ウクライナの放射能規制値を見習い、「暫定」規制値を改訂せよ!
日本の基準は、以前にも紹介したが、3月17日に厚労省が各自治体に配布した、原子力安全委員会作成による「飲食物摂取制限に関する指標」のことである。下記の報道機関へのリリース文のように、「当分のあいだ」の「暫定規制値」のはずだ。
2011年3月24日の該当ブログ
厚生労働省の3月17日の報道関係者への通達
平成23年3月17日
医薬食品局食品安全部
企画情報課 課長 吉野、佐久間(2441、2448)
基準審査課 課長 森口、渡、内海(2481、2484、4280)
監視安全課 課長 加地、大原、今村(2471、4241、4242)
(電話代表) 03(5253)1111
(直通電話) 03(3595)2326、2341、2337
報道関係者各位
放射能汚染された食品の取り扱いについて
(福島原子力発電所事故関連)
・ 平成23年3月11日に発生した東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故により、周辺環境から放射能が検出されています。このため、飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止し、もって国民の健康の保護を図ることを目的とする食品衛生法の観点から、当分の間、原子力安全委員会により示された「飲食物摂取制限に関する指標」を暫定規制値とし、これを上回る食品については食品衛生法第6条第2号に当たるものとして食用に供されることないよう対応することとし、別紙のとおり各自治体に通知しました。
下記の表が自治体に通知された「飲食物摂取制限に関する指標」である
今中哲二さんや小出裕章さんが所属する京都大学の「原子力安全研究グループ」のホームページに、チェルノブイリ原発事故以来、ウクライナでは放射能の規制基準が次第に改訂されて厳しくなっていったことが記されている。「原子力安全研究グループ」HPの該当ページ
1997年,ウクライナ保健省は食品と飲料水中のセシウム137とストロンチウム90に関する新しい許容濃度(AL-97)を承認した(表8)。AL-97は1998年1月1日より施行された.表8に示すような濃度の放射能を含む食品を、日常的に標準的な量ほど摂取を続けた場合、その人は、セシウム137とストロンチウム90からそれぞれ年間1ミリシーベルトの被曝をうけることになる。セシウム137濃度とストロンチウム90濃度のそれぞれのAL-97値に対する比比を合計したものが1を越えなければ、その食品は許容されることになる。AL-97の採用により、いかなる人に対しても、食品からの内部被曝量が年間1ミリシーベルトを越えない、と保証される。
チェルノブイリの事故の教訓を生かせなかったフクシマだが、事故後の対策に関しては、この「AL-97」を生かすことはできる。「年間1ミリシーベルト未満」を基準にしているウクライナの規制値と、日本の“暫定”規制値を比べてみよう。
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■放射性セシウムに関する規制値比較(ベクレル/Kg、ベクレル/リットル)
日本 ウクライナ
飲料水 200 2
牛乳・乳製品 200 100
野菜類 500 ジャガイモ 60
野菜(根菜、葉菜) 40
穀類 500 パン・パン製品 20
パン・穀類製品 185 *ジトーミル州の管理基準値
肉・卵・魚・その他 500 肉・肉製品 200
魚・魚製品 150
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「飲料水」の「2ベクレル/リットル」は、決して書き間違いではない。
ウクライナと日本、どちらの政府が国民の生命を大事にしているかが、この基準比較で分かろうというものだ。
ウクライナは、日々摂取する水には厳格な規制値が設定されているし、他の食品に関しても日本と比べて設定が厳しいのが一目瞭然だ。そもそも、野菜も肉も魚も同じ「500ベクレル」というのが、いかにも原子力安全委員会らしいアバウトさではないか。そして、ウクライナで規制値の設定があるストロンチウムについては、何ら規制値設定がないのも問題である。
牛肉で「500ベクレル/Kg」の規制値で、今の混乱である。それも政府と監督官庁の怠慢が原因とも言えるだろう。宮城の稲ワラの高い汚染を「想定外」と言う学者や専門家(?)がいるが、とんでもない。それだって十分に想定できたことだ。
ここは、まだ茶番を続ける永田町には頼らず、霞ヶ関の「公僕」に仕事をしてもらおう。厚生労働省よ、「暫定」規制値は、とんでもなく危険な基準である、早急により厳しい規制値に改訂すべきだ。
被害の拡散を防ぐことと、「暫定」規制値を、ウクライナの事例などを踏まえて、より一層安全を確保できそうなレベルに改訂することは、別である。
将来の日本復興を担う子ども達の命がかかわっているのだ。
これ以上、馬鹿な政府の犠牲者を増やさないよう、今こそ厚労省が本来の使命を果たさなくて、いつ仕事をするのだ、と言いたい。もちろん、政府がその陣頭指揮をとるべきだが・・・・・・。国民の命を粗末にし、放射能規制値強化と併せて大気・土壌・海水・食物といった幅広い対象への適切な放射能測定と管理をしないような国に、私は血税を払い続けたくない。