幸兵衛の小言

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北海道新聞の3月30日の社説をご紹介。北海道新聞サイトの該当記事

社説
核サミット 日本の責任も問われる
(3月30日)

 オランダ・ハーグで開かれた第3回核安全保障サミットは、核兵器に転用可能なプルトニウムや高濃縮ウランの保有量を最小限に抑えることを各国に促すコミュニケを採択した。

 オバマ米大統領の提唱で始まった同サミットは、核物質を使用したテロの防止が最大の目的だ。

 第1回サミットは核物質の管理を4年以内に徹底することを決めた。今回、保有量の削減に合意したのは前進と言える。

 ハーグ・コミュニケは、核物質の輸送の安全強化、サイバー攻撃への対応なども求めている。

 各国はこれを順守し、リスクの低減に努めなければならない。

 この方針に沿って、日本政府は、冷戦時代に米国などから研究用として提供されたプルトニウムと高濃縮ウランの計数百キロを返還することを表明した。

 しかし、これとは別に、日本は重大な問題を抱えている。

 日本は核燃料サイクル計画に基づき、原発の使用済み核燃料を再処理して抽出したプルトニウム約44トンを保有する。原爆5千発分にも相当する量だ。

 だが、抽出されたプルトニウムをウランと混ぜた混合酸化物(MOX)燃料を使用する高速増殖炉に実用化の見込みはない。

 窮余の策として、通常の原発でMOX燃料を使うプルサーマル発電が登場したが、安全性、経済性の両面で疑問がある。

 使うあてのないプルトニウムをため込む日本に対し、海外の視線は厳しさを増すばかりだ。

 この上、青森県六ケ所村の再処理工場を稼働させ、プルトニウムを増やしてはならない。

 唯一の被爆国であり福島第1原発事故を引き起こした国として、安倍晋三首相が「核セキュリティー強化を主導する」と言うのであれば、破綻した核燃サイクルからの撤退を決断すべきだ。

 一方、オバマ大統領が目指す「核なき世界」の実現に、ウクライナ問題をめぐる米国とロシアの対立が影を落としている。

 米ロ両国は、核兵器削減の先頭に立つ責任がある。核軍縮の流れを停滞させてはならない。

 近年、旧ソ連圏では、核物質の密輸が相次いでいる。

 核テロの防止にもロシアの協力は欠かせない。

 現在、イラン核開発問題の解決を目指し、米ロなど6カ国はイランと協議している。話し合いを通じた核不拡散の成功例とするためにも緊密な協調を求めたい。



 まさに、真っ当な主張。要点は次の内容に部分にされている。

“唯一の被爆国であり福島第1原発事故を引き起こした国として、安倍晋三首相が「核セキュリティー強化を主導する」と言うのであれば、破綻した核燃サイクルからの撤退を決断すべきだ”

 日本が明確に、脱原発と核兵器につながるプルトニウムに分かれを告げることで、“米ロ両国は、核兵器削減の先頭に立つ責任がある。核軍縮の流れを停滞させてはならない”と強く主張できる。


 原発を稼動させ、使用済み核廃棄物からプルトニウムを取り出そうなどとしている状況では、とても核軍縮についての指導的な役割は果たせない。

 原子力資料情報室のサイトから、六ヶ所村の再処理による危険性を図とともに引用。
原子力資料情報室サイトの該当ページ

再処理工場は、原発で発電を終えた使用済み核燃料を化学的に処理して、プルトニウムとウランを取り出す施設です。放射能を原料とした巨大な化学プラントですから、核施設として臨界事故、放射能漏れ、被ばく事故などの危険性と、化学工場として火災・爆発事故などの危険性を合わせ持つことになります。

① 剪断・溶解工程:
工場ではまず使用済み燃料を燃料の鞘ごとブツブツと切断し、それを高温の硝酸に溶かして、ウラン・プルトニウム・死の灰の混ざった硝酸溶液が作られます。以降の工程は溶液の状態で作業が進められます。

② 分離工程:
最初に硝酸溶液から死の灰を分離します。死の灰の部分は濃縮され高温のガラス原料と混ぜ、ステンレスの容器にいれて冷やし固められます。これが高レベルガラス固化体で、専用の貯蔵建屋で30~50年間貯蔵されます。人間が近づけば即死してしまうような非常に強力な放射線と熱を出す危険なものです。

③ 精製工程:
さらにウラン溶液とプルトニウム溶液を分離します。

④ ウランは硝酸を抜き、酸化ウラン粉末の状態で貯蔵されます。

⑤ プルトニウム溶液は、一度分離したウラン溶液と1:1の割合で混合され、硝酸を抜き、ウラン・プルトニウム混合酸化物粉末の状態で貯蔵されます。これが六ヶ所再処理工場の製品です。このプルトニウム(ウラン・プルトニウム混合酸化物)を、再び原発の燃料として利用しようというのがプルサーマルです。

下の図は再処理工程の簡略図です。これらの工程全体でたとえ事故が起きなくても、「原発1年分の放射能を1日で出す」といわれるほど、大量の放射能が環境中へ放出されます。またひとたび大事故が起これば、放射能の被害は日本全体におよぶ可能性があります。

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 “「原発1年分の放射能を1日で出す」といわれるほど、大量の放射能が環境中へ放出”する再処理工場など、百害あって一利なしなのである。

 もちろん、原発は、ウラン燃料採掘という初期段階から、使用済み燃料の処理まであらゆる工程で危険性を孕んでいる。

 「よくわかる原子力」サイトに、核燃料サイクル全体の問題点がもとめられているので、ご紹介。(太字は管理人)
「よくわかる原子力」サイトの該当ページ

核燃料サイクル全体の問題点をまとめてみます。

1.ウランの採掘から廃棄物の処理・処分にいたるまでの、どの過程からも放射能を出すということ、被曝する労働者が出るということ(原発で働く人々参照)。そしてそれぞれの工程で各種の放射性廃棄物が蓄積し、残されていくということ。
2.各施設の間で行われる放射性物質の輸送時の事故が起きる可能性、原子力発電所・再処理工場での放射能放出や事故の危険性などをはらみ、一旦過酷事故、原発震災などが起きれば、その地理的広がりは世界的規模のものになる可能性を持つこと。
3.放射性物質によってはその半減期が数十万年以上にも及び、汚染が広範囲に広がれば遥か先の未来の生命をも脅かすこと。その上、地球規模の汚染を取り除く方法はないこと。
4.ウラン採掘や再処理などを押し付けられる地域と電力を消費する地域、それによって利潤を得る企業と被曝を押し付けられる労働者との間に、大きな差別を生むこと。
5.核物質を核兵器や他の危険な用途への転用、盗難などから防ぐための特別な管理体制が敷かれ、核テロを防ぐという口実で、個人生活が極端に監視・制限される可能性があること。
6.再処理は技術的に難しいだけでなく、大事故の危険性がつきまとうこと。そして使用済み燃料を直接処分するよりも、経済的に大幅に高くつくこと。



 これだけの危険を承知で原発再稼動、核燃料サイクルの推進などを考えている安倍政権には、長期的な視点も地球的視野も存在しない。
 もちろん、米ロに対して、核兵器削減のための提言をする意欲も、資格もない。

 下手な韓国語での挨拶などを覚えるより、やるべきことはいくらでもある。
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by koubeinokogoto | 2014-03-31 07:00 | 原発はいらない | Comments(0)
オランダのハーグで核安全サミットで、本来、ヒロシマ、ナガサキ、フクシマを経験した日本は、世界に向かって核兵器撤廃を主張すべき立場にいる。もっとも、説得力のある被害者なのだが、どうも安倍は過去の歴史を学ぼうとしない。

 原発再稼動、核燃料サイクルを是とするエネルギー計画が閣議決定されるXデーが近づいている。

 そもそも、フクシマを経験した日本の将来の重要課題であるエネルギー計画を、閣議決定のみで実施できる仕組み自体が問題なのだが・・・・・・。

 最近は、東京新聞が私の思いに近い主張をしている。

 3月26日の社説。
東京新聞サイトの該当記事


【社説】

プルトニウム 保有ゼロこそ目標だ
2014年3月26日

 日本はオランダでの核安全保障サミットで、核兵器に転用可能なプルトニウムなどの一部を米国に引き渡すことを決めた。プルトニウムを減らすためには、核燃料サイクル計画など止めたらどうか。

 米国に引き渡されることになったのは、茨城県東海村で日本原子力研究開発機構が保有する、高濃縮のウランとプルトニウム計三百三十キロだ。

 東西冷戦時代に米英両国から提供され、研究用に使われてきた。純度が高く、比較的容易に核兵器への転用が可能である。米国は日本の原子力施設のテロ対策に強い懸念を抱いている。

 核兵器の主材料になるプルトニウムはこれだけではない。

 日本は、エネルギー政策の根幹として、核燃料サイクルを進めてきた。原発の使用済み燃料に再処理を施し、プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料を作って、高速増殖炉で再び使う、核燃料のリサイクルである。

 しかし、計画の要として機構が運営する高速増殖原型炉の「もんじゅ」(福井県敦賀市)は一九九一年の運転開始からトラブルが相次いで、発電らしい発電はしていない。

 原子力規制委員会は昨年五月、無期限の運転停止を命じている。核燃料サイクルは事実上、破綻状態だが、新エネルギー計画案では維持する方針である。

 日本はすでに四十四トンのプルトニウムを持っている。五千発以上もの原爆を製造できる計算だ。

 核拡散に敏感な米国はこの“潜在力”にも懸念を抱いている。

 六ケ所村の再処理工場が稼働を始めれば、年間約八トン増えるという。これらは、どうやって減らすのか。

 現状では、MOX燃料を通常の原発で使うプルサーマル以外に手だてはない。だが、原発一基あたりの年間消費量は〇・四トン程度と多くはない。玄海原発3号機などで運転実績はあるものの、放射線量の高さなど安全上数々の不安が指摘されている。

