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幸兵衛の小言

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脱原発派候補による都知事選の敗戦は、“一本化”ができなかった時点で、ある程度は予想できたことだった。
 毎日新聞の2月6日の記事を振り返る。(太字は管理人)
毎日新聞サイトの該当記事

都知事選:脱原発一本化ならず 「多くの政策不一致」
毎日新聞 2014年02月06日 21時34分(最終更新 02月06日 22時49分)

 東京都知事選(9日投開票)で「原発即時ゼロ」を訴える宇都宮健児氏(67)と細川護熙(もりひろ)氏(76)に対し、話し合いによる一本化を申し入れていたグループが6日、都内で記者会見し、両陣営から「申し入れは受けられない」とする回答を受け取ったと発表した。

 申し入れをしていたのは、ルポライターの鎌田慧(さとし)氏ら文化人や学者など19人でつくる「脱原発都知事選候補に統一を呼びかける会」。3日、両陣営に要請書を渡していた。

 会によると、宇都宮氏陣営は「告示後であり期日前投票も始まっている」「原発以外の多くの政策が一致していない」、細川氏陣営は「生まれたムーブメントを今後につなげるやり方もある」「政策の優先順位も異なる」などと回答。さらに宇都宮氏陣営は「選挙終了後は結果にかかわらず、両候補の胸襟を開いての懇談の場を設けることで合意した」と答えた

 同会の河合弘之弁護士は「非常に残念。脱原発運動にとっては千載一遇のチャンスだったのに」と語った。

都知事選は日本が再生する一つのステップだった、と振り返りたい!_e0337865_16400654.jpg

脱原発候補の一本化を呼びかける鎌田慧氏(右端)や、むのたけじ氏(右から4人目)ら
=東京都千代田区の日本プレスセンターで2014年2月3日、町田結子撮影

【町田結子、藤沢美由紀】


 告示後の“一本化”の動きは、傍目には相当な無理と映ったが、それでも行動した人たちの気持ちは、痛いほど分かる。
 
 「脱原発都知事選候補に統一を呼びかける会」の一員として、最後の望みのために一本化を呼びかけた人の中に、“あの人”もいた。

 大正四年生まれ、今年で99歳のむのたけじ。

 私は、むのたけじや、「TPPを考える国民会議」の代表世話人を務める宇沢弘文などの、高齢をものともしない硬骨漢を、心底尊敬している。
 むのたけじの『たいまつ十六年』については、そのうち記事を書くつもりである。

 宇沢弘文の最新作『経済学は人びとを幸福にできるか』についてご興味のある方はこちらをご参照のほどを。
2014年1月6日のブログ

 大正生まれのジャナーナリストや、昭和一桁生まれの経済学者が、文字通りに体を張って軍国化や脱原発、市場原理主義による国の衰退を防ぐために行動している。私などの若い日本の後輩達は、彼等人生の大先輩たちに学ばずに、日本人として胸を張るこをができるだろうか。

 都知事選の勝利に便乗し、安倍政権はなし崩し的に原発を再稼動させ、軍国化を進めようとしている。

 あらためて都知事選を振り返ってみれば、細川+宇都宮で、低い投票率の中でも約200万人の都民の支持を獲得したことは揺るぎのない事実である。

 “両候補の胸襟を開いての懇談の場を設ける”という約束を、国民のために果たして欲しい。そして、今回の都知事選の敗戦を学び、脱原発に関しては、他の草の根原発反対陣営とも大団結をして大きな流れをつくって欲しい。

 小泉&細川&宇都宮、そして今回彼等を支持した文化人の輪をもっと広げることで、安倍政権の暴走を食い止めなくては、フクシマを経験した国民に、まったく学習効果がなかったと歴史に悪名を残すのが日本民族ということになる。

 小泉を党首に「脱原発党」(名前は替えたほうがいいが)を結党しても良いだろうし、老骨に鞭打っていただき、むのたけじを党首とした「たいまつ党」の結党でも良いではないか。

 都知事選は、日本が3.11とフクシマから再生するための、重要なステップであった、と将来振り返りたいと願うばかりだ。
# by koubeinokogoto | 2014-02-14 18:35 | 原発はいらない | Comments(0)
朝日新聞が、NHK経営委員の軍国的な言動に関する海外メディアの記事を紹介している。(太字は管理人)
朝日新聞サイトの該当記事

NHK経営委の言動、非難せぬ政権に懸念 海外メディア
2014年2月13日10時05分

 NHK経営委員の百田氏、長谷川氏の言動については、海外メディアでも報道が相次ぎ、公共放送と政権との距離の近さに懸念の声が広がっている。

視聴者からの批判に危機感
 英フィナンシャル・タイムズ紙は4日、「安倍首相の介入でNHKの姿がぶれる」と題する記事を配信。「東京裁判は広島などで日本が受けた虐殺をごまかすためのもの」という趣旨の都知事選の応援演説での百田氏の発言を報じ、首相が選んだ両経営委員の考え方により、日本で何がまともな保守主義と考えられているか、その境界線が試されている、と表現した。

