幸兵衛の小言

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むのたけじ(聞き手 黒岩比佐子)『戦争絶滅へ、人間復活へ』

 2008年7月に岩波新書で発行された本書の副題は「九十三歳、ジャーナリストの発言」である。

 すでに「ジャーナリズム」「ジャーナリスト」という言葉が日本では実質的には“死語”になったと思っているが、この本は、現在もジャーナリズム精神を忘れない骨太の人物への、黒岩比佐子による聞書きの本だ。

 本書から紹介したい部分はいくつもあるが、最初に落語に関連した内容を引用したい。「第一章 ジャーナリストへの道」の最後の部分。

五代目柳家小さんの落語

 当時のことで思い出すのが、落語家の五代目柳家小さんです。彼は私と同じ生年月日、1915(大正4)年1月2日生まれで、2002年に亡くなってしまいましたけどね。
 じつは、私は落語が大好きなんです。なぜかというと、あの「間」の取りかたで、落語は「間」の芸術だと言ってもいいほどです。いまもずっとラジオで落語を聴いているんですよ。でも、下手だと思ったら、すぐにラジオを切ってしまいますが。
 私が五代目小さんの落語にすごく心を惹かれるのは、同じ日生まれだったこともあるけれど、二・二六事件のとき、彼が兵隊に取られて反乱軍のなかにいたからです。あの事件で反乱軍にいた人たちは、良くない兵隊だということで、できるだけ危険で、死亡率の高い戦場へ送り込まれたと言われています。
 彼はその年満州に行かされ、三年後に除隊したものの、1943年12月に赤紙が来て再徴兵されるのです。このとき彼は死を覚悟しますが、運よく生き残ることができて、敗戦の翌年にようやく帰国する。そしてふたたび落語をやれるようになった。
 私は彼の落語を聴くと、あざむかれた者の哀愁を感じるんだな。私から言えば、何かむくれている。でも、むくれたってだめだ、と自分で自分に言っている。笑い話をやりながらも、彼は普通の落語家とは全然違うね。
 あざむかれた世代ゆえのうらみつらみというものがあって、それを自分でなめながら我慢しているような、やる気がないようで、なにか寂寞としたものをもっている。そう感じているのは、私だけかもしれないけれども。


 五代目小さんを評する言葉として、“哀愁”という二字を目にしたのは初めてだ。たしかに、むのたけじさんのように、小さんの背後に戦争のイメージが見える人だけ特有の感慨なのだろう。

 今年の2月26日に、その少し前に放送されたNHKの「ファミリーヒストリー」の内容を含め、五代目小さんと戦争のことを兄弟ブログ「噺の話」に書いた。
「噺の話」の該当記事

 その時に書いた内容を一部再録したい。

 四代目小さんに入門して、三年目、陸軍に入隊してたった一か月後のことである。
 
 占領から二日たった2月28日には食糧が届かなくなり、天皇の命令により鎮圧部隊が派遣された。反乱軍の汚名を着せられ、沈鬱なムードになる中で、上官が小さんに落語をやるように命令した。小さんは『子ほめ』を演じたが、誰も笑わなかった。「面白くないぞッ!」のヤジに、「そりゃそうです。演っているほうだって、ちっとも面白くないんだから。」と答えたと伝えられている。

 小さんの演じた『子ほめ』の中で、もっとも観客が静かだった高座に違いない。

 本書に戻る。聞き手の黒岩比佐子の質問から。

—五代目小さんが、二・二六事件とそういう関係があったとは知りませんでした。

 あるとき、私が東京に出てきて、帰るために上野駅へ向かって歩いていると、偶然、小さんが上野の寄席から帰ってくるのに出会った。向こうは私を知らないはずだけど、「やあっ」と声をかけたら、彼も「やあっ」と言ってくれました。なんとなく同世代だとわかったんでしょうね。彼の落語には独特のムードがありますよ。お客をうわーっと笑わせたりしないで、そこでちょっと自分を抑える。そういう品の良さみたいなものがある。


 五代目小さんの芸に、“哀愁”を感じ“品の良さ”を感じた、むのたけじさん。それは、五代目小さんになる前に小林盛夫という一人の兵士が味わった戦争の体験が小さんの芸にも少なからず影響を与えたということなのだろう。

 噺家の高座には、その人のそれまでの人生のさまざまな経験が何らかのかたちで反映されていると考えると、これからの落語の聴き方も、少し変わってくるような内容だった。

 本書からは他にも紹介したい内容がいくつかあるので後日書くつもりだ。

 むのたけじさんは、98歳の今も健在。しかし、聞き手だった黒岩比佐子は、数冊の優れた著作で注目されていた矢先、三年前に52歳の若さで癌で亡くなった。私は今、むのたけじさんと黒岩比佐子の本を読んでいる。それらの内容もそのうちぜひ紹介したいと思う。


