幸兵衛の小言

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今朝、チャンネルを切り替えている途中で、たまたまNHK「週刊ニュース深読み」が地球温暖化を取り上げていたのでしばらく見ていたが、途中から呆れて消した。内容があまりにもひどかった。

 基本的には二酸化炭素地球温暖化犯人説を基本として、「さぁ、大変だ!」と煽動するだけの番組。NHKの番組サイトの能書きはこうなっていた。
NHKサイトの該当ページ

人類は"適応"できるのか?進む地球温暖化

今夏の猛暑に豪雨。日本列島に異変ありと感じている方も多いのでは。 今月27日、世界の「気候変動」に関する最新報告書が発表され、 "温暖化が深刻化""異常気象も増加する"と警告される見通しです。 専門家は近い将来、災害だけでなく農業や新たな伝染病など、暮らしや経済、 都市機能にまで大きな影響が出ると危機感を強めています。 温暖化という地球の病はどうなるのか?どう対処するのか?深読みしました。


小野文恵というアナウンサーが司会進行役で、出演者は次の通り。

専門家
木本昌秀さん(東京大学大気海洋研究所 教授)
白井信雄さん(法政大学温暖化適応プロジェクト特任教授)
室山哲也(NHK解説委員)

ゲスト
桂文珍(落語家)
松本明子(タレント)



 見ていた内容は、“異常気象も温暖化のせい、その温暖化は二酸化炭素のせい、ずいぶん前から分っていたのに何も対策をしてこなかった”というような筋書きだが、視聴者をミスリードする非常に問題のある論調だった。“都市機能にまで大きな影響が出ると危機感を強めています” というより、こういう番組が“危機感を煽っている”のだ。

 この番組でも原発のことにふれていたが、「地球温暖化の原因は二酸化炭素」と強調することは原子力ムラの連中に「原子力はクリーンエネルギー」という馬鹿げたことを言い始める口実を与えることになる。そして、原発を稼動させるための電力として火力発電などによる電力を大量に必要とする、といったことなどは誰も語らない。

 テレビ、大新聞の煽動姿勢には閉口する。NHKのサイトにある“「気候変動」に関する最新報告書”とはIPCCの報告書を指すのだが、朝日も朝刊一面にこんな記事を掲載していた。
「朝日新聞デジタル」サイトの該当記事

2013年9月28日10時58分
温暖化、原因は「人」 IPCC、6年ぶり報告書

 【須藤大輔】国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は27日、ストックホルムで総会を開き、地球温暖化の科学的根拠をまとめた作業部会の報告書を承認した。温暖化の原因は人為起源の温室効果ガスである可能性が「極めて高い」(95%以上)と、これまでで最も強い表現で指摘した。

 IPCCが総合的な報告書を公表するのは前回2007年以来6年ぶり5回目。加盟195カ国のチェックを受けて承認されたため、今後の国際的な対策づくりの科学的なよりどころとなる。

 報告書では、世界の平均気温は1880年から2012年までに0・85度上昇、海面水位は1901年から2010年までに19センチ上昇したと認定。大気中の二酸化炭素(CO2)濃度は1750年以降40%増加し、過去80万年で前例のない高さだとした。

 20世紀後半からの温暖化については「人為影響である可能性が極めて高い」とし、前回の90%を上回る95%以上の確信度で断定した。将来の予測では、1986~2005年と比べた今世紀末の気温上昇幅を0・3~4・8度、海面の上昇は26~82センチとした。


 IPCCという怪しい機関を無批判に支援する記事であり、これを読めば「地球温暖化は大変だ。その原因は二酸化炭素」と多くの読者は思うのだろう。短期的な温暖化は事実かもしれない。しかし、その原因は二酸化炭素だけに求めることはできないはずだ。

 二酸化炭素が温室効果ガスの一つではあっても、その全てではない。そして、二酸化炭素は温暖化の「原因」の一つであるかもしれないが、温暖化の「結果」でもある、ということはテレビも新聞もほとんど語らない。

 そういった総合的な視野を持たない偏向報道は、どんどん伝言ゲームのように世論を操作していく。

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広瀬隆著『二酸化炭素温暖化説の崩壊』
 2011年6月に、広瀬隆著『二酸化炭素温暖化説の崩壊』の引用を含めて書いたことがある。再度同書から引用したい。
2011年6月25日のブログ

 広瀬隆の論調には一部批判もある。たしかに、やや過激な主張もあることはあるが、その背景にはしっかりとした情報分析や、真相に迫る骨太のジャーナリズムの精神があると、私は思っている。2010年に集英社新書から発行された本書も、漠然とテレビや新聞を見ている者の目を開かせてくれる。
 「地球温暖化」論のルーツと問題性について、「第一章 二酸化炭素地球温暖化論が地球を破壊する」から引用。

 私たちが生きている大地の上には、空気がある。そして太陽の日の出と日没を海や地平線に見ることができる。地球の気候は、地球を包んでいるこの大地と大気と海だけでなく、遠い太陽が大きな影響をおよぼす複雑なメカニズムを持って変化している。しかも、物理的な変化と化学的な変化とが重なり合って、あらゆる分野の科学者の英知を集めても、いまだにその正体がつかめない。
 ところが驚いたことに、人間の出す二酸化炭素によって地球が温暖化している、という途方もない仮説が出てから、人類の大半がそれを科学の結論だと信じて議論をスタートし、エコ、エコと叫ぶ蛙の大合唱で、CO2狩りに熱中する時代の真っ只中にある。ちょっと待ちなさい。真正な科学を追究してきた人たちは、おそるべき魔女狩りの時代を迎えたと感じてきた。宗教裁判で審問されて火あぶりにかけられたジョルダノ・ブルーノや、ガリレオ・ガリレイさえ卒倒するほどだ。しかしこの宗教裁判の裁判官を気取ってきた国連のノーベル平和賞受賞者「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC-Intergovermental Panel on Climate Change)という組織については、アメリカ・ヨーロッパで山のような報道が続き、その正体がどれほどいかがわしいものであるか、仮面がはがれつつある。
 2008年5月25日~29日に日本地球惑星科学連合で「地球温暖化の真相」と題するシンポジウムが開催された。この学会は、地球に関する科学者共同体の47(現在48)学会が共催する日本国内最大の学会であった。ここで、地球科学者、物理学者、天文学者たちが、「CO2温暖化説」を批判して数々の実証データと理論を示し、大半の参加者が「CO2温暖化説を信じない」という議論を展開した。わが国の太陽研究の第一人者も、CO2温暖化を否定した。アンケートをとったところ、「IPCCが主張するように21世紀に一方的な温暖化が進む」という考え方の人は、一割しかいなかった。むしろ多くの学者は、寒冷化による被害が切迫しているのではないか、という危惧を抱いていた。新聞とテレビからそれを知らされない読者は、知るはずもないのだが。
 明けて2009年正月に、会員2000人を擁する日本のエネルギー・資源学会が新春eメール討論を開いた結果では、IPCC参加者(のちに紹介する国立環境研究所・江守正多)以外の4人は、やはりCO2による地球温暖化説を全員が否定したのだ。アラスカ大学・赤祖父俊一名誉教授、横浜国立大学・伊藤公紀教授、海洋研究開発機構・草野完也プログラムディレクター、東京工業大学・丸山茂徳教授、この4人の意見を要約すると、「CO2は増加しているし、地球の気温も上がってきたが、CO2のために気温が上がっているのではなく、地球本来の自然な変化である。今後もこのような気温上昇が続く可能性は低い」というものだった。彼らがCO2温暖化説はまったくの誤りで、自然な変化であると断定しているのに、なぜその言葉が、新聞とテレビで大きく報じられないのか。


 なぜ“真っ当な”科学者の多くが「地球温暖化論」や「二酸化炭素温暖化説」を否定しているのに、新聞やテレビはそれを報道しないばかりか、今朝のテレビのように「二酸化炭素→温暖化→異常気象」というような不完全な主張をしたり、今朝の新聞のように発表されたばかりの「IPCC5次報告書」を無批判に報道するのだろうか・・・・・・。

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米本昌平著『地球環境問題とは何か』

 広瀬隆アレルギーの方もいらっしゃるかもしれないので、米本昌平著『地球環境問題とは何か』(岩波新書、1994年4月初版発行)から、地球温暖化問題が叫ばれるようになったのか、その始まりまで少し遡りたい。「第一章 地球温暖化の科学論—ハンセン論文の衝撃」より引用。


大干魃

 88年の初夏のある日、日本の新聞に、「米議会、地球温暖化で公聴会」という見出しのベタ記事が載った。のちに「暑い夏論争」と呼ばれるようになった有名な事件の始まりである。
 その前年の秋から、アメリカの東部は干魃に悩まされていたのだが、事態は悪化するばかりであった。88年春になると、干魃は穀倉地帯である中西部や北部にも広がり、映画「怒りのぶどう」で描かれた1930年代来の大干魃となった。熱波が各地を襲った。この異様な暑さはいよいよこの地球自身がおかしくなってきたからではないか? 次第にこんな不安が人々の心をかすめはじめた。こうして六月二十三日に上院公聴会が開かれたのである。
 ただこの大干魃の原因は気象学的には、その前年のエルニーニョ現象(ペルー沖の表面海水温が数年の周期で上昇する現象)の残像としてジェット気流の流れが変わったことが主因、とみるのが普通である(Science、1988年12月23日)。つまり88年という時期に、アメリカを大干魃が襲ったのは、別の年変動による偶然の現象であった。だが、この事件が一つの引き金になって、政治家や外交官が、安全保障や通商問題と同じような調子で地球環境問題を語り始めるのである。これは政治的には大きな変化であった。


 著者は京都大学理学部卒業後、証券会社で働きながら科学史を独学し、三菱化成生命科学研究所に入所し社会生命科学研究室長を務めた方。
 紹介した部分だけを読んでも、今朝のNHKのテレビが、「異常気象」と「地球温暖化」をいう、本来分けて考えるべき問題をゴッチャにしていることの愚が分かろうというものだ。
 温暖化二酸化炭素原因説がまだ声高に叫ばれる前から、ハワイのマウナロア観測所でD・キーリングらが、二酸化炭素の濃度を厳密に測定していた。1958年以降、マウナロア観測所において二酸化炭素が上昇しているグラフは、その後、地球温暖化二酸化炭素原因説を唱える科学者がほぼ必ず引用することになる。

科学者グループの意見書
 二酸化炭素の濃度増大による温暖化問題も、このころ、まずアメリカの科学者が問題にしはじめた。ただし、それはまったく少数派であり、多くの科学者はこれを黙殺する道をとった。ニクソン大統領が70年に新設した環境保全会議に対して、79年の初め、J・ウッドウェル、G・マクドナルド、D・キーリング、R・レベレの四名の科学者が報告書を提出し、「ただちに削減政策をとらないと、人間は世界の気候の温暖化へとつながる原因を装填していることになる」と警告した。
 ウッドウェルは、これをきっかけに、二酸化炭素の固定源としての森林の研究に進み、83年に、森林伐採が二酸化炭素の濃度増大の予想外に大きな源泉になっているという計算結果を発表する学者であり、その後も、地球温暖化に関する国際会議で大きな役割をはたしてきている。また、キーリングとレベレは、ともにマウナロア観測所の研究者でもあった。つまり、彼らはみな、地球温暖化の懸念を、社会に向けて発してもよい最有力の自然科学者たちであった。
 (中 略)
 同じ79年の2月、ジュネーブで、WMO(世界気象機関)の後援で、数百名の科学者が集まって第一回世界気象会議(World Climate Conference)が開かれたのだが、最終日に急遽、地球温暖化についての声明がまとめられた。その主要点はこうであった。「今世紀の末までには、特定の地域かもしくは地球レベルで、その影響が関知できるようになり、来世紀半ば以前には、それは重大なものになる可能性がある。その速度は、農業やエネルギー産業を含む世界経済の多くの領域で政策を改めるのに必要な時間と、ほぼ見合っている。ある地域にとっては有利に働くかもしれないが、他の地域にとっては逆に、社会面や技術面で重大な調整が要求されるようになる可能性がある・・・・・・」
 声明文はいちおう、危険性を指摘しているが。しかし、一般的な表現にとどまっており、今日の目からすると切迫感はそれほどでもない。
 
フロン説の登場

 そうこうしているうちに、自然科学者のレビュー研究が現れた。85年に、地球物理学者V・ラマナサンらが、地球温暖化に対する主要な温室効果ガスの効果を包括的に分析した論文を発表した。それによると、80年代までは二酸化炭素がその主な要因であるが、今後は他のガスの効果がこれを上回っていくことになる、という計算となった。この研究は、第一に、温暖化はもう避けられないものであり、その効果は加速的に進むであろうこと、第二に、そのなかでもここにきて人工化合物であるフロンの温室効果が大きくなることを、読み手に印象づける結果になった。科学論争の歴史では、しばしば、いくつかの決定的な重要論文が登場するものなのだが、この論文はその典型であり、その後も頻繁に引用されるようになる。


 このあたりまでが、「地球温暖化論争」の序盤ということろだろうか。地球温暖化は、その後、政治的な問題として煽動されていくことになるのだが、ハンセン論文や『不都合な真実』のゴアのことなどは別途取り上げることとして、この本からあと少しだけ引用したい。
*太字は当ブログ管理人による。