 記事を書いたジョナサン・ソーブル東京支局長は「多くの海外メディアが関心を持って見るのは、靖国参拝以降、右傾化に向かう安倍政権であり、NHKの一連の問題も、その一環として捉えられている。ひとつの放送局の問題ではない」と語る。経営委員の言動が規則や法律上問題であるかを問う以前に、そのような歴史観の人物を選んだ安倍首相が世界をどう見ているのかが焦点だという。

 公共放送の使命は公平中立な報道だ。その難しさは英BBCでも共通、とソーブル氏は話す。「私の知る限り、BBCにはこのような人物はいない。仮に彼らと同じような歴史認識で問題発言をしたならば、当然罷免(ひめん)もありうるし、大きな社会問題となるだろう」

 米紙ワシントン・ポスト(電子版)は11日の社説で、籾井会長や百田氏の発言を取り上げ、「なぜ日本政府は明快に非難しようとしないのか」と安倍政権の姿勢を批判した。「米政府当局者たちも、首相がナショナリストなのか改革者なのか疑問に感じている。報道の独立を支持し、破壊的な歴史否認主義を拒絶するかどうかを明確にできるのは首相だけだ」と論評した。

 AFP通信は5日に配信した記事で、長谷川氏が新右翼の活動家に寄せた追悼文を引用。「識者の間でNHKが安倍首相の政策に従順になるのではと懸念の声が増えている」と伝えた。

 英紙インディペンデント(7日)は、百田氏の発言を、南京大虐殺記念館の写真と共に配信。安倍首相に選ばれた人物と紹介した。集団的自衛権の行使容認を目指す安倍首相の意向は国内で半数以上の反対が推測されるが、「公共放送を味方につけることは間違いなく有効だろう」と論じた。


 この記事については、“人の褌で相撲を取る”と言えなくもないが、こういった海外の論調を示すことも意味はあるだろう。

 英フィナンシャル・タイムズ紙東京支局長が、“BBCにはこのような人物はいない。仮に彼らと同じような歴史認識で問題発言をしたならば、当然罷免(ひめん)もありうるし、大きな社会問題となる”と言う、そのBBCの日本人記者の記事を紹介したい。

日本人記者による歴史教育批判を掲載するBBCと、NHKとの隔たり。_e0337865_16401785.jpg

 記者の名は大井真理子。彼女のプロフィールは、BBC WORLD NEWSサイトのプレゼンター・プロフィールのページに詳しいが、一部抜粋する。(BBC WORLD NEWSは日本語化されていて、実に有益)
BBC WORLD NEWSサイトの該当ページ

2012年11月にBBC.comで発表した「日本の最後の忍者」、及び2013年3月に発表した「私が経験した日本の歴史教育」の記事は、1日で全世界の100万人近くに閲覧され、BBCテレビ・ラジオ・ウェブサイトで、最も注目されたレポートとなった。近年はニュース報道だけでなく、ドキュメンタリーも担当。PC遠隔操作事件における誤認逮捕で注目の集まった日本の司法制度、海外では珍しい日本の婿養子制度、また福島での低線被爆の健康への影響について追及した。

2013年7月から4か月間、アメリカ、ニューヨークでビジネスレポーターとして活動予定。
また2014年にはロンドン本社でレポーターとして半年間の勤務が決定している。

1981年東京都生まれ、慶応大学環境情報学部に入学、1学年終了時にジャーナリズム修学のため、オーストラリア、RMIT大学ジャーナリズム学部に入学。在学中にはコミュニティチャンネルのテレビ向けニュース番組や学生ラジオ局SYN FMで番組制作の経験を積み、Australian Broadcasting Corporationなど、数々の在オーストラリア放送局でインターンとして勤務。
2004年、アメリカに渡りロイター通信でインターンを経験。2005年、日本のブルームバーグテレビジョンにプロデューサーとして入社、経済報道を手がける。
2006年12月より、フリーランスプロデューサーとして、BBCワールドニュースのシンガポール支局に入局、現在はレポーター、キャスターも務める。

レギュラー出演番組

# by koubeinokogoto | 2014-02-13 12:04 | 戦争反対 | Comments(0)
NHKの新会長や経営委員のトンデモ発言が相次いでおり、安倍の発言や行動でアジアの隣人との関係についた火に油を注いでいる。

 しかし、これも、安倍の取り巻きばかりを選任した必然的な結果である。

 その背景に共通するのは、自民党の憲法改正(改悪)案においても露骨に示された軍国主義化である。いわば、この度の舌禍事件と同根にあるのが、安倍自民党の軍国化精神なのである。

「公共放送」と言う言葉の「公共」について、実は自民党は憲法改正案においても、この言葉をできるだけ、自分達に都合よく替えようとしている。

 去年の憲法記念日に、自民党の憲法改正案の問題点について書いた。2013年5月3日のブログ

 まだ、自民党の改正草案をご覧ではない方は、「Q&A」を含め、現行憲法と対比した草案のPDFを下記からダウンロードできるので、ご覧のほどを。
自民党サイトの該当ページ


 現行憲法の「第三章 国民の権利及び義務」の最初の部分は次の通り。

第三章 国民の権利及び義務
第十条 日本国民たる要件は、法律でこれを定める。
第十一条 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。
第十二条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。
第十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
第十四条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
② 華族その他の貴族の制度は、これを認めない。
③ 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。



