「ほっ」と。キャンペーン
 ISというテロ組織の残虐行為は、許せない。

 しかし、ISという組織にのみ注意を払っていると、中東問題の本質を見失いかねない。

 現在の混沌とした状況を生み出した「サイクス・ピコ協定」から、今年はちょうど100年になる。

 今年4月からNHKのBSで始まった「国際報道2016」で、同協定が締結されてちょうど百年目の5月16日に、この協定のことを取り上げていた。
NHKサイトの該当ページ

 ワシントン支局長などを歴任した田中淳子と、「ニュースウォッチ9」のレポーターを務めていた児林大介などがキャスター。
 当日の内容から引用したい。
 なお、専門家として出演した池内恵(さとし)さんは、落語などの芸能にも造詣が深いドイツ文学者の池内紀(おさむ)さんのご子息である。

特集
2016年5月16日(月)
「サイクス・ピコ協定」締結から100年

映画『アラビアのロレンス』。
第1次世界大戦のさなか、イギリス軍の工作員・ロレンスが、オスマントルコからの独立を目指していたアラブ人義勇兵を支援する物語です。
劇中、イギリスが結んだある密約が問題となります。

“サイクス・ピコ条約を知らんのか?”

「サイクス・ピコ協定」です。
イギリスやフランスなどが、中東の分割を秘密裏に決めていたのです。
大国の利害を優先したサイクス・ピコ協定。
今も中東で続く混乱の原因とも言われます。

田中
「今からちょうど100年前の今日、5月16日に締結された『サイクス・ピコ協定』。
今日の特集は、この協定を手がかりに、混沌とする今の中東情勢を読み解きます。」

児林
「『サイクス・ピコ協定』とは、第1次世界大戦のさなかに、イギリスとフランスなどが、中東の分割を決めた密約です。
両国の外交官、イギリスのサイクス氏と、フランスのピコ氏の名前から、こう呼ばれています。
当時、この地域を支配していたオスマントルコ帝国が崩壊する中で、両国は、自国の利権を確保することを目的とした、新たな秩序を作ろうとしました。

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こちらが当時の分割案です。
地図にある『A』がフランス、そして『B』はイギリスのもとで支配するとしました。
そしてこちらの赤い線が、現在のシリアとイラクの国境です。
当時引かれた黒い線が、今のシリアとイラクの国境の原型になったことがわかります。」

サイクス・ピコ協定 なぜ今?

田中
「ここからは、中東情勢に詳しい、東京大学准教授・池内恵(いけうち・さとし)さんにお話を伺います。

池内さんは最近、サイクス・ピコ協定について1冊の本にまとめ、来週出版されます。
本も書かれているということで、今、改めて100年前のこの協定に注目する意義というのはどこにあるんでしょうか?」

東京大学先端科学技術研究センター 准教授 池内恵さん
「サイクス・ピコ協定そのものを見たり、その前後の中東の動きを見ると、中東問題というものはどうしてこんなに難しいのか、なぜ難しいのかというのが、かなり明らかになるんですね。
それで、同じ問題を今も引きずっていますから、そういう意味でサイクス・ピコ協定を見直してみることに意味があると思いますね。」

田中
「そうしますと、今のいろいろ混とんとしている中東情勢、ここに原因があったと?」

東京大学先端科学技術研究センター 准教授 池内恵さん
「原因というよりは、当時と今と、おそらく、かなり同じ問題に直面していると。
サイクス・ピコ協定そのものは、当時の超大国・イギリスとフランス、英仏が中心になったと。
 当時の帝国だったロシアとか、あるいはイタリアなども一緒になって、中東をどう分割しようかというのを考えたわけですね。
ただ、それは大国の思惑で考えたもので、結局は、そのままでは実現しなかったんですね。
ですから、それが原因を作ったというわけではないんですが、しかし外側から欧米諸国が植民地主義によって中東に介入してつくりかえようとする、その問題を今も引きずっていますから、中東では。
そういう意味で、このサイクス・ピコ協定というのは欧米の植民地主義が中東に与えた影響ということで、非常に象徴的なんですね。」

田中
「悪名高き協定となっていましたよね。」

東京大学先端科学技術研究センター 准教授 池内恵さん
「そうですね。
日本の学校教育、世界史の教科書などで教えられて覚えていらっしゃる方もいると思いますし、世界的にも非常に有名で、外交文書としては、おそらく最も有名なもの、また最も悪名高いものだと言えると思います。」

田中
「今につながる問題だというのを、地図で具体的に説明していただけますか?」

東京大学先端科学技術研究センター 准教授 池内恵さん
「なぜ悪名が高いかといいますと、とりあえず線を引いて、ここはイギリス、ここはフランスが仕切るよというふうにして…。

実際にはこの辺りにロシアとか、そういった勢力圏があったんですが…。

この線が、現地の民族とか宗教・宗派に合致していないというところが、ずっと批判されてきたんですね。

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批判が最も大きいもの、例えばこの(白い)エリアというのは、トルコ人でもなく、シリア・イラクのアラブ人でもなく、クルド人の人たちが住んでるんですね。


この国境でいいますと、トルコとシリアとイラク、あとイランがありますが、クルド人というのはそういった国のどこにも住んでいるんですが、『国』を持っていない。
国境線が、例えばクルド人が住んでいるところに引かれてしまう、そういう原因をサイクス・ピコ協定は作ったというのが、いちばん大きな批判ですね。」

 このように、第一次世界大戦において、イギリスとフランス、そこにロシアやイタリアも加わって、戦勝国である軍事大国が、好き勝手に国境線を引いて縄張りを決めた密約が「サイクス・ピコ協定」なのだ。
 この協定の原案を作ったイギリスの中東専門家マーク・サイクスと、フランスの外交官フランソワ・ジョルジュ=ピコの名をとって名付けられた。

 この協定が、どんな問題を引き起こしたか、引用を続ける。

田中
「そのことによって、クルド人にはどういうことが起きているんでしょうか?」

東京大学先端科学技術研究センター 准教授 池内恵さん
「クルド人が国を持てない、国を持とうとする民族運動をやる。
そうすると、各国の政権と対立すると。
民族紛争が起こるんですね。」

田中
「では、改めて国境を引き直したほうがいいんでしょうか?」

東京大学先端科学技術研究センター 准教授 池内恵さん
「ところが、そううまくはいかないんですね。
例えば、実際にはクルド人だけではなくて、例えばアルメニア人も、同じようなエリアに実は住んでいたり…。
あるいは、この辺りにギリシャ人なども住んでいたんですよね。
そうしますと、この1920年の条約(セーブル条約)ではもうサイクス・ピコ協定は否定して、もっといろんな民族や宗教・宗派集団の人たちが国をほしがった。
それを認めた条約が実際に作られたんです。

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ただ、これはこれでものすごく細分化されてしまって、しかもそれぞれの領土の中にクルド人がいたり、クルド人の領土の中にアルメニア人がいたり、その逆も同じで、実際にはこんなふうに線を引けないんですね。
民族や宗教・宗派に合わせた国境線を引くということ自体がそもそもできないと。」


 ここで、池内さんから、重要な発言が登場した。
 そうなのだ。
 “民族や宗教・宗派に合わせた国境線を引くということ自体がそもそもできない”のである。

 引用を継続。


「その後、どうなったんでしょう?」

東京大学先端科学技術研究センター 准教授 池内恵さん
「1920年の、トルコのアナトリアというエリアをいろんな民族で分割する案(セーブル条約)を、新たに独立しようとしているトルコ共和国が否定して、結局、独立戦争をやって、今の国境線にほぼ近いところまで全部押し戻した。(ローザンヌ条約)
それでその後、トルコ人の国民国家をつくっていったと。
それからこの下のエリアでは、シリアとかイラクの人たちがアラブの国民国家をつくっていったんですね。