 二〇二二年までに原発全廃を決めたドイツでは、二十五年以上かけて一六年までにMOX燃料の処理を終える計画だ。

 これ以上プルトニウムを増やさないためには、発生源の原発を減らしつつ、再処理、つまり核燃料サイクルを放棄する以外にないだろう。

 新エネルギー計画に盛り込むべきは、プルトニウム・ゼロへの工程表なのである。



 明解な主張だと思う。

 今回のハーグで開催された「核安全サミット」について、外務省に「国別報告書」が掲載されているので、一部引用する。
外務省サイトの該当ページ


2014年ハーグ核セキュリティ・サミット
国別報告書
日本

平成26年3月24日

I 総論

 日本は,核廃絶に向けた世界的な核不拡散・核軍縮の推進のため,核セキュリティの強化に,国内的にも国際的にも引き続き尽力する。これは,世界の平和と安定にこれまで以上に貢献するという日本の「積極的平和主義」の立場に沿うものである。

 原子力先進国である日本は,原子力の平和的利用に当たって,保障措置,原子力安全,核セキュリティの「3S」を確保する重要性を,2008年G8北海道洞爺湖サミットで提唱し,これまで一貫して推進している。日本における原子力利用は厳に平和的利用に限定されており,核物質が核兵器等に転用されないことを担保するための保障措置を,長年誠実に実施している。また,東京電力福島第一原子力発電所事故を経験した日本は,原子力安全とともに核テロ対策にも役立つ教訓を,各国とも共有している。

 日本は,2013年12月に閣議決定した「世界一安全な日本」創造戦略において,原子力発電所へのテロ対策強化を重要課題と位置付けて取り組んでいる。また,2014年1月,核不拡散に関する「3つの阻止」として(1)「新たな核兵器国出現の阻止」(2)「核開発に寄与し得る物資,技術の拡散の阻止」(3)「核テロの阻止」を提唱した。多くの国が核テロ対抗能力を構築・強化することは,各国間での安全保障上の信頼醸成にもつながる。核セキュリティのシステム強化のため,関係者間で必要な規範を根付かせ,優れた取組から相互に学ぶことが重要である。



 前半部分を、再度確認。

 “原子力先進国である日本は,原子力の平和的利用に当たって,保障措置,原子力安全,核セキュリティの「3S」を確保する重要性を,2008年G8北海道洞爺湖サミットで提唱し,これまで一貫して推進している”

 これが事実なら、フクシマは起こっていない。

 これまで“一貫して推進”しているのは、いったい何か・・・・・・。

 外務省も原子力村の対外的な広報部門を務めている、とみなした方がよいのだろう。

 “核セキュリティのシステム強化のため,関係者間で必要な規範を根付かせ,優れた取組から相互に学ぶことが重要である”などと評論家的な表現をしているが、日本の原発のテロ対策はまったくのザルであり、もし、テロリストがサイバー攻撃を含めて日本の原発を狙ったら、それを防ぐ術はないだろう。

 原発を稼動させることで、テロリストが欲しがるプルトニウムがどんどん増える。メルトダウンの恐怖に、核ジャックの危険性を抱えて生きるのは、まっぴら御免である。
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by koubeinokogoto | 2014-03-26 06:07 | 原発はいらない | Comments(0)
来週オランダ・ハーグで開催される核安全サミットで、安倍晋三は、「核燃料サイクル」をすることを独断で表明しようとしている。東京新聞から引用。
東京新聞サイトの該当記事

首相 了承なく「推進」 核燃サイクル 与党協議の中
2014年3月21日 紙面から

安倍晋三首相が二十四、二十五両日にオランダ・ハーグで開かれる第三回核安全保障サミットで、原発の再稼働を前提に、使用済み核燃料から取り出した核物質プルトニウムを再利用する「核燃料サイクル」の推進を表明することが分かった。核燃料サイクルを「推進する」と明記した政府のエネルギー基本計画案に対しては、与党内で反対論が根強く、まだ閣議決定がされていない。政府・与党の意思決定前に、世界に向けて日本が将来も原発を維持する方針を発信することになる。

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 プルトニウムは核兵器の材料となるため、利用目的がはっきりしないまま大量に保有していれば、テロや核拡散を招くとして国際社会から疑念を持たれる。日本は長崎に落とされた原爆の五千発以上に相当する四十四トンものプルトニウムを保有している。

 首相は核サミットで「利用目的のないプルトニウムはつくらず、保持しない」との方針を表明。安全が確認された原発は再稼働させて、核燃料サイクルによりプルトニウムを使っていく考えを示す。

 ただ、大量のプルトニウムを消費するのに何年かかるかの見通しは立っていない。再利用を名目に長年にわたって原発を動かし続けることになりかねない。

 核燃料サイクルに関しては、取り出したプルトニウムを利用するはずだった高速増殖原型炉もんじゅ(福井県)はトラブル続きでほとんど動いていない。通常の原発で使用済み核燃料のプルトニウムを使うプルサーマル発電も、通常の核燃料に比べて二倍の高レベル放射性廃棄物が発生するなど問題が多い。


 これまでも何度か紹介してきたが、再度、日本独自の「プルサーマル」という無謀な計画の問題について、原子力資料情報室の声明を紹介したい。昨年、関電がMOX燃料輸送をする際の声明である。
「原子力資料情報室」サイトの該当ページ

MOX燃料は装荷せず、そのまま廃棄物とするべき
2013.6.26

NPO法人 原子力資料情報室
共同代表 山口幸夫、西尾漠、伴英幸


 関西電力のMOX燃料輸送に抗議する。関電は、国内での再処理-プルトニウム利用から撤退し、すでに抽出されたプルトニウムについてはプルサーマル以外の処分策、すなわち廃棄物としての処理・処分策を追求するべきである。


今回のMOX燃料輸送は「東北地方太平洋沖地震後の状況を踏まえ、延期」(関電プレスリリース)されていたものである。それを、この時期に実施することは、原子力規制委員会による新規制基準が7月から発効するのを睨んでのもので、高浜原発の運転再開を強引に迫る意味合いではないか。しかし、高浜原発の運転再開へ向けた合意は全くない。大飯原発の断層問題に示されたように、なりふり構わぬ強引さで運転再開を強行することは言語道断で、とうてい認められない。

過去のプルサーマルの安全審査や地元合意は、福島第一原発事故によって、とうに吹き飛んでしまっている。私たちは原発の再稼働を行うべきではなく、ましてやプルサーマルを行うべきでもないと考える。しかし、それでも関電が実施を推し進めようとするのであれば、まずは、改めて審査のやり直しを求め、その結果に基づく地元合意を取り直さなくてはならない。福島原発事故を受けての安全対策強化の中にプルサーマルをきちんと位置づけ、プルサーマル燃料を考慮した過酷事故対策を明らかにすべきである。

関電はこうした対応すら行おうとせず、従来通りの対応で終始するのは、福島原発事故を対岸の火事にしかとらえておらず、なんら反省していない証左であり、蛮行と言わざるを得ない。

加えて、プルサーマル後の使用済みMOX燃料をどう処理・処分するのか、六ヶ所再処理工場に続く第二再処理工場の建設などは到底考えられず、結局、直接処分をするしかない。使用済みMOX燃料は使用済みウラン燃料よりもはるかに長い期間管理し続けなければならないし、処分するにしてもさらに厄介である。関西電力は発生者として、責任をもってこの厄介な使用済みMOX燃料に対応しなければならないが、そのような姿勢を全く示さないばかりか、国へ押し付けようとさえしている。実に無責任な対応の繰り返しである。

2011年3月の未曾有の原発事故を真摯に捉え、プルサーマル炉心の過酷事故時の対応と責任を冷静に推し量るなら、明らかにMOX利用に合理性がないと理解するはずだ。燃料使用などあり得ないはずである。


 安倍の行動は、国を滅亡させかねない、まさに“国賊的な蛮行”という表現が相応しい。

“使用済みMOX燃料は使用済みウラン燃料よりもはるかに長い期間管理し続けなければならないし、処分するにしてもさらに厄介である”のに、“関西電力は発生者として、責任をもってこの厄介な使用済みMOX燃料に対応しなければならないが、そのような姿勢を全く示さないばかりか、国へ押し付けようとさえしている。実に無責任な対応の繰り返し”を、安倍政権は庇護するだろう。

 美浜の会とグリーン・アクション連名の抗議文には、次のようにある。「グリーン・アクション」サイトの該当ページ

“使用済みMOX燃料の処理の方法は全く決まっていない。現状では、高浜原発の使用済み燃料プールに半永久的に貯蔵することになる。使用済みウラン燃料の最終処分も決まっていない中、行き場のないやっかいな核のゴミをこれ以上作り出すべきではない”

 “行き場のないやっかいな核のゴミ”について、以前にも紹介した本から、少し専門的な説明を引用したい。

 「MOX」は、プルトニウムそのものを燃料に使うことにより、例えば原子炉のブレーキに相当する制御棒が効きにくいなど原発稼動中の危険性も大きいが、その燃料を作る過程や再処理まで危険がいっぱいであることを、『新装版 反原発、出前します-高木仁三郎講義録-』(反原発出前のお店編、高木仁三郎監修、七つ森書館)から再度引用したい。どれほどMOX燃料を使うと“やっかい”なのか、重要部分を太字にする。
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『新装版 反原発、出前します』(七つ森書館)