 次に自民党案の「第三章」はこうだ。

第三章 国民の権利及び義務
(日本国民)
第十条 日本国民の要件は、法律で定める。
(基本的人権の享有)
第十一条 国民は、全ての基本的人権を享有する。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利である。
(国民の責務)
第十二条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力により、保持されなければならない。国民は、これを濫用してはならず、自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚し、常に公益及び公の秩序に反してはならない。

(人としての尊重等)
第十三条 全て国民は、人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公益及び公の秩序に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大限に尊重されなければならない。
(法の下の平等)
第十四条 全て国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、障害の有無、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
2 華族その他の貴族の制度は、認めない。
3 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に
限り、その効力を有する。



 現行憲法の第十二条、
“この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ”という内容には、国民の権利の行使が、「公共の福祉」のためであることを規定している。

 しかし、「国民の責務」と題された自民党案の第十二条
“この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力により、保持されなければならない。国民は、これを濫用してはならず、自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚し、常に公益及び公の秩序に反してはならない”は、権利行使の条件について規定している。これは、権利行使のあるべき姿ではなく、あくまで、権利の適用範囲に関する制限事項なのである。


 同じ「公」のつく言葉だが、現行憲法の「公共の福祉のため」という目的から、「公益及び公の秩序に反してはならに」という制限の定義に、十二条を替えているのだ。


 三省堂の「新明解国語辞典」から。

 公共
 社会一般の人びと(に関すること)。「—事業・—の建物」
 【—性】公共の生活(利害)にかかわる度合。「—が高い(強い)」

 福祉
 [「祉」も、幸福の意]満足すべき生活環境。「社会—」

 公益
 公共の利益。「—性」⇔私益
 【—法人】営利追求ではなく、公益を目的とする社団(財団)法人。
 「学校法人」「宗教法人」「社会福祉法人」など。

 だから、「公共の福祉のため」とは、「社会一般の人びとの満足できる生活のため」を意味する。
 しかし、「公益」は、字義の通りなら、「社会一般の人びとの利益」となるが、「利益」であって、「生活」ではない。

 そして、自民党案には、「公」→「国家」→「政府」(政権与党)という転化を意図しているように思えてならないのだ。

 「公共の福祉」には、何ら「国家」や「政府」に転化する言葉の“スキ”はないが、「公益及び公の秩序」という言葉には、“お上”というニュアンスが含まれているのではなかろうか。

 基本的人権を行使する目的を「公共の福祉」にする憲法と、権利行使に伴う責務が「公益及び公の秩序」に反しないように定義する憲法の、どちらが人間らしくあって、どちらが生産的で未来志向かは、それほど考えなくても分かるだろう。


 第9条以外にも自民党案は、あの暗い戦前の警察国家復活につながる改悪案を散りばめている。

 そして、こういった憲法改正(改悪)ができやすいように、国会での三分の二、というハードルを下げるべく、第92条を変えようとしている。

 まるで、あの戦争前の「国家総動員」体制へ逆行させようとでもするかのようなを安倍政権の行動こそが、「公共の福祉」に反するのである。もちろん、NHK新会長や新経営委員の発言が外交面で悪影響を与えるのなら、間違いなく「公益」に反する行為でもある。
# by koubeinokogoto | 2014-02-07 00:52 | 戦争反対 | Comments(0)
私は、ほぼ同世代の百田尚樹という作家の本を読んだこともないし、今後も読むことはないだろう。学生時代からの身のこなし方を、ネットで観たことがあるが、どうもこの人の了見は疑わざるを得ないし、品性が実に下劣であると思っているからだ。

 同じ方角を向いている安倍のお気に入りでNHKの経営委員になったらしいが、先日の新会長のトンデモ発言と同様、好き勝手なことを都知事選の応援演説で並べているようだ。
「時事ドットコム」の該当記事

百田氏、放送法に反せず=菅官房長官

 菅義偉官房長官は4日午前の記者会見で、作家でNHK経営委員の百田尚樹氏が東京都知事選候補者の応援のため街頭演説したことについて、「個人の候補者を応援することは放送法に違反するものではない。百田氏が個人的に行ったことだ」と述べ、問題はないとの認識を示した。

 百田氏は3日に都内で演説し、特定の候補者に支持を訴えた。この際、極東国際軍事裁判について「東京大空襲、広島・長崎の悲惨な状況をごまかすための裁判だった」と主張、「蒋介石は南京大虐殺を宣伝したが世界は無視した。そんなことはなかったからだ」などと語った。
 菅長官は会見で、百田氏のこうした持論と経営委員起用の関わりを問われ、「評論活動や小説家として国民からも理解されている点を踏まえ推薦した」と説明した。 (2014/02/04-11:56)


 朝日に、もう少し詳しく彼の応援演説の内容が書かれていた。
朝日新聞サイトの該当記事

 朝一番の新宿駅西口では米軍による東京大空襲や原爆投下を「悲惨な大虐殺」と話し、東京裁判について「これをごまかすための裁判だった」と自身の歴史観を披露。「1938年に蔣介石が日本が南京大虐殺をしたとやたら宣伝したが、世界の国は無視した。なぜか。そんなことはなかったからです」「極東軍事裁判で亡霊のごとく南京大虐殺が出て来たのはアメリカ軍が自分たちの罪を相殺するため」と持論を展開した。