温室効果の意味

 たぶん多くの人たちの地球温暖化に対する理解は、こうだと思う。二酸化炭素には温室効果があり、この二酸化炭素の濃度増大によって気温が上昇すること、つまり、二酸化炭素の濃度増大が「原因」となって大気が暖まり、さまざまな影響がでることであると・・・・・・。確かに、二酸化炭素が完全になくなってしまえば、地球の平均気温は摂氏三十三度下がる計算になり、この限りの一次近似の因果関係としては、この解釈は正しい。
しかし、現在の地球科学は、過去の気候変動を、地軸の変化、太陽活動の変化などが最初のきっかけとなり、それが一連の玉突き現象を起こして、暖かくなったり寒くなったりしてきた結果だと解釈している。その中で、二酸化炭素は、これらの変化を強化させる方向に働く(これをプラスのフィードバック効果という)一因子という位置づけがされている。だから、気温の上昇・下降と二酸化炭素濃度の増大・減少が密接な並行関係にあるのも、いわば当然なのである。たとえば、温度が上がれば生物の呼吸が活発になって二酸化炭素の排出が増えるし、海の温度が上がるとその中に融解していた二酸化炭素が大気に放出される。温度が下がればこの逆のことが起こる。地球温暖化にとって二酸化炭素は原因でもあり、結果でもあると解釈されているのである。


 
 温暖化した“結果”として二酸化炭素が増えたとも言えるのだ。こういった真っ当なことは、まずテレビも新聞も取り上げない。世界のメディアの中で、“地球温暖化は問題だ。二酸化炭素をどうにかしろ”と、いわゆるタレントを出演させて、他の要因などはほとんど無視して騒がせているのは、日本のマスコミ位ではなかろうか。そういった番組に頻繁に登場する人間は原子力ムラに近い、と私は思うようにしている。
 NHKも大新聞も、彼らは意図しようが無意識だろうが、結果として「温暖化二酸化炭素悪者説」を煽動する内容で視聴者や読者を原発受容の方向に導いている。その方がずっと大きな問題である。
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by koubeinokogoto | 2013-09-28 14:26 | 原発はいらない | Comments(8)
東電が柏崎刈羽の安全審査申請をした。よくもまぁ、ヌケヌケと・・・・・・。
「時事ドットコム」サイトの該当記事

柏崎刈羽の安全審査申請=東電、早期再稼働目指す−沸騰水型初・規制委

 東京電力は27日、柏崎刈羽原発6、7号機(新潟県柏崎市、刈羽村)について、再稼働の前提となる新規制基準への適合性審査(安全審査)を原子力規制委員会に申請した。2011年3月の福島第1原発事故後、東電が原発再稼働に向けた申請を行うのは初めて。
 7月に始まった安全審査では、既に北海道、関西、四国、九州の4電力が6原発12基を申請している。いずれも「加圧水型」の原子炉で、福島原発や柏崎刈羽原発のような「沸騰水型」の審査は初となる。(2013/09/27-09:54)


 東電は、審査申請の直前に、「沸騰水型」で特有のトラブルに関する調査結果を報告している。。
「時事ドットコム」サイトの該当記事

柏崎刈羽で欠損162体=燃料集合体の箱、今後も一部使用−東電

 東京電力は26日、柏崎刈羽原発(新潟県柏崎市、刈羽村)で使用していた核燃料集合体を覆う金属製の箱(チャンネルボックス)162体に欠損が見つかったと発表した。東電は原発施設に影響はないと説明しており、うち68体は今後も使用を続けるという。
 東電によると、チャンネルボックスは燃料集合体に取り付ける四角い筒状の箱。燃料を保護する役割などがあり、柏崎刈羽原発では原子炉や使用済み燃料プールに保管されている燃料が収納されていた。
 核燃料を収納したチャンネルボックスは柏崎刈羽原発に1万8586体ある。見つかった欠損はチャンネルボックス上部で、燃料を固定する機能などを持つ場所。欠損部分は最大で約29ミリの長さがあった。(2013/09/26-21:48)


 安全審査で発見されては困るので先に発表し「問題ありません」と言おうとする汚い手口がミエミエである。

 核燃料を包んでいる器に異常があるのに、原発施設に影響はないという詭弁を弄する東電を、いったい誰が信じることができようか。もし、その核燃料から放射能が漏れたら、原発施設どころではなく影響するのである。

 電気事業連合会のサイトにある「燃料集合体」(彼らは、あえて「核燃料集合体」とは言わない)の図を確認。
『電気事業連合会」サイトの該当ページ

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 この図にあるように、べレットという状態になった核燃料をジルコニウムで出来た燃料被覆管が包んで燃料棒となり、複数の燃料棒を包んでいるのがチャンネルボックス。

 原子力ムラは、「原発は何重にも安全に管理されている」という神話をつくってきたが、それが真っ赤な嘘だったのは、フクシマで暴露された。

 2011年4月2日、当時は間違いなくマスコミに「メルトダウン」という言葉への報道規制があった時期、燃料棒の材料であるジルコニウムの危険性などを含め、私は高木仁三郎さんの『プルトニウムの恐怖』から引用して「メルトダウン」に関するブログを書いたが、あらためて紹介したい。

2011年4月2日のブログ

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高木仁三郎著『プルトニウムの恐怖』

 原子力発電所の大規模な事故は、おそらくわれわれの想像を超えた被害をもたらしうるし、そんな事故は世界のどこかで一度でも起こってはならないものだ、ということに注目しておこう。
 さて、そんな事故はいったいどんな経過で起こりうるのだろか。最も典型的な事故経過として考えられているのが、原子炉の空焚き事故である。原子炉では水がきわめて重要な役割を演じていることはすでに述べたが、一次冷却水系の配管などに破談が生じ、一次冷却水が失われると、原子炉のお釜(圧力容器)は空焚きの状態になる。このような事故は、冷却材喪失事故と呼ばれている。
 このような状態が発生したときには、検出器が異常を察知して一般的には、制御棒が自動的に挿入されて核分裂の連鎖反応を止めることができる(それも不可能となる場合もありうる)。しかし、ここにひとつの本質的な困難がある。核分裂は止まっても、なお燃料棒の中にはぼう大な量の放射線物質が内蔵されているため、その発生する熱(崩壊熱と呼ぶ)によって、炉心の発熱は続くのである。いわば、高速で走る自動車に急ブレーキをかけても、なお多くの距離を走り続けるようなものだ。崩壊熱による発熱は、原子炉出力の二割にも達し、それはきわめてゆっくりとしか減衰しない。
 この熱によって、原子炉内に残っていた水は水蒸気となって破談口から噴き出し、空焚きはさらに進行する。と同時に、燃料棒は冷却水を失って崩壊熱による温度上昇を始め、被覆管のジルコニウムは蒸気と反応して酸化する。この反応は水素を発生させ(水-ジルコニウム反応)、反応熱はさらに温度上昇をうながす。こうして事故発生数分-数十分後には、炉心燃料は融け始め、ついには融けた燃料は原子炉の底に向かって崩れ落ちるという決定的な瞬間がやってくる。これがメルトダウンである。(スリーマイル島原発事故は、部分的な燃料溶融まで進展し、メルトダウン寸前で食い止められた。)


 ジルコニウムは、金属の劣化につながる核反応によって発生する中性子を受ける断面積が金属の中でもっとも少ないので選ばれている金属。しかし、このジルコニウムにも厄介な特性がある。フクシマでも起ったように、蒸気と反応し酸化すると水素を発生させて水素爆発の原因となるのがジルコニウムで覆われた燃料棒なのだ。
 その燃料棒の集合体を包んでいるチャンネルボックスに“欠損”、いわばヒビ割れがあって、なぜ危険ではないのか。そのチャンネルボックスもジルコニウム合金で作られている。

 このチャンネルボックスの問題は昨年以降、あちこちの原発で発見されている。東電は女川原発の調査結果を踏まえて柏崎刈羽でも調査した結果として、9月26日に次のようなプレスリリースを発信した。
*太字や赤字は当ブログ管理人による。
「東京電力」サイトの該当プレスリリース

 当社は、平成24年7月10日に東北電力株式会社女川原子力発電所3号機において、チャンネルボックス上部(クリップ)に欠損が確認されたことを踏まえて、平成24年8月10日に経済産業省原子力安全・保安院より燃料集合体チャンネルボックス*1上部クリップ*2の一部欠損に関する指示文書*3を受領いたしました。これに基づき柏崎刈羽原子力発電所1~7号機の燃料集合体チャンネルボックス上部クリップの欠損の確認、原因調査、再発防止対策について評価、検討を進めてまいりました。

 このたび、上部クリップの欠損の確認および原因調査、再発防止対策の評価、検討が完了したことから、最終報告書として取りまとめ、本日、原子力規制委員会へ報告しましたのでお知らせいたします。

 上部クリップの欠損について確認した結果、柏崎刈羽原子力発電所1~7号機の原子炉内および使用済燃料プール内にある燃料集合体に装着されたチャンネルボックス18,586本のうち、162本の上部クリップの接合部に欠損(欠損部位の最大長さ約29mm)を確認しました。

 確認された欠損については、上部クリップの接合部に限定されており、チャンネルボックスの機能(原子炉冷却材流路確保および制御棒ガイド機能)に影響がないことを確認しました。
 この162体について燃料集合体の外観点検を行い、145体については、損傷、変形等の異常がなく健全であることを確認しました。残りの17体については、ウォータ・ロッドに曲がりが確認されておりますが、過去にチャンネルボックスの装着時に過大な荷重をかけたことにより発生したものであり、チャンネルボックス上部クリップの欠損により生じたものではないことを確認しました。
 また、欠損した上部クリップ周辺の一部を採取し確認したところ、部材のジルコニウム合金が腐食したものであり、もろく細かな粉体になることから、欠損部が炉内構造物等の損傷等、原子炉施設への影響を及ぼすものではないことを確認しました。

 以上により、チャンネルボックス機能への影響、燃料集合体への影響、原子炉施設への影響がないことを確認しております。

 欠損の原因については、チャンネルボックスの製造メーカごとに異なるものの、主なものとして以下のとおり推定しました。
・製造時においてチャンネルボックス上部にクリップを溶接する際に、当て板金の使用によりクリップ端部の溶接時の入熱量が大きくなったこと。
・予熱された当て板金の影響により溶接後の冷却速度が低下し、溶接部の微細な結晶組織が粗大化したこと。
・チャンネルボックスの材料内に含まれる鉄などの元素の量が低下した領域が増大し耐食性が低下したこと。


 再発防止対策として、今後の製造にあたっては、新たな溶接設備を導入して、溶接時に大きな熱量が加わらないようにすることや、当て板金を使用しない溶接方法等に変更することといたしました。
 上部クリップに欠損が確認されたチャンネルボックスについては機能に問題ないことを確認しており、このうち炉内再装荷用燃料に装着された
68本は継続して使用 いたします。(ウォータ・ロッドに曲がりが確認された燃料集合体17体は含まれておりません)
 今後、当面の間、定期検査時に全号機のチャンネルボックスの上部クリップの状況や新たな欠損の有無について確認を行ってまいります。
 なお、福島第一原子力発電所および福島第二原子力発電所については、今後必要に応じてチャンネルボックスの欠損状況の確認を行ってまいります。



 このプレスリリースの参考資料には、次のように“欠損”部分の写真がある。
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 私は技術的なことは専門家ではないので分からないが、東電の言うことは疑ってかかるほうがいい、という社会勉強はしたつもりである。

 “確認された欠損については、上部クリップの接合部に限定されており、チャンネルボックスの機能(原子炉冷却材流路確保および制御棒ガイド機能)に影響がないことを確認”したということを信じたとしても、現時点でのことなのである。

 何かのきっかけで、“上部グリップの接合部”から欠損部分が広がったら、いったいどうなるのか・・・・・・。

 原発は、“針の穴”ほどの欠陥があっても、そこから大事故になる恐れのある、人間の管理能力をはるかに超えた“怪物マシーン”なのである。

 赤字にした「当面の間」とか、「必要に応じて」といった表現にも、東電の腰の引け方が現れている。

 特に福島第一、第二は、できれば調査などしたくないし、第一はあまりにも危険でできない、というのが本音ではないのか。

 原発レベルでの施設において本来の安全性対策というのは、最悪ケースを想定して対応することである。

 そして、真っ当に安全性を検討したら、原発はどう対策を考えようと人類と地球を破滅させる危険性の固まりになる。

 今後も稼動させることで、放射能はたまり続ける。そして、稼動しなくても、核燃料廃棄物や燃料プールで冷却中の核燃料をどう処分するか決まらないままなのである。

 あえて、核燃料集合体のチャンネルボックスの問題から書いたが、「安全」審査をすれば、確実に問題が発見されるだろう。もし、再稼動にGOサインが出たら、それは原子力ムラが復活し、安全より経済性を優先する電力会社を政府が後押した結果でしかない。

 まず、「脱原発」を前提とし、国内外の英知を集めて、今後の核廃棄物や燃料プールに大量に眠る核燃料集合体の処分策を考えること、もちろん、将来的なエネルギープランも併せて考えることが復興と再生も道であることは自明であろう。

