幸兵衛の小言

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復興支援予算のとんでもない流用が問題になっているが、その中でも、核融合という実現性の極めて低い、かつ原子力発電と同様に、“神に背く”ようなエネルギーへの研究に四十二億円も流用していることには、あきれるばかりだ。「地上の太陽」などという言葉でカモフラージュされた人類の暴挙に、なぜ「復興」予算が投入されねばならないのか。東京新聞の社説から引用。
東京新聞 TOKYO Webの該当記事

復興予算流用 納税者を裏切る不誠実
2012年10月19日

 東日本大震災の復興予算「流用」ともいえる不適切な支出が次々と明らかになっている。復興へのこじつけは不誠実極まりない。復興増税に応じた国民と被災者との「助け合い」機運にも水を差す。

 復興予算は二〇一一年度から五年間で少なくとも十九兆円。

 財源は所得税や住民税、法人税などを増税して充てる。日本国民全体で被災地復興を支援する仕組みだからこそ、国民は長期(所得税増税は二十五年間、住民税増税は十年間)にわたる増税を受け入れたのだろう。

 その復興予算が、被災地に直接関係あるとは言い難い事業に流用されていたとしたら、納税者に対する裏切りに等しい。

 例えば、反捕鯨団体「シー・シェパード」の妨害活動に対する安全対策費(二十三億円)、核融合エネルギーの実用化を目指して七カ国・地域が共同で進める国際熱核融合実験炉(ITER)研究支援事業(四十二億円)だ。ほかにも多くの流用が指摘されている。


 東京新聞の指摘は、まったく同感である。震災とフクシマ以降、真っ当なことを書いている数少ないメディアと言っていいだろう。

 「核融合炉」と「ITER」について、原子力資料情報室のサイトから、2005年に「原子力資料情報室通信」に掲載された古川路明名古屋大学名誉教授(当時、現在は原子力資料情報室理事)の文章が掲載されているので、少し長くなるが引用したい。
原子力資料情報室サイトの該当ページ

ITERは「希望の星」ではない

2005/05/25
『通信』より

ITERは「希望の星」ではない

※原子力資料情報室通信368号(2005.2.1)掲載

古川路明(名古屋大学名誉教授)

 ITER(国際熱核融合実験炉、イーター)を核融合によるエネルギー生産の「希望の星」と見る人がいます。日本では、青森県六ヶ所村とフランスのITERの誘致合戦が話題になることが多く、核融合のかかえる技術的問題の議論は後回しにされています。
 核融合はエネルギー問題の解決に役立つのでしょうか。本当は、実現は不可能に近く、とても「核融合には未来がある」とは考えられません。ここでは、私が考えている核融合の問題点をQ&Aの形で書いてみます。

■核融合はどんなものですか。

□水素の原子核が反応して、大きなエネルギーが放出されることを核融合といいます。水素には、原子核の性質が異なる3つの同位体があります。普通の水素(1H)、重水素(2H、D)と三重水素(トリチウム、3H、T)です。

■太陽で核融合が起こっていますか。

□太陽の熱源は核融合です。太陽の中では、普通の水素が核融合を起こしています。水素が大量に集まり、起こりにくい反応が続いています。地上で太陽は再現できません。

■「核融合炉」とはどんなものですか。

□核融合炉は、核融合によって発生するエネルギーを用いて発電する設備です。ITERはそれを実現するための実験炉です。核融合炉内では、高温の水素原子核同士の核反応(熱核反応)が起こらねばなりません。

■核融合炉はどうすれば実現できますか。

□起こりやすい核反応は「D-T反応」です。重水素とトリチウムが反応してヘリウムと高速中性子が生じます。反応で発生するエネルギーの8割を中性子が持ち出します。核融合炉では、中性子を冷却材に吸収させ、吸収されたエネルギーを水に伝え、そこで発生する水蒸気でタービンを回して発電します。トリチウムの製造を考えると冷却材として、リチウムを含む物質を用いねばなりません。
 リチウムはナトリウムと似た性質をもつ金属です。溶融リチウムを冷却材に用いれば、溶融ナトリウムを冷却材に用いる高速増殖炉と核融合炉は似てきます。

