も、国産小麦との価格差を小さくするために輸入品に掛けているマークアップ(輸入差益)と呼ばれる事実上の関税が削減される。十勝管内音更町で小麦約39ヘクタールを作付けする畑作農家の津島朗さん(54)は「小麦を作っても赤字になるようなら、農家はつくらなくなる。農業が守られないまま大筋合意するのはあってはならない話。農家にはメリットはなく、食の安全も守れない」と、政府の交渉姿勢を批判した。

 「全員が競争原理の中で進んでいけるわけではない。家族主体の経営でも生き残れる道を示してほしい」。搾乳牛120頭などを飼育する根室管内別海町の酪農家兼松真武さん(38)はこう訴える。乳製品は、バターや脱脂粉乳について生乳ベースで当初計6万トン、6年目以降は7万トンとするTPP輸入枠が設定される方向だ。今後は価格下落なども懸念され、兼松さんは「コスト削減はもう限界。どんな対策を取っていけばいいのか」と困惑する。

 毎日からも引用。
毎日新聞の該当記事

TPP大筋合意:「コメ聖域」何だった…農家困惑
2015年10月06日 01時15分(最終更新 10月06日 09時35分)

 安倍晋三首相の交渉参加表明から約2年7カ月。日米など12カ国間で貿易や投資を高い水準で自由化する環太平洋パートナーシップ協定(TPP)が、各国の利害を巡る攻防の末、大筋合意に至った。「輸入品が安くなる」「農家が受ける打撃は大きい」。暮らしに大きく影響する可能性が高い枠組みに、期待と不安、困惑が交錯した。

 「『農産物、特にコメには手をつけない』とした国会決議は何だったのか」。宇都宮市今里町で水稲を12ヘクタール、イチゴを42ヘクタール作付けする手塚安則さん(60)は憤る。全国的に豊作だった昨年は、栃木県産コシヒカリ(1等)の農家に仮払いされる「概算金」(60キロ当たり)は8000円と史上最低。コメ余り状況が続く中、「コメは聖域」と繰り返す地元の自民党議員らに期待を寄せてきたが、「輸入米がこれ以上増えると、さらに価格低下は避けられない」と懸念する。

 秋田市の5ヘクタールで「あきたこまち」と備蓄米を生産する鈴木万喜夫さん(66)も「国内農業を成長分野にするという政府の主張はうそっぱち。国会での批准など手続きはまだ残っている。これからもデモや集会で反対を訴え続けたい」と話す。

 北海道旭川市の米農家、谷口裕次さん(44)も落胆を隠さない。

 国による生産調整(減反)に振り回されながら、父から受け継いだ8.5ヘクタールに加え、他に15ヘクタールを借り、今後も新たに4ヘクタールを追加する予定だ。だが、分散した水田で草刈りや農機を運ぶ手間も増え、産地交付金などの補助金で何とかやり繰りしているのが実態。「規模の拡大にも限界がある」と嘆く。

 アメリカでは、今回の合意内容に対して不満の声が少なくないようだ。
 議会が妥結を認めない可能性もある。

 日本も、国会で論議すべき内容である。
 国民にも内容を、より明白に提示すべきだ。
 交渉のためにアトランタの会議終了までは内容を非開示にしてきたことは分からないではないが、合意内容は明らかにしないと、論議のしようがない。
 もちろん、安倍政権は、論議の遡上に上げたくないのだろうが、そんなことは許されない。

 くどいようだが、国会で論議すべき重要事項だ。

 二年前の衆議院での決議事項にも、次のように明確に記されているじゃないか。
七 交渉により収集した情報については、国会に速やかに報告するとともに、国民への十分な情報提供を行い、幅広い国民的議論を行うよう措置すること。


 野党の衆議院議員は、この証拠を元に、国会での議論を行うよう、強く迫るべきだ。

 メディアも然り、なのだが、新聞の論調は、安倍内閣、自民党への追求の切っ先が、なんとも鈍くなった。
 新たな市場の誕生を歓迎する記事も目立つ。おいおい、なのだ。

 自動車やコンビニを海外に輸出できたり、輸入食材が安くなるメリットの代りに失うものについて、もっと深く掘り下げた記事を見かけないのが、あまりにも残念だし、腹立たしい。

 一部の産業のみ恩恵を受け、国の基本である農産業を今まで以上に疲弊させる行為には、断固反対だ。
 また、ISD条項も、大きな問題である。

 自民党は民主党政権時代の平成24年3月9日付けで、TPPに関する号外(The Fax NEWS)を出している。
 発行は、自由民主党広報本部で、編集責任は広報本部長の甘利明と記載されている。
自民党の2012年3月9日の号外

 その内容を引用する。

TPP交渉参加の判断基準
① 政府が、「聖域なき関税撤廃」を前提にする限り、交渉参加に反対する。
② 自由貿易の理念に反する自動車等の工業製品の数値目標は受け入れない。
③ 国民皆保険制度を守る。
④ 食の安全安心の基準を守る。
⑤ 国の主権を損なうようなISD条項(注)は合意しない。
⑥ 政府調達・金融サービス等は、わが国の特性を踏まえる。
(注)ISD条項…外国政府の差別的な政策により何らかの不利益が生じた場合、投資家(Investor)である当該企業が相手国政府(State)に対し、差別によって受けた損害について賠償を求める(Dispute)権利を与えるための条項。これが濫用されて、政府・地方自治体が定める社会保障・食品安全・環境保護などの法令に対し、訴訟が起こされる懸念があります。
わが党は、政府が11月と同様に二枚舌を使いながら、国民の知らないところで、交渉参加の条件に関する安易な妥協を繰り返さないよう、政府に対して、上記の判断基準に沿うことを強く求めていきます。

 野党の時の「判断基準」は、なかなか結構ではないか。
 しかし、その後の豹変ぶりが、どうなっているのか。

 自民党は民主党に対して「二枚舌」と非難しているが、自分たちは、三枚舌、いや、百枚舌ではないのか。

 忘れてはいけない。
 自民党は、三年前、「TPPに反対」と、今になっては大嘘をついて、この年の12月の衆議院選挙で大勝したのだ。

 注まで付けて危険性を説明しているISD条項も、アトランタでの合意には含まれている。

 なぜ、こんな誤魔化しを許すことができるのか。

 メディア、国会議員、そして国民は、自民党が自ら掲げた主張を元に、アトランタの合意事項を検証すべきだろう。
 そうすれば、TPPには、本来参加できないはずなのだ。

 古い話、として安倍内閣は2012年のことを持ち出されるのを嫌がるだろう。
 しかし、たった三年前のことであり、この嘘まみれの公約を信じて多く農業関係者が自民党の一票を投じただろうし、そのおかげもあっての大勝利があり、現在の政権につながったのである。

 どうも、日本人の良さでもあるとは言え、多くのメディアや国民も、「喉元を過ぎて熱さを忘れている」ように思えてならない。

 特に民主党を含む野党は、三年前のことを、忘れてはならない。

 安倍政権が倒れるまで、拙ブログでは、大嘘のポスターを掲載し続ける。
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TPP交渉のために国家公務員は、血税を湯水のように使っている実態が明らかになった。東京新聞より。
東京新聞の該当記事

TPP旅費3億5000万円 頻繁に会合 妥結見えず膨張
2014年9月10日 07時14分

 環太平洋連携協定(TPP)交渉会合に参加した国家公務員の海外出張旅費が2013年度、少なくとも3億5000万円にのぼったことが、本紙が求めた主要4府省への情報開示で判明した。TPPは、職員を大量派遣する大規模会合が絶え間なく開かれたが、妥結時期は現在でも見通せない状況。総額は大きく膨らむことになる。 (吉田通夫)

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 長期にわたる多国間の経済交渉などで、公務員の出張旅費の状況が明らかになったのは初めて。政府も集計したことはなかった。

 年間三億円を超えたことに対し政府関係者は「頻繁に大規模会合が開かれたことで、従来よりも多額に上った」と説明。交渉団幹部は「従来の交渉に比べ、TPP交渉は派遣人数が圧倒的に多い」と話した。

 情報開示は、交渉団の大半を占める内閣府TPP政府対策本部、外務省、農林水産省、経済産業省の四府省に対して請求。閣僚会合や首席交渉官会合、中間会合などのため、一三年度に出張した職員の旅費について求めた。その結果、日本が初参加した昨年七月の会合から今年三月末までの八カ月間の旅費精算書六百一件が開示された。合計額は航空運賃と宿泊費を中心に計三億五千八百万円だった。一二年に納税者が納めた所得税は一人当たり七十八万円なので、約四百六十人分に当たる。