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そうしますと、クルド人やアルメニア人やギリシャ人は、それぞれが例えば『住民交換』なんていう方法まで使って、ギリシャ人はギリシャに行ってしまったり、アルメニア人は世界中に散ってしまうとか、そういう形で無理やり解決したんですね。」

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田中
「ここに『超大国』『地域大国』『現地の民族・宗派』とありますが?」

東京大学先端科学技術研究センター 准教授 池内恵さん
「サイクス・ピコ協定というのは、この『超大国』が主導して、中東をこんなふうにしたらいいんじゃないかといった、そういう協定なんです。
それに対して、『セーブル条約』の方になってしまうと、今度は『現地の民族・宗派』が、それぞれ自分たちがこの辺りに国をつくるから、『超大国』や『地域大国』は認めてくださいよと主張する。」

田中
「両方ともうまくいかなかったわけですね。」

東京大学先端科学技術研究センター 准教授 池内恵さん
「そこで結局、1923年のローザンヌ条約になりますと、『地域大国』としてのトルコが台頭して、自分たちが、自分たちの国だと思っている領域を、とにかく軍事力をもって制圧して、そのあと国際社会もそれを認めた。
ギリシャ人やアルメニア人などは外へ出ていったり、クルド人などは民族の主張を抑圧されるということになってしまった。
結果的に、それでトルコという国ができたんですね。」

児林
「そういったサイクス・ピコ協定の否定を前面に掲げて勢力を拡大したのが、過激派組織IS=イスラミックステートです。」


 ついに、ISの名が登場。

“密約”から100年 中東はどこへ

一昨年(2014年)6月、ISの樹立が宣言された時期に公開されたビデオです。
タイトルは、「サイクス・ピコ協定の終えん」。

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国境地帯の警察署を爆破したとする映像など、ISがシリアとイラクの国境をないものとして支配を広げていることを印象づけるものです。

“ここはサイクス・ピコ協定の国境だが、我々は決して認めない。
私たちに国籍はない。
イスラム教徒の国は1つだ。”

“100年の不満” ISが利用

田中
「ISはこれまでの国境を無視して、ご覧のようなイスラム国家を樹立すると宣言していますね。
こうしたサイクス・ピコ協定の『全否定』をよりどころとしているんですが、そこを池内さんはどのようにご覧になっていますか?」

東京大学先端科学技術研究センター 准教授 池内恵さん
「これは、例えば歴代のアラブ諸国の政権というのは、ずっとサイクス・ピコ協定が悪かったんだと主張してきて、教育でも教えてきたんですね。
そういう意味では、ISが突然言い出したことでもないですし、また現地の各国の人たちも、実は意外にそのことを、支持はしないかもしれませんが、共感したりするんですね。
この地図は、イスラム世界が最大の版図を持っていたときの誇りを全部取り戻すというような主張をしているんですが、ただ、実際にISがやったのは、イラクやシリア、その近代につくられた国境線を壊してみせるということなんです。
サイクス・ピコ協定を批判するアラブ諸国の政権は、実際にはサイクス・ピコ協定の枠の中で国を与えられて、それを既得権益のようにしてきたんです。
だから実際には自分たちで国境線を引き直そうとしなかったんですが、それを、ほんの小規模ですがイラクとシリアのところでISがやってみせた。
これは、言っていたことが初めて実現したということで、それなりに衝撃を与えたんですね。」

ISは、イスラム世界の人々の共通の思いである、大国の身勝手な「サイクス・ピコ協定」による国境線を否定することを旗印にして出来た組織であるということを、日本の国民はもっと理解すべきだと思う。

 発端となった密約は、第一次世界大戦時のイギリス、フランス、そしてイタリア、ロシアによる密約であり、日本は、まったく関与していない。

 あえて言うならば、アメリカも、「サイクス・ピコ協定」に関与していない。

 しかし、アメリカは、かつての「世界の警察」の夢を再びというノスタルジーもあったのだろうが、石油利権をめぐるロシアとの覇権争いのために、湾岸戦争を起こし、イラクに侵略し、中東問題を複雑化させている。

 そんなアメリカの言うがままに、「ISは敵だ」と言う日本の首相は、「サイクス・ピコ協定」のことを、どれほど理解しているのか、疑問である。

 さて、なかなかの好番組は、自然な話の流れとして、この後でシリア問題にもふれているので、引用を続ける。

国境線 限界に?

児林
「となりますと、サイクス・ピコ協定によって引かれた国境線、これによる矛盾が出てきたというか、何かそういうことも指摘できるんでしょうか?」

東京大学先端科学技術研究センター 准教授 池内恵さん
「もともと中東を民族ごとに国をつくる、国境線を引くというのは非常に難しいんです。
そういう意味で矛盾はあるんですね。
その矛盾を覆い隠していたのは何かというと、例えばかつてのフセイン政権とか、今のシリアのアサド政権のような、かなり抑圧的な独裁政権なんですね。
ところが、その政権が揺らいでしまった。
アメリカのイラク戦争によって倒されたフセイン政権だとか、あるいは『アラブの春』以後、民衆の反体制運動をきっかけに揺らいだアサド政権、それらの強権的な政権が抑えていることで、宗教とか宗派の問題が覆い隠されていたものが今、出てきてしまった。」

シリア 解決の道は

田中
「その最も顕著な、今起きている例というのがシリアかと思うんですが、国境線を維持したまま問題解決をする道、国際社会が今それを探って和平協議をしているわけですが、これはどうご覧になりますか?」
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東京大学先端科学技術研究センター 准教授 池内恵さん
「今のシリアの内戦の現状を見ますと、おおまかに見ただけでも、いろんな色で塗り分けられた諸勢力が自分たちの支配領域をおさえてしまっていると。
例えばクルド人が中心になって、クルド人の自治区をつくるとかですね、あるいはアサド政権に近い人たちがおさえているエリアとか、あるいはイスラム主義的な勢力がおさえているエリアなどに分かれてしまっているんですね。

これは100年近く前の、例えばセーブル条約などを先ほどお見せしましたけれども、当時は民族・宗派に合わせてここまで細分化されましたが、今のシリアも同じように細分化されてしまう。
しかしそれだと、とても国として今後成り立たないと思うんですね。
そうしますと、どうやら現地の民族・宗派に合わせて切り取ればいいわけでもないらしい。
じゃあ、地域大国が新たに出てきて、ある程度まとまった地域単位をおさえてくれるかというと、今、例えばサウジアラビアやトルコやイランなどのこの周辺諸国、地域大国がいるんですが、それぞれが争っていて、むしろこのいろんな勢力を支援している。
ですからむしろ地域大国は今、力は強くなっているんだけども、現地のいろいろな民族・宗派の対立を永続化する方向にいっている。
そうなると超大国はなんとか合意してくれないかと。
例えば今年(2016年)の2月22日に発表されたアメリカとロシアの合意なんかでは、ここでなんとか超大国が、アメリカやロシアがそれぞれ影響力があるイランやサウジアラビアなどを使ったり、あるいは直接現地の勢力に連合者を見つけて影響力を行使したりして、そして米ロでは合意して、なんとかまとめようとはしているんです。
しかし、超大国の力もそんなに決定的ではないと。
この3層構造で、それぞれが中で分裂している。
それぞれの層の間でまた対立がある。
これをぴたっとどこかで、全員が合意するかたちで終わらせないといけない。
それがシリア内戦を終わらせる難しさなんですね。」