 ただし、短期的な企業の論理でしか判断できない東電の経営陣には、そういった了見はないだろう。

「当面」とか「必要じ応じた」対策などを考えるのではなく、「抜本的」で「長期的視点」に立った対策を考えるべきなのが、政府と官僚の本来の仕事ではないのか。核廃棄物の問題は、その半減期を考えれば何万、いや何十万年レベルの問題であるが、永田町や霞が関の人たちには、少なくとも「国家百年の大計」をぜひ考えて欲しい。
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by koubeinokogoto | 2013-09-27 19:39 | 原発はいらない | Comments(0)
安倍から東電への福島第1の5号機、6号機廃炉要請に対する地元双葉町の反応を共同通信の47NEWSより。「47NEWS」の該当記事

双葉町長、首相の突然表明を批判 廃炉指示「事前説明なく遺憾」

 安倍晋三首相が東京電力に福島第1原発5、6号機の廃炉を指示したことについて、5、6号機がある福島県双葉町の伊沢史朗町長は19日、「廃炉は当然のことだが、事前に説明もなく、頭ごなしの総理判断は遺憾だ」と強く批判した。

 伊沢町長は「真意を確認する必要がある」とした上で「原発事故直後の対応や、その後の収束作業と同じで、(政府は)避難者や地元自治体を全く見ていない。ばかにされているようだ」と語気を強めた。

2013/09/19 17:14 【共同通信】



 「廃炉は当然」だが、なぜ「事前に説明」を希望するか。

 それは、双葉町そして全国の原発立地市町村が電源三法の交付金に頼ってきたことが背景にある。

 原発を誘致した市町村は、「原発を立地するけど、悪いようにはしないから」という国と東電の甘い囁きにのって原発建設を許し、海や自然や雇用機会を失い、加えて共同体を賛成派と反対派の対立状態に陥れる代わりに、財政的な援助を得ていた。そういった構造的な問題が廃炉によってどう変わるのかが、地元の最大の関心事なのは当然だろう。

 共同通信は、伝統的に連載企画でジャーナリストとしての気骨を時折見せてくれる。
 3.11以降の連載企画原発編「原発と国家」の第二部「『立地』の迷路」の第五回は「財政危機でも依存続く-交付金“中毒”に-」から引用。
*文中の太字は当ブログの管理人による。
共同通信連載企画「原発と国家」の該当記事


財政危機でも依存続く-交付金“中毒”に-

 立地に伴う交付金や固定資産税、核燃料税、電力会社の寄付金。財政規模に見合わない巨額の原発マネーが流れ込む。福島県双葉町には1980年代、後戻りのできない変化が表れ始めた。

 自治体に交付金を手厚く配る「電源3法交付金制度」が生まれたのは、田中角栄内閣の74年、第1次石油ショックの翌年だった。「ありがたいという話だったよ。地元はそれは喜んだ」。福島県出身の民主党最高顧問、渡部恒三(わたなべ・こうぞう)(79)は振り返る。交付金という"蜜"で立地を促進するシステムの確立だった。

 2基の原発を抱える双葉町への交付金は87年度までの14年間で約34億円。固定資産税は多い年で約18億円で、歳入の半分を占めた。町は下水道や町道、図書館整備など公共工事に突き進む。
 地元の建設会社社長は「先に原発ができ、4基がそろった隣の大熊町に比べ、双葉町は2基で交付金が少ない。大熊が立派な施設をつくると聞けば、こっちも負けてはいられないという雰囲気があった」と話す。

ツケ

 80年代後半以降、交付金の適用期限は切れ、固定資産税は年を追うごとに減価償却が進み、減収が続く。過大な公共事業のツケと施設運営費で財政難に陥った。町議会は91年、原発増設を求める決議を可決。財政の穴を新たな「立地」で埋める道を選んだ。

 当時の町長は岩本忠夫(いわもと・ただお)。社会党県議時代は「反原発のリーダー」と言われたが、85年に町長になると推進派に転向。決議後も「できてもいないのに増設で入る金をあてにして、先に金を使っていた」(町幹部)という。

 知事だった佐藤栄佐久(さとう・えいさく)(71)は「麻薬中毒患者が『もっと薬をくれ』と言っているのと同じではないか」と振り返る。

改ざん

 東電は第1原発に7、8号機の増設を目指す。94年、社長の荒木浩(あらき・ひろし)(80)は知事公舎を訪問し、今は原発事故対策の拠点となったサッカーのトレーニング施設「Jヴィレッジ」建設を持ち掛けた。元幹部は「増設の突破口だった」と明かす。

 2001年の地方博「うつくしま未来博」。開催に合わせ、東電は、県内に電力を供給する東北電力より寄付額を少なくしたいと打診。するとある県幹部は「それだったら福島から原発は出て行ってください」と言い放つ。東電は県の意向に神経をとがらせていた。

 02年には長年にわたる東電の原発検査記録の改ざんが発覚。隠蔽(いんぺい)体質に対する批判が高まり、佐藤は検査のため停止している原発の再起動容認にかたくなな姿勢を見せ、町も決議を凍結せざるを得なくなった。

 町長が井戸川克隆(いどがわ・かつたか)(65)に代わり、佐藤も弟の逮捕で辞職した後の07年、町議会は凍結を解除する。町は建設予定地への初期交付金を国に申請、約39億円を手に入れた。「結局、次も原発だった」と建設会社社長。

 「未来永劫(えいごう)、原発に頼れるわけではない」と考えていた井戸川は05年の就任直後、総務課長に「予算を組めません」と訴えられたという。財政状況は想像以上に深刻で、09年までに、原発立地自治体として全国初の財政健全化団体に転落した。

 頼みの原発による事故で避難を強いられ、町は存続の危機にある。「これから脱原発の百年計画を立てようとしていたのに」と井戸川。東電が増設中止を表明したのは事故から2カ月たった5月20日だった。(敬称略)(山内和博)



 電源三法をあらためて確認。

 “原子力教育を考える会”による「よくわかる原子力」というサイトでは、非常に丁寧に原子力や放射能、原発のことが説明されている。使われているデータは今では若干古いものも含まれてはいるが、原発をめぐる基本的な仕組みは変わらない。同サイトから「電源三法」と交付金について引用したい。
「よくわかる原子力」サイトの該当ページ

電源三法交付金

 いわゆる電源三法とは、1974年6月3日に成立した次の3つの法律をさしています。
•電源開発促進税法
•電源開発促進対策特別会計法
•発電用施設周辺地域整備法

 電力会社は販売電力量に応じ、1,000キロワットアワーにつき425円を、電源開発促進税として国に納付しています(電源開発促進税法)。このうち、 190円が電源立地勘定で、235円が電源多様化勘定(2003年10月法改正により「電源利用勘定」に名称変更)となります。2003年予算で、この税の総額は4855億円になります。(電源開発促進税率は、今後段階的に引き下げられる予定。)
 もちろん最終的にこの税金の負担は、消費者が電力料金に上乗せされて支払っています。
 納められた税金は、特別会計に組み込まれ、発電所など関連施設の立地及び周辺市町村に対し交付金などの財源にあてられます(電源開発促進対策特別会計法)。



 我々の電力料金には、この交付金分も含まれているのだ。その交付金がどんな性格のものか、引き続き引用。

そもそも「電源三法交付金」とは・・・・迷惑料

 交付金制度の制定は1974年。そのころ通産省(当時)資源エネルギー庁の委託で作られた立地促進のパンフレットには、次のように書かれていました。
 「原子力発電所のできる地元の人たちにとっては、他の工場立地などと比べると、地元に対する雇用効果が少ない等あまり直接的にメリットをもたらすものではありません。そこで電源立地によって得られた国民経済的利益を地元に還元しなければなりません。この趣旨でいわゆる電源三法が作られました(日本立地センター「原子力みんなの質問箱�)。」 つまり本来三法交付金は、原発が地域開発効果を持たないことに対する補償措置以外のなにものでもないのです(清水修二福島大教授「原発を誘致する側の論理」1988)。しかし、「雇用効果がない」などとあからさまにいってしまうと、元も子もないので、その後の歴史の中で「地域振興」というまやかしの姿が与えられてきました。そして現在の交付金のしくみでは、電力やエネルギーとは全く無縁の「地域振興」がまさに目玉になった内容へと変身しています。


 東京などの都会の電力をまかなうために、自然や共同体の破壊をいう「迷惑」のために交付されているのが、電源三法による交付金である。
 そして、双葉町を含む福島第1エリアでは「原発事故」というあまりにも大きな「迷惑」も被った。

 もう少し、この交付金の問題について紹介。

従来の交付金は、「箱物」行政の典型で、公民館・体育館など半恒久的な建築物建設にしか使えず、建てることは建てられても、維持運営費などには使えないものでした。その結果、そうした建築物の維持運営費が、自治体予算を圧迫している状況が生じていました。改訂によりほとんど自治体の独自予算のように、何にでも使える交付金になりました。交付金という名前の、甘いアメを用意して、原発を誘致してもらおうという作戦でしょう。 またこの改訂で、これまでこの交付金の対象であった火力発電所の立地地域を、対象から外しました。原発立地の地元へのアピールをより鮮明にするためだそうです。
 個々の自治体にどれくらいの交付金が支払われるかというと、出力135万kwの原発が建設される場合が、資源エネルギー庁のホームページに紹介されています。

   ◎建設費用は約4500億円。建設期間7年間、という前提
   ◎運転開始10年前から、10年間で391億円。
   ◎運転開始後10年間で固定資産税も入れて計502億円。


 この説明で分かる通り、交付金は時限制である。これは、交付金を継続的にもらうためには、どんどん原発を増設させることを目論んでいるからだ。まさに“麻薬”的な存在だ。

 そして、我々が支払う電気代の一部は、もはや日本しかやろうとしていない「核燃料サイクル」のためにまで使われている。

実現不可能な事業へ、多額の予算

 電源開発促進税の電源利用勘定からは、核燃料サイクル開発機構に対して補助金が出資されています。ここ数年減額されてきているとはいえ、2003年度予算で1171億円の予算がつけられて、核燃料サイクルの開発が行われています。核燃料サイクルはまだ実用化していませんから(実用化される見通しもあまりありませんが)、純粋に研究開発・技術開発に関わる政府予算でこれほどの厚遇を受けているものはそうはありませんし、核燃料サイクルの構想自体が袋小路に陥っていながら、これほどの予算をつけるのは不可解としかいいようがありません。ちなみに、ロケット打ち上げなどを行っている「宇宙航空研究開発機構 (JAXA)」(宇宙科学研究所(ISAS)航空宇宙技術研究所(NAL)宇宙開発事業団(NASDA)を吸収統合)の2003年予算総額は約1730億円です。


 「もんじゅ」の問題は、今さら書くまでもないだろう。つい最近もモニターシステムが稼働していないことが報道されていた。

 なぜ特定地域に数多くの原発が建設されるのか。その構造の底辺に「電源三法」が存在している。そして、国民が支払う電気代に、交付金のための金額が上乗せされている。
 
 「火力発電の燃料費高騰で、電気料金を値上げしたい」などという電力会社の言い分には、「電源三法交付金のための上乗せ分を使ってくれ」と言いたいではないか。当り前だが、原発がなくなれば、まったく必要のない費用なのである。

 安倍が福島第1の5・6号機廃炉を主張するなら、「電源三法」に替わる、原発推進という構図から脱した地域再生の仕組みも検討しなければ片手落ちというものだ。

 フクシマ以降でも、原発再稼動に賛成する地元市町村がある理由は、「電源三法」による交付金で“麻薬漬け”にされている構造があるからである。

 原発の地元には、もはやかつて大漁を誇った豊かな海も、夕焼けをながめた海岸も存在しない。あるのは、「原発を動かさなくては食べていけない」という焦燥感のみであろう。それは、決して地元のせいではない。原発の建設も廃止も、「国策」として取り組むべき課題だ。
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by koubeinokogoto | 2013-09-19 22:56 | 原発はいらない | Comments(0)
3.11から三カ月後、当時の首相補佐官馬淵澄夫が、東電に遮蔽壁設置を提案し記者発表の準備もしていたが、結局は東電の「経営の論理」に政府も押し切られ、「生命の論理」「安全の論理」は消失していたことが、今頃メディアを賑わわせる。
*太字は当ブログ管理人による。
 「時事ドットコム」の該当記事