 MOX燃料を使うためには、ウラン濃縮度がいろいろ違った燃料を作らなくてはなりません。さらにプルトニウムの冨化度(濃度)もいろいろと違ったものを作らなくてはいけないのです。仮にそれを再処理するとなるとどういうことになるかを考えると、頭が混乱してきます。同じ組成のものは一度に再処理できますが、違った組成のものは一度に再処理できないので、原子炉からでてきた使用済み燃料を何通りにも分けなくてはなりません。このように核燃料サイクルがきわめて複雑になるのです。
 もう一つ、MOX燃料加工の場合に問題になるのは、プルトニウムn半減期の問題です。プルトニウム-239の半減期は2万4000年ですが、プルトニウム-240の半減期は6600年です。それからプルトニウム-241の半減期は14年で、プルトニウム-242の半減期は37万年です。このような放射能ができるのです。これが原子炉ごとに違ってくるのですが、問題はプルトニウム-241です。この半減期が短いので早く崩壊していって、アメリシウム-241になります。半減期が14年ですから、一年もすればけっこうたまってきます。アメリシウム-241はガンマ線を強く出しますので、取り扱いが面倒な上に核特性が違ってきます。燃料としては品質が劣化します。このアメリシウム-241がMOX燃料の加工をやっているうちに、たまってきてしまうと、強いガンマ線のために工場に立ち入れなくなることもあります。ですから、「プルトニウムを長い間置いておくな!」「プルトニウムは取り出したらすぐ使え!」といわれています。



 通常のウラン燃料さえ原発のゴミはやっかいなのに、MOX燃料の原発でできるゴミは、もっとやっかいだし、危険性が増すばかりなのだ。

 利用目的の不明確なプルトニウムを所有することが、核兵器保有につながる危険性があると非難されるので、核燃料サイクルをする、というのは悪魔のサイクルである。

 プルトニウムをこれ以上持たない、すでに出来てしまったプルトニウムの処理方法を真剣に考える、ということが3.11とFukushimaを経験した日本の選択であるべきだ。
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by koubeinokogoto | 2014-03-23 19:56 | 原発はいらない | Comments(0)
昨夜の「報道ステーション」のことを書いたが、案の定、朝日にはこんな記事が載っている。(太字は管理人)
朝日新聞サイトの該当記事

温室ガス、50年までに4~7割減を IPCC報告書案
須藤大輔、編集委員・石井徹
2014年3月18日07時53分

 地球温暖化による環境の激変を避けるには、2050年までに世界の温室効果ガス排出量を10年に比べて40~70%減らさなければならないとする気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の最終報告書案を朝日新聞が入手した。達成には、二酸化炭素(CO2)排出の少ないエネルギーの割合を大幅に増やす必要があるとしつつ、東京電力福島第一原発事故などを踏まえ、原発の位置づけは後退させた。

 内容がわかったのは、温室効果ガスの削減策について最新の研究成果をまとめる第3作業部会の報告書案。3月末に横浜市で開かれる温暖化影響などについて検討する第2作業部会に続き、4月にドイツである会合で承認される。内容は変わる可能性がある。

 報告書案によると、世界の温室効果ガス排出量は人口増と経済成長を背景に00年以降加速。10年にCO2換算で495億トンとなった。大気中の濃度は過去80万年で最も高い約400ppmまで上昇している。

 環境激変を避けるためには、19世紀半ばの産業革命前と比べて気温上昇を2度以内に抑える必要があると国際交渉で合意されてきた。報告書案は2度を突破しないために、今世紀末の濃度を480ppm以下に抑える必要性を指摘。また530ppm以下でも2度以内に抑えられる可能性が50%以上の確率で残っているとした。達成するためには、50年の世界の排出量を10年比で40~70%削減しないといけないという。現状の国際交渉では排出量を減少に転じさせるめどすら立っていない。

 重要対策として位置づけたのが最大の排出源になっているエネルギー供給分野だ。当面は石炭火力発電所を天然ガス発電所に変えていきながら、太陽光や風力などの再生可能エネルギーや原子力といった低炭素エネルギーの比率を、現在の17%から3~4倍に急拡大させる必要性を強調した。交通、建物、産業分野での省エネ技術のいっそうの普及なども挙げた。

 ただ、原発については、「成熟した低炭素技術だが、世界的なシェアは1993年から減少している」と指摘。安全性や廃棄物処理など未解決の課題を挙げた。別に付ける文書では福島第一原発事故の分析も盛り込んだ。7年前の前回報告書では、原発を重点技術として「05年の電力供給の16%を占め、30年には18%が可能」と将来のシェア拡大を見込んでいた。

 削減努力を先延ばしすれば、短期的には楽ができるが、長い目でみると、大気に放たれたCO2を取り除く未開発の技術を実現するなどしないと目標を達成できなくなるという。(須藤大輔、編集委員・石井徹)

     ◇

 〈IPCCと報告書〉 地球温暖化に関して世界中で発表された研究成果をまとめる国連機関。1990年以来、繰り返し評価報告書を発表し、現在2007年以来の第5次に取り組んでいる。四つの報告書からなり、昨秋公表の第1作業部会報告書は「今世紀末に世界の平均気温は最大4・8度上昇する」と予測。温暖化の影響をまとめる第2作業部会の報告書は3月末に横浜市で開かれる会合を経て公表する。一連の報告書は、国際的な温暖化対策をつくる際の科学的な根拠になる



 さすがに、Fukushimaの後なので、露骨な原発推進案は避けたようだが、この記事にあるように、“7年前の前回報告書では、原発を重点技術として「05年の電力供給の16%を占め、30年には18%が可能」と将来のシェア拡大を見込んでいた”のは、事実だ。

 IPCCの説明の中で、一連の報告書は、国際的な温暖化対策をつくる際の科学的な根拠になる、と記述しているが、記者の須藤大輔や編集委員の石井徹という人は、世界の科学的な常識をまったく知らないようだ。
 IPCCの報告を信じている、あるいは主張している科学者は、全体の科学者のごくごく一部であるという実態を知らずしてこんな記事を書いているのなら、まず、IPCCという団体のことをもっと勉強すべきだが、確信犯で書いているなら、朝日が脱原発記事をいくら書いても、その姿勢の本気度を疑わせる。IPCC支持は原子力村を喜ばせるだけである。

 昨年の9月に第五次評価報告書が出された後、JBPRESSに東京理科大学の渡辺正教授が、次のような記事を掲載している。日本のメディアが、IPCC報国を、まるで「天の声」かのように取り上げる愚を批判している。
JBPRESSの該当記事

終息に向かう「地球温暖化」騒動
IPCCの「報告書」はこれで打ち止め?
2013.10.23(水) 渡辺 正

 日本は過去8年間、官民合わせて20兆円以上を「CO2排出を減らすため」に費やしてきた。しかし、その20兆円でCO2排出量が減り、地球の気温が下がった気配はない。IPCCという「権威」の言うがままに日本は、東日本大震災の被害総額(17兆円)以上の巨費を無駄に投じてきたのだ。

 だが、ここにきて「人為的CO2脅威論」は科学的なほころびが次々と明らかになり、崩壊への道をたどりつつある。日本社会の健全な回復のためにも、私たちはそろそろ地球温暖化という神話(ホラー話)から目を覚ますべきだろう。

IPCCの報告書は「天の声」なのか

 2013年9月26日、国連の「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)が「第5次評価報告書」(以下「報告書」)を発表した。正確に言うと、報告書全体のうち、まず科学知見を扱う第1作業部会の「政策決定者向け要約=SPM」を承認・公表し、最終稿を受諾した(出版は2014年1月の予定)。

 第2作業部会(影響)のSPMと最終稿は2014年3月の総会(横浜)で、また第3作業部会(対策)のSPMと最終稿は同4月の総会(ベルリン)で承認予定。なおIPCCは従来、第1次(1990年)・2次(1995年)・3次(2001年)・4次(2007年)の報告書(各3分冊、約3000ページ)を出してきた。

 第1作業部会の報告書を日本のメディアは、天の声かのごとく聴き、社説で「温暖化対策」の緊急性を訴えた(後述)。IPCCに集い、「人類の未来を守りたい(?)」官僚や、潤沢な研究費と名声を楽しむ研究者には、思う壺だったろう。

 だが報告書には問題が多い。事実から目を背けた部分や、第1~4次より劣化した部分もある。

 個人的に重要だと思う点を、紙幅の範囲で紹介したい。扱いきれない側面の私見は、昨年の拙著『「地球温暖化」神話——終わりの始まり』(丸善出版)に述べてある。ご参照いただきたい。



 全文は紹介しないが、IPCCという団体の説明部分を含め抜粋する。

 IPCCという団体の使命は、設立(1988年)以来の活動規範(Principles)に、「人間が起こす気候変動(=温暖化)のリスク(=脅威)の科学面と影響、対策を考える」と明記してある。なお、科学面・影響・対策は、それぞれ報告書の第1・2・3分冊にあたる。

 つまり、「温暖化は人類への脅威」を大前提とする団体だ。まっとうな科学なら、まず脅威の「有無」をじっくり調べ、脅威がほとんどないと分かれば解散するだろう。けれどIPCCにその選択肢はない。

 IPCCの元幹部、カリフォルニア大学のシュナイダー教授(2010年没)が記者会見で吐いた名言「国民をその気にさせるには、・・・あやふやな部分は隠し、国民が怖がりそうな話だけをメディアにズバッと言わせるんです」も、とうてい科学組織の姿勢ではない。

 以上を念頭に置けば、報告書のトーンも、メディアが報告書を受け取る姿勢(後述)も、ストンと腑に落ちるだろう。

CO2は増えているのに温暖化は停止している

 今回の報告書(=第1分冊)は、海水温や海氷、海水準のことも含むけれど、話の根元は「地上平均気温の動向」だ。気温の話は、(1)すでにあるデータの解釈と、(2)将来予測の2つに分けて考えよう。まずは(1)を眺める。

 現在までの気温動向についてIPCCは、「20世紀中期以降に起きた温暖化の主因は、人間活動である可能性が極めて高い(確率95%以上)」とした。


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世界の年平均地上気温の経年変化
「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書 第1作業部会報告書(自然科学的根拠)の公表について」(文部科学省、経済産業省、気象庁、環境省)より


 だが報告書中の実測データを見ると、1951~2012年(62年間)のうち、気温が明確に上昇したのは1975~98年の24年間(40%弱)しかない(上の図)。

 しかも1975~98年は、世界中で都市化が進み、気温観測点のローカル環境変化(エネルギーの集中消費、車の増加、高層ビルの増加、植物の減少など)が温度計の読みを上げた期間にあたる。とても「(気温上昇の主因が人間活動である可能性は)確率95%以上」と断定できる話ではない。