 こういう混沌として状況で、日本は、どういう役割を果たすべきか。
 
 何度か書いているが、イスラム民族は、日本に好意的な面の方が強い。

 それは、日露戦争で、極東の小国が大国ロシアと堂々と戦って勝利した、ということも、いまだに日本贔屓の要因の一つだが、憲法九条があることも、理由の一つに違いない。

 しかし、昨年1月にエジプトで安倍晋三が行った演説は、これまでの日本へのイメージに泥を塗る暴言だった。
 
 テロは許せない。
 しかし、もしテロ事件があっても、「日本人は逃げろ」と言われるための国としての行動、思想のあり方が、国家としてあるべきだ。

 イギリス、フランス、イタリア、ロシアがテロの攻撃対象になることが多いのは、100年前の密約に由来していることを、日本政府も国民も、あらためて認識しなくてはならないだろう。

 中東の人々に、そして、ISなどのテロ組織から、日本は、勝手に国境線を引いて大国の利権争いをする大国の仲間と見なされることの危険性を認識しなくてはならない。

 中立で、常に平和を希求する、世界で唯一原爆の被害を受けた国として存在する道はありえる。


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 ジャーナリズムという言葉が死語化する中、参院選に関する世論調査について、ここまでやるか、という新聞の捏造について、HUNTERから紹介したい。
HUNTERの該当記事

日経・読売 捏造記事で世論誘導?
選挙情勢調査で無所属候補ら省いて質問
2016年7月 4日 09:00

 日経、読売漁師が参院選の情勢分析のため実施した世論調査で、一部候補者の名前を省いて投票先を聴きだしていたことが分かった。事前の見立てで不必要と判断した候補者の名前を外したものとみられる。
 調査に参加した複数の関係者によれば、両紙から調査業務を委託された日経のグループ企業「日経リサーチ」が、コールセンターを持つ別の会社に実務を再委託。実務を受け持った会社の電話調査では、立候補者を列挙して投票先を答えてもらう際に、選択肢の中から無所属や諸派の候補者名を省略していた。
 既成政党の候補者の中から投票先を選ぶよう仕向けた形で、主要候補のポイントが上がるよう調査方法をねじ曲げて数字を操作した疑いがある。
 新聞社側の指示で行われたものなら、両紙の記事は信頼度ゼロ。捏造や世論誘導さえ疑われる事態だ。

委託された情勢調査を再委託

 6月24日に両紙の朝刊トップで報じられたのは、22日に公示された参院選の序盤情勢で、自公が改選過半数を超える勢いになっているという現状。この中で両紙は、裏付けとなった電話調査を「日経リサーチ」に委託したことを明記していた。

 HUNTERの取材によれば、日経リサーチは、実際の調査をITを活用したマーケティングやアウトソーシング事業を行っている「トランスコスモス」に再委託。トランスコスモスは、複数ある自社のコールセンターに別の派遣会社から来た電話調査要員を集めて調査実務を行っていた。

 コールセンター内での電話調査は朝9時開始。コンピューターが無作為に抽出した固定電話に架電し、その世帯の有権者のなかの1人に(該当者不在の場合はアポイントをとって再度架電)比例区や選挙区の投票先、重視する政策などを答えてもらう方法。質問は10項目ほどで、すべて選択式だった。有権者5万943人の内、2万7,640人が回答したことになっている。

公平性の担保なし 選挙妨害の疑いも

 不適切だったと見られるのが選挙区の投票先を聞く調査の手法。立候補者名を列挙し誰に投票するかを聞く際、複数の選挙区で無所属や諸派の候補者を省いて伝え、答えを引き出していた。2番目の設問がそれで、「あなたは ◯◯県の選挙区選挙では誰に投票しますか? 候補者を読みあげるので1人お答えください」とした上で、既成政党所属の候補者だけを読み上げていた。無所属候補に投票したいと考えていた人が、やむなく既成政党所属の候補者に流れた可能性がある。日経、読売の情勢調査は、公平性や正確さが担保されていない状況だ。

 世論調査には一定の時間がかかるため、電話を受けた有権者が嫌がる場合も少なくない。とくに調査が長時間に及ぶようなケースではなおさら。立候補者が31人もいる東京都選挙区では、全員の名前を読み上げることさえ難しくなる。だが、正確さを期すなら全員の名前を示すべき。事前取材でつかんだ強弱の見立てに合わせ、勝手に不必要と判断した候補者を外してしまうことは、大手メディアの驕りに過ぎない。

 問題はまだある。名前を省かれた候補者側にしてみれば、存在を否定されたも同然。調査の電話を受けた有権者に予断を与えたことも予想され、選挙妨害と言われてもおかしくない格好だ。

日経・読売は取材拒否

 情勢調査で一部の候補者を省いたのは、日経、読売両紙の指示によるものなのか、あるいは日経リサーチかトランスコスモスの判断だったのか――事実関係を確認するため日経、読売に取材したが、両紙の広報担当は事実上の取材拒否。この点については明日の配信記事で詳述するが、両紙とも自分たちの報道に浮上した疑念に、きちんと向き合おうとしていない。

 日経、読売の選挙情勢調査におけるサンプル数は約27,000。有権者の0.027%に過ぎない回答者から得た数字を基に、両紙が選挙戦の行方を左右するような記事を垂れ流したのは事実だ。記事の裏付けとなった数字が自分たちの都合に合わせたものだったすれば、捏造記事による世論誘導ととられても仕方があるまい。

 以前、宅内電話による世論調査が、なんともブラックな仕事であることを、「日刊ゲンダイ」の記事から紹介したことがある。
2014年12月9日のブログ

 そもそも“宅内電話”を対象にした調査で、今回から選挙権を持つことになった18歳や19歳の有権者はもちろん、携帯・スマホが電話の主流になっている人々の現状の「世論」を反映できるはずがない。

 加えて、紹介した記事のように、新聞社が意図したのか、下請け会社が手抜きしたのかは分からないが、一部の候補者を調査から外すなど、言語道断である。

 そんなまったく当てにならない、捏造と言える「世論調査」を記事として掲載し、政府・与党有利、と煽るメディアの策にはまってはいけない。

 安倍晋三が、安保法案から目をそらそうと、アベノミクスを論点にしようと言っていたが、まさにアベノミクスが、幻であったことも明白となっている。

 この度のISによるバングラデシュでのテロを、安倍晋三は安保法案問題で有利に使おうとするだろうが、そうはならない。

 日本がアメリカに追随していなければ、もしかすると、バングラデシュで日本人が攻撃の対象にはならなかったかもしれない。

 一つでも多くのメディアは、そのことを忘れず記事にして欲しい。

 安倍は、こう言うかもしれない。
 「もし、アメリカがISを攻撃するため戦場に兵士を送る時、日本の自衛隊は、何もしないでいいのですか!?」と。
 
 国民は、答えよう。
 「もし、アメリカがISを攻撃するため戦場に兵士を送る時、日本は、アメリカに言うべきである。
  武力に武力で対抗することからは、何も解決しない!」と。

 歴史的に、イスラム主義の国から、日本は尊敬されてきた。
 それなのに、アメリカの戦争を支援する日本、ということから、日本人がテロに遭遇する危険性が拡大しているということを、忘れてはならないと思う。

 加えて、安倍はISを敵にする発言をしてしまっている。

 ISが昨年ジャーナリストの後藤健二さんを殺害する前の2015年1月に、安倍がエジプト訪問で「ISIL(イスラム国)がもたらす脅威を少しでも食い止めるため、2億ドルを出す」と表明したことは、まったく状況を認識していない、一国の首長として不適切な発言だった。