 多国間交渉は、事務レベルで水面下の交渉を重ね、節目で閣僚などが参加する大規模会合を開くのが一般的だ。しかしTPPは米国の要望で、毎月のように大規模会合を開催。そのたびに日本は、米国に次ぐ規模となる数十人から百人超の交渉団を派遣していた。

 TPPには四府省のほかにも、国土交通省や金融庁なども少人数ながら職員を派遣している。

◆規定超す額 支給認める

 八カ月間で三億五千万円を超えたTPP交渉のための出張旅費。膨らんだ背景には「担当大臣との同行」を理由に、規定の上限を上回る高級ホテルへの宿泊が相次いで認められていたこともある。

 旅費法では、海外出張の際の航空運賃は課長以上がビジネス、大臣や次官、大臣警護官はファーストクラスを利用できる。宿泊費や日当も階級に応じて支給され、大臣の宿泊費は地域によって三万二千二百~一万九千三百円、審議官以上の幹部職員は二万五千七百~一万五千五百円などとなっている。

 しかし上限を上回った場合でも、財務省と協議して認められる「増額調整」という手続きがある。特に「体面上、大臣は高級ホテルに宿泊する」(政府関係者)ため、同行職員も打ち合わせなどの便宜上、同じ高級ホテルに泊まるのが通例だ。このため甘利(あまり)明TPP担当相が出張した会合では、ほとんどが上限を大幅に超過。調整額は三十万円近くになった例もあった。

 また一回の旅費が二百万円を超えたのは四件。最高は今年三月、オランダと米国の二カ国に出張した農水省幹部の二百八十三万円だった。甘利氏の旅費八十四万~百六十三万円を大きく上回った。(東京新聞)


 
 「体面上、大臣は高級ホテルに宿泊する」から、同行職員も打ち合わせなどの便宜上、同じ高級ホテルに泊まるのが通例とのこと。

 もちろん、安全のために相応のホテルに泊まる必要はあるだろうが、体面のために税金の無駄遣いはして欲しくはない。

 大移動をし、税金の無駄遣いをし、国民を不幸にするだけのTPP・・・・・・。


 「TPPから食と暮らし・いのちを守るネットワーク」のサイトに、Q&A形式で、推進派の言い分の欺瞞性に反論するページがある。
TPPから食と暮らし・いのちを守るネットワーク

次の8つのQ&Aがある。

それってホント? クイズに挑戦!

Q1:他国に負けない農業を育てるチャンス?
Q2:韓国のようにFTAを推進しないと、経済成長に乗り遅れる?
Q3:TPP参加で日本の輸出は期待できる?
Q4:米韓FTAによる韓国のデメリットは小さい?
Q5:安い輸入食品が入れば、暮らしが楽になる?
Q6:農業が影響を受けても、主力産業で勝負すればよい?
Q7:海外の最先端医療が受けやすくなるなどメリットは大きい?
Q8:ISD条項で日本が訴えられる心配はない?



 その中から、五つ目をご紹介。
 前半が、推進派の言い分、後半が反論である。実際には、クリックするとページが替わる表示になっているので、↓を管理人が加えた。

Q5 安い輸入食品が入れば、暮らしが楽になる?

低価格な輸入品が入り、食品の価格が下がる のだから消費者のメリットは大きい。

A5 日本の規制・基準が外国に合わせて緩和・撤廃される 可能性があります。

確かにTPPにより安い輸入品の輸入が増え、メリットを感じる消費者もいるでしょう。しかし同時に、日本の規制・基準が外国に合わせて緩和・撤廃される可能性もあります。
 実際、日米両国は、食品安全や動植物の健康に関する分野(SPS)における非関税措置に取り組むことなどを確認しており、 具体的には遺伝子組み換え食品や、BSEリスクが心配される米国産牛肉、ポストハーベスト農薬が使用された農作物の輸入が増えるなど、食の安全への影響が懸念されています。
 自身の健康、子どもたちのことを考えたとき、本当に「安いものが手に入る=私たちの暮らしが良くなる」になるのでしょうか。


 この度のファストフード向け中国産食材の問題よりも、TPPによる食の安全性の危険性は高いと言えるだろう。
 
 同サイトから、他のQ&Aもぜひご覧いただきたい。
 永田町と霞が関からの民族大移動による税金の無駄遣い。それが、国民の生活が豊かになるためならばよいのだが、まったくその逆であることは明白だ。
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自民党も明らかな公約違反であり、民主党政権時代から今に至るまで、なんら戦略性がなく未来への展望が開けないTPP参加交渉が、明日からのシンガポールでの閣僚会合に持ち越された。
東京新聞サイトの該当記事

TPP 日米溝埋まらず 農産品関税協議 結論持ち越し
2014年2月21日 朝刊

 環太平洋連携協定(TPP)交渉で焦点となっている日本の農産品五項目の関税をめぐって東京都内で開かれていた日米協議は二十日、三日間の日程を終えた。しかし、今回の事務レベルでの話し合いでは決着せず、二十二日からシンガポールで始まる閣僚会合に結論を持ち越す見込みとなった。

 五項目のうちコメや「甘味資源作物」の一部は例外扱いにする見通しとなったが、米側は業界団体の要望が強い牛・豚肉を中心に100%に近い品目の関税撤廃を求めているといい、双方の溝は埋まっていない。

 日本の交渉関係筋によると、今回の事務レベル協議に入る前からコメの中の主要品目である精米や、甘味資源作物の主要品目の砂糖などは関税を撤廃しないことで決着のめどが立っていた。焦点は牛肉と豚肉について米国がどのような譲歩案を示すかだったが、米通商代表部(USTR)のカトラー次席代表代行は歩み寄りを見せず、従来通り関税撤廃を求めているという。

 甘利(あまり)明TPP担当相は十五日にUSTRトップのフロマン代表と会談し、関税交渉はUSTRナンバー2のカトラー氏と日本の大江博首席交渉官代理の協議に委ね、互いに譲歩し合うことで合意したと説明。両氏の会談で「互いに(譲歩案の)カードを何枚か切る」と歩み寄りに期待していた。

 日本側は米国の歩み寄りを前提に、牛肉に低い関税率の輸入枠を設けることや、低価格帯の豚肉の関税を引き下げるなどの譲歩案を練ったが、米国が強硬な姿勢を続けているため「一方的な譲歩はしない」(甘利氏)として案は提示していない。


 「一方的な譲歩はしない」と甘利は言うが、彼が百戦錬磨の相手に対して交渉を有利に進めることができるとは、とても思えない。

 甘利は、昨年末、USTRのフロマン代表との会合でも、まったく相手にしてもらえなかった。
朝日新聞サイトの該当記事


TPP最終攻防:1 譲らぬ米、甘利氏誤算
2014年1月15日05時00分

 2013年12月1日昼、ホテルオークラ(東京・虎ノ門)の日本料理店「山里」。米通商代表部(USTR)代表のマイケル・フロマン(51)を待つTPP担当相の甘利明(64)の隣には、店の裏口から忍び入った官房長官の菅義偉と農林水産相の林芳正の姿があった。ふたりの同席はフロマンにも知らせない「サプライズ」だった。

 オバマ大統領のハーバード大時代の同級生で「腹心」としても知られるフロマンは、5時間だけ日本に立ち寄った。シンガポールでの閣僚会合を6日後に控え、目標に掲げた「年内妥結」に向けて「最終決戦」に挑むためだ。

 交渉を年内にまとめようと、甘利とフロマンは10月から何度か電話会談を重ねてきたが、交渉は一向に進まなかった。すべての輸入品の関税をなくすよう要求するフロマンに対し、コメや乳製品など「重要農産物」の関税を残すことが甘利にとっても譲れない一線だからだ。

 平行線が続くうち、甘利と話し合っていても譲歩は引き出せないと考えたのか、フロマンが少し前から菅や林との会談を要求してきた。甘利が菅と林を連れて交渉にのぞんだのは、安倍政権が「一枚岩」だと見せつけるねらいだった。

 「日本は農産物の話ばかりでずるい。今日は自動車を話し合おう」。菅を見ながらフロマンは切り出した。輸入が急増した場合に高い関税に戻すなどの米国の要望に「内諾」を引き出したかったようだ。だが、菅は「TPPの担当は甘利だ」と相手にしなかった。

 「農産物の関税維持を少しも認めないなら(閣僚会合を開く)シンガポールにはもう行かない」。甘利は菅の発言を受けて、強気のカードを切ってみた。だが、結局、フロマンには通じなかった。料理は一品も出ず、コップの水だけで2時間が過ぎた。