 また、第2次世界大戦での日本の真珠湾攻撃に触れ、「宣戦布告なしに戦争したと日本は責められますが、20世紀においての戦争で、宣戦布告があってなされた戦争はほとんどない」と話し、「(米軍の)ベトナム戦争の時も湾岸戦争の時もイラク戦争もそうです。一つも宣戦布告なしに戦争が行われた」「第2次世界大戦でイギリス軍とフランス軍がドイツに宣戦布告しましたが形だけのもんで宣戦布告しながら半年間まったく戦争しなかった」と主張した。

 憲法についても言及。「憲法改正派です。今の憲法は戦争は起こってほしくないなあと願っているだけの憲法だと、私は作家としてそう解釈します」「絶対に戦争を起こさせない。そういう憲法に変えるべきだと僕は思っています」と述べた。

 午後5時、秋葉原駅前。「戦争では恐らく一部軍人で残虐行為がありました。でもそれは日本人だけじゃない。アメリカ軍もやったし、中国軍もやったし、ソ連軍もありました。でもそれは歴史の裏面です。こういうことを義務教育の子どもたち、少年少女に教える理由はどこにもない。それはもっと大きくなってから教えれば良い。子どもたちにはまず日本人に生まれたこと、日本は素晴らしい国家であること、これを教えたい。何も知らない子どもたちに自虐史観を与える必要はどこにもない」と訴えた。


 「戦争」そのものへの賛成、反対という「What」のテーマではなく、宣戦布告の有無「How」の方がこの人には大事なのだろうか。早い話が、戦争に反対していない。
 改憲についても「絶対に戦争を起こさせない」ために、どんな改正をすべきなのかが、これでは分からない。
 自虐史観を与えることはないかもしれないが、戦争の悲惨さは伝えるべきだろう。しかし、この人には、そんな考えはなさそうだ。フィクションの零戦英雄物語をつくる位だから。

 百田尚樹という人には、歴史を見る真っ当な常識があるように思えない。
 
 同じ零戦を扱った対照的な人物が宮崎駿である。

 宮崎は、ほぼ明確に百田の作品を批判している。昨年の引退表明直後の発言である。
「ビジネス・ジャーナル」の該当記事

宮崎駿、『風立ちぬ』と同じ百田尚樹の零戦映画を酷評「嘘八百」「神話捏造」
2013.09.25

 9月6日、引退会見を行ったアニメ界の巨匠・宮崎駿監督。引退作となった『風立ちぬ』(東宝)は興行収入100億円を超え、「最後の作品はスクリーンで」という人も多く、観客動員数は1000万人を突破すると見られている。

 そんな映画人生の有終の美を飾ろうとしている宮崎だが、ここにきて『風立ちぬ』と同じ“零戦”をテーマにした“あの作品”を猛批判しているのをご存じだろうか。

 宮崎が“あの作品”の批判を展開しているのは、「CUT」(ロッキング・オン/9月号)のロングインタビューでのこと。その箇所を引用しよう。

  「今、零戦の映画企画があるらしいですけど、それは嘘八百を書いた架空戦記を基にして、零戦の物語をつくろうとしてるんです。神話の捏造をまだ続けようとしている。『零戦で誇りを持とう』とかね。それが僕は頭にきてたんです。子供の頃からずーっと!」

 「相変わらずバカがいっぱい出てきて、零戦がどうのこうのって幻影を撒き散らしたりね。戦艦大和もそうです。負けた戦争なのに」



 「相変わらずバカがいっぱい」のリストに、安倍、石原、橋下、百田などの名を並べても、宮崎は否定しないだろう。

 戦争責任を誤魔化したり、美化することから、何ら生産的な未来は展望できない。

 宮崎の批判は続く。

戦争を美化する作品を糾弾する構えの宮崎

 宮崎がここで挙げている「零戦の物語」というのは、どう考えても人気作家・百田尚樹の原作で、12月に映画が公開される『永遠の0』(東宝)のこと。よほど腹に据えかねているのか、このインタビューで宮崎は“零戦神話”を徹底的に糾弾。

 「戦後アメリカの議会で、零戦が話題に出たっていうことが漏れきこえてきて、コンプレックスの塊だった連中の一部が、『零戦はすごかったんだ』って話をしはじめたんです。そして、いろんな人間が戦記ものを書くようになるんですけど、これはほとんどが嘘の塊です」と、『永遠の0』をはじめとする零戦を賛美する作品をこき下ろしている。

 もちろん、自身が『風立ちぬ』で基にした零戦設計者・堀越二郎の戦争責任についても言及。堀越の著書である『零戦』は共著であり、もう一人の執筆者が太平洋戦争で航空参謀だった奥宮正武だったことから「堀越さんは、自分ではそういうものを書くつもりはなかったけど、説得されて、歴史的な資料として残しておいたほうがいいんじゃないかっていうことで、書いたんだと思うんですけど」と前置きし、「堀越さんの書いた文章っていうのは、いろんなとこに配慮しなきゃいけないから、本当のことは書かないんだけど、戦争責任はあるようだけれども自分にはないと思うって書いています。面白いでしょう? 僕はこの人は本当にそういうふうに思った人だと思います」と弁護。