■燃料はどのように用意するのですか。

□重水素は水素に0.015%の割合で含まれていて、エネルギーさえあれば純粋な重水素が得られます。問題はトリチウムです。
 トリチウムを得るには、リチウムを遅い中性子で照射する以外の道はありません。出力100万キロワットの核融合炉を1日運転するには、0.4キログラムのトリチウムが必要です。半減期が12.3年と短いためこのトリチウムの放射能の強さは非常に高いのです。低エネルギーベータ線を放出するトリチウムの放射能毒性の評価は難しいのですが、このトリチウムの100万分の一を水の形で口から摂取するとき、ヒトの健康に重大な影響をおよぼすおそれがあります。

■核融合炉と原子炉は関係があるのですか。

□ 核融合炉の運転を始めるには、10キログラムのトリチウムが必要でしょう。それは原子炉でリチウムを照射して製造します。
 核融合炉の運転開始後は、核融合で発生する中性子でリチウムを照射して製造すればよいのですが、消費されたトリチウムと同じ量以上を得ることは難しいでしょう。そうなれば、「核融合炉の隣に原子炉を置かねばならない」ことになります。それでは、核融合炉を建設する意義は減るのではないでしょうか。

■核融合では放射能はできないのですか。

□D-T反応では放射性のトリチウムはなくなりますが、中性子によって放射能ができることは問題です。炉の構造材として使われるであろうステンレス鋼に中性子があたったとします。ステンレス鋼に含まれるニッケルから、ガンマ線を放出するコバルト57(半減期、271日)、コバルト58(71日)とコバルト60(5.3年)がつくられます。その量は大きく、出力100万キロワットの核融合炉が1ヵ月間運転した後には設備に近づくことができないほど強い放射能ができます。1時間以内に致死量に達するような場所があるはずです。放射能は時間とともに減りますが、コバルト60があるために50年以上も放射能は残ります。ニッケルは構造材の成分としては不適当だと考えています。他の成分である鉄からマンガン54(312日)ができます。ニッケルの場合より放射能は少ないのですが、被曝の危険があることに変わりはありません。また、超伝導磁石のような他の材料の中にも放射能ができます。

■放射性廃棄物が発生しますか。

□施設が閉鎖して長期間経過後も、ニッケル59(7.5万年)、マンガン53(360万年)などがいつまでも残ります。大量の低レベルないし中レベル放射性廃棄物が出ます。
 核融合炉からは、原子炉のようにアルファ線を放出する放射能や長寿命の核分裂生成物は製造されませんが、それなりの残留放射能に対する対応が必要です。

■他に使える反応はありませんか。

□重水素原子核同士を反応させる反応(D-D反応)がありますが反応が起こりにくく、エネルギー発生の効率も悪いので、ここで取り上げなくてもよいと考えています。

■他に、技術的な問題はないのですか。

□核融合を安定な状態で持続すること、1000万度を超える高温に耐えるような炉の構造を考えること、トリチウムをいかに安全に取り扱えるかということなど、まさに問題は山積しています。
 私は放射能の問題を取り上げただけですが、それだけでも重要な難点があるのです。

■これまでに問題点について訴えた人はいないのですか。

□その声は広くは伝わっていないようですが、以前からありました。例えば、槌田敦氏は、1970年代に、核融合炉の問題を広い視野に立って批判的に分析していました。また、押田勇雄氏は、1985年に書いた『人間生活とエネルギー』(岩波新書)の中で「まず成功しない研究」といっています。核融合を推進する立場にあると思われがちな物理学者にもこのような意見をもつ人がいるのです。
 気楽な会合の席では、「核融合研究は失業救済になっている」という暴言を吐く人がいます。また、ある核融合研究者は、海外で「核融合研究はsocial welfare(社会福祉)のようなものだ」と言われたそうです。このような発言は悪口とみえますが、私は核融合研究の将来を心配している声と受け取っています。
 ITER計画から早く手を引いて、現在進めている計画が妥当かどうかを真剣に検討すべきではないでしょうか。



 少し難しい面もあったと思うので、補足の意味でも、原子力資料情報室の創設者である高木仁三郎さんが『科学は変わる-巨大科学への批判-』で核融合について書いた部分を引用する。
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 この本は、1979年に東洋経済新報社の東経選書として発行された。本が書店に並んだ頃にスリーマイル島事故が起こり、事故を予言した書として話題になった。その後チェルノブイリの翌年1987年に社会思想社から現代教養文庫として発行。残念ながら現在は古書店で入手するしかないが、ぜひ再刊を望みたい好著である。私はこれまでも本書から「マンクーゾ報告」などを引用してきた。さて、「核融合」について、高木さんはどう書いていたか、確認したい。