 日本は、アメリカの尻馬に乗って、ISを中心とした過激派組織との対決姿勢を打ち出すのではなく、アメリカやロシアなど軍事大国同士の代理戦争により悲惨な状況に陥っている国や地域の不幸を救うため、中立的な仲介役としての立場を主張すべきなのである。

 この度の犠牲者は、安倍政権の軍事大国への舵取りや安倍の過去の不用意な発言があったことも影響している。しかし、それを記事として掲載するマスメディアは存在しない。

 だから、HUNTERや、日刊ゲンダイなどが頼りになるのだ。

 小細工をして国民を扇動し、軍事大国への道へ国民を誘導しようとする大手新聞やテレビに、騙されてはいけない。


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 東電が、「炉心溶融」や「メルトダウン」という言葉を隠蔽していた、という調査報告が、今になって明かされている。

 なぜ、この時期に、という疑問は残る。

 拙ブログでも何度か紹介してるように、2011年3月12日には、当時の原子力安全・保安院の中村幸一郎審議官がら、「炉心溶融」の可能性がある、と発言している。
2011年12月19日のブログ

 日経サイトでいまもリンク可能な記事を、またご紹介。
nikkei.comの該当記事
福島第1原発「炉心溶融が進んでいる可能性」 保安院
2011/3/12 15:30

 経済産業省の原子力安全・保安院は12日午後2時、東京電力の福島第一原発1号機で原子炉の心臓部が損なわれる「炉心溶融が進んでいる可能性がある」と発表した。発電所の周辺地域から、燃料の核分裂に伴うセシウムやヨウ素が検出されたという。燃料が溶けて漏れ出たと考えられる。炉心溶融が事実だとすれば、最悪の原子力事故が起きたことになる。炉心溶融の現象が日本で確認されたのは初めて。

*写真(動画)のキャプション:記者会見する経済産業省原子力安全・保安院の中村幸一郎審議官(12日午後)

 保安院は同日午後3時半、圧力が高まって爆発による放射性物質の大量放出を防ぐため、格納容器内の減圧作業を実施した。圧力が「午後2時を境に急激に下がりはじめた」(保安院)という。

 周辺地域から検出された種類は、いずれも本来は金属容器で封じ込めている物質。炉心溶融で大量に放射性物質が出れば、被曝(ひばく)の被害が広がる恐れもある。

 保安院は今回の炉心溶融について「放射性物質の広がりを計算した結果、現時点では半径10キロを対象とする住民避難の範囲を変更する必要はないだろう」と話している。

 震災にあった1号機は、核燃料棒を冷やしていた水位が下がり、露出していたとの報告もあった。

 燃料を包む金属容器は高温に耐えるとされる。溶けたとなれば、燃料周辺が相当の高温にさらされたとみられる。金属容器ばかりか原発の圧力容器や格納容器を溶かせば、放射性物質が外に漏れ出す。

 原発の運転中は、炉心で核燃料が核分裂を起こしている。発熱反応が連鎖し、冷却水を蒸気に変えてタービンを回し、発電している。

 冷却水があるうちは熱が一定に保たれるが、本来の水位が下がると燃料が生む熱の行き場が無くなる。最悪の事態では、原子炉の心臓部である炉心溶融が起きる。

 この事態を受け、保安院は自衛隊に給水支援を要請した。大量の水を使って熱を冷ますためだ。

 過去の大きな原子力災害も、炉心溶融が原因のものがあった。1979年には、米ペンシルベニア州のスリーマイルアイランド原発にトラブルが発生。緊急炉心冷却装置が働かず、高温になった燃料が炉心を溶かす大事故につながった。

 さすがに、もう動画を見ることはできないが、3月12日のこの報告を正しく受け止めた上で、その後の対策を施していたら・・・と思わないではいられない。

 2012年2月の東京新聞に、この中村幸一郎氏への取材結果を含む記事があるので、ご紹介したい。
東京新聞の該当記事

事故翌日「スリーマイル超える」 震災当初の保安院広報 中村幸一郎審議官
2012年2月22日

 福島第一原発の事故当初、記者会見で「炉心溶融の可能性がある」と説明した後、経済産業省原子力安全・保安院の広報担当を交代した中村幸一郎審議官(52)が21日、本紙のインタビューに応じ、その経緯などを語った。事故は深刻で、発生翌日には、米スリーマイル島原発事故を超えると思ったと当時の認識を語る一方、交代は発言とは無関係だと強調した。

 交代の経緯は、政府事故調査・検証委員会の中間報告でも検証されているが、報道機関に詳細を語るのは初めてという。

 中村氏は、1号機の原子炉を覆う格納容器の圧力が上昇した昨年三月十二日未明には「難しい状況に入ってきているなと思った」と、当時の認識を説明。

 消防車で注水を始めたのに、原子炉の水位が低下している状況をとらえ「(過熱した)核燃料の溶融が始まっている可能性がある」と考えた。大学で学んだ原子力工学の知識も判断を下支えした。

 同日午前の会見で、「(核燃料を覆う)被覆管が一部溶け始めていることも考えられる」と、初めて溶融の可能性に言及した。

 午後の会見前には、「コア(幹部)の人たちはそういう(溶融の可能性があるとの)認識を持っていた」と、寺坂信昭院長(当時)らと認識を共有していたと説明。寺坂氏の了承を得て、会見で「炉心溶融の可能性がある。ほぼ進んでいるのではないか」と踏み込んだ経緯を説明した。

 その後、首相官邸側が保安院の説明に懸念を示しているとの情報を得た寺坂氏から、ほかの審議官を介して「発言に注意するように」と指示された。

 中村氏は同日夕の会見を最後に広報担当を交代した。その後、保安院の説明は「炉心が破損」など、「溶融」を使わなくなった。

 このため、溶融発言によって交代させられたと受け取られてきたが、中村氏は「一、二時間おきに計十数回、二十五、六時間寝ずに会見をし、長い仕事になると思ったので休もうと考えた」と、自ら願い出ての交代だったと強調した。


 あの事故に関する報道で重要な転換点は、中村氏は同日夕の会見を最後に広報担当を交代した。その後、保安院の説明は「炉心が破損」など、「溶融」を使わなくなったことである。

 さて、中村幸一郎氏が交代した本当の理由は、何だったのか・・・・・・。

 “首相官邸側が保安院の説明に懸念を示しているとの情報を得た寺坂氏から、ほかの審議官を介して「発言に注意するように」と指示”があった、官邸の圧力が真因か。 

 それとも、ご本人が強調するように “自ら願い出ての交代”だったのか。


 東スポの昨年3月の記事に、真相が明かされている。
 同記事の中心となるのは中村審議官の後を受けた西山審議官の“その後”を追ったもの。
 しかし、中村審議官交代についても、信憑性の高い調査報告の内容が含まれている。
東スポの該当記事

 保安院の事故対応会見については先月、政府の事故調査・検証委員会が関係者を聴取した「聴取結果書(調書)」の一部が追加公開され、中村氏更迭の経緯が明らかになっている。

 保安院の根井寿規審議官(当時)が証言したもので、中村氏がメルトダウンの可能性に言及した後、会見担当を外れたのは、「寺坂(信昭)院長に呼ばれ『官邸から中村審議官を会見から外すよう言われたので根井君から言ってくれないか』と言われた」と語っている。中村発言に懸念を示した首相官邸側の指示があったと認めた。


最後の、“保安院の根井寿規審議官(当時)が証言したもので、中村氏がメルトダウンの可能性に言及した後、会見担当を外れたのは、「寺坂(信昭)院長に呼ばれ『官邸から中村審議官を会見から外すよう言われたので根井君から言ってくれないか』と言われた」と語っている。中村発言に懸念を示した首相官邸側の指示があったと認めた”という内容が、真実だと思う。