 さらに、「僕は思春期の頃、親父と戦争協力者じゃないかってもめた経験があるんですけど。そうやって断罪していくと、ほとんどの人が戦争協力者だと言わざるをえない。隣の韓国とか北朝鮮とか中国とかフィリピンとかインドネシアとかね、そういう側から考えると、それは加害者であるという」と話し、「職業をもつということは、どうしても加担するという側面を持っている。それはもうモダニズムそのものの中に入ってるんだと思ってるんです」と、到底美談では語れない戦争の加害性について論及している。

対照的な立場の宮崎と百田

 確かに同じ零戦をテーマとして扱っているとはいえ、宮崎と百田とはその政治的スタンスもまったく真逆だ。宮崎は憲法改正反対論者で、かたや百田はほとんど“右派論客”といってもいい活躍を見せている。

 百田は今年6月、朝日新聞で自身の作品が「右傾エンタメ」「愛国エンタメ」と評されたことに激怒し、苛烈に反論していたが、一方で首相再任前の安倍晋三との対談では「もう一度、自民党総裁選に出馬して総理を目指してもらいたい」と背中を押し、保守系論壇人である渡部昇一との対談でも「安倍政権では、もっとも大きな政策課題として憲法改正に取り組み、軍隊創設への道筋をつくっていかねばなりません」と語るなど、政治的発言を連発。朝日批判の際も「自虐史観とは大東亜戦争にまつわるすべてを『とにかく日本が悪かった』とする歴史観です」とネトウヨ(ネット右翼)が大喜びしそうなツイートをしていた。

 宮崎があえてインタビューで『永遠の0』批判を繰り出したのは、戦争を肯定する百田と一緒にされるのが耐えられなかったのかもしれない。

 しかし、一方の百田は、「先日、アニメ『風立ちぬ』の試写を観た。ラストで零戦が現れたとき、思わず声が出てしまった。そのあとの主人公のセリフに涙が出た。素晴らしいアニメだった」と同作を大絶賛。反戦主義の宮崎が零戦映画の製作をしたことで、方向転換したと勘違いして思わずはしゃいでしまったのかもしれないが、今回の宮崎の発言で見事にはね返された格好だ。

 歯に衣着せぬ言動や論争好きで知られる百田だが、果たして世界の巨匠・宮崎にはどのように反論するのか。大いに見ものである。(文=エンジョウトオル)


 宮崎駿が、これ以上は百田など相手に発言する必要はないと思う。宮崎から見れば、右寄りの“子供”である。

 以前にスタジオジブリが発行している小冊子『熱風』が、「憲法」を特集したことを紹介した。
2013年7月19日のブログ

 参院選を前にしたサイトからのダウンロードサービスは終了したので、再度、以前の記事から引用したい。
「スタジオジブリ」サイトの該当ページ

 まず、ダウンロードサービスについて、次のような説明があった。

『熱風』7月号の特集は「憲法改正」です。
この問題に対する意識の高さを反映したためか、7月号は多くのメディアで紹介され、編集部には「読んでみたい」というたくさんの問い合わせがありました。
しかし取扱書店では品切れのところが多く、入手は難しいようです。今回編集部では、このような状況を鑑みて、インターネットで、特集の原稿4本を全文緊急配信することに決定しました。
ダウンロードは無料、配信期間は8月20日18時までです。



百田尚樹という“常識0”の男と、宮崎駿との距離。_e0337865_16401407.jpg

 上図が表紙。

百田尚樹という“常識0”の男と、宮崎駿との距離。_e0337865_16401427.jpg

 宮崎駿のメッセージが熱い。まさに“熱風”である。

 すでにダウンロードサービスが終ったので、前回より多めに引用したい。(太字は管理人)

父は戦時中飛行機の部品を作っていた

 そんな子ども時代の戦争の記憶ですが、世の中の様相が、いわゆる戦時下のような状態になるのは、昭和19年(1944年)以降、国全体がヒステリックになってからです。ただ、うちの親父は現実主義で、ニヒリストで「天下国家、俺は知らん」というような人物でしたから、親父の話だけを聞いてると、また全然違いました。
 親父は関東大震災の時に、墨田区にあった陸軍被服廠跡という、人がいちばん死んだところを逃げ回って生き残った人間なんです。まだ9歳だったのに妹の手を引いて逃げたというのが自慢でした。戦時中は東京大空襲の翌日に、親戚の安否を尋ねて東京に入ってるんです。だから、二度の死屍累々を見ています。
 学生時代の思い出を聞くと、小津安二郎の戦前の映画の「青春の夢いまいづこ」にそっくりで、徹底した刹那主義者。
 戦時中は病気の伯父貴に代わって、飛行機の部品を作るような軍需工場の工場長をしていました。知り合いがみんな「もうこの戦争は負けるんだからやめろ」って言うのに、昭和20年(1945年)になっても銀行からカネ借りて投資したりして。話を聞いていると、親父は世界情勢がどうこうということを認めたくなかったんですね。「戦争は俺がやってることじゃない。商売としては今、客がいて注文があるんだから、それに応えて作れば儲かる」ということでやったんだと。だから全然、後悔もしてないですよ。大局観なし