 IPCCは次に、「1998~2012年の気温の上昇率は、1951~2012年より小さい」と書く。

 だが「小さい」どころの話ではない。1998年以降(ほぼ京都会議以降)の16~17年間は、権威ある数機関が発表する地上気温も、1979年以来の衛星観測気温も、横ばいのまま推移している。なお、衛星観測した日本の大気温は、過去35年間まったく上がっていない。さらに、2001年以降の12~13年間は、どの気温データもくっきりと低下傾向を示す(2030年ごろまでは寒冷化が続くと予想する論文もある)。

 同じ期間に世界のCO2排出量は、中国などの工業化で激増してきた。だから、IPCCが今回の新見解だとする「世界平均地上気温の上昇幅は、CO2の積算排出量にほぼ比例する」は、どこからどう見てもおかしい。

 16~17年間に及ぶ「温暖化停止」という事実の意味は重い。なぜなら、少なくとも同期間、仮に世界各地で「異常気象」や干ばつ、早い梅雨入り、「最も遅い真夏日」があったとしても、その原因が「地球温暖化」だとは言えないからだ。その肝心なことをIPCCは、報告書のどこにも明記していない。

 ちなみに過去17年間、室戸台風(1934年:上陸時911ヘクトパスカル)や枕崎台風(1945年:同916ヘクトパスカル)、伊勢湾台風(1959年:同929ヘクトパスカル)に肩を並べる強さの台風は日本に上陸しなかった。

 17年間はそうとう長い。高校生には全人生(12~13年間でも就学以来の人生)だ。先ごろ某高校に招かれた際、約20名の生徒に「17年間の気温の横ばい」と「12年間の寒冷化」を語ったところ、小学校・中学・高校で「危険な温暖化が進行中」と先生(やメディア)に教わり続けてきた彼らは、一様に目を白黒させていた。

「海の温暖化」を持ち出す支離滅裂な解釈

 さすがに16~17年間の温暖化ストップ(IPCC語で「平均気温上昇率の低下」)は気になるのだろう、IPCCは「海の温暖化」を持ち出した。

 「1971~2010年の深度0~700メートルの水温上昇はほぼ確実」「1992~2005年に3000メートル以深の水温が上がった可能性が高い」と述べ、「1971~2010年に起きた海の温暖化は、気候システムが蓄えたエネルギー変化の90%以上を占める」としている。

 だがそれもありえない。「CO2が生む」熱は深海に直行せず、表層を暖めてからじわじわ深部に拡散するからだ。

 表層が暖まったときは、大気も必ず暖まる。つまり、「深海の温暖化」は、「地上気温の横ばい」の説明にはならない。支離滅裂・自暴自棄の世界だろう。

 そもそも第1次~4次報告書は、海の温暖化に深く立ち入ってはいない。すると、「これで科学面は決着」と胸を張った第4次までの気候モデルが、ほぼ誤りだったと認めたことになる(むろんそう書いてはないが)。



 昨日の毎日の記事、“地球温暖化によって、今世紀末の日本では平均気温が20世紀末に比べ最大で6.4度上昇し、年間の洪水被害額は20世紀末の約3倍にあたる最大約6800億円に上るとの報告書を、環境省の研究班(代表=三村信男・茨城大教授)が17日、公表した。熱中症などによる死者数の倍増など健康への影響も深刻で、被害を軽減するための対策に早急に乗り出すよう国や自治体に求めている”、という内容は、背後に土建屋さんの存在を強く感じる。

 今日の朝日には、原子力村の存在はうっすらと感じないでもないが、それ以上に朝日の“無知”を感じる。

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米本昌平著『地球環境問題とは何か』

 昨日も一部引用した米本昌平著『地球環境問題とは何か』から、温室効果に関する、現在の地球科学者の常識に近い見解を紹介する。

温室効果の意味

 たぶん多くの人たちの地球温暖化に対する理解は、こうだと思う。二酸化炭素には温室効果があり、この二酸化炭素の濃度増大によって気温が上昇すること、つまり、二酸化炭素の濃度増大が「原因」となって大気が暖まり、さまざまな影響がでることであると・・・・・・。確かに、二酸化炭素が完全になくなってしまえば、地球の平均気温は摂氏三十三度下がる計算になり、この限りの一次近似の因果関係としては、この解釈は正しい。
 しかし、現在の地球科学は、過去の気候変動を、地軸の変化、太陽活動の変化などが最初のきっかけとなり、それが一連の玉突き現象を起こして、暖かくなったり寒くなったりしてきた結果だと解釈している。その中で、二酸化炭素は、これらの変化を強化させる方向に働く(これをプラスのフィードバック効果という)一因子という位置づけがされている。だから、気温の上昇・下降と二酸化炭素濃度の増大・減少が密接な並行関係にあるのも、いわば当然なのである。たとえば、温度が上がれば生物の呼吸が活発になって二酸化炭素の排出が増えるし、海の温度が上がるとその中に融解していた二酸化炭素が大気に放出される。温度が下がればこの逆のことが起こる。地球温暖化にとって二酸化炭素は原因でもあり、結果でもあると解釈されているのである。


 昨日、槌田敦の見解でも紹介したが、温暖化した“結果”として二酸化炭素が増えたとも言えるのだ。こういった真っ当なことは、まずテレビも新聞も取り上げない。世界のメディアの中で、“地球温暖化は問題だ。二酸化炭素をどうにかしろ”と、いわゆるタレントまでを動員して、他の要因などはほとんど無視して騒いでいるのは、日本のマスコミ位ではなかろうか。そういった番組に頻繁に登場する人間は原子力村に近い、と私は思うようにしている。

 NHKも大新聞も、彼らは意図しようが無意識だろうが、結果として「温暖化二酸化炭素悪者説」を煽動する内容で視聴者や読者を原発受容の方向に導いている。安倍原発推進政権を利する、それらの報道こそが大きな問題である。
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by koubeinokogoto | 2014-03-18 07:55 | 原発はいらない | Comments(0)
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の提言を無批判に受け入れて、「温暖化」を煽る記事が毎日に出ていた。
毎日新聞サイトの該当記事

温暖化:今世紀末6.4度上昇 洪水被害、年6800億円
毎日新聞 2014年03月17日 11時05分(最終更新 03月17日 16時09分)

 地球温暖化によって、今世紀末の日本では平均気温が20世紀末に比べ最大で6.4度上昇し、年間の洪水被害額は20世紀末の約3倍にあたる最大約6800億円に上るとの報告書を、環境省の研究班(代表=三村信男・茨城大教授)が17日、公表した。熱中症などによる死者数の倍増など健康への影響も深刻で、被害を軽減するための対策に早急に乗り出すよう国や自治体に求めている。

 温暖化の影響で、世界的に高潮や大雨の増加などが予測されているが、その度合いは地域によって異なり対策も変わる。研究班は、国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」第1作業部会が昨年9月に公表した最新の報告書と同じ考え方に基づき、気温上昇など今世紀末の日本の姿を初めて予測。災害、食料など5分野の影響について、20世紀末と比較した。

 温室効果ガスが増え続けた場合、平均気温が3.5~6.4度、海面は60~63センチ上昇すると予測。海面上昇による浸食で、砂浜は最悪の場合、83~85%消失。干潟も12%が失われ、日本の風景が激変する可能性もあることが分かった。

 洪水による被害額は、豪雨の増加などで、年間2416億~4809億円増えると見込まれる。地域別では、東北、中部、近畿、四国で、20世紀末の2倍を超える可能性が高い。一方、治水対策を強化すれば被害額を20世紀末と同程度以下に抑えられると指摘している。

 熱中症や高温で持病が悪化して死ぬ人の数は、今世紀末には2倍以上になると予測。熱帯の感染症「デング熱」を媒介する蚊の一種、ヒトスジシマカは現在、国土面積の約40%に分布しているが、気温上昇に伴って約75~96%に拡大。感染のリスクが高まると予測している。

 農業分野では、気温上昇の影響を受けやすいウンシュウミカンは、最悪の場合、生産に適した地域がなくなる恐れがある。一方、亜熱帯の果樹、タンカンの適地は、現在国土の1%程度だが、13~34%に拡大する。コメの収量は全国的には大きく変化しないが、品質が低下する割合が大きくなる。【大場あい】

 ◇被害軽減対策が急務

 環境省の研究班が17日公表した、地球温暖化による国内影響の最新報告は、農作物の栽培適地の変化や洪水による被害の増加など、今世紀末までに環境や国民生活が一変する恐れを指摘した。一方で、対策強化によって被害を軽減できる可能性も示した。

 農業分野では、夏の高温による影響が既に深刻化し、コメは粒が白く濁るなどの品質低下への懸念が高まっている。

 報告書によると、対策を取らなくても今世紀末のコメの収量はそれほど変化しないが、生産量の半分近くの品質が低下するリスクが非常に高いという。一方、品質低下を防ぐため、田植えの時期をずらして夏の高温の影響を避ける対策だけでは、収量が増える地域と減る地域の差が大きくなると予測した。

 豪雨などの増加に伴う洪水被害については、対策を全国一律に強化するためには長い時間と莫大(ばくだい)な費用がかかるため、「危険度の高い地域を抽出し、便益に見合ったコストで、その地域に適した対策を選ぶことが重要だ」と指摘している。

 報告書は、社会基盤の充実した日本でも温暖化の被害から逃れられないという予測を突きつけた。政府は来夏、被害を軽減するための初めての総合計画「適応計画」を閣議決定する方針だが、温室効果ガス排出量削減とともに、実施が急がれる。【大場あい】



 異常気象が起こると、こういう説が信憑性を帯びてくる。
 
“温室効果ガスが増え続けた場合、平均気温が3.5~6.4度、海面は60~63センチ上昇すると予測。海面上昇による浸食で、砂浜は最悪の場合、83~85%消失。干潟も12%が失われ、日本の風景が激変する可能性もあることが分かった。