東電、遮水壁設置を見送り=原発事故直後の6月−民主・馬淵氏が証言

 東京電力が2011年6月、福島第1原発の汚染水漏れを防ぐため凍土式の遮水壁設置を検討したものの、多額の費用負担による経営破綻を懸念して先送りしていたことが分かった。民主党の馬淵澄夫選対委員長が18日午前の同党会合で証言した。馬淵氏は当時、菅内閣の首相補佐官を務め、汚染水の遮蔽(しゃへい)計画の政府側の責任者だった。
 馬淵氏によると、地下水の流入を防ぐため、原子炉建屋を取り囲む遮水壁の設置について、11年6月14日に記者発表する段取りを東電と決めていた。
 しかし、株主総会を控えていた東電側が「新たに1000億円の債務が加算されることで資本市場に混乱を招く」との理由により、記者発表の延期を海江田万里経済産業相(当時)に要請。政府側も「資本市場の混乱は避けるべきだ」として、会見延期を受け入れた。
 馬淵氏らはこの際、東電の武藤栄副社長(同)に対し、遮水壁計画を「遅滞なく進める」ことの確認を取ったという。
 18日の会合には東電の松本純一・原子力改革特別タスクフォース事務局長代理が出席。馬淵氏は計画先送りの経緯を文書で明らかするよう要求した。
 これに対し、松本氏は、遮水壁計画について遅滞なく進めるよう政府側から指示されたことを認めつつも、「確認、了解までは至っていない」と述べ、馬淵氏との食い違いを見せた。(2013/09/18-12:36)



 実は、本件を含む馬淵の言い分は、今月7日の「日刊ゲンダイ」に詳しく掲載されていた。しかし、馬淵の話では、「凍土式」は捨てられ、別な方式を提案していたとのこと。
日刊ゲンダイ「Genda.Net」の該当記事

馬淵澄夫氏が指摘 安倍政権の汚染水「抜本対策」に致命的欠陥

【政治・経済】2013年9月7日 掲載

なぜ吉田所長も認めた工法を取らないのか

 世界が懸念している福島第1原発の汚染水問題。安倍首相は「国が前面に出て抜本的な措置を講じる。五輪招致に問題がないことを説明する」と言っているが、まったく説得力がない。なぜなら、安倍政権がやろうとしている抜本対策の目玉、「凍土方式」は、原発事故直後に却下された不適切工法なのである。

 民主党政権は当時、汚染水対策を馬淵澄夫首相補佐官に委ねた。馬淵は横浜国大工学部卒、建設会社技術職研究員の経歴を持つ。土木に詳しく、当時から地下水が汚染されることを問題視、吉田所長と対策を練ったという。馬淵に改めて、当時の経緯や凍土方式の問題を聞いてみた。

凍土方式は完成まで2年間もかかるだけでなく、工法自体にも問題があります。首相補佐官時代の2011年5月、私は遮蔽プロジェクトチームの責任者として、4種類の工法を検討しました。その結果、『凍土方式』ではなく、チェルノブイリで実績がある『鉛直バリア方式』を選定しました。凍結管を入れて土を凍らせる『凍土方式』はそもそも永久構造物ではなく、地下水流出を抑えて工事をしやすくするために一時的に設置するものです。これによって、地下鉄工事でトンネルを掘削しやすくなるなどの効果はあります。しかし、大きな汚染区域を取り囲んで地下水を遮蔽できるかというと、そんな実績はなかった。しかも、真水を凍らせるわけではないのです。地中の水分量の分布はバラバラだし、不純物の混ざり具合など、ありとあらゆる自然界の条件の中で、大規模の凍土壁を造って、地下水を完璧に遮断できるのか。非常に怪しいと思います」

 だから、「鉛直バリア(ベントナイトスラリーウオール)方式」が採用されたのだ。
「これは地下30メートルの難浸透層まで掘り下げて地下遮水壁を造り、原子炉建屋の四方を囲んで完全に遮断しようという案です。壁の材質は、クラック(ヒビ)などが入るコンクリートではなく、ベントナイトと呼ばれる鉱物が入った粘土を使うことになった。これで原子炉建屋の放射性物質を封じ込め、地下水流入も防げる。私は2011年6月11日、国会議員として初めて原発のサイトに入って、吉田所長とともにこの地下遮水壁の境界を確定する仕事をやりました。吉田所長は当初、『他の工事と干渉する』という理由で地下遮水壁建設に反対した。当時は、粉塵を封じ込める飛散防止剤散布や建屋を覆う工事などが並行して進んでいたからです。それでも吉田所長を説得して、地下遮水壁を進めようということになった。ところが、6月に記者発表をする段階で、東電からストップがかかった。『(地下遮水壁工事で)新たに1000億円の費用が発生すると、株主総会に影響を与えるから待ってくれ』というのです

 結局、地下遮水壁のプランは、馬淵がその後、首相補佐官を外されたこともあって、立ち消えになっていく。大甘の東電は海側にだけ遮水壁を造ることにして、お茶を濁し、これが目下の惨状を招いたのだ

 当時から遮水壁建設に取り組んでいれば、今頃、汚染水であわてることはなかった。五輪招致でつっつかれることもなかったわけだ。

「これからベントナイトスラリー方式をやっても完成まで時間がかかる。緊急対策として鋼鉄製の矢板を打ち込んで、山側の地下水の流入を止めるべきです。今後はそれを提案しています」

 無責任東電と泥縄安倍政権に任せていても、どうにもならない。(取材協力・横田一)



 たしかに、馬淵は正しい主張をしたのかもしれない。しかし、彼も、結局は東電に押し切られた当時の民主党政権の一員であり、自分だけ“いい子”にはなるわけにはいかない。今になって自民党との政争の道具にするなどは、論外である。

 重要なのは、当時の検討内容などが、自民党政権への「引き継ぎ事項」として情報が継承されたのか、ということ。政権が替わって、過去のフクシマ対策に関する履歴が正しく伝わっていないとしたら、それは民主党、自民党、そして霞ヶ関の官僚たちの国民への裏切りに等しい怠慢である。

 遮蔽プロジェクトチームには、官僚もメンバーとして含まれていたはずだ。きっと今でも霞ヶ関のどこかにいるのではないか。素人ながら、どうも「凍土」作戦を危ぶんでいたので、一度しっかりと吟味して捨てた案ならば、安倍政権はもっと別な方策を検討すべきだ。そのためのブレーンであり補佐として官僚は存在していうのではないか。それとも、それらの情報も自民党が共有していての「凍土」なのか・・・・・・。

 また一年二年経過して、「あの時、こうしていれば」などという話は聞きたくない。政権が替わっても国政に齟齬をきたさないようにするのが霞ヶ関の官僚の仕事ではないかと思うのだが、どうも、永田町と同様にその視線は市民に向けられてはいないようだ。

 世界で原発を推進する基幹であるIAEAの総会でも、当り前に日本への疑問、不安が投げつけられた。
「朝日新聞」サイトの該当記事

2013年09月17日17時49分

汚染水対策、IAEA総会で報告 各国から疑問噴出

 【ウィーン=喜田尚】16日にウィーンで開会した国際原子力機関(IAEA)の年次総会で、日本政府は、放射能汚染水漏れなど東京電力福島第一原発の現状を説明する独自の報告会を開いた。詳細な情報を提供して各国専門家の理解を得る狙いだったが、会場からは政府の取り組みについて様々な疑問の声が上がった。

 報告会には経済産業省、環境省、原子力規制委員会のほか、電力会社と原子炉メーカー、研究機関で作る「国際廃炉研究開発機構」からもパネリストが出席。スライドを使いながら約1時間、汚染水漏れの詳細な状況や対策について説明し、除染作業や廃炉についても各機関の取り組みを紹介した。

 しかし、立場が異なるはずのパネリストが並んだこともあって、各国代表団の専門家から「日本が原子力規制委員会を設立したのはよかったが、(電力会社、政府、規制当局の間に)まだ立場に混同があるのでは」との疑問の声が出た。

 スロベニアの規制当局関係者は「汚染水がたまる問題は(事故の)当初からあったことだ。なぜ2年間も解決策が探られてこなかったのか」と指摘した。

 また、汚染水対策などで政府が前面に立つとの説明に、「責任をとるのは誰なのか」との質問も出た。日本側は「廃炉も除染も賠償も、一義的な責任は東京電力。しかし、財政的にも難しい状況にあり、同社が作業をできるように政府が支援していく」などと説明に追われた。

 一方、総会に出席した山本一太科学技術担当相は、記者会見で「状況はコントロールできている」と強調した。「福島第一原発の港湾の外では海水の放射線量は世界保健機関(WHO)の飲料水のガイドライン以下」であることを根拠とした。東電の山下和彦フェローが「コントロールできていない」と話したことについて「原発の港湾内について言及したものだ」との認識を示した


 山本一太は安倍の発言を擁護するための“言葉遊び”をしているが、そんな“詭弁”は、もうこりごりである。

 スロベニアの規制当局関係者に言われなくても、国民は言いたい。

 “なぜ2年間も解決策が探られてこなかったのか”

 「覆水盆に返らず」とはこのことである。下手なシャレになるが、「フクシマの汚染水」→「フク水」をこれ以上漏れるのを防がなければ、五輪どころではなくなる。
 
 上方落語『はてなの茶碗』(東京の『茶金』)は、水の漏れる茶碗を高名な鑑定人が「はてな?」と言って首をひねることで値が上がったが、放射能の漏れる国は、世界中の誰もが「はてな?」と言って、訪れるのを敬遠することになるだろう。

 東電に責任を押し付けようとして抜本的な対策を怠ったという点においては、あの時の民主党も、現在の自民党も同罪である。「国策」で進めてきた原発の後始末も、やはり国策で行なう責任はあるだろう。

 しかし、我々の血税を使う以上は、国民に納得できる説明をする義務がある。
 
 「フク水」をこれ以上漏らさないための、最善の策を検討し、国民の理解を得ること、これこそが安倍政権の最優先課題ではなかろうか。世界の目も、国民の目も、安倍政権が思うほど甘くはない。
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by koubeinokogoto | 2013-09-18 19:01 | 原発はいらない | Comments(2)
復興庁ができ、復興予算が「5年で25兆円」と計画され、このうち10・5兆円は「復興増税」でまかなうため、今年1月から25年間は所得税に所得税額の2・1%分が上乗せされるている。加えて、2014年6月から10年間は住民税に年に1千円が加わる。消費税だって来年8%になりそうだ。

 そういった国民の“血税”がまったく無駄に扱われ、なおかつ原子力ムラのためにも使われている。

 あくまで大震災、そしてフクシマからの「復興」のために使われるはずの血税が、いまだに他の費用に流用されているのが実態が変わらない。少し前の新聞記事だが、引用したい。
「朝日新聞」サイトの該当記事

2013年9月8日

企業、今も補助金PR 復興予算流用 経産省、在庫分黙認

「復興流用基金」を安倍政権が見直してから2カ月。根本匠復興相も7月に「しっかりと使途を厳格化した」と明言していたが、抜け道はまだあった。

 節電機器を買うと補助金が出る経済産業省の2事業は、「電力不足で被災地の復興に支障を来さないよう日本全体で電力の負荷を下げる」ために始まった。

 2011年11月に510億円の予算が配分されてから、今年3月末までに使われたのは計34億円に過ぎなかった。しかし、安倍政権に「復興流用基金」のうち、まだ使っていない予算を返すよう求められると、経産省は370億円を加えた額を「実質上、執行済み」と7月2日に発表。わずか3カ月間で、昨年度までの11倍もの額を「執行」できたのは、「実質上」のあいまいさにある。

 返還の発表直後、額の根拠を、節電メーターの事業を担当する経産省・資源エネルギー庁省エネルギー対策課に尋ねたところ、「関係全業者に、補助を前提とした契約がどれだけあるかヒアリングした。(これから売れる数の)推計は入っておらず、契約済みのものを足し上げた」と明言した。

 ところが、企業はその後も、補助金による割引を宣伝文句にして節電機器を売り続けている。「この夏の節電は補助金でお得に!」。節電メーターを売るNTT東日本は7月6日、こう題したメールを自社サービスの会員に送信した。4万2千円の「お手軽パック」が、補助金を得れば自己負担額が2千円になると売り込む。

 8月下旬、東京都港区のパナソニックのショールームでは、節電メーターを紹介するボードに「補助金対象品」とあった。同社広報は「補助金制度が終了するまで、従来通り営業活動を続ける」と話す。基金を管理する社団法人「環境共創イニシアチブ」も、補助金の申請は「来年1月31日の消印まで有効」という。

 9月に改めて省エネ対策課に尋ねると、説明が変わった。「補助金制度を前提に契約済みと、契約一歩手前のものを足した。一歩手前をどう線引きするかは難しいが、業者は見込みが全然ないものは発注しないだろう」と、業者へ厳格な確認はしておらず、在庫分でも問題視しない認識を示した。

 元会計検査院局長の有川博・日本大教授は「経産省は業界の混乱を防ぐ名目で事業を継続しているようだが、本来は1円でも多く被災地にまわすべき予算。復興のためと思っていた納税者の理解は得られない」と話す。(古城博隆、座小田英史)


 流用が、必ずしも“悪徳業者”ばかりの仕業ではないことを、太字で再確認。
“8月下旬、東京都港区のパナソニックのショールームでは、節電メーターを紹介するボードに「補助金対象品」とあった。同社広報は「補助金制度が終了するまで、従来通り営業活動を続ける」と話す。基金を管理する社団法人「環境共創イニシアチブ」も、補助金の申請は「来年1月31日の消印まで有効」という。

 9月に改めて省エネ対策課に尋ねると、説明が変わった。「補助金制度を前提に契約済みと、契約一歩手前のものを足した。一歩手前をどう線引きするかは難しいが、業者は見込みが全然ないものは発注しないだろう」と、業者へ厳格な確認はしておらず、在庫分でも問題視しない認識を示した”