 7月から途中参加した日本は、知的財産の分野などで対立する米国とマレーシアやベトナムなど新興国との「調整役」を意欲的に担った。知的財産の中間会合を急きょ、東京で開いたこともある。そこには、日本の唯一の弱みである農産物の関税を認めてほしい、との思惑もあった。

 「妥結の締め切りが近づけば、米国は建前を引っ込める」。汗をかいてきた甘利や交渉幹部らはそんな見通しを持っていた。そうならなかったのは、フロマンの頑固さのせいだけではない。関税を原則ゼロにするTPP交渉に、関税撤廃のための国内調整を進めずに臨んだ「甘さ」もある。


 アメリカは、自民党政権になって不安だったものの、公約破りによる日本の交渉参加を「いらっしゃい、カモさん!」とばかりに待ち構えていたのだ。日本に都合の良い例外ばかり認められるほど、この交渉は甘くはない。その点、日本の大臣は名前の通り、甘い^^

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 これが、一昨年末の衆院選での自民党のポスターである。

 「TPP断固反対」「ブレない」と衆院選の公約としていた自民党政権に対し、昨夏の参院選以降「聖域は守る」という条件のもとに、国会が“ブレる”ことを許したのも事実だ。

 しかし、もはやその「聖域」などなかったことは明白である。琉球新報の社説が光っていた。(太字は管理人)
琉球新報の該当社説

TPP譲歩案 公約破りは国益も損なう
2014年2月21日

 環太平洋連携協定(TPP)交渉をめぐり、日本政府が「聖域」に掲げる農産物の重要5項目のうち、牛・豚肉の関税引き下げなどの譲歩案を検討していることが明らかになった。
 選挙公約で守ると訴えた関税の引き下げは、国民を欺き裏切る行為にほかならない。よもや安倍晋三首相は「聖域なき関税撤廃が前提でないことが明確になった」と交渉参加を決断したことを忘れてはいまい。
 昨年の参院選で自民党は、コメ、麦、牛・豚肉、乳製品、甘味資源作物の5項目や国民皆保険制度を「聖域」に掲げた。衆参両院は5項目を関税撤廃の例外とするよう求める決議を採択。自民党も「聖域の確保を最優先し、それが確保できないと判断した場合は脱退も辞さない」と決議している。
 政府の譲歩案では、牛肉は相手国に有利な輸入枠を日本が設け、枠内に限り通常38・5%の関税を大幅に引き下げる。豚肉は低価格帯の輸入が増えるよう関税の仕組みを改める方向とされる。これに対し、今でさえ輸入物との厳しい価格競争にさらされている農家からは「畜産をやめるしかない」との悲痛の声が上がる。
 交渉妥結を急ぐあまり、自国民に犠牲を強いてまで、米国におもねる理由はどこにもないはずだ。公約破りは日本の国益を損なうと同時に政治不信をも増大させる。安倍政権は公約の重みに今こそ真摯(しんし)に向き合うべきだ。

 TPP問題の本質は、農産物や工業製品の関税撤廃だけではない。医療や雇用、金融サービス、食の安心・安全など影響は国民生活の多岐にわたる。企業が投資先政府を訴えられる「投資家と国家の紛争解決(ISDS)条項」など、国家主権や地方自治の根幹に関わる重大な問題もはらむ。
 しかも、その徹底した秘密主義が懸念や不信感を一層膨らませる。「国のかたちを変える」と形容されるにもかかわらず、交渉参加国は秘密保持契約を結ぶため、具体的な交渉過程や協定の内容について、詳細が一切明らかにされないためだ。国民不在の交渉はあまりに危うい。
 TPPが本当に国益にかなうのであれば、何も隠し立てをする必要はないはずだ。22~25日の閣僚会合については、協議内容を包み隠さずオープンにしてもらいたい。選挙公約を破るくらいなら、交渉から潔く脱退すべきだ。


 自民党の機関紙になった産経が使う言葉だが、これが“正論”というものだ。

 安倍の思惑は、TPPでアメリカに貸しをつくって、日本の憲法改正を認めさせ、原発再稼動→プルトニウム再生産→核の保有、あたりまで幼稚で危険な頭でシナリオを書いていたかもしれない。

 しかし、TPPで大幅な譲歩をし、日本の農業、畜産業、医療などをことごとく弱体化させても、もはやその代償に相当する見返りなど期待できまい。
 すでに、靖国参拝を含む安倍の右傾化は、アメリカが日本を踏み台にして中国市場を利用して自国の産業界の便益と雇用確保につなげるためのリスクになりつつある、と判断されているはずだ。

 中国にとって、アメリカが安倍軍国化政権を容認しているとみなされるかぎり、アメリカとの経済的な交渉のテーブルにはつかないだろう。TPPを拡大したFTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)に中国を参加させようとする広大な計画がTPPの背後にあるとしても、現状の日本とアジア隣国との対立が続く限り、実現性は低い。

 もし、「聖域」を守ることができたにしても、日本のTPP参加はリスクが大きすぎる。その約束さえ守れないようなら、即刻撤退すべきである。
 TPPで関税撤廃を迫られている産業の関係者は、死活問題として成り行きを注目している。自民党の“後出しジャンケン”に負けた野党もだらしないが、これ以上“ブレまくる”政治、ウソばかりの政権にかき回されるのは、うんざりである。
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テレビや新聞などでの“食品偽装”報道ラッシュを横目に、「毒じゃあるまいし、食品偽装ばかりメディアが取り上げていて、喜ぶのは安倍右傾化政権だろう!」と思っていた。

 放射能汚染水やTPP問題の代わりに、メディアは、これでもかとばかり、エビや牛肉のことを取り上げている。

 もちろん、偽装を擁護しようとは思わない。しかし、そのために隠されているニュースもあるということが問題だ。もう、「あのデパートも」とか「あのホテルでも」とか、メディアが長い時間や広い紙面を費やすだけのニュースとしての価値はなかろう。

 NHKを含めテレビ局は政府広報メディアになりつつあるのではなかろうか。土曜のNHKの「週刊ニュース深読み」は、地球温暖化をテーマにしていた時と同様、食品偽装問題をただ煽るだけの番組で、見るに耐えられなくなり途中でテレビを消した。他にもっと国民にとって大事な問題があるだろう・・・・・・。

 そんなことを思っていたら、「特定秘密保護法案」について真っ当な社説を掲載していた東京新聞が、今日はTPPについて、こんな社説を出していた。
「東京新聞」サイトの該当ページ

週のはじめに考える TPPが脅かすもの
2013年11月10日

 TPP(環太平洋連携協定)交渉が大詰めを迎えます。遅れて参加した日本は、事前協議などで米国への譲歩を繰り返しています。これが国益なのか。

 「何が秘密なのかも秘密」−。安倍政権が成立を目指す特定秘密保護法案に国民の不安が高まっていますが、TPPも徹底した秘密主義をとっています。内容が漏れれば、参加十二カ国の妥結に影響がでるからという。守秘義務を四年間も強いる異常さです。

 国民が知らない間に食や農業、医療や保険、教育、雇用、文化まで生活の基盤が根底から変わることが決まっていたら大変です。

◆守れなければ席を立つ
 懸念がなまじ誇張でないのは、交渉参加を認めてもらう段階から繰り返されてきた日本政府の譲歩ぶりからです。

 欧州が輸入禁止している米国産牛肉の安全基準を緩和したり、かんぽ生命ががん保険に参入せず、そればかりか日本全国の郵便局で米保険会社のがん保険販売を請け負ったり、米国の意向を忖度(そんたく)して軽自動車の増税方針を日本側が先回りして示す−。「入り口段階」で、こんな具合でしたから、本交渉では「さらに…」と不安が募るのは当然です。

 すでに与党内からは「聖域」として関税を維持するとしてきた重要五項目(コメ、麦、牛肉・豚肉、乳製品、砂糖など)すべてを守ることはできないとの声が出ている。「守るべき国益を追求する」「守れなければ席を立ってくる」と強弁してきたわけですから、妥結後に「開けてびっくり」の内容となっていることは許されるはずがありません。
 

 本来、国の制度とか政策は、国民の命や健康、暮らしを守り、安全・安心な社会を形成するためにあります。しかし、TPPは関税引き下げなど貿易ルールだけでなく、暮らしを守ってきた制度も対象とし、いわば国のかたちの変更につながりかねません。

◆命か企業利益かの選択
 極端に市場主義が浸透した米国、とりわけ富の拡大を目指す「1%の勢力」にとって、各国の制度は邪魔なものです。そこで米企業や米政府が使うのが「競争条件を対等にせよ」という決まり文句です。いかにも正論に聞こえる「対等な競争条件」を錦の御旗に、邪魔なルールや制度を徹底的に壊すか、都合よく変えさせる。