 この「聴取結果書(調書)」の追加公開分を探してみたのだが、なかなか見つからない。

 以前の記事で、リンクしていた、最初の報告書も、リンク先が替わってしまった。

 私の探し方がよくないのかもしれないが・・・何らかの意図を感じている。

 昨日の東電社長の質問への答えが歯切れが悪かったのは、報告書に対して枝野がいち早く異を唱えたからかもしれない。

 勘ぐるならば、自民党がこの時期の報告者提出を画策したのではなかろうか。
 政府の圧力があった、当時の政府はどこか・・・ということである。

 もし、そうだとしても、あるいは、自民党が関与してないにせよ、菅も枝野も、過ちは過ちとして、しっかり認め、受け止めることが大事ではなかろうか。

 まず間違いなく、官邸の圧力を、少なくとも“感じて”、東電が「メルトダウン」「炉心溶融」という言葉をタブー化したのであろう。

 では、あれから五年余。

 状況は変わったのか。
 情報公開は改善されたのか。

 今、福島第一原発では、どれほどの放射能が発生し、どんな危険な作業が続いているのか。

 現在の原発情報に関する隠蔽体質は、大手メディアを巻き込んでさえいるように思われる。

 決して、原発報道に関する情報公開の環境は、改善されていないと思う。

 野党は、“今そこにある問題”に対して、声を大にして追求すべきことが山ほどあるはずだ。
 
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 運転開始から40年を超えた関西電力高浜原発1、2号機について、原子力規制委員会は、運転延長を認可するという暴挙に出た。関電は、2019年秋以降の再稼働をめざしている。

 なぜ、こんなことが起こるのか・・・・・・。

 かつて、原子力ムラは、「老朽化」を、「経年化」と言い換えて、一度つくった原発を、一年でも長く稼働させようという誤魔化しを続けてきた。

 しかし、そういった過ちを正すのが「規制」委員会の役割だったのではないのか。

 なぜ、40年も稼働してきた原発までも延長して稼働させたいのか・・・・・・。

 原子力規制委員会は、原子力ムラ寄生委員会と名を替えるべきだろう。

 原子力を「規制」する組織などではなく、関電を含む原子力ムラと一体化した組織であることは、もはや明白。

 委員長の田中俊一は、2011年4月1日に、こんな行動をしていた。
 NHK ONLINEの記事を元にした拙ブログ記事から再度引用する。
 当時リンクしていたNHK の記事は、とうにリンク切れなので、記事の中身のみ引用する。

2011年4月1日のブログ

原子力委員会元委員らが陳謝

 事態収束の兆しが見えない東京電力の福島第一原子力発電所について、国の原子力委員会や原子力安全委員会の元委員らが、1日、記者会見し、原子力の利用を先頭に立って進めてきた立場から国民に陳謝するとともに、政府は国を挙げて事態に対処する強力な態勢を作るべきだなどと訴えました。

 記者会見したのは、原子力委員会の元委員長代理の田中俊一氏や原子力安全委員会の元委員長の松浦祥次郎氏、それに東京大学名誉教授の石野栞氏の3人です。3人は、日本の原子力利用を支えてきた研究者や技術者16人を代表して、1日、文部科学省で記者会見し、「これまで原子力の平和利用を先頭だって進めてきた者として、今回の事故を防ぎえなかったことについて、国民に申し訳なく思います」と述べました。
 そして、事態は次々と悪化し、収束の見通しは得られていないとして、電源と冷却機能を回復させ、原子炉や燃料プールを冷却し、大量の放射性物質の拡散を防ぐための対策を急ぐ必要があるとしました。具体的な対策としては、▽安定した冷却機能の復旧に向けて、24時間態勢で作業を進める一方で、作業員の人数を増やして1人当たりの作業時間を制限し、被ばく量を少なくすること、▽放射性物質の拡散を防ぐとともに、汚染の影響を評価し、避難している住民が帰れるまでの手順を示すことなどを挙げました。そのうえで、危機的な事態に専門家の知識や経験が十分に生かされていないとして、政府の下に、原子力事故の解析や放射線の計測評価など経験と技術を持った専門家を結集し、国民に情報を提供し協力を求めながら、国を挙げて事態の収束に当たることが重要だと訴えました。

 あの日、“今回の事故を防ぎえなかったことについて、国民に申し訳なく思います”と詫びたのは、田中俊一はじめとする面々の、エイプリルフールだったわけだ。

 “政府の下に、原子力事故の解析や放射線の計測評価など経験と技術を持った専門家を結集し、国民に情報を提供し協力を求めながら、国を挙げて事態の収束に当たることが重要だと訴え”たという言葉が嘘ではなかったのなら、原子力規制委員会委員長となった田中俊一は、高浜原発に関して、“経験と技術を持った専門家を結集”して、結論を出したのだろうか。

 とんでもない。
 
 反原発複数団体による共同声明を、FoE Japanのサイトから引用する。
FoE Japanサイトの該当ページ

 福島原発事故を受けて、原発の運転期間は「原則40年」と決めたはずです。原子力規制委・規制庁はこともあろうに、老朽化した原発の実態も把握せず、認可ありきで審査を急ぎ、審査ガイドを破ってまで、期限内の認可を強行しました。福島原発事故の教訓を葬り去り、事故を再び繰り返すことは断じて許されません。
 地震の活動期に入り、巨大地震がいつどこで起きてもおかしくない状況で、設計が古く、設備の劣化が進み、点検も不十分な状況で認可するなど、危険極まりない行為です。
 高浜1・2号の耐震性が不十分なことは、熊本地震に照らしても明らかです。熊本地震のようなくり返しの揺れを考慮した耐震評価は実施されていません。
 元原子力規制委員会委員長代理の島崎邦彦氏は、熊本地震のデータから、「入倉・三宅式」を用いて基準地震動を策定すると過小評価となり、日本の地震データを基にした「武村式」と比べて4分の1の過小評価となるため、「入倉・三宅式」は使うべきではないと警告を発しています。これはまさに高浜1・2号に当てはまる問題です。同時に、各地の裁判や運動の中で、市民が主張してきたことでもあります。規制委・規制庁は16日に島崎氏から意見聴取を行いました。しかし、その警告を無視するかのように高浜1・2号の運転延長を認可しました。
 老朽化した高浜1・2号の特有の危険性が具体的に明らかになっています。電気ケーブルの劣化により事故時に絶縁性が急低下し、制御ができなくなる恐れがあります。しかし、規制委・規制庁は具体的な判断基準も持たずに、関電のいいなりです。
高浜原発1号機は、全国の原発でもっとも原子炉圧力容器の中性子による脆性破壊が発生し易い原発です。廃炉が決まっている玄海原発1号より脆性遷移温度は高く、事故時にECCSの水を注入すれば、圧力容器が壊れる危険があります。やはり中性子の照射により炉心の金属板を留めるボルトにひび割れが生じている恐れがありますが、まともに検査すら行われていません。

 専門家を結集した検査など、まったく行っていないのである。
 
 田中俊一の五年まえ4月1日の嘘は、罪が深い。
 私などは、あやうく騙されそうになったのだ。

 そして、彼は、国民を裏切る罪を今も重ねようとしている。

 参院選の争点の一つとして、なかなか原発問題が取り上げられないが、明らかに政財界の原発推進派が、田中俊一の周囲や背後に取り巻いているのである。

 原子力規制庁の職員は発足当時(2012年9月)455名で、そのうちの351名が経産省出身者。
 加えて、あの原子力安全・保安院から横滑りした者が多いのだから、どっぷり原子力ムラに属した組織。
 アメリカの原子力規制委(NRC)が、政府からは完全独立した、4000人を超える専門家の組織であるのとは、大きな違いなのである。