 核融合への批判は槌田敦が詳しく展開していますが、槌田によりながら、核融合のもたらす歪みについて考えてみましょう。
「無尽蔵エネルギー源」といわれながら、核融合は、多様な希少資源に依拠した技術です。「無尽蔵」といわれるゆえんは、主たる燃料である重水素が海水中に存在することにありますが、海水中から多量に重水素を取り出すのも容易なことではなく、エネルギー収支的にも成算のあるものか、槌田は疑問を提出しています。重水素の問題はさておくとしても、現在想定されている核融合技術は、重水素と三重水素の融合に基づくものであり、その三重水素の製造は、リチウムの原子核反応によって可能となります。つまり、リチウムも核融合の一つの燃料と考えられるわけですが、そのリチウムはよく知られた希少資源の一つです。
 リチウムの産出地はきわめて偏在化しており、しかも推定される利用可能な資源量は絶対的にきわめて少ないのです。世界といわず、ほんの数カ国の“先進国”が、本格的な核融合の発電を実現化するようになれば、リチウムは底をついてしまうはずです。


 原発は、本来地球に存在しなかったものを燃料とし、核融合は、希少資源を燃料としている。そして、どちらも原子核反応を伴う技術に頼っているのだ。放射能とは切っても切れない手法なのである。その危険性は推して知るべしだ。

 実は、ITERによる「核融合炉」は、青森県六ケ所村に建設される可能性もあった。二年前の共同通信のニュースを紹介する。47NEWSサイトの該当記事

仏で熱核融合炉が本格着工へ 日本も積極関与と文科相

【カダラッシュ(フランス南部)共同】未来のエネルギー源として核融合が有望かどうかを検証する国際熱核融合実験炉(ITER)のフランス南部での建設工事で、中核となるトカマク装置など主要施設の建設が今夏本格化する。ITER機構は6月に基本計画の見直し会議を開催、設計や研究日程、コストを再検討、2019年にもプラズマ点火へ至る運びだ。

 ITER計画は建設地の誘致合戦で青森県六ケ所村が最終候補地に残るなど、日本も深くかかわっている。カダラッシュの建設地を5日視察した川端達夫文部科学相は、同計画が「エネルギー政策の根本にかかわるもの」として「着実にしっかりやっていきたい」と述べ、日本としても積極的に支える姿勢を強調した。

 ITER担当者によると、07年に始まった建設サイトの整地や用水路、資材搬入用道路の建設作業はほぼ終了し、縦500メートル、横1キロの広大な用地が整備された。

2010/05/06 18:33 【共同通信】


 「地上の太陽」とか「無尽蔵のエネルギー」などという甘い言葉に包まれてきたプロジェクトだが、ITERは莫大なコストと危険を生み出すだけの、あえて言えば、“神に背く”人類の浅はかさを示すプロジェクトだと思う。

 「原子力の平和利用」と同様に、「地上の太陽」という言葉は、欺瞞と大きな嘘の上に成り立っている。「太陽」をつくろうとする愚かな行為は、原発以上に実現性に乏しく、原発と同様に「核融合炉」から発生する放射能や放射性廃棄物の問題の解決策が見えないまま、多額の費用を投じ、大きな危険と背中合わせに突き進んでいる。

 もし、カダラッシュで何かの事故が発生した場合、内田樹が指摘するように、人間がヘッジできる「リスク」ではなく、コントロール不可能な“デインジャー”を招きかねない。

 「復興予算」は、震災と原発事故の両方の被害からの復興のために使われるべきである。

 しかし、大災害を引き起こしたフクシマと同じ危険性を抱える「核融合炉」研究に復興予算を流用することは、とんでもない国民への裏切りであり、国民への侮辱でもある。

 ITERには、フクシマを経験した日本は撤退すべきだし、復興予算から盗まれた四十二億円はすぐに取戻し、未だに仮設住宅で暮らさざるを得ない人や、避難先で仕事のあてのない被災者のためなどに使われるべきである。

 大震災とフクシマからの復興は、今回のような暴挙によって、ますます遠い道のりを歩くことになる。永田町も霞ヶ関も、内輪の権力闘争などに税金の無駄遣いをする暇などないはずだ。「復興」への取組みがまったく進んでいないことを猛省すべきである。
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by koubeinokogoto | 2012-10-19 21:31 | 原発はいらない | Comments(0)

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