 この補助金の対象はパナソニックのみならず、ソニーの製品なども該当している。
 
 それらの製品には、「節電」をするための効果もあるのかもしれない。しかし、それって「復興予算」の使い道ではなかろう。

 被災地からの声が、同じ記事に載っている。

■「復興と無関係」 あきれる被災者

 復興予算から補助金が出る節電メーターや蓄電池は、被災地ではあまり「復興」に結びついていないようだ。

 宮城県気仙沼市の仮設住宅で暮らす千葉ミサヲさん(84)は年金生活で、毎月の生活費は3万円。電気代は月1千円台という。節電メーターに補助金が出ることを記者が説明すると「そんなもんいるの? 私はそんな難しい生活してない」と話した。家電を使わないときは、コンセントから抜いているという。

 同市の30代男性も「メーカーにとってはいい話かもしれないが、復興とは無関係。日頃からこまめに電気を消せばいいだけでは」とあきれた様子だ。

 それよりも、自宅再建のための補助制度が今後、終わってしまわないかと心配する声が多く聞かれた。


 宮城県女川町の仮設住宅で暮らす養殖業、小松長一さん(72)は「家が建てられる人がうらやましい」と話す。国や町が出す補助金を頼りに、集団移転先に自宅を再建するつもりだが、人手や資材が不足して整地が始まらない。移れるのは早くて3年後。目の前の道路や仕事で使う港の復旧も、進んでいない。

 「うちらが使うときに予算が残っているでしょうか。消費増税って言っているぐらいだから、国にもお金がないんでしょう」と不安を口にする。


 基金を管理する社団法人「環境共創イニシアチブ」は経産省の天下り先との指摘もある。この団体のサイトには代表理事の名しか載っていない。怪しい。

 被災者ではなく、自宅がある人が節電するための、はっきり言って不要不急のメーターに税金で補助が出て、被災者の方への支援が減っているだろう現実。そして、それを天下り先団体や企業と役人が結託して進めているのが実態ならば、これは犯罪的な「復興予算悪用ムラ」が出来ているということだ。

 復興予算というおいしい金脈を狙って、「お代官様」と「越後屋」がいたるところでヒソヒソ話をしているのが、想像できる。 

 元会計検査院局長のコメントの通りだが、我々納税者は納得しないぞ。

「節電メーター」の他の「流用」先も同記事に載っていた。

■「基金」を通じた流用の主な事例

 <震災等緊急雇用対応事業>
 ゆるキャラやご当地アイドルのイベント費など    1892億円

 <森林整備加速化・林業再生事業>
 「被災地の住宅再建に必要」と全国で林道などを整備  943億円

 <国内立地推進事業費補助金>
 被災地以外でも工場立地などを補助         2747億円

 <火力発電運転円滑化対策費補助金>
 浜岡原発を停止した中部電力を支援         82億円

 <温排水利用施設整備等対策交付金>
 浜岡原発周辺の養殖用ボイラー設置費などを負担    7億円

 <住宅用太陽光発電導入支援基金>
 太陽光発電の普及を早めるため購入費を補助     1194億円

 (金額は「実質上、執行済み」とされた予算)


 太字にしたが、中部電力や浜岡原発関連への流用は、ブラックジョークかと思った。

 マスコミがさかんに取り上げる“ゆるキャラ”イベントに、なぜ我々の税金が「復興予算」として使われるのかも大きな疑問だ。

 消費税を上げるのなら、復興予算の適正な運用に対し、政府はしっかり対策を示すべきだろう。そうしなければ、我々国民の血税は、またとんでもない使われ方をする危険性が高い。間違っても原子力ムラに使われるのなんて、まっぴらである。

 こんな状態が続くのなら、税金の国への支払いを拒否し、直接被災地に届けたくなる。日本人の美徳でもあるが、納税者がこれだけ国にコケにされて抗議活動や暴動が起らないのが、外から見れば不思議ではなかろうか。

 消費税を上げる前に、復興予算の犯罪的流用を黙認せず、適正に運用する対策を政府はすべきだ。これは、放射能汚染水対策のために、不正な流用から税金を取り戻して投入することにもつながる。
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by koubeinokogoto | 2013-09-15 10:03 | 原発はいらない | Comments(0)
2020年東京五輪開催が、なんとか大震災とフクシマの復興の契機にならないかと思っているが、「3・11」が「8・15」と同様に「ニッポン・イデオロギー」が招いたものだと、主張する本がある。もしその通りだとするなら、「ニッポン・イデオロギー」なるものから脱しなければ、将来も「○・○○」が繰り返される、ということだ。

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笠井潔著『8・15と3・11-戦後史の死角』

 笠井潔の『8・15と3・11-戦後史の死角』(NHK出版新書)は、2012年9月10日、ほぼ一年前の初版発行。

 著者の最終的主張には疑問を持つが、原発推進の歴史的背景や、今になってなもなお原発を再稼動させようとする原子力ムラの分析などには、なかなか鋭い視線を感じた。

 笠井は「ニッポン・イデオロギー」について、次のように説明する。(「第二章 20世紀戦争とは何だったのか?」より)

 「空気」に支配された日本人の共同性は、原理的に歴史意識をもちえない。長期的視野を欠いた当面の利益への固執、不決断と問題の先送り、相互もたれあいの人間関係、あとは野となれ式の無責任などなど、8・15と3・11に共通する思考と行動の特異な様式は、ニッポン・イデオロギーの産物にほかならない。


 
 笠井が挙げた要素は、今日の日本国中枢部の悪しき特徴をも表現しているだろう。

 本書前半では戦争の様相について、19世紀を“国民戦争”、20世紀“世界戦争”、そして21世紀は“世界内戦”の時代と定義している。たしかに、「9・11」以降、戦争の主体は祖国に基盤を持つ国に限らず、祖国に依存しないテロの時代になった。

 著者は、「3・11」を招く大きな要因として「潜在的核保有」という政治的な政策を挙げる。(「第四章 潜在的核保有国ニッポン」より)

 日本のNPT(核拡散防止条約)加盟には、近年まで政府が隠蔽してきた「極秘」の事情がある。原子力の平和利用を名分として原子力発電の導入を推進したのは、中曽根康弘や小山倉之助など改進党再軍備派、のちの自民党右派である。日本の原子力平和利用は、軍事利用の可能性を担保するものとして出発している。
 中曽根や正力のバックにいたのが自民党右派総帥の岸信介だが、首相時代の岸は国会答弁で、当面のところ核武装の意思はないと繰り返した。しかし、これは建前にすぎない。自民党の改憲再軍備派は最高権力の座に着くと、対米従属の必然性に足をさらわれ、建前と本音を引き裂かれることになる。こうした自己分裂は岸から中曽根、さらに安倍晋三で続いた自民党右派勢力の宿命だった。
 岸時代の秘められた野心を実効化したのは、実弟の佐藤栄作だった。沖縄返還交渉の過程で佐藤首相は、極秘のうちに日本の核兵器製造と核武装化の検討を命じる。日本が核武装する可能性を取引材料として、佐藤はアメリカに沖縄返還を求めた。非核三原則を国会で決議し、NPTに加盟することで当面の核武装はないと安心させ、その代わりに核抜き沖縄返還をアメリカに迫る。
 核武装カードを使った佐藤外交によって沖縄返還は実現されるが、有事の核持ち込みを容認するとの密約で、非核三原則は最初から空文化していた。また米軍基地撤去という沖縄民衆の切実な要求も、返還の時点から裏切られる運命にあった。



 アメリカは、原発を日本に売り込んだが、核兵器を日本が保有することには警戒していた。アメリカにとっては、日本は国ぐるみでまた戦争を起こしかねない国であり、「世界の警察」アメリカの存在を脅かしかねない国と映っていた。
 
 しばらく水面下にあった杞憂は、安倍政権になってからあらためて認識されているはずだ。ただし、今のオバマ政権は、シリアを含めあまりにも多くの難問を抱えていて、地政学的な問題としては日本は緊急課題にはならず、それよりもTPP参加によって日本市場をアメリカの農業や医薬、保険産業で侵略させるために、安倍政権は重要なパートナーと映っているだろう。

さて、佐藤栄作が兄の意思を継いで核武装を検討した、その後の経緯である。

 佐藤内閣による核武装の検討は長く秘匿されていたが、冷戦の終結以降しだいに表に出はじめる。今日では、たとえば佐藤首相が任命した外交政策企画委員会による極秘文書「わが国の外交政策大綱」(1969年)の公開などによって、その概要を知ることができる。
 マスコミによるスクープや政府文書の公開から明らかにされてきたのは、日本を「潜在的核保有」国家とすることが政府中枢の意思決定による“国策”だった事実だ。1950年代、60年代には憲法解釈などの抽象論として論じられてきた日本の核武装だが、非核三原則の国会決議以降、あるいはNPT加盟以降の1970年代には、すでに現実の問題となっていた。
 ただし、即座に核兵器を開発し保有しようというわけではない。「わが国の外交政策大綱」では、次のように述べられている。

  核兵器については、NPTに参加すると否とにかかわらず、当面核兵器
  は保有しない政策をとるが、核兵器製造の経済的・技術的ポテンシャル
  は常に保持するとともに、これに対する掣肘をうけないよう配慮する。
  又核兵器一般についての政策は国際政治・経済的な利害損失の計算に
  基づくものであるとの趣旨を国民に啓発する・・・・・・。

 アイゼンハワー大統領の国連演説からも明らかであるように、もともと軍事利用のために開発された原子炉の機能を逆転し平和利用するものとして、原子力発電は出発している。
 この論理をさらに再逆転し、平和利用の名目で建設される原発を、潜在的に軍事利用すること。発電用原子炉の核廃棄物を再処理してプルトニウムを抽出し、高速増殖炉の燃料にするという核燃料サイクルは、核の軍事利用に平和利用という糖衣を着せたものにすぎない。


 引用されている文を含む昭和44(1969)年の「わが国の外交政策大綱」は、報告書をスキャニングしたPDFが、本書巻末に紹介されている次の外務省サイト該当ページで確認できる。表紙には「極秘」の印が押されている。
「わが国の外交政策大綱」(PDF)
 「潜在的核保有」が「国策」であったことの紛れもない証拠である。核燃料サイクルは、岸-佐藤と続く自民党右派政権の「潜在的核保有」政策に基づいている。そして、祖父のDNAを引き継ぐ安倍晋三は、憲法改正再軍備という祖父の“夢”を実現させようとしている。

 まったく「節電」の話題がマスコミから消えたのは、あらためてどんどん電気を使わせ、「やはり原発が必要だ」という世論を形勢するための伏線である。まったく節電ムードのなかった今年の猛暑、原発が一基も稼動しなかった東日本で電力不足の恐れなど誰かが口にしただろうか。

 原発がなくても電力は不足しない。しかし、燃料費高騰を理由に値上げを電力会社は主張する。もし、その主張に道理があるなら、高くても安全な電力を使おうじゅないか。しかし、原発の価格の裏には数々の誤魔化しがあるのは承知の通り。廃炉費用なども考慮したら、とんでもなく高くて危険な電力であることは明白だ。もちろんフクシマの復興費用だって“原発のコスト”に違いない。

 あらためて再組織化している原子力ムラ、そして繰り返されるであろう安全神話、もうじき再度聞こえてくるであろう、「電力不足とコストを考えた原発再稼動」の囁き。

 安倍のIOC総会の大嘘を、嘘から出た誠にしないでは、3.11からの復興はおぼつかない。そして、安倍のiOC総会での大嘘を真に受けるほど、日本も世界も馬鹿ではない。

 笠井潔が言うところの、「空気」に支配され長期的視野を欠いた当面の利益への固執、不決断と問題の先送り、相互もたれあいの人間関係、あとは野となれ式の無責任 な「ニッポン・イデオロギー」から脱皮しなければ、3.11という教訓を生かすことにはならないだろう。今、日本は歴史的に重要な分岐点を迎えていると思う。
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by koubeinokogoto | 2013-09-14 07:15 | 原発はいらない | Comments(2)
もう調査結果を待っていたり、様子を見てから行動するような状態ではない。

 汚染水のことは何度か書いてきたが、東電がコストを優先して設置した鉄製でボルト締めタイプの「欠陥タンク」から放射能汚染水が漏れるのは、事前に想定できたことだ。

 すでに相当の量が外洋にも流れていると考えるべきだろう。
 
 海には県境もなければ、国境だってない。地球を汚染し続けている。

 朝日の記事から。
「朝日新聞デジタル」の該当記事

汚染水、外洋まで流出か 海近くの排水溝、一時高濃度
朝日新聞デジタル 9月13日(金)12時36分配信

 【木村俊介】東京電力福島第一原発のタンクから高濃度の汚染水が漏れた事故で、海近くの排水溝で放射性ストロンチウムなどの濃度が11日に一時的に高まっていたことがわかった。東電はこの日まで、排水溝の上流で除染作業をしていた。「汚染水の一部が海に出ている可能性は否定できない」という。

 排水溝は雨水などを流す設備で、直接外洋につながっている。外洋から150メートルの地点で、11日に採取した水からストロンチウムなどベータ線を出す放射性物質が1リットルあたり220ベクレル検出された。放射性セシウムも104ベクレル検出された。12日に再び水を採取して測ると、放射性物質は検出限界値未満だった。