 規制ではなく寄生の委員会による暴挙は、とても許されることではない。


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 タレントの不倫、あるお笑い番組の司会者交代、公私混同都知事の問題などに関するニュースで紙面や時間が埋まることは、為政者にとって実に都合のいい隠れ蓑になっている。

 大手メディアも、政府に忖度し、また放送法を持ち出しての恫喝に屈し、芸能週刊誌的な内容ばかりを追いかけるが、その裏で、とんでもない悪行が進んでいるのだ。

 たとえば、放射能汚染土のバラマキである。

 少し古い掲載記事だが、「FoE Japan」のサイトから署名を呼び掛ける記事を引用する。
FoEサイトの該当ページ

【緊急署名】全国に被ばくを強い、環境を汚染する
「8000ベクレル/kg以下の汚染土を全国の公共事業で利用」方針に反対


 環境省は、3月30日、東京電力福島第1原発事故後の除染で出た汚染土に関し、放射性セシウム8,000ベクレル/kg以下の汚染土を、全国の公共事業で利用できる方針を決定しました。
しかし、原子炉等規制法に基づく規則においては、原発の解体などによって発生したコンクリートや金属などの再生利用の基準は、放射性セシウムの場合、100ベクレル/kgとなっています。今回の環境省方針は、この80倍となります。
降雨、浸食、災害などによる環境中への大量放出も懸念されます。工事中においては、工事従事者も通行人も被ばくします。大地震が発生すれば、道路の陥没、崩壊などがあちらこちらで発生し、汚染土がむき出しになるでしょう。
まさに、子どもも含めて、日本中の人たちを被ばくさせるための、壮大な「ナショナル・プロジェクト」にほかなりません。

 新聞もテレビも、この暴挙については、まったく触れようとしない。
 
 こんな出鱈目な方針が、密室で決められている。

 同じページに、署名とともに環境大臣あてに提出される抗議内容が掲載されている。

環境大臣 丸川珠代 様

【緊急署名】全国に被ばくを強い、環境を汚染する
「8000ベクレル/kg以下の汚染土を全国の公共事業で利用」方針に反対


環境省「中間貯蔵除染土壌等の減容・再生利用技術開発戦略検討会」は、3月30日、東京電力福島第1原発事故後の除染で出た汚染土に関し、8,000ベクレル/kg以下の汚染土を、「遮蔽および飛散・流出の防止」を行った上で、全国の公共事業で利用できる方針を決定しました。「周辺住民などの追加被ばく量は年間10マイクロシーベルトに押さえられる」としています。
しかし、原子炉等規制法に基づく規則においては、原発の解体などによって発生したコンクリートや金属などの再生利用の基準は100ベクレル/kgとなっています。今回の環境省方針は、この80倍となります。
この検討会のもとにおかれた「放射線影響に関する安全性評価ワーキンググループ」は、非公開で実施されており、議事メモも公開されていません。そもそも、この検討会は、最終処分量を減らすため、再生利用量を増やす、ということが前提となっています。現在の無理な「除染」「帰還」路線が前提で、そのためには、国民の被ばくもやむなし、ということなのでしょうか。
環境省は、「福島の復興、さらには東北の復興と日本の再生に向けた一大プロジェクトであるとともに、その成果は世界でも前例のない経験・知見として国際的な共有財産となる」と大見得をきっています。
しかし、「遮蔽および飛散・流出の防止」と書いたところで、そんなことは絵に描いた餅です。管理型の処分場でさえ、周辺や地下水の汚染は避けられないのに、ましてや通常の公共事業の構造基盤に使うというのでは、汚染を防ぐことはできません。。
降雨、浸食、災害などによる環境中への大量放出も懸念されます。工事中においては、工事従事者も通行人も被ばくします。大地震が発生すれば、道路の陥没、崩壊などがあちらこちらで発生し、汚染土がむき出しになるでしょう。
まさに、子どもも含めて、日本中の人たちを被ばくさせるために、壮大な「ナショナル・プロジェクト」にほかなりません。断じて許すわけにはいきません。

要請事項
1.放射性廃棄物を含んだ除染土を公共事業で利用する方針の撤回を求めます。
2.「除染」「帰還」を前提とした除染土再利用の政策を見直してください。
3.除染のあり方、除染土の処分のあり方に関しては、福島県内外の各地の幅広い人たちの参加のもとでの検討を行うようにしてください。
4.「放射線影響に関する安全性評価ワーキンググループ」のメンバー、議事録、全資料を公開してください。

 丸川という大臣は、かつてはジャーナリズムの世界にいたのではないのか・・・・・・。

 結局、マスコミで顔を売っていた“タレント”でしかなかったのだ。
  
 放射能で汚染された土が、全国で撒き散らされる。
 除染の度合いは、それぞれ違うだろうが、放射性セシウムで8000ベクレル/kgまでなら、再利用して良い、と国がお墨付きを与えているのだ。

 これが、「3.11」から五年が経過した、今の日本の実態なのである。

 熊本では、まだ被災者の皆さんの多くが、日常を取り戻すことができていない。
 今日は、函館で震度6-の地震。

 地震列島日本では、いつ、どんな大地震が起こっても不思議ではない。

 紹介した内容を使わせてもらうなら、“大地震が発生すれば、道路の陥没、崩壊などがあちらこちらで発生し、汚染土がむき出しになる”から、不特定多数の国民に被害が及ぶ可能性が高い。

 しかし、政治家や役人は、自分は大丈夫、と思っているのだろう。
 
 まず、国会議事堂や各官庁で、この土を再利用してもらおうじゃないか。
 大丈夫なんでしょう?!

 参院選の論点は、たくさんある。

 その中の一つに、この問題を含め、原発事故からの復興が進んでいない実態や、政府の怠慢。そして暴挙のことも含まれるべきだ。
 

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 調査報道を主体とするHUNTERが、安倍の会見について、なかなか切れ味鋭い記事を掲載しているので、ご紹介したい。
HUNTERの該当記事

安倍首相お粗末会見 争点隠しで失政を露呈
2016年6月 3日 09:20

 先月29日の会見で、消費税引き上げの再延期を表明した安倍晋三首相。録画した会見の模様を何回見ても、この人の話はさっぱり要領を得ない。
 予定を超える50分。長々と続いた会見だったが、首相の話で頭に残ったのは、アベノミクスの言い訳と民進党の悪口だけ。参院選を強く意識した会見内容だったが、主張と実態に整合性がなく、言葉の軽さが際立つ始末。参院選で「信を問う」としながら、迫力を欠く訴えとなった。

発言の軽さ 
 会見での安倍氏の言葉を軽いと感じるのは当然。この戦争好きは、国民に向かって約束したことを守ったためしがない。「これから丁寧に説明していく」――集団的自衛権の行使容認を決めた際の会見でも、安保法強行採決直後の会見でもそう言ったはず。しかし、首相はいずれの件でも納得のいく説明など行っておらず、議論を避けてきたのが実情だ。

 アベノミクスについても同じ。安倍首相は会見の中で、何度もアベノミクスに言及した。

~今こそアベノミクスのエンジンを最大にふかし
~アベノミクスをもう一段加速する
~アベノミクスは順調にその結果を出しています
~ロケットが大気圏から脱出する時のように、アベノミクスのエンジンを最大限にふかさなければなりません