 「TPPの本質は市場の強奪です。今の流れでは日本が大切にしてきた伝統や支え合い社会が崩壊する。『開国』が『壊国』になる」と東京大学大学院の鈴木宣弘教授(農業経済学)は言います。 

 米国農産物の輸出拡大に日本の厳しい食品安全基準は邪魔、学校給食の地産地消奨励策も参入障壁だから変えさせよう、という具合に。これは、国民の命か企業利益かを選択する問題です。

 ところが安倍晋三首相は「世界で一番、企業が活動しやすい国を目指す」という。規制を緩め、税制を優遇し、外国企業でも思う存分、稼ぎやすいように配慮する。それは米国の狙いとピタリ符合してしまいます。

 「(株)貧困大国アメリカ」(岩波新書)など米国ルポの著作が多いジャーナリストの堤未果さんは、TPPに傾斜する日本に強い危機感を抱いています。中枢同時テロ後に米国で成立した「愛国者法」に似て言論統制法ともいえる特定秘密保護法案や企業利益を最優先するなど「米国をなぞるような政策が進行している」と見ます。

 米国で何が起こっているかといえば、刑務所や自治体、立法府まで企業に買われる。巨大化した多国籍企業は度を越した献金とロビー活動で政治と一体化し、企業寄りの法改正で「障害」を取り除いていく。企業の論理の前には国民の主権すらないがしろにされる社会です。

 堤さんは「もはや企業を無理やり縛ることはできません。米国では遺伝子組み換えの表示義務がないので不可能ですが、日本は組み換えでない食品を選ぶことができるよう(国民主権の)『選択肢』を残す必要がある」と訴えます。

 安倍首相は、TPPについて貿易自由化交渉と同時に重要な「安保防衛上の枠組み」との考えを示しています。米国や豪州などと結束し、中国などをけん制する意味合いなのでしょう。

 しかし、TPPが「仲間」と「仲間外れ」をつくるなら、第二次大戦につながったブロック経済と同じではないか。ガット(関税貿易一般協定)体制以前に「先祖返り」しかねません。

◆国民の幸せこそが国益
 国益を守るといった時、真っ先に考えるべきは、国民の幸せであってほしい。国民生活を大きく変容させかねない米国への配慮よりも、です。首相の考えと、国民の多くが抱く願いとのズレを感じずにはいられません。



 私がTPP反対をテーマに書いた時に紹介した『食の戦争-米国の罠に落ちる日本-』の著者、鈴木宣弘の言葉も引用している。
2013年9月4日のブログ

 食品偽装は、たしかに企業としてモラルを疑われることである。しかし、“新自由主義”の信者である安倍晋三が煽動する競争至上主義、短期的な利益追求が企業にも“モラルより利益”を優先させる風土をつくっていったのではないか。

 あえて言おう。芝エビの代わりバナメイエビを食べても、危険性はない。和牛の代わりに、輸入肉に牛脂を注入した成型肉を食べたって、健康被害はないだろう。

 しかし、放射能汚染水が管理されないことは、日本のみならず地球環境への大きな影響を与える問題である。TPPに参加することで、日本の農業や医療、TPP参加のための犠牲を払わされようとしている自動車といった産業が衰退することは、夥しい数の日本国民の生活を直撃する問題である。

 食品偽装よりも犯罪的とも言える政府の偽装を許すべきではない。福島第一の汚染水が“完全にコントロール”されている、と言ったり、昨年末の選挙の公約として「TPP反対」を訴えながら、今ではさまざなま産業への犠牲を強いてまでTPP参加を目指す安倍政権こそ、“偽装”の最たるものだろう。

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 これが、昨年末の衆院選での自民党のポスターである。現在の状況を考えるに、これは“偽装”どころか、“詐欺”ではないのか。

 もし、少しでもジャーナリズムという言葉が日本に残っているのなら、国家が国民に対して行なっている“偽装”問題を追求することが最優先のはずだ。
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以前にも引用した4月13日付けの日経の記事を再度ご紹介。珍しく画像もJPEG形式でペーストできたので、日米合意をまとめた表も含めて引用。
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日経サイトの該当記事

TPP日米合意 本交渉へ見えた課題
2013/4/13 2:14

 日本の環太平洋経済連携協定(TPP)交渉参加に向けた日米の事前協議がようやく決着した。しかし目立つのはコメなど農産品を守ろうとするあまり、譲歩を重ねた日本の姿だ。TPP交渉と並行して続ける日米交渉では米国が長年訴え続けてきた自動車や保険の市場開放要求が再び突きつけられた。結果次第ではTPP交渉参加への高い代償を払わされることにもなりかねない。

 「農業を守るために自動車のカードを切った。一切の譲歩はしていない」。外務省幹部らは12日午後、自民党幹部にこう説明して回った。日米合意では「農産品など貿易上のセンシティビティ(強い関心事項)が両国にある」と確認。日本は農産品関税、米国は自動車関税を互いに維持できるようにすることで折り合ったという理屈だ。

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「農業を守るために自動車のカードを切った。一切の譲歩はしていない」、と外務省幹部は言っているようだが、自動車における屈辱的ともいえる事前合意も、このままでは決して農業を守る“カード”にはならないだろう。

 日本の自動車業界は、「農業を守る」ために犠牲になってでもTPP参加に賛成なのだろうか・・・・・・。

 「食の安全」についての危惧について、日経の記事も次のように締めている。

 自動車と並んで日米交渉の焦点となる「非関税措置」ではかんぽ生命保険の新商品凍結や「食の安全」に関して日本に食品添加物や残留農薬の認可範囲を広げるように求めている。日本が認める食品添加物は約800種類。米国は3000種類ある。添加物の規制が緩和されれば米国の輸出増につながるとみている。

 食品の安全面からTPP参加に反対する生活協同組合では「一部の農薬では日本の方が米国などより残留基準が厳格なものもあり、海外の低い食品安全基準にあわせることになりかねない」(首都圏の生協関係者)と危惧している。


 太字で強調。
 “日本が認める食品添加物は約800種類。米国は3000種類ある。添加物の規制が緩和されれば米国の輸出増につながる”ことや、生協関係者が指摘する通り、「一部の農薬では日本の方が米国などより残留基準が厳格なものもあり、海外の低い食品安全基準にあわせることになりかねない」ことを考えると、TPPがアメリカによる日本の「食」の侵略であり、「攻撃」であることが明白だ。

 この記事にも、多くの欺瞞が隠されている。「継続協議」や「検討」などの言葉は、実はすでに協議の余地がないものも含まれていそうだ。そもそも日経は一貫してTPP賛成の経団連をバックに控えたメディアである。控えめな内容だが、少しはリスクを書いておこう、という意図があるような印象だ。

 日経の記事が、真実を伝えていないのは、後でアメリカ側の発表内容を見れば明らかになる。

 モンサントなどに金で踊らされているオバマのアメリカは、決して「食」における日本侵略をあきらめない。実は、すでに高い「入場料」を払うことは決まっているはずだ。それにしても、高い「入場料」を払うことになったものだ。

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鈴木宣弘著『食の戦争』
 
 鈴木宣弘著『食の戦争』から、日本が払うことになった「入場料」に関する部分を引用。

 2013年4月12日の日米のTPP事前協議によって、自動車、保険、牛肉などの「その他の非関税障壁」(関税以外の方法で、輸入製品でかける足かせ)についての規制緩和などアメリカの要求する「入場料」にとどまらず、アメリカ議会の90日の承認手続の間に、さらに追加的な譲歩がなければ日本の参加を認めないと脅された。さらには、日本の交渉参加後も、TPP本体の条文とは別に、並行してTPP交渉の終了時までに残る「支払い不足分」、つまり食品添加物や農薬といった食の安全基準を緩和するなどの「非関税障壁の撤廃」についてもアメリカの要求に応じることを明文化して確約させられたのである。



 著者鈴木宣弘の指摘と、日経の記事にある内容に、相当ギャップがある印象を持たれる方は多いだろう。

 それはそうだ。実は事前協議の合意内容について、政府は国民に真っ赤なウソをついている。

 かつて農林水産大臣を務めた山田正彦元衆議院議員の4月15日のブログに、USTR(アメリカ合衆国通商代表部)の発表内容の和訳があるので引用したい。ちなみに山田氏は、この事前協議の合意を「ミズーリ艦上の降伏文書」にたとえている。
「山田正彦ウィークリーブログ」の2013年4月のページ