 上流には、300トンの高濃度汚染水漏れを起こしたタンクがあり、漏れが発覚した直後に汚染水が排水溝に流れ込んだ。このため、11日に排水溝を高圧洗浄して、たまっていた泥などを除去する作業をしていた。その作業で放射性物質の一部が下流に流れた可能性があるという。


 
 オリンピック招致のため、世界に向かって堂々と大嘘をついた安倍政権の支持が上がるという、日本とは何とも不思議な国だが、安倍は嘘から出た誠にするために、早急に対策を進める責務がある。

 もう東電には解決不可能。それを分かっていながら無為無策の日本政府には、「お祭り」に金と時間を費やす余裕などないはずだ。

 この問題は7月にも書いた。2013年7月13日のブログ
 その際、高木仁三郎著『プルトニウムの恐怖』の引用で、福島第一にどれだけの放射能があったと想定されるかを紹介した。原発を一年間稼動させて止めた場合の理論値である。再度書くが、福島第一のメルトダウンとメルトスルーの際、あの原発には許容量で4000兆人分相当の放射能が、理論上あったことになる。約70億人の全地球人口を、いったい何回消滅させるだけの放射能が発生しているのかを計算してみた。

 4,000,000,000,000,000(4000兆)÷7,000,000,000(70億)=571,428 

 あくまで想定される理論値だが、地球全人類を57万回“全滅”させるだけの放射能が存在していたのだ。200万キロワット相当規模の他の原発にも、同数の放射能が原発内に存在する。

 全人類を57万回全滅させるだけの放射能があった状態で、メルトダウン、メルトスルーが起きた。

 東電も政府も「津波」にのみ「全電源喪失」の原因をなすりつけるが、たとえそうだったとしても、大地震と津波が、原発施設や大地に破壊や亀裂を引き起こしたと考えるのが、常識だろう。その後にも、結構大きな地震が痛んだ施設や緩んだ大地に襲いかかっていたのだ。

「欠陥タンク」のことについては、日刊ゲンダイの記事を引用して先月書いた。2013年8月22日のブログ

 毎日何十万トンをいう冷却水が放射能にまみれている。その汚染水を格納しているのは、真っ当な技術者ならつくらない、ステンレスではなく鉄製、溶接ではないボルト締めの「欠陥タンク」だ。

 このタンクから漏れるのは、当たり前である。しかし、コストと時間のみを優先し、長期的、抜本的な対策を考えることのなかった東電を、政府は放任した。きっと、何かあったら東電に責任をかぶせよう、という腹だったのだろう。当時の政権与党が民主党だろうが、自民党の責任逃れはできない。民主党が自滅するのを眺めているだけで、国民視点に立った野党としては、まったく機能していなかったからである。もっと言うなら、原発を推進してきたのは、予算を無理やり通した中曽根からの歴史を継承する自民党だ。

 もちろん、安倍政権になってからだって、いくらでも手は打てたはずだ。今からでもやれることはある。いや、やらなければならない。

 まったく的外れな対象に流用されている「復興予算」や、オリンピックのために自然や景観を破壊するための予算などをかき集め、汚染水対策を含む「復興」に投入することが最優先されるべきだ。

 そうしなければ、フランスの新聞が風刺漫画で指摘しているユーモアは、とても「冗談」では済まないだろう。
「朝日新聞」サイトの該当記事

 菅官房長官は、この風刺漫画に対し、「東日本大震災で被災した方々の気持ちを傷つけ、福島第一原発の汚染水問題に誤った印象を与える不適切な報道で、大変遺憾だ。大使館から同紙にしかるべく抗議する」と言っているが、傷ついたのは、痛いところを突かれた政府であり、汚染水問題に誤った印象を与えるものでもない。

 今の状態を放置していたら、どんな悲劇が起こるかは、過去に例のない事態なので誰も分からない。しかし、解決しなければ、七年後に「お祭り」など出来る状態ではないだろうと、私は想定する。

 海に放射能を垂れ流し続ける国に、世界からアスリート達がやって来るのかどうか、私には疑問だ。250kmなど、海外から見たら近所のお隣さんである。「福島は危険だが、東京は大丈夫」という主張は、国内外ともに通じない。日本が危険なのであり、それがどんどん地球規模で拡大中なのが、今なのである。
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by koubeinokogoto | 2013-09-13 12:40 | 原発はいらない | Comments(0)
「Nature」9月3日の記事を、安倍首相は読んでいないだろうから、ぜひ「内田樹の研究室」にある内田自らの訳を読んでもらいたい。まぁ、読まないだろうけど・・・・・・。

 内田は、この前の記事で「AERA」に書いた五輪招致反対の持論を再掲載していた。しかし、東京開催は決まった。安倍首相は、世界に向かって大嘘をついた。IOCのメンバーはどこまで真相を知っているのか分からないが、海外の科学者は、危険な実態をしっかり把握している。

「内田樹の研究室」の9月6日の記事

9月3日のNature のEditorialに福島原発からの汚染水漏洩への日本政府および東電の対応について、つよい不信感を表明する編集委員からのコメントが掲載された。
自然科学のジャーナルが一国の政府の政策についてここまできびしい言葉を連ねるのは例外的なことである。
東電と安倍政府がどれほど国際社会から信頼されていないか、私たちは知らされていない。
この『ネイチャー』の記事もこれまでの海外メディアの原発報道同様、日本のマスメディアからはほぼ組織的に無視されている。
 (中 略)
海外の科学者たちが「福島の事故は対岸の火事ではない。私たち自身に切迫した問題だ」という危機意識を持って国際的な支援を申し出ているときに、東京の人間が「福島の事故は250キロ離れた『対岸の火事』ですから、五輪開催に心配ありません」と言い放っているのである。
怒りを通り越して、悲しみを感じる。

英語を読むのが面倒という読者のために『ネイチャー』の記事の抄訳を試みた。

破壊された福島の原子力発電所から漏洩している放射性物質を含んだ流出水は、1986年ウクライナでのチェルノブイリ・メルトダウン以後世界最大の原子力事故の終わりがまだ見通せないことをはっきりと思い出させた。
2011年3月に福島原発に被害を与えた地震と津波の後、この地域を除染するための努力は今後長期にわたるものとなり、技術的にも困難であり、かつとほうもない費用を要するものであることが明らかとなった。
そして今またこの仕事が原発のオーナー、東京電力にはもう担いきれないものであることがあらわになったのである。
日本政府は9月3日、東電から除染作業を引き継ぐ意向を示したが、介入は遅きに失した。
事故から2年半、東電は福島の三基の破壊された原子炉内の核燃料の保護措置についての問題の本質と深刻さを認識していないことを繰り返し露呈してきた。
毎日およそ40万リットルの水がロッドの過熱を防ぐために原子炉心に注水されている。汚染された水が原子炉基礎部に漏水し、コンクリートの裂け目を通じて地下水と近隣の海水に拡がっていることを東電が認めたのはごく最近になってからである。
東電以外の機関による放射能被曝の測定は難しく、私たちが懸念するのは、この放射能洩れが人間の健康、環境および食物の安全性にどのような影響をもたらすことになるのかが不明だということである。
問題はそれにとどまらない。使用済みの冷却水を保存している1000の貯蔵庫があり、これらは浄化システムによる処理を経ているにもかかわらずトリチウムやその他の有害な放射性核種を含んでいる。漏洩はこのシステムがいつ爆発するかわからない時限爆弾(laxly guarded time bomb)だということを明らかにした。



肝腎な部分を太字で再確認。
“事故から2年半、東電は福島の三基の破壊された原子炉内の核燃料の保護措置についての問題の本質と深刻さを認識していないことを繰り返し露呈してきた。
 毎日およそ40万リットルの水がロッドの過熱を防ぐために原子炉心に注水されている。汚染された水が原子炉基礎部に漏水し、コンクリートの裂け目を通じて地下水と近隣の海水に拡がっていることを東電が認めたのはごく最近になってからである。
 東電以外の機関による放射能被曝の測定は難しく、私たちが懸念するのは、この放射能洩れが人間の健康、環境および食物の安全性にどのような影響をもたらすことになるのかが不明だということである”

 
 政府は東電に責任をかぶせようとするだろうが、原発を推進したのも、フクシマを起こしたのも、そして事故後の対応における無為無策についても、政権与党が変わっていようが、政府の責任は免れない。特に、自民党は、原発予算をなし崩しに通した中曽根から続く犯罪に近い過去の歴史を背景としている。

 すでに漏れていることに加え、毎日大量の放射能汚染水が作られている、という現実・・・・・・。

 8月22日のブログで掲載した「日刊ゲンダイ」(Gendai.Net)の記事を再度引用したい。
「Gendai.Net」の該当記事

福島第1原発 汚染水タンク350個が全滅危機
【政治・経済】2013年8月21日 掲載

東電の安普請・ドロナワ作業で最悪事態

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東京電力提供

 どうしたらこうなるのか。東京電力は福島第1原発のタンクから漏れた放射能汚染水の量を当初「少なくとも120リットル」と推定していたのに、20日になって「300トンに達する」と変更した。一気に2500倍に増えたことに絶句だが、汚染水の漏出量はこんなものでは済まない。

 東電はダダ漏れになっていた地下貯水槽の汚染水を、6月上旬までに地上タンクに移し替えた。タンクは直径12メートル、高さ11メートルの円柱状で、容量は約1000トン。漏れた300トンは大体、25メートルプール1つ分だ。

 実はこのタンクは当初から“ヤバイ”と指摘されていた。部材を溶接ではなく、ボルトでつないで組み立てる構造のため、ボルトが緩んだり、止水用パッキンが劣化すると、汚染水が漏洩するんじゃないかと懸念されていたのだ。

「過去に4回、タンクから汚染水漏れが起きていて、いずれもつなぎ目部分から見つかっています。今回はまだどこから漏れたか分かりませんが、恐らく、つなぎ目に原因があるのでしょう」(ジャーナリスト・横田一氏)

 東電によると、パッキンの耐用年数は5年ほど。交換するにはタンクそのものを解体しなければならないが、漏洩が見つかるたびに解体するのは非現実的だ。外側から止水材を塗るなど、その場しのぎの対応に追われることになりそうだ。

 問題はボルトとパッキンだけではない。タンクが“鋼鉄製”なのも大きな懸念材料という。日本環境学会顧問・元会長で元大阪市立大学大学院教授(環境政策論)の畑明郎氏が言う。

「汚染水は原子炉冷却に使われた水で、当初の海水冷却により塩分を含むものです。鋼鉄製のタンクは錆びやすく、腐食して穴が開き、漏れた可能性があります。安全性を考えるのであれば、東電は鋼鉄製ではなくステンレス製のタンクにすべきでした」

<錆びて腐食、止水用パッキンの寿命はたった5年>

 東電がそうしなかったのは、鋼鉄製の方がコストがかからないからだ。さらに言うと、溶接型ではなくボルト型にしたのも、短時間で増設できるから。いかにも東電らしいドロナワ対応といえるが、このボルト式の同型のタンクは敷地内に350個もある。もし、今回と同じ300トンの汚染水がすべてのタンクから漏れ始めたら、10万トンではきかない計算になるから、考えるだけでもゾッとする。

 しかも、汚染水は1日400トンのペースで増え続けていて、東電は現在貯蔵可能な約39万トン分のタンクの容量を2016年度までに80万トン分まで増やす計画だ。
 一方で安普請のタンクからの汚染水漏れの手当ても同時にやらなければならない。

 今回の汚染水からは、法令で放出が認められる基準(1リットルあたり30ベクレル)の数百万倍に達する8000万ベクレルの放射性ストロンチウムが検出された。300トン分で約24兆ベクレルである。

 はっきり言って東電は終わっている。



太字で再度。
“鋼鉄製の方がコストがかからないからだ。さらに言うと、溶接型ではなくボルト型にしたのも、短時間で増設できるから。いかにも東電らしいドロナワ対応といえるが、このボルト式の同型のタンクは敷地内に350個もある。もし、今回と同じ300トンの汚染水がすべてのタンクから漏れ始めたら、10万トンではきかない計算になるから、考えるだけでもゾッとする”

 東電の怠慢による現状の“欠陥タンク”を、本来のステンレス製で溶接するタイプの頑丈なタンクに替えて、“欠陥タンク”の汚染水を移し替えるのに、どれだけの費用と時間と困難が伴うのか、私にはわからない。

 しかし、オリンピックのためにこれからも投じられるだろう国家予算を上回るとは思えない。

 たしかに政府がこの重要問題に対処するのは遅きに失したかもしれない。しかし、今すぐ取りかからなければ、“欠陥”タンクから放射能にまみれた水が、どんどんこぼれるばかりだろう。