 宮崎駿にとって、父親の戦時中の行動は、戦争のもたらす悲劇の、非常に身近な実例だったのだろう。
 
 だから、宮崎の父親を視る目に、家族だから、という甘えはない。父親への客観的な視線にこそ、彼の反戦論の原点があるように思う。

 そんな親父が戦争について何と言ったと思いますか。「スターリンは日本の人民には罪はないと言った」それでおしまいです。僕は「親父にも戦争責任はあるはずだ」と言って、喧嘩しましたけど、親父はそんなものを背負う気は全然なかったようです。戦後もすぐアメリカ人と友人になって「家に遊びに来い」と言うような人でしたから。「アメリカのほうがずっといい。ソ連は嫌いだ」って言ってました。何でソ連が嫌いなんだと言ったのかは知らないけど、自由がないのが嫌だったのだと思います。本人は自由にやってましたから(笑)。


 この「スターリンは日本の人民には罪はないと言った」という父親の発言、百田の発言と相通ずるものがある。

僕が日本を見直したのは、30代になってから

 今、半藤一利さんの『昭和史』を読んでいるんですけどもう辛くて。読めば読むほど日本はひどいことやってるわけですから。何でよその国に行ってそんな戦争をしたのかと思います。他の道はなかったのか、満州事変を起こさずに済んでいたら、何か変わったんだろうかと思います。日露戦争が終わった時に、日本は遼東半島についても「これはやっぱり中国のものですから返しますよ」と言わなきゃいけなかったんです。そういう発想は日本の中に欠片(かけら)もなかった。帝国主義の時代ですから世界にもなかったと思いますが
 中国の周りには、ソ連もいたけど、イギリスはいる、ちょっと離れりゃフランスもオランダもアメリカもいて、世界中が集まっていた。そういう歴史を人間が踏んできた、ということを抜きにして、日本だけが悪人ということではないと思いますけど、そうかといって「最後に入っただけなのに、俺はなぜ捕まるんだ?」と言うのもおかしい。「おまえは強盗だったんだよ」ということですから。満州に行った知人たちが、どういうことをやって、どういう風に威張りくさってたかという話もおふくろから随分聞きました。そういう話を聞く度に、本当に日本人はダメだと思いました


 
 「日本だけが悪いのではない」という主張は、戦争には相手がある以上、部分的には正しい。しかし、「日本も悪い」という発想がないことには、次の展望は開けない。

 さて、昨年も紹介した、憲法についての宮崎の見解を再度ご紹介。

 憲法を変えることについては、反対に決まっています。選挙をやれば得票率も投票率も低い、そういう政府がどさくさに紛れて、思いつきのような方法で憲法を変えようなんて、もってのほかです。本当にそう思います。
 法的には96条の条項を変えて、その後にどうこうするというのでも成り立つのかもしれないけれど、それは詐欺です。やってはいけないことです。国の将来を決定していくことですから、できるだけ多数の人間たちの意見を反映したものにしなきゃいけない。多数であれば正しいなんてことは全然思っていないけれど、変えるためにはちゃんとした論議をしなければいけない
 それなのに今は、ちょっと本音を漏らして大騒ぎを起こすと、うやむやに誤魔化して「いや、そういう意味じゃないんだ」みたいなことを言っている。それを見るにつけ、政府のトップや政党のトップたちの歴史感覚のなさや定見のなさには、呆れるばかりです。考えの足りない人間が憲法なんかいじらないほうがいい。本当に勉強しないで、ちょこちょこっと考えて思いついたことや、耳に心地よいことしか言わない奴の話だけを聞いて方針を決めているんですから。それで国際的な舞台に出してみたら、総スカンを食って慌てて「村山談話を基本的には尊重する」みたいなことを言う、まったく。「基本的に」って何でしょうか。「おまえはそれを全否定してたんじゃないのか?」と思います。きっとアベノミクスも早晩ダメになりますから。



 百田には、これを読ませればいいのであるが、彼には猫に小判だろうなぁ。限りなく「常識0」の男のようだから。

 年齢や経験も影響はしているだろうが、それにもまして百田の好戦的な姿勢は特筆すべきものがある。百田と宮崎との間には、何万光年もの距離がるように思えてならない。しかし、人気作家の言うことだから、と付和雷同したり、「ゼロ戦、かっこいい!」と安易に戦争を美化する若者も増える恐れはある。

 あまり、「絶対」という言葉は使いたくない。しかし、戦争は、絶対にいけない。
 百田の発想は強い軍隊を持つことで戦争をなくそう、ということのようだが、軍隊を持てば、つい戦争をしたくなるのだ。軍備の競争の行きつく先には、核のボタンを誤って押してしまう狂った独裁者の姿だってイメージできる。

 百田の「0」か、宮崎の「零」か、これは疑いようのない選択なのである。


# by koubeinokogoto | 2014-02-04 12:12 | 戦争反対 | Comments(9)
安倍政権下で、予想通り“原子力ムラ”が復活しようとしている。

 朝日新聞の一面で、電気事業連合会(電事連)が、自民党議員に“模範解答”を配布していた事実が報じられたので引用したい。(太字は管理人)
朝日新聞サイトの該当記事

電力業界、自民に原発新増設促す 「模範解答」配布
2014年1月31日05時29分

 安倍政権が策定を進めるエネルギー基本計画の閣議決定を前に、電力会社などでつくる電気事業連合会(電事連、会長=八木誠・関西電力社長)が自民党議員に原発の必要性や新増設を訴える文書を配っていたことが30日、わかった。同党が計画内容について行った党所属国会議員へのアンケートについて、原発推進の立場で答えるよう促す内容。原発新増設は政権の方針も超えており、業界が自らの利益を前面に押し出した形だ。