内閣官房の書簡はたった1ページで抽象的な言葉で終わっていますが、私の親友・首藤信彦氏(外交評論家・前衆議院議員)が徹夜で仮翻訳した文章を送っていただいて、更に驚きました。その内容をこの後に掲載していますので皆さんにも是非、読んでいただきたいと思います。
併せて政府が発表している佐々江賢一郎さんの米国に対する、米国務省への書簡。更に米国通商代表代行マランチェスの日本政府に…対する書簡も添付しますので、是非、比較してお読みください。

以下、首藤信彦氏の仮翻訳文書。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
USTR 2013.4.12
TPPへ向けて:日本との協議事項報告 <仮訳>

アメリカ政府はTPPに参加したいという日本との公式二国間協議を2012年2月に開始しました。これは日本のTPP参加国との協議を始めたいという2011年11月の表明にもとづくものです。
日本との協議は、自動車や保険セクターおよび他の非関税障壁に関する二国間の幅広い関心事をカバーし、TPPが求める高い基準を日本が満たす用意があるかどうかという点に関する議論も含まれています。
今日、アメリカ政府は日本との間に、強固な実施行動のパッケージおよび諸合意が成立したこと、そしてアメリカ政府が一連の協議を成功裏に完結したことを報告申し上げます。

自動車
アメリカ政府は、自動車部門に関する深刻かつ積年の関心事を明確にしました。日本政府はアメリカとの協議において、日本車の輸入関税はTPP交渉の他のいかなる製品に猶予された最長期間よりもさらに遅い時期において段階的に廃止されることに合意した。しかも、この段階的廃止は猶予期間が終了した後にのみ実行されることも日本政府は合意した。さらに、これらの措置は米韓FTAで韓国に認められた関税廃止措置よりもはるかに遅れることも日本政府は合意した。

4月12日に日本政府は、簡易許可手続き(PHP)すなわち日本に輸出される米国車に対してより簡単で時間のかからない認証方法での輸入台数を二倍以上にすることを一方的に決定して通告してきました。最近の例でいえば、車種ごとに年2000台まで認められている簡易輸入手続きを、今度は車種ごとに年5000台までアメリカ自動車メーカーは日本に輸出する際には認められることになります。

アメリカ政府と日本政府は日本の自動車産業分野に存在する広範な非関税障壁(NTM)を、TPP交渉と並行して行われる二国間協議の俎上に載せることを合意しました。そのテーマの中には諸規制の透明性、諸基準、証明書、省エネ・新技術車そして流通などの問題が含まれる。さらに、特定車両に対するセーフガード条項を協議し、係争事例の法的救済として関税再課税(snapback tariffs)などのメカニズムも協議することを日米政府は合意した。協議でどれだけの範囲のイシューを協議するかは添付されたTOR(内閣官房資料3)に書かれている。そしてその協議の結果はTPP交渉におけるアメリカと日本の二国間における最終二国間市場アクセス包括協定における強制的約束として含まれるものである。

保険
近年、アメリカ政府はアメリカの保険会社が日本郵政の保険との関係において、日本の保険市場で平等な基準で取り扱われていないことを強調してきた。今回の協議において、TPP協議へ向けて平行して行われる交渉と同時に、このTPP交渉における平等な取扱いの問題を取り上げることに合意した。さらに、日本政府は、4月12日に一方的に以下のことを通告してきた。その内容は、日本郵政の保険に関しては、民間の保険会社に日本郵政と平等な競争条件が確保され、また日本郵政の保険が適切なビジネス経営(非公営)の下で運営されていると日本政府が決定するまでは、いかなる新規のあるいは修正されたがん保険及び単独の医療保険を許可しない、ということである。

非関税障壁(NTM)
アメリカ政府はアメリカ製品の日本への輸出を妨げている広範な産業分野および産業横断的な非関税障壁に対する懸念を表明してきた。これらの問題がTPP交渉においてはまだ十分に討議されていない以上、それらは二国間で、TPP協議と並行して、討議され、TPP交渉終了までに完結させなければならない。(これに関しては別添fact sheetで問題の実情を含め詳細に説明されている)

日本は高い基準での協定受け入れを表明
我々二国間の協議を通してアメリカ政府は、日本がTPP交渉に参加したいなら、現在の参加国である11か国によってすでに交渉された高い基準での協定を受け入れを保証せよと強く強調してきた。それに対し、また2月22日の共同声明に記載されているとおり、日本政府は、すべての産品を交渉のテーブルに乗せ、そのうえで2011年11月12日にTPP参加国によって表明されたTPP協約に明記された包括的で高い基準の協定を達成するために、交渉に参加することを言明した。

強固な関係の成長
もし日本がTPP交渉に参加するなら、その参加はアメリカの最大の貿易パートナーである国の参加であり、TPP協定の経済力を高める。日本は現在、アメリカの第4位の貿易パートナーである。2012年にアメリカは700億ドルの産品を日本に輸出し、サービス分野は2011年に440億ドルに達した。TPPに日本が参加することは、アジア太平洋地域FTA(FTAAP)への道筋を進めると同時に、競争力のあるアメリカで生産された製品とサービスに対する日本市場のさらなる開放を意味する。そのことは同時にアメリカ国内の雇用を支えるのだ。TPPに日本が参加したことにより、TPP参加国全体では世界のGDPの40%近く、そして世界貿易の三分の一を占めることになるのだ。    
以上
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【駐米日本大使発書簡】



 一方、「官邸」サイトに掲載されている、日本側の発表内容がこれ。
「官邸」サイト掲載の該当PDF

日米協議の合意の概要
平成25 年4 月12 日
内閣官房TPP 政府対策本部

1 日本が他の交渉参加国とともに,「TPP の輪郭」において示された包括的で高い水準の協定を達成していくことを確認するとともに,日米両国が経済成長促進,二国間貿易拡大,及び法の支配を更に強化するため,共に取り組んでいくこととなった。

2 この目的のため,日米間でTPP 交渉と並行して非関税措置に取り組むことを決定。
 対象分野:保険,透明性/貿易円滑化,投資,規格・基準,衛生植物検疫措置1 等

3 また,米国が長期にわたり懸念を継続して表明してきた自動車分野の貿易に関し,
(1)TPP 交渉と並行して自動車貿易に関する交渉を行うことを決定。
   対象事項:透明性,流通,基準,環境対応車/新技術搭載車,財政上の
   インセンティブ 等
(2)TPP の市場アクセス交渉を行う中で,米国の自動車関税がTPP 交渉における最も長い段階的な引下げ期間によって撤廃され,かつ,最大限に後ろ倒しされること,及び,この扱いは米韓FTA における米国の自動車関税の取り扱いを実質的に上回るものとなることを確認。

4 日本には一定の農産品,米国には一定の工業製品といった二国間貿易上のセンシティビティが両国にあることを認識しつつ,TPP におけるルール作り及び市場アクセス交渉において緊密に共に取り組むことで一致。 以上



 違いは一目瞭然だ。

 たとえば「非関税障壁」について、まずUSTR側は、こう書かれている。
非関税障壁(NTM)
アメリカ政府はアメリカ製品の日本への輸出を妨げている広範な産業分野および産業横断的な非関税障壁に対する懸念を表明してきた。これらの問題がTPP交渉においてはまだ十分に討議されていない以上、それらは二国間で、TPP協議と並行して、討議され、TPP交渉終了までに完結させなければならない。(これに関しては別添fact sheetで問題の実情を含め詳細に説明されている)


 日本側の発表内容。
日米間でTPP 交渉と並行して非関税措置に取り組むことを決定。
 対象分野:保険,透明性/貿易円滑化,投資,規格・基準,衛生植物検疫措置1 等


 「保険」の項目についてなど、日本側はほとんどふれていない。

 アメリカは、次のように言っている。

日本は高い基準での協定受け入れを表明
我々二国間の協議を通してアメリカ政府は、日本がTPP交渉に参加したいなら、現在の参加国である11か国によってすでに交渉された高い基準での協定を受け入れを保証せよと強く強調してきた。それに対し、また2月22日の共同声明に記載されているとおり、日本政府は、すべての産品を交渉のテーブルに乗せ、そのうえで2011年11月12日にTPP参加国によって表明されたTPP協約に明記された包括的で高い基準の協定を達成するために、交渉に参加することを言明した。



 まったく違う協議のことを言っているのではないか、と思わせるギャップ。

 事前協議に関するアメリカ(USTR)の言い分が正しいとしたら(たぶん正しいだろう)、日本の政府は、確信犯的に合意内容を隠している。「概要」という言葉に、すでに欺瞞の匂いがプンプンしている。早い話が、これは国民に対する“詐欺”である。ほとんど屈辱的な「入場料」支払いを約束させられているのだ。