 みちろん、地下をどうするかも重大かつ緊急課題だ。

 世界の英知を集中させて、解決とりかからないのなら、七年後の日本は、オリンピックどころではなくなるだろう。

再度、「内田樹の研究室」の該当記事から引用。

漏水は当初ただの「異常」とされたが、のちに真性の危機(a genuine crisis)であることがわかったのである。
日本は国際的な専門家に支援のための助言を求めるべきときを迎えている。米国、ロシア、フランス、英国などは核エンジニアリング、除染および放射線の健康被害についてのノウハウを持っており、日本の役に立つはずである。
国際的な研究と除染のための連携はモニタリングと危機管理の有用性と有効性についての粉々に打ち砕かれた信頼(shattered public trust)を回復するための一助となるであろう。
漏水が最も大きな影響を及ぼすのは福島沖とそこから拡がる太平洋への影響である。この影響については精密なモニターがなされなければならない。
日米の科学者によって2010年と2011年に行われたアセスメントでは二つの重大な問題が答えられぬまま残った。どれだけの放射能が海洋に浸入しているのか?原発事故以後長い時間が経ったにも拘わらずいくつかの種において高いレベルの放射能が検知されているわけだが、問題の地域の魚介類の消費がいつ可能になるのか?漏水によって、これらの問いへの答えることが喫緊の課題となっている。


 
 「異常」ではなく、「真性の危機」(a genuine crisis)、という言葉には、「他の大部分が正常で、一部が異常」ということではなく、「大部分が問題あり」ということだ。

 オリンピック招致を喜ばない国民が「異常」な状況が、「大部分の国民が喜ばない」ことに変わるのは、案外そう先のことではないかもしれない。

 海産物資源や飲料水が危険にさらされ、住んでいる環境が放射能に日々汚染されていった場合、果たして、国をあげて「お祭り」などをする気持ちになれるのか。生活の基盤を脅かされて、「世界大運動会」などを楽しむ心の余裕など生まれるはずがないのではなかろうか。

 日本のイデオロギーを表現する言葉に「空気」がある。KYは「空気を読めない」という意味なのはご存知の通りだが、このままでは生きるための「空気」も「水」も放射能まみれになりかねない。

 政府は、原子力ムラを再組織化し、御用学者たちを動員して、再び「安全神話」を浸透させようとするのだろう。そして、「8.15」や「3.11」に至ったのと同じ、「空気」に支配され、何ら長期的展望も持たず、誰も責任をとるつもりのない「ニッポン・イデオロギー」(笠井潔の言葉より)で、新たに悲劇的な「○.○○」を迎えようとしている。

 あえて『論語』から、「過ちては改むるに憚ること勿れ」という言葉を記しておこう。アメリカの属国となる前に、日本人は中国の古典から数多くのことを学んだ。日清、日露戦争の指導者の座右には、四書五経があった。

 都市化をどんどん進め「地縁」「血縁」を積極的に崩壊させ、アメリカの核の傘の下で呑気に平和を享受して、迎えた「3.11」。

 フクシマの放射能問題解決の方向性は、「元の自然環境に戻す」ことであって、昨日より今日、今日より明日、という近代化のための右肩上がり的な進歩を目指すのとは、大きく違ったものである。あえて言うならば「古き良き時代」を取り戻す行為である。それは、しょうがないのだ。汚してしまったのだから。

 いっそ、汚してしまった日本人の精神も、取り戻せないものか。その学ぶべき相手は太平洋の向こうではなく、すぐ近くのアジアにいるように思う。
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by koubeinokogoto | 2013-09-11 00:21 | 原発はいらない | Comments(2)
以前にも引用した4月13日付けの日経の記事を再度ご紹介。珍しく画像もJPEG形式でペーストできたので、日米合意をまとめた表も含めて引用。
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日経サイトの該当記事

TPP日米合意 本交渉へ見えた課題
2013/4/13 2:14

 日本の環太平洋経済連携協定(TPP)交渉参加に向けた日米の事前協議がようやく決着した。しかし目立つのはコメなど農産品を守ろうとするあまり、譲歩を重ねた日本の姿だ。TPP交渉と並行して続ける日米交渉では米国が長年訴え続けてきた自動車や保険の市場開放要求が再び突きつけられた。結果次第ではTPP交渉参加への高い代償を払わされることにもなりかねない。

 「農業を守るために自動車のカードを切った。一切の譲歩はしていない」。外務省幹部らは12日午後、自民党幹部にこう説明して回った。日米合意では「農産品など貿易上のセンシティビティ(強い関心事項)が両国にある」と確認。日本は農産品関税、米国は自動車関税を互いに維持できるようにすることで折り合ったという理屈だ。

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「農業を守るために自動車のカードを切った。一切の譲歩はしていない」、と外務省幹部は言っているようだが、自動車における屈辱的ともいえる事前合意も、このままでは決して農業を守る“カード”にはならないだろう。

 日本の自動車業界は、「農業を守る」ために犠牲になってでもTPP参加に賛成なのだろうか・・・・・・。

 「食の安全」についての危惧について、日経の記事も次のように締めている。

 自動車と並んで日米交渉の焦点となる「非関税措置」ではかんぽ生命保険の新商品凍結や「食の安全」に関して日本に食品添加物や残留農薬の認可範囲を広げるように求めている。日本が認める食品添加物は約800種類。米国は3000種類ある。添加物の規制が緩和されれば米国の輸出増につながるとみている。

 食品の安全面からTPP参加に反対する生活協同組合では「一部の農薬では日本の方が米国などより残留基準が厳格なものもあり、海外の低い食品安全基準にあわせることになりかねない」(首都圏の生協関係者)と危惧している。


 太字で強調。
 “日本が認める食品添加物は約800種類。米国は3000種類ある。添加物の規制が緩和されれば米国の輸出増につながる”ことや、生協関係者が指摘する通り、「一部の農薬では日本の方が米国などより残留基準が厳格なものもあり、海外の低い食品安全基準にあわせることになりかねない」ことを考えると、TPPがアメリカによる日本の「食」の侵略であり、「攻撃」であることが明白だ。

 この記事にも、多くの欺瞞が隠されている。「継続協議」や「検討」などの言葉は、実はすでに協議の余地がないものも含まれていそうだ。そもそも日経は一貫してTPP賛成の経団連をバックに控えたメディアである。控えめな内容だが、少しはリスクを書いておこう、という意図があるような印象だ。

 日経の記事が、真実を伝えていないのは、後でアメリカ側の発表内容を見れば明らかになる。

 モンサントなどに金で踊らされているオバマのアメリカは、決して「食」における日本侵略をあきらめない。実は、すでに高い「入場料」を払うことは決まっているはずだ。それにしても、高い「入場料」を払うことになったものだ。

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鈴木宣弘著『食の戦争』
 
 鈴木宣弘著『食の戦争』から、日本が払うことになった「入場料」に関する部分を引用。

 2013年4月12日の日米のTPP事前協議によって、自動車、保険、牛肉などの「その他の非関税障壁」(関税以外の方法で、輸入製品でかける足かせ)についての規制緩和などアメリカの要求する「入場料」にとどまらず、アメリカ議会の90日の承認手続の間に、さらに追加的な譲歩がなければ日本の参加を認めないと脅された。さらには、日本の交渉参加後も、TPP本体の条文とは別に、並行してTPP交渉の終了時までに残る「支払い不足分」、つまり食品添加物や農薬といった食の安全基準を緩和するなどの「非関税障壁の撤廃」についてもアメリカの要求に応じることを明文化して確約させられたのである。



 著者鈴木宣弘の指摘と、日経の記事にある内容に、相当ギャップがある印象を持たれる方は多いだろう。

 それはそうだ。実は事前協議の合意内容について、政府は国民に真っ赤なウソをついている。

 かつて農林水産大臣を務めた山田正彦元衆議院議員の4月15日のブログに、USTR(アメリカ合衆国通商代表部)の発表内容の和訳があるので引用したい。ちなみに山田氏は、この事前協議の合意を「ミズーリ艦上の降伏文書」にたとえている。
「山田正彦ウィークリーブログ」の2013年4月のページ


内閣官房の書簡はたった1ページで抽象的な言葉で終わっていますが、私の親友・首藤信彦氏(外交評論家・前衆議院議員)が徹夜で仮翻訳した文章を送っていただいて、更に驚きました。その内容をこの後に掲載していますので皆さんにも是非、読んでいただきたいと思います。
併せて政府が発表している佐々江賢一郎さんの米国に対する、米国務省への書簡。更に米国通商代表代行マランチェスの日本政府に…対する書簡も添付しますので、是非、比較してお読みください。

以下、首藤信彦氏の仮翻訳文書。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
USTR 2013.4.12
TPPへ向けて:日本との協議事項報告 <仮訳>

アメリカ政府はTPPに参加したいという日本との公式二国間協議を2012年2月に開始しました。これは日本のTPP参加国との協議を始めたいという2011年11月の表明にもとづくものです。
日本との協議は、自動車や保険セクターおよび他の非関税障壁に関する二国間の幅広い関心事をカバーし、TPPが求める高い基準を日本が満たす用意があるかどうかという点に関する議論も含まれています。
今日、アメリカ政府は日本との間に、強固な実施行動のパッケージおよび諸合意が成立したこと、そしてアメリカ政府が一連の協議を成功裏に完結したことを報告申し上げます。

自動車
アメリカ政府は、自動車部門に関する深刻かつ積年の関心事を明確にしました。日本政府はアメリカとの協議において、日本車の輸入関税はTPP交渉の他のいかなる製品に猶予された最長期間よりもさらに遅い時期において段階的に廃止されることに合意した。しかも、この段階的廃止は猶予期間が終了した後にのみ実行されることも日本政府は合意した。さらに、これらの措置は米韓FTAで韓国に認められた関税廃止措置よりもはるかに遅れることも日本政府は合意した。

4月12日に日本政府は、簡易許可手続き(PHP)すなわち日本に輸出される米国車に対してより簡単で時間のかからない認証方法での輸入台数を二倍以上にすることを一方的に決定して通告してきました。最近の例でいえば、車種ごとに年2000台まで認められている簡易輸入手続きを、今度は車種ごとに年5000台までアメリカ自動車メーカーは日本に輸出する際には認められることになります。

アメリカ政府と日本政府は日本の自動車産業分野に存在する広範な非関税障壁(NTM)を、TPP交渉と並行して行われる二国間協議の俎上に載せることを合意しました。そのテーマの中には諸規制の透明性、諸基準、証明書、省エネ・新技術車そして流通などの問題が含まれる。さらに、特定車両に対するセーフガード条項を協議し、係争事例の法的救済として関税再課税(snapback tariffs)などのメカニズムも協議することを日米政府は合意した。協議でどれだけの範囲のイシューを協議するかは添付されたTOR(内閣官房資料3)に書かれている。そしてその協議の結果はTPP交渉におけるアメリカと日本の二国間における最終二国間市場アクセス包括協定における強制的約束として含まれるものである。

保険
近年、アメリカ政府はアメリカの保険会社が日本郵政の保険との関係において、日本の保険市場で平等な基準で取り扱われていないことを強調してきた。今回の協議において、TPP協議へ向けて平行して行われる交渉と同時に、このTPP交渉における平等な取扱いの問題を取り上げることに合意した。さらに、日本政府は、4月12日に一方的に以下のことを通告してきた。その内容は、日本郵政の保険に関しては、民間の保険会社に日本郵政と平等な競争条件が確保され、また日本郵政の保険が適切なビジネス経営(非公営)の下で運営されていると日本政府が決定するまでは、いかなる新規のあるいは修正されたがん保険及び単独の医療保険を許可しない、ということである。

非関税障壁(NTM)
アメリカ政府はアメリカ製品の日本への輸出を妨げている広範な産業分野および産業横断的な非関税障壁に対する懸念を表明してきた。これらの問題がTPP交渉においてはまだ十分に討議されていない以上、それらは二国間で、TPP協議と並行して、討議され、TPP交渉終了までに完結させなければならない。(これに関しては別添fact sheetで問題の実情を含め詳細に説明されている)

日本は高い基準での協定受け入れを表明
我々二国間の協議を通してアメリカ政府は、日本がTPP交渉に参加したいなら、現在の参加国である11か国によってすでに交渉された高い基準での協定を受け入れを保証せよと強く強調してきた。それに対し、また2月22日の共同声明に記載されているとおり、日本政府は、すべての産品を交渉のテーブルに乗せ、そのうえで2011年11月12日にTPP参加国によって表明されたTPP協約に明記された包括的で高い基準の協定を達成するために、交渉に参加することを言明した。

強固な関係の成長
もし日本がTPP交渉に参加するなら、その参加はアメリカの最大の貿易パートナーである国の参加であり、TPP協定の経済力を高める。日本は現在、アメリカの第4位の貿易パートナーである。2012年にアメリカは700億ドルの産品を日本に輸出し、サービス分野は2011年に440億ドルに達した。TPPに日本が参加することは、アジア太平洋地域FTA(FTAAP)への道筋を進めると同時に、競争力のあるアメリカで生産された製品とサービスに対する日本市場のさらなる開放を意味する。そのことは同時にアメリカ国内の雇用を支えるのだ。TPPに日本が参加したことにより、TPP参加国全体では世界のGDPの40%近く、そして世界貿易の三分の一を占めることになるのだ。    
以上
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【駐米日本大使発書簡】