 朝日新聞が入手した電事連の文書によると、エネルギー需給の基本方針として「原子力が重要な電源であるとの位置づけを明確化する」と強調。「原子力発電を一定程度の規模を確保する」として、「そのための新増設・リプレース(建て替え)の必要性を明確化する」とした。安倍晋三首相は新増設について「現在のところまったく想定していない」としている。

 再稼働についても、文書は「安全の確認された原子力の再稼働を効率的かつ迅速に行う」と明記。核燃料サイクルも「着実に推進する」としている

 エネルギー基本計画は昨年12月、経済産業省が原発を「重要なベース電源」とする原案を公表。安倍内閣は1月に閣議決定する方針だった。だが、自民党は一昨年の衆院選公約で「原子力に依存しなくてもよい経済・社会構造の確立を目指す」としており、党内から異論が出て閣議決定を先送りした。

 このため、党政務調査会は今月6日から20日まで、エネルギー需給に関する基本方針など4点を尋ねる議員アンケートを実施した。電事連の文書は党の意見集約を原発推進へ誘導する狙いがあったとみられる。

 複数の党所属国会議員や党関係者によると、20日を前に電事連の関係者が議員を訪問。4点についてアンケートへの「模範回答」を記した文書を渡したという。

 最終的に全体で何人に配られたかは不明だが、党の原発推進派の議員連盟に加盟する約140人の議員や、再稼働を認めつつ原発依存度を徐々に下げるべきだと考える「中間派」に働きかけた可能性がある。(疋田多揚)

     ◇

〈電気事業連合会(電事連)のコメント〉 私ども事業者としても国のエネルギー政策に貢献していきたいと考えており、様々な機会を通じて広くエネルギー政策に関する考えをご説明させていただくことはあるが、個別の内容や説明機会などの詳細については、回答を差し控えさせていただく。

     ◇

〈エネルギー基本計画〉 国のエネルギー政策の中長期的な方向を示す計画。2002年に成立したエネルギー政策基本法に基づき、ほぼ3年ごとに閣議決定している。11年3月の東京電力福島第一原発事故を受け、民主党政権は「30年代の原発ゼロ」を掲げて基本計画の見直しを進めたが、安倍政権の発足後、「原発の活用」を前提に計画作りが進んだ。経済産業省が昨年末、計画案をまとめ、安倍内閣は与党内調整などを経て閣議決定する方針。



 “懲りない面々”というのは、この“原子力ムラ”のことを言うのだろう。

 「エネルギー基本計画」については、先日書いたのでご参照のほどを。
2014年1月9日のブログ


自民党議員への「模範解答」配布—“原子力ムラ”の復活は許せない!_e0337865_16400593.jpg

内橋克人著『日本の原発、どこで間違えたのか』

 電気事業連合会(電事連)について、2011年の7月にも書いた。2011年7月8日のブログ

 その際にも引用した、3.11の直後、2011年4月に発行された内橋克人著『日本の原発、どこで間違えたのか』から、引用する。

 電事連の言う、“様々な機会を通じて広くエネルギー政策に関する考えをご説明させていただく”、とはどういうことなのか。

 大手町の経団連会館の中にあるこの組織によるマスコミへの情報操作や報道規制について、本書の“序 つくられた「原発安全神話」—なぜ、いま『原発への警鐘』を復刻するのか”から引用。 (太字は管理人)

 たとえば「週刊朝日」の「知ってますか? 試運転中 六ヶ所村再処理工場の切なさ」(2006年6月30日号)と題されたわずか4ページの記事に対して計7項目に及ぶ詳細な「抗議」書が届いている。次の通りだ。
「題記記事中には、下記の通り不的確な記述や事実誤認の記述などが見られます。
 つきましては、正確な情報に基づき、正しいご理解を賜りたいと存じます」
 この一見、丁重にみえる記述につづいて、次段からは「記」と題した詳細な指摘がえんえんと続く(以下、原文のまま)。
[1]5月17日に再処理工場で発生した「精製建屋内における試薬の漏えい」について
 「記事内容」(p38二段・1行目~)
 「配管の破損による溶液漏れは、いつ起きてもおかしくないと思います。(中略)溶液漏れや、トラブルをくまなくチェックするのは不可能ではないかと思うのです」(筆者注:現場関係者の談話。この「週刊朝日」の記事に対する抗議が
 次のように「事実関係」と題して述べられている)。
「事実関係」
▼再処理工場は、原子力発電所で使用された使用済燃料を化学処理によって再処理することから、化学プラントに似た構造となっており、総延長で千数百キロにわたる様々な配管が存在します。
▼このうち、安全上、重要なものについては、セルと呼ばれる放射性物質を閉じ込める機能を有した部屋に収納しており、万が一、配管から漏えいした場合でも受け皿等により安全に回収できる構造としています。また、配管からの漏えいを検知する機器をとりつけているため、万が一の場合でも、すみやかに、対策が講じられる仕組みとしています。
▼一方、安全上特に厳重な管理を要しない配管については、日常の巡視点検等による保守管理を実施しています(同点検作業に時間的な制約はありません)。もし、これらに不具合が発見されれば、すみやかに部品を交換するなどの対応を行っています。
▼こうした事実を踏まえずに、「内部は放射線濃度が高くて、作業員が中に入っていられる時間も制約されている。溶液漏れや、トラブルをくまなくチェックするのは不可能ではないかと思う」(p38二段・8行目~)とする記述は、不的確と言わざるを得ません。