TPPにおけるアメリカの布陣は強力だ。『食の戦争』から引用する。

 アメリカのTPPの主席農業交渉官はモンサント社の前ロビイストであるイスラム・シディーク氏であると報じられている(久野秀二京大教授)。そして、そもそも、すでにアメリカからの要求で数々の基準緩和をしてきているのだから、TPPでその傾向に歯止めがかかるわけがなく、むしろ加速して「とどめを刺す」のがTPPだという本質を忘れてはならない。



 TPPという集合住宅のような“建物”は、すでに「入居」する段階で大家でもない住人の一人のアメリカから高い「礼金」「敷金」を取られているようなものだ。そして、すでに入居した住人同士の「自治会会則」が決められた後で日本は入ろうとしている。

 しかし、ブルネイでは「先住」メンバーに対し、既決の会則を日本は変えることはできなかった。 
「東京新聞」サイトの該当記事

 農業問題について言えば、アメリカの一部の企業の利益のために日本人が危険な食品を食べることを、安倍政権と外務省などの官僚が進めようとしている。こんなことが許されていいのか。

 ここは逆転の発想が必要ではないか。
 
 交渉が長引くことは、まだTPP参加撤回のチャンスがあるということだろう。メディアや国民がしっかり「TPP反対」を叫び、「入場料」(「「敷金」「礼金」)支払いも含めてTPP参加を撤回し、本来優先すべきアジア隣人との関係強化にシフトすべきだと思うが・・・マスメディアは何も言わない。
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アメリカの予想通りの行動で、TPP交渉が長引くことになるとメディアはほとんどこの話題を取り上げなくなった。今こそ、TPPの問題点をしっかり伝えるべきなのだが、安倍の尻馬に乗ってフクシマの放射能汚染水問題などを、今になって記事にする体たらく。五輪東京招致のためのプロパガンダでしかない。
 
 汚染水問題は、もっと以前から五輪などと関係なく指摘すべき大問題である。逆に、こんな状況で五輪を招こうとすること自体を、ジャーナリズムというものがまだ日本にあるのなら、問題とすべきではないか。

 さて、TPPに関して、非常に良い書がある。

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鈴木宣弘著『食の戦争』
 TPPに関する書籍は結構出ているが、この本は非常に結構。副題は「米国の罠に落ちる日本」。文春新書から、8月21日初版発行。
 
 著者の鈴木宣弘は、1958年生れで元農林水産省でFTA交渉にも携わってきた方。現在は東大大学院農学国際専攻教授で農業経済学を専門とする。本書の内容は、現在の世界の「食」が、いかにアメリカのエゴによってとんでもない状況になっているかが中心となっている。TPPについても、専門家としてデータの裏付けなども含め明確に問題点をあぶり出している。

TPPの本質—「1%の1%による1%のための」協定
 そもそも、TPPとは何か。
 その前身は、2006年にできたシンガポール、ニュージーランド、ブルネイ、チリによるP4協定であるが、それをアメリカの多国籍企業が「ハイジャック」したという表現がわかりやすいだろう。当初は比較的小さな国々が関税撤廃しルールの統一を図って、経済圏を一国のようにすることで国際的な交渉力を高めようとする意図があった。しかし、アメリカの大企業は、格差社会に抗議するデモが世界的に広がり、規制緩和を徹底して自らの利益を拡大する方法がとりにくくなってきたのを打開するために、時代の流れに逆行し、TPPによって無法ルール地帯を世界に広げることで儲けようと考えた。


 なかなか歯切れが良い。こういった論調は、現在のマスメディアではまったく見ることができない。この後にこう続く。

 ノーベル経済学賞学者ののスティグリッツ教授の言葉を借りれば、TPPとは人口の1%ながらアメリカの富の40%を握る多国籍な巨大企業中心の、「1%の1%による1%のための」協定であり、大多数を不幸にする。
 たとえ99%の人々が損失を被っても、「1%」の人々の富の増加によって総計としての富が増加すれば効率的だという、乱暴な論理である。TPPの条文を見られるのはアメリカでも通商代表部と600社の企業顧問に限られ、国会議員も十分にアクセスできないことが、その実態を如実に物語っている。



 それでは、その「1%」の代表的企業、モンサントについて。

 強力な農薬(除草剤)「ラウンドアップ」を販売するこの会社は、この農薬に耐性のある食物の種子を遺伝子組換え(GM:Genetically Modified organismの略)で作っている。

 要するに、「この種子を使えば、ラウンドアップを使っても、雑草がなくなってもジャガイモやトウモロコシは、しっかり育ちます」という理屈で、農薬と遺伝子組換え種子を世界中で売っている会社だ。

 他にも悪名高い人工甘味料「アスパルテーム」も買収を経て現在はモンサントの製品。量産化に成功した味の素の「パルスイート」も同じ組成の危険な甘味料であることを知っている人は、意外に少ない。マイケル・J・フォックスやヒラリー・クリントンは、アスパルテームの入ったダイエット飲料(「ダイエット○○○」というやつ)を日常的に飲んでいたことが、パーキンソン病や視力低下の原因であるという指摘があることを、子供にファストフードのハンバーガーやダイエット飲料を飲ませている母親は、もっと知るべきだろう。


 今回は、遺伝子組み換えトウモロコシの話題。『食の戦争』でもマウスの写真入りで紹介しているのが、AFPによる次のニュースである。
 よって、このニュースには癌になったマウスの写真が掲載されているので、ご留意ください。
AFP BB Newsサイトの該当記事

GMトウモロコシと発がん性に関連、マウス実験 仏政府が調査要請
2012年09月21日 12:10 発信地:パリ/フランス

【9月21日 AFP】フランス政府は19日、遺伝子組み換え(GM)トウモロコシと発がんの関連性がマウス実験で示されたとして、保健衛生当局に調査を要請した。欧州連合(EU)圏内での遺伝子組み換えトウモロコシ取引が一時的に停止される可能性も出ている。

 農業、エコロジー、保健の各担当大臣らは、フランス食品環境労働衛生安全庁(ANSES)に対して、マウス実験で示された結果について調査するよう要請したと発表した。3大臣は共同声明で「ANSESの見解によっては該当するトウモロコシの欧州への輸入の緊急停止をも含め、人間および動物の健康を守るために必要なあらゆる措置をとるよう、仏政府からEU当局に要請する」と述べた。

 仏ノルマンディー(Normandy)にあるカーン大学(University of Caen)の研究チームが行ったマウス実験の結果、問題があると指摘されたのは米アグリビジネス大手モンサント(Monsanto)製の遺伝子組み換えトウモロコシ「NK603」系統。同社の除草剤「ラウンドアップ」に対する耐性を持たせるために遺伝子が操作されている。

 仏専門誌「Food and Chemical Toxicology(食品と化学毒性の意)」で発表された論文によると、マウス200匹を用いて行われた実験で、トウモロコシ「NK603」を食べる、もしくは除草剤「ラウンドアップ」と接触したマウスのグループに腫瘍を確認した。2年間(通常のマウスの寿命に相当)という期間にわたって行われた実験は今回がはじめてという。

 がんの発生はメスに多く確認された。開始から14か月目、非GMのエサが与えられ、またラウンドアップ非接触のマウス(対照群)では確認されなかったがんの発生が、一方の実験群のメスのマウスでは10~30%で確認された。さらに24か月目では、対照群でのがん発生率は30%にとどまっていたのに対し、実験群のメスでは50~80%と高い発生率となった。また実験群のメスでは早死も多かった。

 一方オスでは、肝臓や皮膚に腫瘍(しゅよう)が発生し、また消化管での異常もみられた。研究を率いた同大のジル・エリック・セラリーニ(Gilles-Eric Seralini)氏は「GM作物と除草剤による健康への長期的な影響が初めて、しかも政府や業界の調査よりも徹底的に調査された。この結果は警戒すべきものだ」と述べている。

 取材に対し、モンサントの仏法人は「このたびの研究結果について現時点ではコメントはできない」と答えた。

 欧州食品安全機関(European Food Safety Agency、EFSA)所属のGM作物に関する委員会は2009年、90日間のマウス実験に基づき、「NK603」は「従来のトウモロコシと同様に安全」との判断を下した。現在、欧州への輸出は可能となっているが、域内での栽培は禁止されている。(c)AFP



 TPPによって、モンサントから多額の選挙資金を得ているオバマに率いられたアメリカは、現在でも十分とは言えない日本の「遺伝子組換え」の表示義務を、「非関税障壁」としてやめるように要求している。