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by koubeinokogoto | 2013-10-20 07:50 | 戦争反対 | Comments(2)
最近、情報は大手新聞やテレビを当てにしないが、夕刊紙のサイト、なかでも「日刊ゲンダイ」には期待している。
 汚染水タンクの問題について、今になって大手新聞が騒ぎ出す前に、「日刊ゲンダイ」はステンレスではなく鉄、溶接ではなくボルト締めの欠陥タンクの問題を指摘していた。私もブログに書いた。
2013年8月22日のブログ
 規制庁は、仕事をしているフリをするために、東電に強く解決を要請しているが、今の状況では何ら明るい見通しなど見えやしない。

 東電に国民の血税から金を回すために、新たな天下り組織があるという「日刊ゲンダイ」の三日前の記事があった。
 本来は東電が復興のために仕事をしているかのお目付け役であるべき「原子力損害賠償支援機構」という組織が、単に東電への“送金”をするだけの新たな天下り先になっている、という記事を引用。
「日刊ゲンダイ」サイトの該当記事

東電の破綻処理阻む「原子力損害賠償支援機構」のバカ高給与
【政治・経済】2013年10月1日 掲載


 東京電力に対する原子力損害賠償支援機構からの資金交付額が先月末にとうとう3兆円を突破した。原資は国債、つまり国の借金で、国民の税金ということになる。東電は「機構からの資金援助を受けながら、原子力事故の被害に遭われた方々の立場に寄り添った親身・親切な賠償を実現していく」と言っているが、総額はこの程度で終わらないだろう。賠償だけで10兆~20兆円が見込まれている上、廃炉や除染作業でさらに莫大なカネが必要になるのは必至だ。

 東電が利益を出せばカネは返済されるという。しかし、この見通しはまったく立たない。資金援助の前提となる東電の経営再建計画は破綻同然なのだ。計画に盛り込まれた柏崎刈羽原発の再稼働のメドは立たず、福島原発5、6号機の廃炉も新たに決まった。現場では汚染水漏出など問題も相次ぐ。再建計画は絵に描いたモチで、東電がカネを返済できる可能性はゼロに近い。

<理事の年収は1500万円超>

 やはり東電は一刻も早く潰すべきではないか。破綻処理した上で、現実的な再建計画を練り直さないとダメだ。

 それもやらずになぜ、支援機構は東電の言うがままにカネを払い続けるのか。

「機構は資本金140億円のうち、政府出資が70億円の三セク。理事には警察庁や財務省、経産省の天下りが就いていて、理事の年収は1500万円超あります。職員の年収も高く、平均42歳で900万円超。これは一般の国家公務員の平均年収の1.3倍。右から左にカネを流すだけで、こんなに高給の三セクは他にありません」(経済ジャーナリスト)

 機構は、職員の高給の理由として「東電の財務分析や経営合理化策の検討など高度の専門性を備えている者を採用」と説明しているが、今の東電は財務状況はボロボロ、合理化計画もメタメタだ。「高度の専門性」のある職員は東電の一体何を見て、どう分析しているのか。

 役人の天下り先を温存するためのスキームは絶対に必要ない。



 強調したい部分を太字で再確認。

“損害賠償支援機構からの資金交付額が先月末にとうとう3兆円を突破した。原資は国債、つまり国の借金で、国民の税金”

→機構から東電に交付されるお金は、早い話が国民の血税。

“理事には警察庁や財務省、経産省の天下りが就いていて、理事の年収は1500万円超あります。職員の年収も高く、平均42歳で900万円超。これは一般の国家公務員の平均年収の1.3倍”

→「損害賠償支援機構」とは、血税を東電に回すだけの、新たな天下り先。彼等の給与の原資だって税金だ。

“東電が利益を出せばカネは返済されるという。しかし、この見通しはまったく立たない。資金援助の前提となる東電の経営再建計画は破綻同然なのだ。計画に盛り込まれた柏崎刈羽原発の再稼働のメドは立たず、福島原発5、6号機の廃炉も新たに決まった。現場では汚染水漏出など問題も相次ぐ。再建計画は絵に描いたモチで、東電がカネを返済できる可能性はゼロに近い”

 一企業として短期的な損益を考えざるを得ないから、いろいろと問題も出てくる。銀行が柏崎刈羽の安全申請を元に東電に融資する、などいう金融機関を含む悪循環を断つためにも、東電は早急に破綻処理し、放射能汚染水などフクシマ問題の解決を最優先するための組織として再建計画を立てなければならないだろう。東電はこのままでは、心身ともに死に体となり、政府の怠慢によってフクシマの危機が日本、そして地球の危機に拡大する。

 国策で進めた原発である。事故の後始末だけを東電に押しつけ国が逃げるようなことは許されない。ましてや、オリンピック誘致のために安倍は大言壮語したが、単なるリップサービスに終わらせて放射能汚染水の問題を現実的に解決しようとしないのなら、日本国民への侮辱にとどまらず、世界中に向って大嘘をついたということである。

 安倍政権の怠慢が、地球規模の環境破壊を拡大させ、日本と世界の人間の生命を危機におとしいれている。
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by koubeinokogoto | 2013-10-04 12:20 | 原発はいらない | Comments(2)

人間らしく生きることを阻害するものに反対します。


by 小言幸兵衛