 洪水による被害額は、豪雨の増加などで、年間2416億~4809億円増えると見込まれる。地域別では、東北、中部、近畿、四国で、20世紀末の2倍を超える可能性が高い。一方、治水対策を強化すれば被害額を20世紀末と同程度以下に抑えられると指摘している。”


 という、あくまでも“仮説”が、そのうち一人歩きするようになる。

 この仮説の前提はIPCCである。
国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」第1作業部会が昨年9月に公表した最新の報告書と同じ考え方に基づき、気温上昇など今世紀末の日本の姿を初めて予測“”したのであって、IPCC報告書に問題があれば、仮設の信憑性も怪しくなる。

 IPCCが怪しい組織であり、たぶんに政治的なものであることに、注意が必要だ。


 毎日に限らないが、原発再稼動を急ぐ安倍政権を利するようなこういった記事には、困ったものだ。

 毎日の真意がどこにあるかは別として、原子力村は、得意の構図、“地球温暖化→二酸化炭素悪者説→化石燃料二酸化炭素排出→原発再稼動”を描き出すのである。

 そもそも、IPCCの生い立ちにしても、当時の異常気象なるものが利用されていた。
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米本昌平著『地球環境問題とは何か』

 米本昌平著『地球環境問題とは何か』(岩波新書、1994年4月初版発行)から、なぜ地球温暖化問題が叫ばれるようになったのか、その始まりまで少し遡りたい。「第一章 地球温暖化の科学論—ハンセン論文の衝撃」より引用。


大干魃

 88年の初夏のある日、日本の新聞に、「米議会、地球温暖化で公聴会」という見出しのベタ記事が載った。のちに「暑い夏論争」と呼ばれるようになった有名な事件の始まりである。
 その前年の秋から、アメリカの東部は干魃に悩まされていたのだが、事態は悪化するばかりであった。88年春になると、干魃は穀倉地帯である中西部や北部にも広がり、映画「怒りのぶどう」で描かれた1930年代来の大干魃となった。熱波が各地を襲った。この異様な暑さはいよいよこの地球自身がおかしくなってきたからではないか? 次第にこんな不安が人々の心をかすめはじめた。こうして六月二十三日に上院公聴会が開かれたのである。
 ただこの大干魃の原因は気象学的には、その前年のエルニーニョ現象(ペルー沖の表面海水温が数年の周期で上昇する現象)の残像としてジェット気流の流れが変わったことが主因、とみるのが普通である(Science、1988年12月23日)。つまり88年という時期に、アメリカを大干魃が襲ったのは、別の年変動による偶然の現象であった。だが、この事件が一つの引き金になって、政治家や外交官が、安全保障や通商問題と同じような調子で地球環境問題を語り始めるのである。これは政治的には大きな変化であった。


 著者は京都大学理学部卒業後、証券会社で働きながら科学史を独学し、三菱化成生命科学研究所に入所し社会生命科学研究室長を務めた方。
 紹介した部分だけを読めば、「異常気象」と「地球温暖化」をいう、本来分けて考えるべき問題をゴッチャにしていることの愚が分かろうというものだ。


 現在、温暖化問題について私が信頼する研究者は、かつて高木仁三郎も彼の研究成果を評価していた槌田敦である。

 NPO法人食品と暮らしの安全基金(旧称:日本子孫基金)が運営する「食品と暮らしの安全」サイトにある、槌田敦へのインタビューを引用する。2009年の記事だが、決してその主張の妥当性は色褪せていないと思う。
「食品と暮らしの安全」サイトの該当ページ


「CO2地球温暖化説」は間違い

心配な寒冷化

元・理化学研究所研究員、元名城大学教授
槌田敦氏にインタビュー


●一つの事象で一喜一憂しない

− 2009年6月1日に「ミニ氷河期前兆?」という記事が出ました。この報道にどう向き合えばいいのでしょうか。

槌田  黒点が減ると太陽活動が弱まると書かれていますが、 説はいろいろあるのです。太陽光が弱くなったら、地球が寒くなるのか、本はそこわからないので、 一つの事象が起きただけで、一喜一憂しない方がいいですね。

− 今年の「涼しい夏」が寒冷化につながるかどうか、わからないと言われるわけですね。

槌田 この夏が起点になって寒冷化が始まるなどということは、わかるわけがありません。

●数十年、数百年での気温変化

槌田 しかし、気温は、数十年単位で温暖化したり、寒冷化したりしています。 【図1】を見てください。屋久杉の研究で、1900年間の気候を復元した図です。これで、数十年単位で気候が変動していることがわかります。
この数十年は温暖化してきたのですから、そのうちに寒冷化がまた始まります。

【図1】屋久杉に刻まれた歴史時代の気候変動・(北側浩之)

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− 槌田先生は、昔から寒冷化を心配されていましたね。

槌田 600年代の飛鳥期から900年代の平安期まで、 そして1700年代の江戸期から現在までは、細かく変動しながら、どちらも300年間で4℃ぐらい温暖化しました。 温暖化なら食糧が採れるので、どちらもいい時代なのです。 寒冷化すると食糧が不足します。すると、世界は大混乱しますから、 寒冷化の方がずっと大変で、それに備えようと警告しているのです。

●8000年で見ると寒冷化

− では、変動しながらも、300年ぐらい温暖化してきたのが現在ということですね。

槌田 それだけではありません。もう少し長期的なスパンで見ると寒冷化しています。 【図2】を見てください。8000年前から現在までの気温曲線で、縄文時代前期は今より暖かかったのです。 それが3300年前の寒冷化で縄文文化は大きな打撃を受け、2600年前に温暖化したころ、弥生時代が始まりました。 最近の3000年間では3回の寒冷期があり、その度に、激しい戦争と、民族の大移動がありました。 気温は変動を繰り返していますが、8000年にわたる流れを図で見ると、寒冷化に向かっていることは明らかです。 私は、この長期的な寒冷化傾向も重視すべきだと主張しています。


【図2】尾瀬ヶ原ハイマツ花粉分析による古気温曲線
     8%基準線は±3℃に相当する

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(坂口豊論文、専修人文論集51巻1993)

− さまざまな波があるわけですね。

槌田 そうですが、温暖化の後は寒冷化に決まっているのです。 数十年という短期の変動に注目するのであれば、次は寒冷化ですが、「ミニ氷河期」と言われるほどになるのかどうかはわかりません。

●資源浪費を防ぐのが優先

− CO2は温暖化ガスではないのですか。

槌田 温暖化ガスの代表格は水蒸気です。 寒い冬でも、夜中に雲があるとあまり冷えないでしょう。 このようなことを少し考えれば、水蒸気が最大の温暖化ガスであることは明らかです。 それに比べれば、CO2は本当に温暖化に関与しているのかわからない程度の存在です。 それを最大の温暖化ガスとしているところからして、CO2温暖化説はおかしいのです。

− 槌田理論を基に、私たちが「CO2を出してもかまわない」と言うと、「浪費を進めるのか」と、誤解されることもありますね。

槌田 われわれは「石油や石炭を減らして、資源の浪費を防ごうと」と言っているのです。 ところが「石油や石炭を使った後に出てくるCO2を減らそう」とすりかえられ、多くの人はわけがわからなくなったのです。それで、 どうでもいいCO2を「減らそう」と言っているのです。

− どうして「CO2を減らそう」となってしまったのですか。

槌田 1986年のチェルノブイリ原発事故で、原発の建設が世界中でストップしました。 そこで、原子力業界は各国政府に働きかけ、CO2温暖化説を唱える研究者に莫大な研究費を出させたのです。 つまり原発業界が仕掛けたワナなのです。

− 多くの人は「ワナ説」を認めないと思いますが、1999年に私たちが開いた公開討論会で、原子力 委員会専門委員の中村政雄氏が「原子力の人は乗っかっただけ」と、働きかけたことを認めたことがありましたね。

槌田 大気中のCO2濃度を正確に測定するには、工場や火力発電所の排ガスが直接影響を与えないように、 南極やハワイの山の上で測定しなければなりません。そうしたことも含めて、研究には莫大なお金がかかるのです。

●「CO2地球温暖化説」は間違い

− CO2の増加による地球温暖化説は間違っていると、槌田先生は学会で論争されていますね。それは、どういう内容ですか。

槌田 気象学者のキーリングが、CO2濃度を長期にわたって計測したのです。 するとCO2増加と気温上昇が一致したので、CO2の増加が地球を温暖化させていると警告しました。 これがCO2温暖化説の原点です。その後、キーリングは、より詳しく気温とCO2濃度の前後関係を比べました。 その結果は、気温の変化がCO2濃度の変化よりも1年ずつ早く生じていることを見つけて、発表しました。 気温が原因でCO2濃度は結果なのです。これは、根本順吉氏の『超異常気象』(中公新書)に引用されています。



 もちろん、化石燃料を湯水のように使うことは良いことではない。しかし、二酸化炭素にのみ温暖化の罪をかぶせることも、科学的に正しいとは思えない。温暖化の原因なのか、それとも結果なのか。そして、水蒸気を含む温室効果ガス全体について考えを巡らせる必要があるだろう。

“1986年のチェルノブイリ原発事故で、原発の建設が世界中でストップしました。 そこで、原子力業界は各国政府に働きかけ、CO2温暖化説を唱える研究者に莫大な研究費を出させたのです。 つまり原発業界が仕掛けたワナなのです”、という槌田敦の主張は、フクシマから三年たった今の日本においても、十分に注意を喚起する内容だろう。

 毎日は、脱原発側のメディアを認識されているようだが、こんな記事を出しては、原子力村に塩を送るようなものだ。

今夜(3月17日)の「報道ステーション」でも、環境省の研究班によるレポートを報道したが、その後、古舘は何もコメントせず天気予報になった。古舘よ、あのにやけた表情から何か言いたかったのなら、はっきり言ってもらうか、あのニュース報道をやめさせて欲しかった・・・・・・。