『食の戦争』から引用。

 消費者が不安を持つのはやむを得ないというデータが出ている中で、せめて表示義務を課すことによって、選ぶ権利だけは与えてほしいというのは当然のように思われるが、アメリカはTPP交渉をテコに、遺伝子組換え食品の表示を許さない方針を世界に広げようとしている。



 とんでもないことである。『食の戦争』のことは、今後も紹介したい。

 「ラウンドアップ」に耐性を有する遺伝子組み換え作物は「ラウンドアップレディー (Roundup Ready) 」と称されており、ダイズ、トウモロコシ、ナタネ、ワタ、テンサイ、アルファルファなどが栽培されている。

 私は、この本で紹介されている少女こそが、“レディ”だと思う。

 スイスで小学生ぐらいの女の子が一個80円もする国産の卵を買っていたので、なぜ輸入品よりはるかに高い卵を買うのかと聞いた人がいた。すると、その子は「これを買うことで、農家の皆さんの生活が支えられる。そのおかげで私たちの生活が成り立つのだから当り前でしょ」と、いとも簡単に答えたという(NHKの倉石久壽氏談)。



 このエピソードは、農業問題のみならず、非常に多くの日本の社会問題を想起させる。

 「安い」という言葉に替わって、「安全」「健康」「自然との共生」「動物愛護」などの言葉が生活の基底に流れるようにすることが、実はデフレ脱却で本来目指すものではなかろうか。
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周知のように、TPP参加に向けて日米の事前協議が終わった。この件について、大手新聞の中では、日経が意外と真っ当な指摘をしていた。
日経サイトの該当記事

TPP日米合意 本交渉へ見えた課題
2013/4/13 2:14

 日本の環太平洋経済連携協定(TPP)交渉参加に向けた日米の事前協議がようやく決着した。しかし目立つのはコメなど農産品を守ろうとするあまり、譲歩を重ねた日本の姿だ。TPP交渉と並行して続ける日米交渉では米国が長年訴え続けてきた自動車や保険の市場開放要求が再び突きつけられた。結果次第ではTPP交渉参加への高い代償を払わされることにもなりかねない。

 「農業を守るために自動車のカードを切った。一切の譲歩はしていない」。外務省幹部らは12日午後、自民党幹部にこう説明して回った。日米合意では「農産品など貿易上のセンシティビティ(強い関心事項)が両国にある」と確認。日本は農産品関税、米国は自動車関税を互いに維持できるようにすることで折り合ったという理屈だ。


「農業を守るために自動車のカードを切った。一切の譲歩はしていない」、と外務省幹部は言っているようだが、決して自動車業界のみが“我慢”をするわけではない。
 日経のサイトでは、珍しく画像もJPEG形式でペーストできたので、日米合意をまとめた表もご紹介。

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 私が、この中でもっとも危惧するのは、「食の安全」だ。日経の記事も、次のように締めている。

 自動車と並んで日米交渉の焦点となる「非関税措置」ではかんぽ生命保険の新商品凍結や「食の安全」に関して日本に食品添加物や残留農薬の認可範囲を広げるように求めている。日本が認める食品添加物は約800種類。米国は3000種類ある。添加物の規制が緩和されれば米国の輸出増につながるとみている。

 食品の安全面からTPP参加に反対する生活協同組合では「一部の農薬では日本の方が米国などより残留基準が厳格なものもあり、海外の低い食品安全基準にあわせることになりかねない」(首都圏の生協関係者)と危惧している。



“日本が認める食品添加物は約800種類。米国は3000種類ある。添加物の規制が緩和されれば米国の輸出増につながる”ことと、生協関係者が指摘する通り、「一部の農薬では日本の方が米国などより残留基準が厳格なものもあり、海外の低い食品安全基準にあわせることになりかねない」ことを、十分に注意しないといけないだろう。

 フクシマ以降、放射能汚染による食物不足の日本にとって、アメリカの穀物(グレイン)メジャーや食品会社、そして薬品や農薬会社などが、絶好のチャンスと日本市場を狙っていることが背景にある。

 あらためて書くが、自民党のTPP参加は、明らかに選挙公約破りである。それは、昨年12月の衆院選で農村を含む全国あちこちに貼られたこのポスターが動かぬ証拠だ。

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 “ウソ”をついて“ブレ”た自民党が“耕す”のは、TPP参加で潤うごく少数の日本の新自由主義企業とアメリカの数多くの企業のための日本市場であって、日本の農業従事者や安全な食を求める国民のための土壌ではない。

 今回の日米協議に関して明らかになったことのどこに、日本の農業や製造業を守り、国民の安全な生活を担保する内容が含まれているのだろうか。何ら国家戦略もないまま闇雲にTPP参加を進める安倍自民党と官僚は、当初から危惧した通り、アメリカの手の平で踊らされて国民生活をますます苦しくさせるだけではないのか。
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自民党の昨年12月の衆院選における公約は、今でも党のサイトで確認できる。自民党サイトの2012年12月衆議院選挙の公約ページ
 「外交再生」の中で、

「聖域なき関税撤廃」を前提にする限り、TPP交渉参加に反対します。


 とあったが、その「聖域なき関税撤廃」という前提が消滅したわけではないのに、交渉参加を表明したのは、公約違反である。
 しかし、「アベノミクス」をおだててはしゃぐばかりのマスコミは、この公約違反を批判するどころか、TPPに関しては賛成多数である。

 そういった状況において、日刊ゲンダイは、なかなか頑張っている。TPP参加が誰のためなのか、について真っ当と思われる記事を紹介したい。日刊ゲンダイ Gendai.Netの該当記事

 会見では取ってつけたように「聖域」についても触れた。しかし、「守るべき項目をしっかりと胸に、強い交渉力を持って結果を出したい」と言っただけ。質疑応答で「(聖域の重要5品目の関税を)堅持できない場合、TPP交渉から離脱するのか」と突っ込まれると、「今ここで離脱するかどうかを申し上げるのは国益に反する」とゴマカした。

 最初から交渉参加ありき。それがものの見事に露呈した記者会見だったのである。

 東大大学院教授の鈴木宣弘氏は「民主党の公約破りをあれだけ非難してきたのに、自民党の公約破りは許されるのか。有権者に対する信じがたい背信行為だ」と言ったが、本当だ。
 一事が万事で、安倍や政府が説明するTPPに関する話はことごとくデタラメだ。とにかく、米国に言われたから、TPPに参加する。国益は二の次三の次。そのために、二枚舌を弄して、国民を騙(だま)し続けてきたのが真相だ。

<国民皆保険は揺らぎ、食の安全もなし崩し>

 安倍は会見で「TPPはアジア太平洋の未来の繁栄を約束する枠組みだ」「日本の国益だけでなく世界の繁栄をもたらすものと確信している」とも言った。

 すべてウソッパチである。TPPについては医師会は連日、意見広告を出して反対している。JAは4000人デモ行進で反対した。未来の繁栄を約束するのであれば、なぜ、かくも反対運動が起こるのか。すべてが詭弁(きべん)だからである。前出の鈴木宣弘氏が言う。

「医師会が反対してるのはTPP参加によって、国民皆保険が揺らいでくるからです。米国は長年、日本の医療制度を攻撃し、崩そうとしてきた。国民健康保険があると、米国の保険会社は商売がやりにくいし、日本の薬価制度は米の製薬会社には参入障壁になるからです。企業にとって邪魔なものは排除する。政府が従わなければ、ISD条項で訴える。これがTPPですから、当然、国民皆保険もターゲットになる。TPPは皆保険崩壊を加速させることになるのです。農業についても同じです。米国は乳製品と砂糖を例外品目にしようとしたが、オーストラリア、ニュージーランドの反発で、認められそうにない。聖域なき関税撤廃が前提なのですから、日本の農業の聖域が守られるはずがないのです。米国は日本の厳しい食の安全基準も問題視している。TPPに参加すれば、農業が大打撃を受けて、地域経済、コミュニティーが崩壊するだけでなく、食料自給率は低下し、食の安全基準の緩和も余儀なくされ、国民の健康不安も増大することになります」

 バラ色の未来なんて、とんでもない話なのだ。


 安倍が会見で言った重要部分を太字で再度確認。

「(聖域の重要5品目の関税を)堅持できない場合、TPP交渉から離脱するのか」と突っ込まれると、「今ここで離脱するかどうかを申し上げるのは国益に反する」とゴマカした。


 完全な公約違反である。「重要品目の関税を維持できない場合は、TPP交渉への参加は難しい」と言うことが、なぜ「国益に反する」のか。守るべき産業や食の安全確保などをないがしろにして、容赦のない競争の渦に国民を放り出すことこそ、「国益に反する」のだ。