 そして、極め付けが、「アベノミクス「3本の矢」をもう一度、力一杯放つため、総合的かつ大胆な経済対策をこの秋、講じる考えです」

 ここで言った「3本の矢」が、はじめの「3本の矢」のことなのか、「新3本の矢」のことなのか分からない。ただ、「もう一度、力一杯放つため」と言うからには、いずれの矢も“的中しなかった”ということだろう。そもそも、アベノミクスの「矢」は、経済対策を言い換えた言葉。“「3本の矢=経済対策」のために経済対策を講じる”など、あり得ない話だ。どうやら首相は、自分の発言内容が咀嚼できていない。放った矢がどこに飛んで行ったのかさえ分からないまま、庶民の財布は軽くなる一方となっている。

 そもそも、経済状況についての首相の認識と、国民の肌感覚が大幅にずれている。会見での次の主張に、うなずく人がどれだけいるだろう。

 リーマンショック以来、減少の一途をたどっていた正規雇用は昨年、8年ぶりに増加に転じ、26万人増えました。この春の高校生の就職率は、24年ぶりの高さであります。大学生の就職率は、過去最高となりました。政権交代前から中小企業の倒産も3割減少しています。ここまで倒産が減ったのは、25年ぶりのことであります。  
 所得アップについても、連合の調査によれば、中小企業も含めて、一昨年、昨年に続き、今年の春も3年連続で、今世紀に入って最も高い水準の賃上げを実現することができました。今世紀に入って最も高い水準であります。それを実現することができたのです。そして、パートの皆さんの賃金も過去最高を記録しています。一部の大企業で働いている方の給料が上がっただけでは、決してありません。パートで働いている皆さんの時給も過去最高となっているのです。

 国見の所得が上がっていれば、「所得税」の税収が伸びるはず。しかし、財務省が公表している主要税目の推移は、下のグラフのようになっている。


 グラフを含め以降の文は、リンク先でご確認のほどを。
 大新聞では載らない記事。
 しかし、これが、ジャーナリストとしての良識のある記事であろう。

 舌っ足らずに「アベノミクス」という虚像の枕言葉を繰り返す、まったくの嘘つき男である。

 「三本の矢」は、「もう、ぃや!」という国民の声は、この男は耳が悪く聞えないようだ。

 憲法論議を参院選の争点にしたくない、という意図はミエミエ。

 HUNTERの記事、こう締めくくっている。

争点は憲法 
 アベノミクスは失政。消費税引き上げを再延期するのは、そのせいだ。多くの国民が気付いていることなのに、首相はそれを参院選の争点だといい、大手メディアも同調している。だが、本当に問われるべきは国の根幹をどうするのかという問題。争点は、安保法や憲法改正の是非である。

 大手メディアは、安倍政府、自民党の恫喝に屈せず、また、忖度せず参院選に臨んで欲しいが、さて、それは難しいか・・・・・・。

 良識ある国民にとっても、大事な参院選。
 それまで、HUNTERや日刊ゲンダイの良識ある記事を、適宜紹介したいと思っている。
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 東京五輪招致をめぐる賄賂疑惑記事に、ようやく「電通」の二字が登場した。

 日経の記事を引用。
日本経済新聞の該当記事

JOC、第三者調査チーム発足 東京五輪招致不正疑惑で
2016/5/18 11:20

 2020年東京五輪・パラリンピックの招致を巡る不正疑惑で、招致委員会理事長を務めた日本オリンピック委員会(JOC)の竹田恒和会長は18日の衆院文部科学委員会に出席し、外部の弁護士などを交えた第三者調査チームを発足させ、送金の経緯を調査する考えを示した。

 竹田会長は「招致委は解散しており、JOC事務局だけでは事実関係の調査に限界がある」と述べたうえで、弁護士らによる調査チームの立ち上げを表明。招致に関係した職員らからヒアリングを行うなどして、シンガポールのコンサルタント会社「ブラック・タイディングス」にコンサル業務を委託したことに問題がなかったか、調べる。

 招致活動をめぐっては、東京での五輪開催が決まった13年9月の国際オリンピック委員会(IOC)総会の前後、招致委が同社に約2億3千万円を支出。フランスの検察当局がIOC委員の関係者への賄賂に当たる疑いがあるとして、捜査を進めている。

 竹田会長は同社について、「電通から契約に値する会社と助言を受けた。有形無形の成果があった」と説明。ただ、14年7月に会社を閉鎖しているといい、「現在どうなっているかは確認していない」としている。
 「D社」ではなく、社名登場。
 
 すでに多くの国民が「コンサル料」という言葉を「賄賂」と変換して理解している。
 また、竹田会長は、当初はブラック・タイディングスがディアク氏と関係があることなど「知らなかった」と嘘をついていたが、今になって知っていたと白状し、何らかなの関係強化につながると思っていた、と言っている。
 
 当然だろう。
 関係強化のための、「コンサル料」なのだ。

 
 巨大ビジネスには、利権をめぐって巨額マネーが動くのは、イベント・ビジネスの限ったことではない。
 その「賄賂」が、せいぜいお車代程度なら、当局も見逃すだろうし、それは、賭博の捜査で、雀荘の麻雀を取り締まるようなものだ。
 そこまで警察が取り締まったら、かならずパチンコ、今ならパチスロの問題に突き当たる。
 あれ、立派な賭博でしょう。
 あの産業には、多くの警察関係者が天下りしている。日本では取り締まるはずがないのだが、韓国は不正の温床と断じて、廃止した。

 できますか、日本で・・・・・・。
 
 ビジネスの利権をめぐる贈収賄が逮捕までに至るかどうかは、何事もそうだが、被害を含めた、その“程度”によるだろう。
 しかし、今回の事件が断罪されても、また、同じことが繰り返される恐れは濃厚だろう。
 より、秘密に行わられるにしても、である。

 果たして問題の本質はどこにあるのだろうか・・・・・・。

 あえて書くが、たとえばビジネスにおいて、人脈は大事である。
 決定権を握る重要人物(キーマン)を接待したり、贈り物などをして印象を良くしようという行為は、ビジネスの常道とも言える。

 オリンピックも、巨大ビジネスとなっているわけで、受注決定に関わる重要人物との関係強化を図ることは、決して不思議なことではない。

 その巨額マネーに、我々国民のお金が関わっていることが、問題なのだ。

 スポーツの巨大イベントは、放映権料も巨額である。

 NHKと民放を含む“ジャパンコンソーシアム”でオリンピックやサッカーW杯の放映権を管理するようになって以降の放映権料を、Wikipedia「ジャパンコンソーシアム」で確認できる。
Wikipedia「ジャパンコンソーシアム」


冬季 1998年 長野オリンピック 3700万ドル(39億円)
夏季 2000年 シドニーオリンピック 1億3500万ドル(142.7億円)
冬季 2002年 ソルトレイクシティオリンピック 3700万ドル(49億4000万円)
夏季 2004年 アテネオリンピック 1億5500万ドル(170.5億円)
冬季 2006年 トリノオリンピック 45億3000万円[
夏季 2008年 北京オリンピック 1億8000万ドル(198億円)

 これ以降は、冬季&夏季を合わせた放映権。
冬季 2010年 バンクーバーオリンピック
         +
夏季 2012年 ロンドンオリンピック   325億円(日本円建て)

冬季 2014年 ソチオリンピック
         +
夏季 2016年 リオデジャネイロオリンピック  360億円(日本円建て)

冬季 2018年 平昌オリンピック
         +
夏季 2020年 東京オリンピック   660億円(日本円建て)

冬季 2022年 北京オリンピック
         +
夏季 2024年 開催地未定      440億円(日本円建て)