 明日の朝日がどんな記事を載せるか、確認しよう。


 今後、IPCCの提言を引き合いにして地球温暖化問題の記事を掲載しようとするメディアの責任者は、その内容が慎重に吟味された結果だとしても、原子力村に悪用されかねないと考えてから掲載の有無を判断すべきだろう。

 いろんなニュースがある。しかし、脱原発に関するニュースは日々少なくなっているのが現状である。
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by koubeinokogoto | 2014-03-17 20:48 | 原発はいらない | Comments(0)
「内田樹の研究室」で五日振りの更新。最近は更新頻度がかつてより減っているので、今回は早い方か。

 3月16日の「赤旗」日曜版に掲載されたインタビューに加筆した内容。

 安倍“独裁”政権の憲法解釈による集団的自衛権行使問題について、きわめて分かりやすく指摘しているので引用したい。(太字は管理人)

「内田樹の研究室」の該当記事

安倍晋三首相は本音はもちろん改憲して、憲法9条を廃棄したい。だが、それはアメリカ政府の強い抵抗があって実現がむずかしい。それゆえ、アメリカの軍事活動を支援するという、アメリカから正面切って反対できない口実を掲げて、解釈改憲による「集団的自衛権」の行使容認を持ち出してきたのです。
しかし、日本が集団的自衛権を行使するというのは、政治史的に見てありえない想定です。
集団的自衛権は、同盟国が武力攻撃を受けたとき、国連が介入するまでの緊急避難的な措置として認められた権利ですが、実際にそれを行使したのは軍事的超大国ばかりです。米ソのような超大国が自国の勢力圏で起きた反政府運動、独立民主化運動を弾圧するためにこの権利を行使しました。
これまで集団的自衛権が行使された実例を見ればわかります。1960年代に始まったアメリカによるベトナム戦争、ソ連によるハンガリー(56年)、チェコスロバキア(68年)、アフガニスタン(79年)への軍事介入など、大国による勢力圏への武力干渉の事例ばかりです。日本のような「勢力圏を持たない」国が行使するような筋のものではありません。

本当に日本が集団的自衛権を行使しても「アメリカを守りたい」というのなら、まず日米安保条約を双務的なもの変えるのがことの筋目でしょう。日本が攻撃されたらアメリカが助けに来てくれる。それが片務的で恥ずかしいというのなら、アメリカが攻撃されたときに日本が助けにゆけるように日米安保条約を改定すればよろしい。
日米安保条約を「日米相互防衛条約」に変える。難しいことはありません。現行の安保条約第五条の「日本における、日米いずれか一方に対する攻撃が自国の平和及び安全を危うくするものであるという位置づけを確認し」の「日本」を「日米」に一字書き換えるだけでよい
そうすれば、アメリカ国内への武力侵攻にも日本がただちに援軍を出すことができます。
でも、そのためにはまず米国内に自衛隊基地を展開する必要があります。自国だけ米軍基地で守ってもらって、相手の国土には自衛隊基地を置かないというのでは双務的な防衛条約とは呼べないでしょう。


 憲法解釈のみで集団的自衛権を認めようという無理をしようとするから、こういう矛盾が起こる。安倍政権のやっていることは、言わば“嘘を取り繕うための嘘の積み重ね”のようなもので、論理的な面、そして法的な面で、必ずどこかに綻びが出てくる。

 それは、“独裁”という名にふさわしいことをしようとしているから、理屈などいらない、という本音があるから、仕方なく後付けでなんとか理屈をこじつけようとするために、さまざまな論理矛盾を引き起こす。

 安倍が独裁者を目指していることを、内田樹は次のように表現する。

安倍政権の政体改革は行政府への権力の集中をめざすものです。
特定秘密保護法は立法府が国政調査権を制約される点に三権分立上の大きな問題点があります。
世界史を見ればわかるとおり、独裁というのは行政府が重要な政策を立法府の審議に委ねず、閣議決定だけで実行してしまう政体のことです。行政府への権力の過剰な集中のことを「独裁」と呼ぶのであれば、安倍政権はあきらかに独裁を志向していると言わざるを得ない
民主主義というのは意思決定に長い時間のかかる仕組みです。それが非効率だから権限をトップに委ねて「決められる政治」を実現しようと言う人々がいます。彼らは統治システムを株式会社のような組織に改組しようとしている。
しかし、民主制を株式会社のように制度改革することはできません。「文句があるなら次の選挙で落とせばいい」というのは企業経営者なら言えることですが国の統治者が口が裂けても言えないことのはずです。
株式会社は有限責任ですからどれほど経営上の失策があっても、株主の出資額以上のものは失われない。でも、国家は無限責任ですから、失政によって私たちは国土も国富も生命までも損なうリスクがある。だからこそ時間をかけた議論と合意形成が必要なのです。
安倍首相は政治とビジネスの違いが理解できていないようです。


 安倍は、産業競争力会議などに見られるように、政治をビジネスと同じように考え、“グローバル化”を唱えるが、安全保障を巡る外交とビジネスの取引はまったく違うことを知らない。

 また、安倍の好戦的な姿勢には、たぶんに祖父岸信介の血を色濃く引いているせいかもしれないが、祖父のことについて勘違いもしている。

 小泉内閣時代に内閣法制局長官を務めた阪田雅裕氏(70)が、元「法の番人」として、『週刊朝日』で語った内容が、朝日新聞出版のニュースサイト「dot.」に掲載されている。
朝日新聞出版「dot」該当記事

 内閣法制局長官時代、官房長官だった安倍氏と集団的自衛権をめぐってやりとりしたことがあったという。安倍首相の祖父、岸信介首相(当時)の国会答弁についてだった。
「『岸首相は集団的自衛権の行使をすべて否定していたわけではなく、行使できるものもあると答弁していた』と、安倍さんは当時そう発信されてらっしゃいました。多少の誤解をされていたので、必要なご説明をさせていただきました。

 岸首相の国会答弁は『同盟締結国や友好国が侵害された場合、そこに出かけて行って防衛することは憲法では認められていない』というものでした。その一方で『集団的自衛権に基地を貸すとか経済的援助とかいったものまで含まれるのであれば、9条の下でも許されないわけではない』とも答弁しています。当初から集団的自衛権の中核的部分である武力の行使は否定しているのです。

 岸首相の時代は、集団的自衛権が何を意味するか、国際法上の定義は必ずしも固まっていませんでした。国連憲章で登場した新しい概念だったからです。ですが、岸首相の時代から今まで、政府の考え方は全く揺らいでいないのです」

※週刊朝日  2014年3月21日号


 爺さんだって、やみくもに集団的自衛権を行使しようなんて思っていなかったという事実を、この“銀のスプーン”をくわえて生まれてきた孫の坊ちゃんは、今から学び直す必要がある。

 政治とビジネスの違い、戦争の前に外交が重要であることなど、一国の宰相が知っておくべき基本の基本を、今からでも学ばないことには、この無知な男のために、国が滅ぼされかねない。

 “独裁者”安倍晋三によって、日本の若者が他国の兵士と殺し合いをするなんてことは、まっぴら御免である。
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by koubeinokogoto | 2014-03-17 07:20 | 戦争反対 | Comments(2)
3月13日の深夜、愛媛を中心に最大震度5強の地震があった。
時事ドットコムの該当ページ

愛媛で震度5強=広島、山口、大分は5弱−南海トラフ地震「結び付かず」

 14日午前2時6分ごろ、中四国地方西部と九州北東部を中心として西・東日本の広い範囲で地震があり、愛媛県西予市で震度5強、松山市や高知県宿毛市、広島県呉市、山口県防府市、大分県国東市などで震度5弱の揺れを観測した。
 気象庁によると、震源は伊予灘で震源の深さは約78キロとやや深い。地震の規模(マグニチュード)は6.2と推定される。津波は観測されなかった。
 愛媛県原子力安全対策課によると、運転停止中の伊方原発(同県伊方町)1~3号機に異常はないという。

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伊予灘深くで起きた最大震度5強の地震について、
記者会見する気象庁の長谷川洋平地震津波監視課長
=14日午前4時半ごろ、東京・大手町の気象庁


 気象庁の長谷川洋平地震津波監視課長は記者会見し、「南海トラフの大きな地震に直接結び付くとは考えていない。今後1週間程度は最大震度4程度の余震に注意してほしい」と述べた。
 四国南方沖の南海トラフ沿いの大地震は、海側プレートが陸側プレートの下に沈み込む境界付近の浅い場所で起きる。しかし、今回の震源は海側プレートが深くまで沈み込んだ所だった。
 主な各地の震度は次の通り。
 震度5強=愛媛県西予市
 震度5弱=山口県柳井市、大分県臼杵市
 震度4=鳥取県米子市、島根県出雲市、岡山市、広島市、山口市、高知市、徳島県三好市、高松市、福岡県水巻町、佐賀県神埼市、熊本市、大分市、宮崎県西都市
 震度3=福井県小浜市、岐阜県羽島市、名古屋市、三重県鈴鹿市、滋賀県長浜市、京都府与謝野町、兵庫県姫路市、和歌山県海南市、鳥取市、松江市、徳島市、福岡市、佐賀市、宮崎市、鹿児島県伊佐市。(2014/03/14-05:36)



 “愛媛県原子力安全対策課によると、運転停止中の伊方原発(同県伊方町)1~3号機に異常はないという”が、どこまで詳細に調べてのかは不明だ。細かな配管の調査などは、地震直後にできるはずもない。
 
 そもそも“運転停止中”でも地震が起こると心配しなくてはならないのが、原発である。


 気象庁の地震情報サイトにある震度分布図。気象庁の震度分布図
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 東海地震からの連鎖ではないので、南海地震につながる可能性は低いのかもしれないが、震源が「中央構造線」上にあることは間違いないだろう。

