人気ブログランキング | 話題のタグを見る

幸兵衛の小言

koubeinoko.exblog.jp
ブログトップ

チェルノブイリの子供達(広河隆一著『チェルノブイリ報告』より)

御用学者や原発擁護派から、さまざまな情報操作がある中で、現場を自ら見て聞いてきた人の情報を継続して紹介したい。フォト・ジャーナリスト広河隆一著『チェルノブイリ報告』(岩波新書、1991年4月発行)の「第四章 死に瀕する子供たち-チェルノブイリの冬-」から引用。広河さんが事故からほぼ5年後、1991年2月に現地を再訪した際のルポである。広河隆一著『チェルノブイリ報告』

悲劇の病室
 ミンスク第一病院の小児血液病センターの窓のところに、小さな雪だるまが置いてあった。所長のオルガ・アレニコワ医師は、相変わらず病室から病室への走り回っていた。私は自分の写真集を見せながら、半年前に撮影した子供たちがその後どうなっているか、彼女に訊いた。
 二人の子供が一枚に写っている写真がある。壁にはアメリカの小さな旗があり、それは援助が届いたときに子供が気に入って壁に貼ったものだ。右に男の子のヴァーニャ、左に女の子のアレサ。私の写真の中で、二人とも頭をくっつけるように点滴をうけている。
 ヴァーニャはまだ入院中だ。でもオルガ医師は、治療が功を奏しているから、きっと大丈夫だと言う。彼に会った。ずいぶん元気そうに見えるが、髪の毛がすべて抜け落ちている。それが気になるのか、人形の髪の毛をぐるぐる手に巻いて、いじめている。彼の母親タチアナ・アレシュナは「今はただ祈るしかありません」と言うが、声は明るい。
 しかし、もう一方の女の子アレサは死んだ。
 彼女は89年から入退院を繰り返していた。ミンスクから150キロほどはなれたスルスク地区の出身だという。「とってもきれいな子でした。そして明るい子でした」とタチアナは言う。90年、アレサは小学校に入学した、しかし学校には二週間通っただけだった。彼女は重体で病院に運びこまれた。劇症急性白血病だった。
 (中 略)
「病院内の子供たちの症状はずいぶん良くなりました。西側の国からたくさんの援助が来たからです。スイス、西ドイツ、日本、オーストリア、それにアメリカから少しです。
 ここの医療の質が向上している事は確かです。私たちはドイツの新しい治療方法を学び、六ヵ月間にわたって経験を蓄積しました。死亡者はいますが、決して多くではありません。一月には一人も子供が死にませんでした。これはこのセンターでは初めての出来事です。しかし、二月に入って、一人死んだのです」
 昨年の七月以来の死亡者数を尋ねた。私がここに来た後どのような状況だったのだろう。
 オルガは90人死んだと言った。その内、子供は34人。それをみると、今年に入ってから死亡ケースが一例というのは大変な変化だ。
 死んだ34人の子供の内、汚染地域に住んでいた子供の数はどのくらいか尋ねたが、オルガはそれは分からないと言った。彼女たちは発病した人々を治療するが、その原因が何かを調べはしない。それに90年10月に汚染地図が発行されたが、それはそれまで発表されていた汚染地図よりももっと広範囲が汚染されていることを示していたし、さらに現在では、今まで知られていなかったり隠されていた汚染地域が見つかっているはずだ。「病気になった子供が汚染地域出身ではないと言ってみても、明日にはその地域が汚染地区になってしまうかも分からないのです」とオルガは言う。
 しかし、病例は確実に増えている。ミンスク市で、今年はすでに36の白血病の新しい症例が増えた。89年には8例、90年には20例だった。
 (中 略)
 病室を回った。ヴァーニャの母親タチアナ・アレシュナと同じ部屋に、セルゲイの母親ナターリア・ヴョストロクリオヴァがいた。
 セルゲイは八歳だ。ミンスク出身で、病気になって三年経つ。症状は急性白血病。初めの頃、医者たちはこの子の病気とチェルノブイリ事故との関係をけっして認めようとしなかったという。しかし、今ではすべての医者がチェルノブイリのせいだと認めるようになっている。彼女はセルゲイの病気は、汚染された食べ物と関係があると思っている。「私は神が助けてくれると信じていますが、五月には治療が終了することになっています」とナターリアは言う。



 アメリカの“当局”は、決してスリーマイル事故による汚染地域でのガン発生と事故との因果関係を認めようとしない。もっと遡って、ネバダの原爆実験と、実験の後に近郊で映画の撮影をしていたジョン・ウェイン他の俳優や撮影関係者の数十年後のガン発病について、実験との因果関係を認めるはずがない。
 ソ連当局は、それ以前にデータの隠匿に一所懸命であって、もちろん汚染地域の食べ物と子供たちの白血病との関係など、知らない素振りをするだけである。
 
 そういった捏造され隠された偽りの歴史を利用して、フクシマの被害について情報操作し続ける御用学者など原発ムラの住人達には、決してだまされないよう気をつけたい。あまりにひどい場合は、名指しして糾弾するつもりだ。
 
 最近、私にとっての明るいニュースは、入手しにくかった有益な本の重版の知らせである。岩波新書では田中三彦さんの『原発はなぜ危険か』に続いて、今回紹介した広河隆一さんのこの本も6月に重版予定らしい。堀江邦夫著『原発ジプシー』も現代書館から5月に新装版が発行予定。さあ、次は高木仁三郎さんの著作を、神保町で探し回らなくてもいいようにお願いしたいものだ。
 電力会社の援助を背景に、デタラメを言う御用学者の嘘など、こういった本をしっかり読めば十分に見破ることができるはずだ。一般書店も、ようやく関連本コーナーを設置する店が増えてきた。
 
 原子力ムラの連中は、その利害関係でのみつながっているだろうから、我々国民は、未来を担う日本の子供達への責任感と、真実を知るための粘り強い好奇心で結束を固めたいものだ。
名前
URL
削除用パスワード

※このブログはコメント承認制を適用しています。ブログの持ち主が承認するまでコメントは表示されません。

by koubeinokogoto | 2011-04-21 11:37 | 原発はいらない | Comments(0)

人間らしく生きることを阻害するものに反対します。


by 小言幸兵衛