 先日も書いたが、竹中平蔵という“郵政民営化”における失政の責任者を、「産業競争力会議」という政治の舞台に復帰させ、楽天やローソンなどの「競争至上主義」「新自由主義経済支持」と思しき、アメリカで学び、あの国に好意的と思われる経営者と一緒に、TPP参加へ拍車をかけようとする安倍自民党は、まさに選挙民への裏切り行為を平然と進めているのである。

 しかし、産経のような自民党機関紙は別にしても、他のマスコミには、自民党の変貌に批判しようとしない。こんなメディアは、ないほうが良いだろう。彼らにとってTPPによる実害は想定できないので、まったく当事者意識はないが、同じ日本人でメディアという公器を扱っている者ならば、やるべきこと、書くべきことがあるはずではないか。

 日刊ゲンダイの記事は、なかなか歯切れが良い。

<これから参加する日本に交渉の余地なし>

 安倍や政府は「各国とも聖域はある」「交渉次第だ」みたいな言い方もしているが、これも大ウソだ。

「遅れて交渉に参加したカナダやメキシコは、すでに決まっている条件については口出しできず、今後、決まることについても先に交渉に参加している国の意向が優先されることになっています。そういう念書が交わされたのですが、日本も同じですよ。つい最近、シンガポールで行われた交渉で米国の担当官は『日本は交渉する時間も権利もないんだよ』と言ったといいます。交渉次第で聖域が守られるというのはマヤカシです」(鈴木宣弘氏=前出)

 そうこうしているうちに、事前協議で米国の自動車の関税維持や日本は米国車の安全基準を受け入れること、最低輸入台数の設定、学資保険の内容変更などを求められていることがバクロされた。もちろん、安倍政権はグニャグニャだろう。

 自民党は先の選挙で、自動車など工業製品の数値目標は受け入れない、国民皆保険は守る、食の安全は守る、ISD条項には合意しない、など6項目の公約を掲げた。これらが守れないなら、直ちに交渉から脱退すべきなのに、安倍は言を左右にしてしまう。

 国民には情報を開示しないまま、国益に反する秘密交渉が進んでいる証拠だ。いや、交渉ではなく、一方的な譲歩を迫られ、ドンドン、それに応じている。それが真相に近い。こりゃ、国民生活や日本の産業は大変なことになる。米国を筆頭に他国の草刈り場になってしまう。それがTPPの現状、惨状なのである。

<すべては安倍首相の政権維持のため>

 元外交官で、あまたの国際交渉を経験してきた孫崎享氏は「TPPで日本は得るものは何もない。ひとつの例外を除いて……」と言った。

 その例外こそがTPPの本質だ。
「米国の言いなりになって、政権維持をしてもらうこと。それしかメリットはありません。つまり、安倍首相のためだけのTPPです」



 安倍は政権を維持し、アメリカの新自由主義派の産業や企業が潤い、そして、一部の日本企業が漁夫の利を得る。国民には、何ら良いことなど見当たらないのがTPPではないのか。百歩譲っても、重要品目の関税を堅持しなければ、TPPなど参加する意味も大義もない。


 あらためて、東谷暁著『郵政崩壊とTPP』(文春新書、2012年4月20日初版発行)から引用したい。
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東谷暁著『郵政崩壊とTPP』(文春新書)

 竹中平蔵という男が、「産業競争力会議」で、あたかも日本の産業が「自由競争」のおかげで発展してきた、などという歴史認識を度外視した嘘っぱちは披露していることは、すでに書いた。彼が「お手本」としているアメリカは、本当に「自由競争」「競争原理」の国なのかどうか。
 先日の記事で、米韓FTAで韓国郵政の保険部門は、アメリカに「拉致」されたかのように、手かせ足かせをはめられたことを紹介した。その次の章の冒頭から引用。

アメリカにとって金融は国策産業
 前章で、TPPを金融という側面から見た。では、なぜアメリカはそこまで金融に傾斜しているのだろうか。それはいうまでもなく、アメリカが1980年代以降、金融を含むサービス産業にシフトして、いまや同国の経済の支柱となっているからだ。
 そのことを象徴的に示すのが、83年のロナルド・レーガン大統領の訪日だった。このとき日米は牛肉・オレンジの輸入問題で交渉を続けていた。当然、レーガンは牛肉・オレンジについて述べるかと思われていた。ところが、そうではなかったのである。
 かつて通産省のキャリア官僚だった小林興起氏は、レーガン演説を回想しつつ、このときの驚きを語ってくれた。
「当然、レーガン大統領は牛肉・オレンジの輸入自由化を求めると思われていた。しかし、レーガンが語ったのは日本の金融市場開放だった。牛肉・オレンジについては、ただの一言も述べなかったのですよ」
 前年、アメリカ政府は秘密文書「国家安全保障決定指令」62号において、日本の金融市場開放を促進することを国策としていた。
<アメリカ政府は・・・・・・日本が引き続き金融市場を開放するように促し、アメリカの商業銀行、証券会社、保険会社が、最低限日本の同業者と同様の扱いを受けるように求める>
 すでにアメリカの家電産業は後退し、自動車産業においても陰りが見えていた。アメリカは47年以来、GATT(関税と貿易にかんする一般協定)において製造業の自由貿易を促進してきたが、86年のウルグアイ・ラウンドからはGATS(サービスの貿易にかんする一般協定)の交渉を持ち込んだ。
 このGATSにおける「サービス」とは、金融を含むサービスであり、国内での金融緩和を急速に進めるとともに、国際市場を開拓していくことにも、アメリカ政府は国の政策として取り組み始めたのである。


 この件について書いた記事の内容の繰り返しになるが、日本の産業、そして個々の企業が競争する相手は、中国、韓国、ロシアなどに限らず、アメリカを含む“国家資本主義”体制なのである。
 そのアメリカが、金融を戦略的な重要産業と定めたことが、実は「郵政民営化」につながったことを、本書では何度も指摘している。

 繰り返しになるが、小泉政権の郵政民営化をバックアップしたのはアメリカ保険業界であり、その狙いは、郵政の簡保市場の開放だったことは、当時のい在日米国商工会議所やアメリカ保険業界のいアピールによって知ることができる。
 ここでは、そうしたアメリカ保険業界や政府の要求を早々と集約していた『年次改革要望書』1999年版から引用しておこう。
<米国は日本に対し、民間保険会社が提供している商品と競合する簡易保険(簡保)を含む政府および準公共保険制度を拡大する考えをすべて中止し、現存の制度を削減または廃止すべきかどうか検討することを強く求める>


 この『年次改革要望書』については、関岡英之著『拒否できない日本-アメリカの日本改造が進んでいる』に詳しいので、後日紹介したい。

 郵政民営化で簡保を国からはずそうとしたアメリカは、TPPを利用して、本格的に混合医療の認可を含む医療保険分野などで日本市場に浸食しようとしている。

 繰り返すが、TPP交渉参加を標榜した民主党に対し、「反TPP」を掲げていた安倍自民党の公約違反を糾弾する声を、日刊ゲンダイ以外のマスメディアでは、目にしない。

 古い話になるが、2011年11月11日と、1が並んだ日に、当時の各新聞のTPPに関する社説を並べてみたことがある。2011年11月11日のブログ
当時は、もちろん民主党政権。あの時に味わったマスメディアへの失望感は深まりこそすれ、決して明るくなれない。今では、日刊ゲンダイなどの夕刊紙や地方新聞にこそ、真っ当な記事を見出すことが多い。

 朝日も読売も毎日も、そして日経も、勢いにのる安倍自民党には逆らえないのか・・・・・・。

しかし、「ペンは剣よりも強し」という言葉はまだ死語にしてはならないのではなかろうか。

 誤りを正すための「朝礼暮改」なら肯定できるが、たった三か月ほど前の衆院選で大勝利した自民党の豹変を、見過ごすどころか支持している状況が続くなら、そんなメディアこそ、本来の「競争」の中で「淘汰」されても致し方ないはずなのに、なかなかそうはならない。TPPの一点だけで、その新聞の存在意義を問うのは暴論だろう。しかし、読者の目が光る緊張感の中で、メディアは常に「国民」の視点を忘れず、良い意味での「朝令暮改」を恐れないで欲しい。
 真実を飽くことなく追及し、政府や官僚など“お上(かみ)”側ではなく、国民の視点に立つメディアが増えることは、その国に住む者にとって幸せなことだと思う。このままでは、「マス」コミは“お上”側の“扇動”メディアであって、「ミニ」コミだけが、国民を“先導”してくれることになりかねない。
 
 最後はつまらない地口になってしまったが、現状のメディアの状況は、決して幸福な国の姿とは言えないだろう。
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