 この放映権を、電通が独占している。

 ジャパンコンソーシアムを構成するのは、前述したようにNHKと民放各社。
 だから、放映権料はNHKと民放各社が負担するのだが、その70%をNHKが支払っている。
 だから、IOC(国際オリンピック連盟)が、放映権料をどんどん値増ししようが、もしNHKがその値に応じれば、電通はいっきに数百億の売上を得ることになる。
 兄弟ブログ「噺の話」で、2014年のサッカー・ブラジルW杯の放映権料のことなどを書いたことがあるが、サッカーW杯も、同じ構造である。
2014年6月30日のブログ
 同記事と重複するが、サッカーワールドカップ放映のため日本が支払った400億円がどのように分担されたのか、日刊ゲンダイから引用する。
日刊ゲンダイの該当記事

最終的に全国民の負担…「400億円」W杯放映権料に大疑問
2014年6月26日

 日本が支払うW杯の放映権料は400億円とされる。全世界の放映権料が推定2000億円だから、ナント5分の1を日本だけで支払っている計算だ。

 400億円のうち、7割の280億円をNHKが負担。残り3割を民放各局が分担するという。NHKは受信料で成り立っているし、民放もスポンサーの広告料が商品価格に跳ね返ってくるので、最終的に国民の負担である。

 それでも、視聴者がどうしても試合を見たいというのならわかる。

 ところが、視聴率は20日のギリシャ戦は33・6%。早朝ということもあり、4年前の前回より低調だ。

 これが日本以外の試合になると目も当てられなくなる。24日の「クロアチア×メキシコ」(フジテレビ)1・7%、23日の「韓国×アルジェリア」(NHK総合)1・4%、22日の「ドイツ×ガーナ」(NHK総合)2・7%といった具合なのだ。


 フランス大会までの負担額は、放映権自体も各大陸の放送連合体が一括して購入し、大陸ごとのサッカーの普及度を基準にして、負担金額が決められてきたようだ。普及度を基準とすることで、理解できる。

 放映権料の総額を、とりあえず日刊ゲンダイ記事の2000億円とした場合、その5分の1に相当する400億円を日本が負担することに妥当性はあるのか。
 全世界で2億7000万人といわれるサッカー競技人口を分母にすると、総務省調査による日本のサッカー人口637万5000人は、2.5%。

 2000億の2.5%は50億円。せいぜいそれ位が妥当な気がするではないか。

 オリンピックにしろサッカーW杯にしろ、NHKに受信料を払っている多くの国民が、高騰する放映権料の負担をしているという実感はないに違いない。

 目の前で起きた個々の事件をヒステリックに騒ぎ立てるのではなく、巨額なビジネスには、巨額な「コンサル料」が動く、という構造的な問題と捉え、果たして今のままで良いのか、という問いかけをするべきではないのか。

 個々の贈収賄事件を罰したところで、その構造的な問題が変わらなければ、盲腸に絆創膏を貼るようなもので、とてもその病気は治るはずがない。
 
 複数のメディアが報じているが、今回フランス検察当局の捜査のきっかけになったのは、テレ朝ニュースが報じているように、“パパマッサタ坊ちゃん”の「爆買い」らしい。
テレ朝ニュースの該当記事

捜査のきっかけは「爆買い」 東京五輪招致疑惑(2016/05/14 21:55)

 東京オリンピック招致を巡る送金問題で、国際陸上連盟元会長の息子が、招致決定時期にパリで高級時計など高額な買い物をしたことがフランス検察の捜査のきっかけだったことが分かりました。

 フランスの検察関係者によりますと、国際陸連元会長でIOC(国際オリンピック委員会)元委員、ラミン・ディアク氏の息子、パパ・マッサタ氏は2013年9月ごろ、パリで高級時計など2000万円近い買い物をしたということです。検察当局は、買い物に使われた金の流れを調べた結果、東京の招致委員会側が振り込んだ約2億円が代理店などを介してパパ・マッサタ氏に渡ったとみられることを確認したとしています。また、この高級時計などは東京招致に協力した複数のIOCメンバーに渡されたとみて捜査しているということです。

 IOCやFIFAの関係者は、きっと「馬鹿だな、バレるようなことして」と思っているだろう。
 世界的に、巨大スポーツビジネスの贈収賄構造にメスを入れよう、などという動きにならないよう、その巨額な「コンサル料」に関わっている人たちは、戦々恐々として祈っているに違いない。
 
 巨額ビジネスと化したオリンピックやサッカーW杯は、そのために費やされるお金の支払いの是非に、国民の意思がまったく反映されていないことにも問題がある。

 もし、NHKの受信料を支払っている国民が、「平昌と東京のオリンピック、660億円で買っていいですか?」と相談されたら、果たしてどの位の方が賛同するだろうか?

 それらの大イベントへの運営費への税金の投入は、放映権の比ではない。

 東京五輪の全体運営費用について、JOCは“確信犯”的に当初3000億円と見積もり、招致が決まってから、1.8兆円になりそうだ、などと言っていることについては、以前書いた。
2015年12月22日のブログ

 1.8兆円は、新国立競技場関連の費用を含まず、である。

 よく言われる「経済効果」だが、いったい、東京五輪で誰が経済的に潤うのか・・・・・・。

 仮に効果があるにしても、もう「経済」だけで物事を考えることは、少し休むべきだろう。
 
 今回の贈収賄事件は、オリンピックが、アテネで始まった当初の「世界大運動会」ではなく、多くの利害関係者が蠢くビッグビジネスであり、そこには、不正が必然的に発生することを、あからさまにしている。

 あくまで、「氷山の一角」だ。

 また、賄賂以外にも、安倍首相のIOC会議における福島第一原発事故による放射能汚染水が「アンダー・コントロール」だという大嘘や、招致活動中の猪瀬前東京都知事、そして現在の舛添都知事のあり様などを見ても、とても、真っ当なリーダーにより、真っ当なプロセスで2020年の招致が実現したとは思えない。

 「復興」をアピールする五輪開催、などと安倍は言っていたが、では「3.11」による震災と原発事故からの復興は、いったいどこまで進んでいるのか・・・・・・。
 加えて、熊本での復興だって急がなければならない。

 マスメディアは、できるだけ触れようとしないのが、「3.11」震災関連のニュースではないか。だから、大手芸能事務所のゴタゴタやタレントの不倫、スポーツ選手の覚醒剤や賭博事件などは、メディアにとってスペースと時間を「3.11」や憲法問題を除外させる実に都合の良い“ネタ”なのである。

 「3.11」からの復興の実態は、熊本の震災に関連して、もっと報じられるべきだと思う。
 あれだけの震災を経験した、国家としての学習効果を発揮しなければ、犠牲者の人々にとって申し訳ない。

 残念ながら、「3.11」震災の復興よりも、東京五輪のために、建設関連の技術者、職人さんが動員されているのが実態ではないのか。


 人間は誘惑に弱い。
 権力の座に長く座っていると、どんな聖人君子も堕落する。

 巨大スポーツイベントの構造を放置していけば、決定権を持つ重要人物との関係強化のための「コンサル料」支払を、防ぐことはできないだろう。

 問題は、放映権へのNHK受信料、運営費への税金投入という形で、我々国民の大事なお金が使われるということだ。

 今回の事件、オリンピックやサッカーW杯などという巨額マネーが動く世界大運動会のあり方そのものを議論するきっかけにすべきではかなろうか。

 建設という名の破壊が、どんどん進められている。

 私は、東京都民によって、かつてデンバー市民がそうしたように、東京五輪開催反対運動をしても、まったく不思議ではない状況にあると思う。

 いまや、政治や社会は「週刊文春」を中心に回っているような気がしないでもないが、さすがの文春も、電通を敵に回すことは、できないだろう。

 少なくとも、今回の事件をきっかけに、「東京五輪って、そんなにまでして、やる必要あるの?」という議論が増えることを願う。 

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