 中央構造線は地震大国日本における大通りとも言ってよく、いつ地震を引き起こすか分からない活断層が存在する一帯である。

*図は「中央構造線」のWikipediaより。 
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「中央構造線」のWikipedia

 電力会社は、天下り先としても、また原子力村を量的に強固に構成するためにも数多くの組織を持っているが、一般社団法人日本原子力産業協会という組織のサイトから、原発立地地図を借りた。ぜひクリックして拡大しご覧いただきたい。
一般社団法人日本原子力産業協会サイトの該当ページ

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 ご覧のように、伊方や川内は、中央構造線に非常に近い位置に立地している。その川内を再稼動の第一号にすべく政府や原子力“寄生”委員会は動いている。

 今回のように地震があるたびに、「伊方は大丈夫か?」「川内は大丈夫か?」という不安に怯えて暮らすのが今後も日本人の宿命になるなんて、まっぴら御免である。
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by koubeinokogoto | 2014-03-14 06:30 | 原発はいらない | Comments(0)
あれから三年。しかし、Fukushimaはまったく収束のメドが立たない。もっとも深刻な放射能汚染水対策は、原子力規制委員会が、“再稼動”審査で手一杯で、ほとんど対策は東電任せ。これでは汚染水流出は止まらない。

 「美浜の会」サイトに、3月4日の政府交渉の報告が掲載されているので、全文をご紹介。
「美浜の会」サイトの該当ページ

3月4日 汚染水・再稼働問題の政府交渉報告
観測井戸の放射能濃度急上昇について原因把握せず
      汚染水対策ワーキングは再稼働優先で開かれず
    「実行性ある避難計画なしに安全は守れない」と認める
「最短2時間」で神戸市にプルーム到達(兵庫県知事)、しかし国はPPA出さず



みなさまへ<転載転送歓迎>

 昨日行われた、汚染水問題と原発再稼働についての政府交渉について簡単に報告します。60人ほどの市民が集まり、原子力規制庁の福島原発担当及び再稼働審査に関わる担当者、資源エネルギー庁の汚染水担当者と交渉しました。

 交渉に先立って、汚染水漏えい・流出事故についての緊急国際署名の提出が行われました。署名は142か国から、国内が11,855筆、海外が22,516筆、あわせて、34,371筆となりました。ありがとうございました。

◆汚染水問題…観測井戸の放射能濃度急上昇について原因把握せず

 汚染水問題では、まず、昨年10月と今年2月にH4タンク周辺のE-1という観測用井戸で放射能濃度が急上昇している件について聞きました。原子力規制庁は、原因はわからないというだけでした。汚染水対策ワーキングの議題にもあがっていません。政府のずさんな状況がよく分かったと思います。これで再稼働などもってのほかです。

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汚染水の実態(美浜の会ニュース)

◆汚染水対策ワーキングは再稼働優先で開かれず

 タンク周辺や護岸付近の井戸の放射能レベルが上がっていた時期に、11月に予定されていた汚染水対策ワーキングの会合が開かれず、10月から今年1月まで会合がありませんでした。原子力規制庁は、11月の会合は更田委員が風邪をひいたためと回答しましたが、その後復帰しても、会合は開かれていません。更田委員は再稼働審査に集中します。


◆相変わらず東電まかせ

 汚染水対応の体制について聞きましたが、原子力規制庁は、現地に常駐しているのが12名(昨年秋に聞いたときは10名でした)、規制庁内で福島第一原発を担当している部署が20~30名程度ということでした。汚染水を担当しているのはさらに少ない人数になります。エネ庁側は11名、他の省庁を含めて17名が現地に常駐しているとのことでした。この人数で、国が乗り出して汚染水対応にあたるというのは無理でしょう。東電が動き、国は報告を聞いて何かしら指示を出すだけという状況は変わっていません。


◆シルトフェンスだけではダメ…再稼働審査で汚染水対策は全く不十分

 再稼働審査において汚染水対策はどうなっているのか。放水砲で使った水対策として、シルトフェンスを張ったりや土のうを積むというものしかありません。

 ただし、海洋への拡散防止の対象は、放水砲による汚染水だけではないことを一応は認めました。規制庁は、福島で発生しているような汚染水事故に対して、シルトフェンスだけでは対応できないことを認めました。新基準は格納容器破損時の放射能放出抑制を要求していますが、汚染水による放出の抑制については対策がありません。


◆原子力防災…実行性ある避難計画なしに安全は守れないと認める

 要援護者の避難計画など「計画が取りそろっていないのは事実」と認め、「書き物だけではダメで、避難計画に現実性がなければ、安全は守れない」ことを確認しました。これについては、是非各地の自治体に伝え、実効性ある避難計画なしに安全は守れないと国が認めた。実際に計画はできていない。再稼働に反対をと伝えていきましょう。


◆20分で炉心溶融開始−「避難は難しい」と確認

 再稼働審査の重大事故の有効性評価では、事故発生から20分で炉心溶融がはじまるとあります。この時間で5km圏の避難が必要ですが、20分では不可能であることを確認しました。しかし、規制庁は、再稼働と防災は別であると繰り返し述べました。会場からは、安全が守れない状況での再稼働を規制委・規制庁として容認するのかとの声があがりました。


◆「最短2時間」で神戸市にプルーム到達(兵庫県知事)しかし国はPPA出さず

 兵庫県議会で丸尾議員の質問に対して、知事は、若狭の原発で事故が起こった場合に、約100km離れた神戸市にプルームが到達する時間は「最短で2時間」と答弁しています。これについて、規制庁は、プルーム対策(PPA)は、未だ「検討中」、「簡単には出せない」と繰り返すだけでした。原発周辺地域で大きな問題になっているにもかかわらず、のらりくらりの対応です。これでは、住民の安全を守ることはできません。

阪上 武 



 あらためて現状の問題点を確認。

 “タンク周辺や護岸付近の井戸の放射能レベルが上がっていた時期に、11月に予定されていた汚染水対策ワーキングの会合が開かれず、10月から今年1月まで会合がありませんでした。原子力規制庁は、11月の会合は更田委員が風邪をひいたためと回答しましたが、その後復帰しても、会合は開かれていません。更田委員は再稼働審査に集中します”

 原子力規制庁は、現地に常駐しているのが12名(昨年秋に聞いたときは10名でした)、規制庁内で福島第一原発を担当している部署が20~30名程度ということでした。汚染水を担当しているのはさらに少ない人数になります。エネ庁側は11名、他の省庁を含めて17名が現地に常駐しているとのことでした。この人数で、国が乗り出して汚染水対応にあたるというのは無理でしょう。東電が動き、国は報告を聞いて何かしら指示を出すだけという状況は変わっていません”

 昨年、東京オリンピックを招致するために「完全にコントロールされている」と世界に向けて大嘘をついた後にも、汚染水は垂れ流し状態のままである。

 その後、「国費投入」であるとか「全力で当たる」とか、「安全第一」とか、安倍の口から出る言葉に、何ら信憑性のないことは、原子力規制委員会メンバーが再稼動審査で忙しく汚染水対策が東電任せになっている実態で明らかだ。

 三人の事故調査委員会のトップと、アメリカの原子力規制委員会の元委員長が昨日日本記者クラブで討論会を行なったことについて、福島民報の記事から引用。(太字は管理人)
福島民報サイトの該当記事

再稼働議論教訓生きず 原発事故調トップが批判

 東京電力福島第一原発事故から3年に合わせ、政府、国会、民間の事故調査委員会のトップ3人と、当時の米原子力規制委員会(NRC)委員長のグレゴリー・ヤツコ氏による討論会が10日、都内の日本記者クラブで開かれ、事故の教訓を生かさないまま再稼働の議論が進む現状に批判が相次いだ。

 政府事故調で委員長を務めた畑村洋太郎氏は、事故当時、富岡町で渋滞が発生し避難が困難だった事例を紹介。原発の半径30キロ圏の市町村が策定しなければならない避難計画について「計画の正当性が確認されてから再稼働の議論をすべきだ」と指摘した。 

 国会事故調の委員長だった黒川清氏は、原発の安全性を保つために国際原子力機関(IAEA)が提唱する「5層の多重防護」について触れ、「(国内の原発で)やっていない所はたくさんある。5年たっても何も変わっていない」と批判した。 

 ヤツコ氏は「汚染水の海洋流出や原子炉建屋の汚染は続いており、事故は終わっていない」との認識を示した。

 民間の有識者で構成された民間事故調の委員長だった北沢宏一氏は「原発事故の確率を減らすだけではなく、事故の拡大防止策についてもしっかり検討すべきだ」と述べた。
( 2014/03/11 08:58)


 彼等の声が、なぜ永田町や霞が関に届かないのだろうか。

 特に、ヤツコ氏の発言と現在の日本の原子力規制委員会の実態の乖離があまりにも大きい。やはり“寄生”委員会だ。


 しかし、安倍政権や霞が関も、口では復興を語るが、汚染水対策は東電任せであり、東京オリンピック関連への人材投入が優先され、被災地の復旧のための人手が払底している。

 三年たっても、この国のリーダーたるべき人たちは、何ら学んでいない、ということか。

 さまざまな特別番組が組まれているが、26万人の避難者におけるフクシマ関連の方々にとっては、フクシマの収束のメドが立たないことが、もっとも心理的な苦痛となっている。

 停滞気味な除染活動が前に進もうが、汚染水を垂れ流し、未だに冷却水のトラブルも起こるようなフクシマの状態で、もし国が安全と言おうが、故郷に帰ることなどできないだろう。

 再稼動審査を優先する規制委員会、東京オリンピックを優先する霞が関、永田町、これがあれから三年の日本の実態である。

 この国はいったいどうなるのか。このままでいいはずがない。
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by koubeinokogoto | 2014-03-11 12:05 | 原発はいらない | Comments(2)
大震災、Fukushimaから丸三年目を明日に控えても、安倍晋三の原発再稼動の姿勢は変わらない。
47NEWSサイトの該当記事