 一方、「官邸」サイトに掲載されている、日本側の発表内容がこれ。
「官邸」サイト掲載の該当PDF

日米協議の合意の概要
平成25 年4 月12 日
内閣官房TPP 政府対策本部

1 日本が他の交渉参加国とともに,「TPP の輪郭」において示された包括的で高い水準の協定を達成していくことを確認するとともに,日米両国が経済成長促進,二国間貿易拡大,及び法の支配を更に強化するため,共に取り組んでいくこととなった。

2 この目的のため,日米間でTPP 交渉と並行して非関税措置に取り組むことを決定。
 対象分野:保険,透明性/貿易円滑化,投資,規格・基準,衛生植物検疫措置1 等

3 また,米国が長期にわたり懸念を継続して表明してきた自動車分野の貿易に関し,
(1)TPP 交渉と並行して自動車貿易に関する交渉を行うことを決定。
   対象事項:透明性,流通,基準,環境対応車/新技術搭載車,財政上の
   インセンティブ 等
(2)TPP の市場アクセス交渉を行う中で,米国の自動車関税がTPP 交渉における最も長い段階的な引下げ期間によって撤廃され,かつ,最大限に後ろ倒しされること,及び,この扱いは米韓FTA における米国の自動車関税の取り扱いを実質的に上回るものとなることを確認。

4 日本には一定の農産品,米国には一定の工業製品といった二国間貿易上のセンシティビティが両国にあることを認識しつつ,TPP におけるルール作り及び市場アクセス交渉において緊密に共に取り組むことで一致。 以上



 違いは一目瞭然だ。

 たとえば「非関税障壁」について、まずUSTR側は、こう書かれている。
非関税障壁(NTM)
アメリカ政府はアメリカ製品の日本への輸出を妨げている広範な産業分野および産業横断的な非関税障壁に対する懸念を表明してきた。これらの問題がTPP交渉においてはまだ十分に討議されていない以上、それらは二国間で、TPP協議と並行して、討議され、TPP交渉終了までに完結させなければならない。(これに関しては別添fact sheetで問題の実情を含め詳細に説明されている)


 日本側の発表内容。
日米間でTPP 交渉と並行して非関税措置に取り組むことを決定。
 対象分野:保険,透明性/貿易円滑化,投資,規格・基準,衛生植物検疫措置1 等


 「保険」の項目についてなど、日本側はほとんどふれていない。

 アメリカは、次のように言っている。

日本は高い基準での協定受け入れを表明
我々二国間の協議を通してアメリカ政府は、日本がTPP交渉に参加したいなら、現在の参加国である11か国によってすでに交渉された高い基準での協定を受け入れを保証せよと強く強調してきた。それに対し、また2月22日の共同声明に記載されているとおり、日本政府は、すべての産品を交渉のテーブルに乗せ、そのうえで2011年11月12日にTPP参加国によって表明されたTPP協約に明記された包括的で高い基準の協定を達成するために、交渉に参加することを言明した。



 まったく違う協議のことを言っているのではないか、と思わせるギャップ。

 事前協議に関するアメリカ(USTR)の言い分が正しいとしたら(たぶん正しいだろう)、日本の政府は、確信犯的に合意内容を隠している。「概要」という言葉に、すでに欺瞞の匂いがプンプンしている。早い話が、これは国民に対する“詐欺”である。ほとんど屈辱的な「入場料」支払いを約束させられているのだ。

TPPにおけるアメリカの布陣は強力だ。『食の戦争』から引用する。

 アメリカのTPPの主席農業交渉官はモンサント社の前ロビイストであるイスラム・シディーク氏であると報じられている(久野秀二京大教授)。そして、そもそも、すでにアメリカからの要求で数々の基準緩和をしてきているのだから、TPPでその傾向に歯止めがかかるわけがなく、むしろ加速して「とどめを刺す」のがTPPだという本質を忘れてはならない。



 TPPという集合住宅のような“建物”は、すでに「入居」する段階で大家でもない住人の一人のアメリカから高い「礼金」「敷金」を取られているようなものだ。そして、すでに入居した住人同士の「自治会会則」が決められた後で日本は入ろうとしている。

 しかし、ブルネイでは「先住」メンバーに対し、既決の会則を日本は変えることはできなかった。 
「東京新聞」サイトの該当記事

 農業問題について言えば、アメリカの一部の企業の利益のために日本人が危険な食品を食べることを、安倍政権と外務省などの官僚が進めようとしている。こんなことが許されていいのか。

 ここは逆転の発想が必要ではないか。
 
 交渉が長引くことは、まだTPP参加撤回のチャンスがあるということだろう。メディアや国民がしっかり「TPP反対」を叫び、「入場料」(「「敷金」「礼金」)支払いも含めてTPP参加を撤回し、本来優先すべきアジア隣人との関係強化にシフトすべきだと思うが・・・マスメディアは何も言わない。
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by koubeinokogoto | 2013-09-06 00:55 | TPP反対 | Comments(2)
アメリカの予想通りの行動で、TPP交渉が長引くことになるとメディアはほとんどこの話題を取り上げなくなった。今こそ、TPPの問題点をしっかり伝えるべきなのだが、安倍の尻馬に乗ってフクシマの放射能汚染水問題などを、今になって記事にする体たらく。五輪東京招致のためのプロパガンダでしかない。
 
 汚染水問題は、もっと以前から五輪などと関係なく指摘すべき大問題である。逆に、こんな状況で五輪を招こうとすること自体を、ジャーナリズムというものがまだ日本にあるのなら、問題とすべきではないか。

 さて、TPPに関して、非常に良い書がある。

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鈴木宣弘著『食の戦争』
 TPPに関する書籍は結構出ているが、この本は非常に結構。副題は「米国の罠に落ちる日本」。文春新書から、8月21日初版発行。
 
 著者の鈴木宣弘は、1958年生れで元農林水産省でFTA交渉にも携わってきた方。現在は東大大学院農学国際専攻教授で農業経済学を専門とする。本書の内容は、現在の世界の「食」が、いかにアメリカのエゴによってとんでもない状況になっているかが中心となっている。TPPについても、専門家としてデータの裏付けなども含め明確に問題点をあぶり出している。

TPPの本質—「1%の1%による1%のための」協定
 そもそも、TPPとは何か。
 その前身は、2006年にできたシンガポール、ニュージーランド、ブルネイ、チリによるP4協定であるが、それをアメリカの多国籍企業が「ハイジャック」したという表現がわかりやすいだろう。当初は比較的小さな国々が関税撤廃しルールの統一を図って、経済圏を一国のようにすることで国際的な交渉力を高めようとする意図があった。しかし、アメリカの大企業は、格差社会に抗議するデモが世界的に広がり、規制緩和を徹底して自らの利益を拡大する方法がとりにくくなってきたのを打開するために、時代の流れに逆行し、TPPによって無法ルール地帯を世界に広げることで儲けようと考えた。


 なかなか歯切れが良い。こういった論調は、現在のマスメディアではまったく見ることができない。この後にこう続く。

 ノーベル経済学賞学者ののスティグリッツ教授の言葉を借りれば、TPPとは人口の1%ながらアメリカの富の40%を握る多国籍な巨大企業中心の、「1%の1%による1%のための」協定であり、大多数を不幸にする。
 たとえ99%の人々が損失を被っても、「1%」の人々の富の増加によって総計としての富が増加すれば効率的だという、乱暴な論理である。TPPの条文を見られるのはアメリカでも通商代表部と600社の企業顧問に限られ、国会議員も十分にアクセスできないことが、その実態を如実に物語っている。



 それでは、その「1%」の代表的企業、モンサントについて。

 強力な農薬(除草剤)「ラウンドアップ」を販売するこの会社は、この農薬に耐性のある食物の種子を遺伝子組換え(GM:Genetically Modified organismの略)で作っている。

 要するに、「この種子を使えば、ラウンドアップを使っても、雑草がなくなってもジャガイモやトウモロコシは、しっかり育ちます」という理屈で、農薬と遺伝子組換え種子を世界中で売っている会社だ。

 他にも悪名高い人工甘味料「アスパルテーム」も買収を経て現在はモンサントの製品。量産化に成功した味の素の「パルスイート」も同じ組成の危険な甘味料であることを知っている人は、意外に少ない。マイケル・J・フォックスやヒラリー・クリントンは、アスパルテームの入ったダイエット飲料(「ダイエット○○○」というやつ)を日常的に飲んでいたことが、パーキンソン病や視力低下の原因であるという指摘があることを、子供にファストフードのハンバーガーやダイエット飲料を飲ませている母親は、もっと知るべきだろう。


 今回は、遺伝子組み換えトウモロコシの話題。『食の戦争』でもマウスの写真入りで紹介しているのが、AFPによる次のニュースである。
 よって、このニュースには癌になったマウスの写真が掲載されているので、ご留意ください。
AFP BB Newsサイトの該当記事

GMトウモロコシと発がん性に関連、マウス実験 仏政府が調査要請
2012年09月21日 12:10 発信地:パリ/フランス

【9月21日 AFP】フランス政府は19日、遺伝子組み換え(GM)トウモロコシと発がんの関連性がマウス実験で示されたとして、保健衛生当局に調査を要請した。欧州連合(EU)圏内での遺伝子組み換えトウモロコシ取引が一時的に停止される可能性も出ている。

 農業、エコロジー、保健の各担当大臣らは、フランス食品環境労働衛生安全庁(ANSES)に対して、マウス実験で示された結果について調査するよう要請したと発表した。3大臣は共同声明で「ANSESの見解によっては該当するトウモロコシの欧州への輸入の緊急停止をも含め、人間および動物の健康を守るために必要なあらゆる措置をとるよう、仏政府からEU当局に要請する」と述べた。

 仏ノルマンディー(Normandy)にあるカーン大学(University of Caen)の研究チームが行ったマウス実験の結果、問題があると指摘されたのは米アグリビジネス大手モンサント(Monsanto)製の遺伝子組み換えトウモロコシ「NK603」系統。同社の除草剤「ラウンドアップ」に対する耐性を持たせるために遺伝子が操作されている。

 仏専門誌「Food and Chemical Toxicology(食品と化学毒性の意)」で発表された論文によると、マウス200匹を用いて行われた実験で、トウモロコシ「NK603」を食べる、もしくは除草剤「ラウンドアップ」と接触したマウスのグループに腫瘍を確認した。2年間(通常のマウスの寿命に相当)という期間にわたって行われた実験は今回がはじめてという。

 がんの発生はメスに多く確認された。開始から14か月目、非GMのエサが与えられ、またラウンドアップ非接触のマウス(対照群)では確認されなかったがんの発生が、一方の実験群のメスのマウスでは10~30%で確認された。さらに24か月目では、対照群でのがん発生率は30%にとどまっていたのに対し、実験群のメスでは50~80%と高い発生率となった。また実験群のメスでは早死も多かった。

 一方オスでは、肝臓や皮膚に腫瘍(しゅよう)が発生し、また消化管での異常もみられた。研究を率いた同大のジル・エリック・セラリーニ(Gilles-Eric Seralini)氏は「GM作物と除草剤による健康への長期的な影響が初めて、しかも政府や業界の調査よりも徹底的に調査された。この結果は警戒すべきものだ」と述べている。

 取材に対し、モンサントの仏法人は「このたびの研究結果について現時点ではコメントはできない」と答えた。

 欧州食品安全機関(European Food Safety Agency、EFSA)所属のGM作物に関する委員会は2009年、90日間のマウス実験に基づき、「NK603」は「従来のトウモロコシと同様に安全」との判断を下した。現在、欧州への輸出は可能となっているが、域内での栽培は禁止されている。(c)AFP



 TPPによって、モンサントから多額の選挙資金を得ているオバマに率いられたアメリカは、現在でも十分とは言えない日本の「遺伝子組換え」の表示義務を、「非関税障壁」としてやめるように要求している。

『食の戦争』から引用。

 消費者が不安を持つのはやむを得ないというデータが出ている中で、せめて表示義務を課すことによって、選ぶ権利だけは与えてほしいというのは当然のように思われるが、アメリカはTPP交渉をテコに、遺伝子組換え食品の表示を許さない方針を世界に広げようとしている。



 とんでもないことである。『食の戦争』のことは、今後も紹介したい。

 「ラウンドアップ」に耐性を有する遺伝子組み換え作物は「ラウンドアップレディー (Roundup Ready) 」と称されており、ダイズ、トウモロコシ、ナタネ、ワタ、テンサイ、アルファルファなどが栽培されている。

 私は、この本で紹介されている少女こそが、“レディ”だと思う。

 スイスで小学生ぐらいの女の子が一個80円もする国産の卵を買っていたので、なぜ輸入品よりはるかに高い卵を買うのかと聞いた人がいた。すると、その子は「これを買うことで、農家の皆さんの生活が支えられる。そのおかげで私たちの生活が成り立つのだから当り前でしょ」と、いとも簡単に答えたという(NHKの倉石久壽氏談)。



 このエピソードは、農業問題のみならず、非常に多くの日本の社会問題を想起させる。

 「安い」という言葉に替わって、「安全」「健康」「自然との共生」「動物愛護」などの言葉が生活の基底に流れるようにすることが、実はデフレ脱却で本来目指すものではなかろうか。
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by koubeinokogoto | 2013-09-04 19:20 | TPP反対 | Comments(2)

人間らしく生きることを阻害するものに反対します。


by 小言幸兵衛