[2]放射線による健康への影響について
 「記事内容」(p38三段・8行目~)
 
(中略)

 いずれも同じ形式をとって反論の記述がなされる。抗議文を書いた人物の名はすべて伏せられ、組織の中に身を隠したままの匿名で通す。だが、その背後に控えるものの正体は明らかだ
 「週刊朝日」だけではない。週刊誌では「サンデー毎日」「エコノミスト」・・・・・・およそありとあらゆるマスコミが対象となっている。朝日新聞、共同通信、時事通信、毎日新聞、東京新聞、東奥日報、佐賀新聞、西日本新聞、各紙社説。さらにNHK教育TV、TBS、日本TV・・・・・・。
 記事に対する「反論」を「事実関係」と自称する。当方の主張が「事実」であり、そちらはデマか誤報だと断じる。あらゆるメディアへの巨大スポンサーとして君臨するものの発する「抗議」の「ブラフ(脅し)効果」は計り知れないものがあるだろう。
 だが、ここに示した報道に対する執拗なまでの警告だけではない。「安全神話」をつくり上げる仕組み学校の教育現場での教師、児童、生徒、学生へのスリ込み、「学習指導案」から「ワークシート」の作成、著名文化人の動員、さらに映像を駆使しての特別授業まで広範囲に及ぶ。彼らが「事実関係」と呼んで社会に押しつけた記述の信憑性こそが、いま問われているのではないか



 マスコミに、少しでも反原発的な記事が出ると、匿名の“クレーマー”としていやがらせをし、教育の現場でも刷り込みを画策する。

 そして、国会議員へも周到な根回しをしている、その実態のほんの一部が、今回の記事である。


 いわば、原発「安全神話」の総本山、それが電事連である。

 フクシマを経験し、その収束はまったく見えない状態であろうが、電力会社は“儲かる”原発への執着と捨てようとしない。

 電気事業連合会のサイトに「原子力発電について」のページがあり、次のような内容が書かれている。
「電気事業連合会」サイトの該当ページ

原子力発電の安全確保に全力で取り組み、
世界最高水準の安全を追求してまいります。


原子力発電の利用は、安全性の確保が大前提です。
電力会社では、福島第一原子力発電所の事故を教訓に、事故直後から緊急安全対策を実施、その後もさらなる安全性向上に向けた自主的取組みを進めています。
安全確保の取り組みに終わりはなく、今後も、新しい安全基準を確実にクリアしていくことはもとより、自らが不断の努力を重ね、一層の安全対策に万全を期してまいります。



 フクシマの汚染水対策に“全力”で取組んでいると思えない状況で、よくもヌケヌケとこんなことが言えるものだ。

 こんなことも書いてある。
「電気事業連合会」サイトの該当ページ

安全を守る技術的なしくみ

「人間はミスを犯す」「機械は故障する」。これらを前提としながら、なおかつ安全を保っていくにために、原子力発電はさまざまな技術的な備え(安全設計)をしています。

多重防護
原子力発電所の安全確保の考え方は「多重防護」を基本としています。「多重防護」とは、文字どおり何重にも安全対策がなされていることを意味します。

自己制御性
日本の原子炉は、あらかじめ自己制御性をもつように設計されています。自己制御性とは、核分裂の数が増加した場合でも操作などを行うことなしに、核分裂の数を減少させるように働く性質のことです。

アクシデントマネジメント
「アクシデントマネジメント」とは、設計で考慮した以上の苛酷事故に至るおそれのある事態が発生しても、それが拡大することを防止し、万が一、苛酷事故に拡大した場合にも、その影響を緩和するための対策です。



 これは、3.11、フクシマの前ではなく、現在の内容なのである。

 “多重防護”も“自己制御性”も“アクシデントマネジメント”もまったくの「神話」だったから、フクシマが起こったのである。

 フクシマなどなかったかのように、原発を未だに推進しようとする理由は、ただ一点、“金”のためなのだ。

 電事連という「広報部門」を抱えた電力会社、彼等を後押しする経産省などの“原子力ムラ”は、現実を真摯に見て、長期的に地球的な観点でエネルギー問題を考える気など、これっぽっちもないのだ。

 彼等のために、この国が、そして地球が危険に晒されて、国民が安心して暮らせないとすれば、こんな不条理なことはなかろう。

 “原子力ムラ”の復活は、許されるものではない。地震大国日本の原発は、国を滅ぼす。
# by koubeinokogoto | 2014-01-31 07:14 | 原発はいらない | Comments(2)

人間らしく生きることを阻害するものに反対します。


by 小言幸兵衛