首相、原発再稼働を明言 「安全確保が大前提」

 安倍晋三首相は10日の参院予算委員会で、原発の再稼働について「原子力規制委員会が厳しい基準で安全と認めたものは、地元の理解をいただいた上で再稼働していきたい」と述べ、再稼働に前向きな姿勢を重ねて表明した。東日本大震災から11日で3年となることに関連し、被災地に復興の実感を広げる決意も明らかにした。

 エネルギー政策に関し「国民生活や経済活動に支障がないよう、責任あるエネルギー政策を構築することが何よりも重要だ」と指摘。原発の安全性については「東京電力福島第1原発事故の教訓を踏まえ、安全を確保することが大前提だ」と強調した。2014/03/10 12:08 【共同通信】



 “原子力規制委員会が厳しい基準”、などと言うことが大きな嘘であることは、アメリカ原子力規制委員会(NRC)との比較ですぐ分かることである。

 昨年6月20日に放送されたテレビ朝日「報道ステーション」の「アメリカ原子力規制委員会」の活動の紹介の動画を@動画のサイトで見ることができる。「@動画」サイトの該当ページ

 動画の内容は次のように紹介されている。

動画の内容

世界最多の原発104基を抱えるアメリカ。

原発の安全対策は、すべてNRC=アメリカ原子力規制委員会が定めた規則によって厳格に行われている。首都ワシントン郊外にあるNRCの本部。5人の委員の下に、約4000人の職員を有する世界最大規模の原発規制組織だ。

NRCが定めている原発の規制指針は、豊富な人員により作られ、世界一細かいといわれている。

2冊で約1900ページ。さらに、この指針を補足する細かい規則が200項目、1万ページ以上ある。

全米すべての原発敷地内には、NRCの事務所が設置され、検査官が常駐している。彼らは、厳しい規制がきちんと守られているのか、抜き打ち検査を行う。

いつでもどこにでも立ち入る絶対的な権限があり、原発職員は彼らを制止できない。

アメリカの原発への安全意識は、スリーマイル島の事故から高まったといえる。事故以来、原発所有会社は、“原発は危険なもの”という意識のもと、自ら危険を排除することで発展してきた。9・11以降、テロ対策がより厳重となり、アメリカでの原発取材は容易ではないが、今回、山口アナウンサーがテネシー州にあるセコイヤ原発に入り、NRC検査官に密着した。


 NRCは、5人の委員の下に、約4000人の職員の組織で、全米すべての原発敷地内には、NRCの事務所が設置され、検査官が常駐している。彼らは、厳しい規制がきちんと守られているのか、抜き打ち検査を行う。

 果たして日本の原子力規制委員会の組織体制はどうなっているのか。

 再稼動を急ぐ前に、謙虚に原発先進国アメリカのNRCを見本として、“世界で最も厳しい基準”づくりをすると共に、稼動する場合の管理体制とつくることを優先すべきだろう。

 すでに安倍政権の管理下に置かれたかのような、本来は独立した組織であるべき規制員会の元で、適正な評価が行われるとは、誰も思っていないだろう。

 脱原子力をまず前提にして、Fukushimaの収束、進展しない被災地支援、オリンピックを優先する国の政策変更など、やるべきことは山積みである。
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by koubeinokogoto | 2014-03-10 15:36 | 原発はいらない | Comments(0)
柏の通り魔事件の犯人が逮捕された。本人は、ネットにおいてはそれ相応に知れられた存在であったことが、ネットでささやかれている。同一人物であるならば、プロフィールに“セレブニート”と書いていたようだ。

 これから、大衆週刊誌や、同じマインドのテレビなどが、きっとこの犯人“個人”や家族、特に親の周辺を探りまくり、“こういう家庭で育った、引きこもりのおたく”という人物像を描き出すのだろう。いつものことだ。

 しかし、このような事件が起こる背景、真の問題を解決しない限り、同様の犯罪はなくならないだろう。

 なぜ事件を防ぐことができなかったのかということを、社会病理の視点から追求するメディアはないのだろうか。

 以前に兄弟ブログである「噺の話」で書いたことがあるが、中島梓の『コミュニケーション不全症候群』から引用。
「噺の話」2011年3月5日のブログ
「噺の話」2011年3月6日のブログ
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中島梓『コミュニケーション不全症候群』

 「最後の人間」という章に、なぜ「おタク」や「ダイエット」などを素材として「コミュニケーション不全症候群」というテーマで本を書いたのか、についての本音に近い理由が書かれているような気がする。

 もっとずっと重大に見えるたくさんの問題−たとえば環境破壊、地球の汚染、戦争や飢餓がこれほど身近に迫った臨界点をかかえているように見えるとき、なんでわざわざコミュニケーション不全症候群−いうなればほんのちょっとした不適応ないし過剰適応の問題を俎上にあげてまじめに考えなくてはならないのか。
 それは警察の機構と似ている。−「犯罪が起こらなくては何もできることはない」のである。おタクのなかのあるものがゆきずりに幼女を殺せばはじめておタクという存在は社会問題となる。が、それはすぐに次の−そう、たとえば、見捨てられている少年たちが女子高校生をさらって監禁し、ついになぶり殺してしまった、というような事件にとってかわられ、人々の関心と有識者の意見とはすぐに、それまでのおタクについての考察から、放任家庭への批判へとうつりかわってゆく。同じように拒食症で20キロになって死に瀕してはじめて、少女たちは多少なりともかえりみられるだけの価値のある存在、つまりは立派な「患者」として扱われるようになるだろう。
 本当はそれでは遅いのだが、そういう扱いが幸いにして間に合うことはなかなかない。いや、彼ら彼女たちがそのような、さまざまな異様な症状を呈するにいたったのはそもそも大体が、それほどに−殺人をおかしたり20キロにまで自分自身をすりへらすようなことになるまでに、社会から無視され、かえりみられず、かえりみるだけの価値もない存在として扱われていたからなのだ。社会は彼らをちゃんとした人間として正視しなかったし、彼らもまた自分たちの同類をそうしなかった−彼らの場合はそうするだけの余力はもう残ってなかったのかもしれない。また彼ら自身も社会に対してそういう期待をもつこともなかったのだ。そうするかわりに彼らは自分自身の頭を虚構の砂のなかに埋める−さながら駝鳥のようにだ。そうして何も見ないで生きようとする。


 著者が主張したいことを、私なりに箇条書きで整理してみる。

(1)現代社会は、自分自身が安心していられる“テリトリー”が、常に侵害される恐れがある
(2)そのテリトリー外の人とのコミュニケーションが、なかなか上手く行えない傾向にある
(3)いわば「コミュニケーション不全症候群」と言うべき病は、必ずしも“ヘンな人”や
   “異常な人“といった特定個人の問題ではなく、現代人がすべからく侵されかねない
   社会病理である
(4)そういった環境に過剰適合したものとして、「おタク」や「ダイエット」、そして行き
   過ぎたダイエットによる摂食障害などの問題がある。
(5)しかし、こういった社会病理に起因する問題は、特定個人が何か問題を起こしたり、
   ニュースになるような事態になって初めて、あくまで“個人”の問題として警察が扱い
   マスコミも取り上げるが、本質的な社会病理のことは滅多に話題にならない
(6)重要なのは、その特定個人による“事件”の背景にある社会病理の実態を知ることと、
   それをどう解決するかという議論なのである

 事件になる前に、彼が“犯人”にならないようにするための、社会のあり様があったのではないか。

 彼の“テリトリー”がどのようなものだったのか。そして、彼の“テリトリー”の外とのコミュニケーションを阻害していたものは、何か。あるいは、少しでも外とのつながりがあったのに、いつしか何らかの理由で閉ざされたのか。

 たしかに、特定の家庭環境が大きく影響していることは確かだろう。しかし、今日、そういう家庭環境が、特殊なのかどうか・・・・・・。

 あえて言うなら、今や、世の中「おタク」だらけである。私だって「落語おタク」と言われるかもしれない。

 街にはスマホは見ても、相手の目を見ない子供や大人で溢れている。ゲームに熱中し、チャットやLINEにのめり込む人も多い。ますます「コミュニケーション不全症候群」は蔓延しやすい状況にある。

 そして、一人っ子が増えることで、家庭の環境にもよるが、仕事をしなくても食べて行ける二十代、三十代も少なくない。

 もし、彼や彼女が、自分だけの“テリトリー”に閉じこもり、そのテリトリーを侵害すると感じる者や物を“敵”とし見做して攻撃することになれば、また“事件”が起こるだろう。

 簡単に解決できる問題ではないが、犯人という個人や特定家族のことを攻撃するのではなく、この社会病理をどうすれば治すことができるか、あるいは症状を軽くすることができるのか、そういう議論をしなくてはならないように思う。

 まず、特定事件としてではなく社会病理として捉えて議論を始めることからしか、問題解決への道は開けないのではないか。

 中島梓が比喩として使っているような、彼や彼女と同じように、周囲の人々も砂の中に頭を埋める“駝鳥”になっていないだろうか。
 それでは、彼や彼女が駝鳥のように頭を隠していることが見えようもない。要するに誰もが誰も見ていない、「駝鳥症候群」が蔓延するかもしれない。そこには、ハナからコミュニケーションを図ろうという意図がない。これこそが最悪の病と言えるだろう。

 たとえば、私は大震災やFukushimaの復興のために若い力が生きる道があると思っている。かつて寺山修司が言った「書を捨てよ町へ出よう」をもじるのなら、「スマホを捨てて被災地に行こう」とでも言う動きがあってもいいように思う。

 ゲームやチャットで得られるよりもずっと上等な快感が被災地の復興支援に見出せないだろうか。あくまで机上の甘い空論かもしれないが、そういったことも含め、「コミュニケーション不全症候群」への処方箋をいろいろと考えないといけない時期にきたような気がする。
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by koubeinokogoto | 2014-03-06 21:47 | 幸兵衛の独り言 | Comments(0)

人間らしく生きることを阻害するものに反対します。


by 小言幸兵衛