幸兵衛の小言

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現場作業員、被曝線量操作の実態 (『決定版 原発大論争!』より)

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『決定版 原発大論争!』(別冊宝島編集部編)
 
 なかなかユニークな反原発本。チェルノブイリから2年後の1988年9月に別冊宝島81号として発行され、その後、東海村のJCO臨界事故後1999年12月に文庫として第一刷発行。そしてフクシマの後の今年8月に文庫の第2刷が発行された。本書発行の背景を「まえがき」から引用。

 1986年に起きたチェルノブイリ原発事故以後、反原発の大きな流れの中で、原発推進派の総本山である電力会社の間でも、急速に不安や動揺が広まっていた。そうした状況に頭を痛めた電力業界が、反原発の批判に対する理論武装と一般社員の教育のために、社内の原子力関係の専門家、広報部門の幹部を集めて作成したのが、『内部資料・原子力発電に関する疑問に答えて』(以下「内部資料」と略)である。そこには原発の必要性・安全性・経済性をPRする電力会社の論理が実に明快に述べられていた。
 くだんの別冊宝島は、この電力会社の想定問答集というべき「内部資料」に対して、反原発派を代表する論客十五名が全面的に反論を展開したもので、発売時大きな反響を呼んだ。
(中略)
 なお、文庫版の改訂にあたっては、巻末に付いていた「反原発マニュアル」を割愛し、一部表現や事実関係の間違いを訂正したほかは、当時のまま復刻した。「内部資料」(Qと答)に対する批判という構成も変えてはいない。また、科学ジャーナリストの天笠啓祐氏による新たな論稿(「原子力事故はいつでも、どこでも起きる」)を付け加え、チェルノブイリ原発事故以後に発生した事故や今回の東海臨界事故について検証した。


 この「まえがき」の通りで、東海村JCO臨界事故後に発行された当時の内容のままの重版であり、フクシマ以後での新規追加はない。しかし、原子力村がチェルノブイリを契機に作成した、あくまで彼らの詭弁を弄した理論武装に対して反論する論客の顔ぶれは、それぞれ“ニン”であり、まさに絶妙のタイミングでの重版だと思うし、良い意味で宝島社らしい商売感覚の発揮とも思う。

 目次は次の通り。
 

【まえがき】再び原発を問う!

プロローグ 原子力事故はいつでも、どこでも起きる

第一部 安全性

電力会社 VS 久米三四郎
原発は絶対安全が保証されているか?
保険業界が見捨てた原発に「絶対安全」などあるわけがない!

電力会社 VS 久米三四郎
チェルノブイリとスリーマイル
二大原発事故を必死で批難する電力会社の破れかぶれの胸の内

電力会社 VS 小林圭二
出力調整運転は安全なのか?
安全無視の出力調整は“原発中毒”社会への第一歩だ!

電力会社 VS 生越忠
巨大地震が原発を襲ったら?
巨大地震を「想定しない」地震危険地帯の原発群

電力会社 VS 堀江邦夫
原発労働者の仕事にミスはないのか?
放射能に脅える原発労働者は勘だけが頼りの素人集団だった!

電力会社 VS 恩田勝亘
原発事故が起きたら誰が責任をとるのか?
ひとり二・五円の保険料で我われの命は担保にとられている!

電力会社 VS 西尾漠
日本以外の国は原発から撤退しているのではないか?
日本の電力会社も原発をもてあましている!


第二部 放射能

電力会社 VS 小出裕章
原発の放射能は危険ではないか?
有害な放射能を安全だと強弁する電力会社の狂気の論理

電力会社 VS 藤田祐幸
日本の食品も放射能に汚染されているのではないか?
死を上回る“国家的利益”を優先する厚生省の検査では生命の保証はない!

電力会社 VS 槌田敦
放射性廃棄物はどうやって処分するのか?
東京電力本社ビルに核廃棄物処分場をつくろう!


第三部 経済性

電力会社 VS 室田武
原発で石油は節約できるのか?
ボイラーの湯沸かししかできない原発がどうやって石油文明を変えるのか?

電力会社 VS 西尾漠
原発がなければ電気は足りないのか?
原発があるから電気が足りなくなる!

電力会社 VS 広岡公治
原発は本当に安いのか?
デッチアゲの発電原価を振り回してまで電力会社が原発をやめられない本当の理由

電力会社 VS 河田昌東
原発は経済性を優先しているのではないか?
傷だらけの原発たちが告発する電力会社のコストダウンと「金儲け」

電力会社 VS 小池浩一郎
石油代替エネルギーは原子力しかないのか?
八百長抜きで代替エネルギーと競争すれば電力会社はただの電線管理人

電力会社 VS 山口俊明+藤原一郎
事故を隠して原発のPRをしているのではないか?
ウソとデタラメしか言わない原発広報の「サイテーの男たち」

電力会社 VS 堀江邦夫
原発は地域を豊かにするか?
財政危機と原発ジプシーが増えただけ 「生き延びるために原発をもう一基」


第四部 再処理問題

電力会社 VS 高木仁三郎
再処理工場は本当に安全なのか?
年間数百万キュリーの放射能をたれ流す再処理工場の「多重防護」と「安全性」

電力会社 VS 高木仁三郎
プルトニウムは安全で有効なエネルギーなのか?
一回の事故で一億二千万人を死に追いやるプルトニウムの恐怖の中で生きる意味を問う!

著者紹介



 ご覧のように、なかなかの顔ぶれだと思う。

本書の「第一部 安全性」の、
電力会社 VS 堀江邦夫
原発労働者の仕事にミスはないのか?
放射能に脅える原発労働者は勘だけが頼りの素人集団だった!

から引用したい。あの『原発ジプシー』の堀江さんである。嘘八百の「内部資料」の想定問答は省く。堀江さんの反論部分からの抜粋。
  

96%と4%
 「内部資料」には、原発労働に関するもうひとつの記事が載っている。
 「危険な作業はすべて下請に出しているのではないか」
 これに対する解答が興味深い。その一部を次に引いておこう。
 「『危険』な」作業だけ協力業者に発注しているわけではありません。発電所内の作業は、危険性のない一般作業が殆どです。しかし何の防護もしなければ、多くの放射線を受ける作業も僅かですが含まれています」
 なんとも歯切れの悪い表現ながら、「危険」な作業が原発現場で行なわれている事実を電事連が認めている点は注目に値する。なにしろ彼らは、原発がいかに安全なものであるかを、詭弁・強弁を弄してまで、これまで一貫して唱え続けてきたのだから。
 (中 略)
 下請労働者たちがいかに危険な作業に追いやられているか、そのあたりの実態については、通産省が毎年公表している被曝データを見るだけでもよくわかる。
 86年度における日本国内の商業用原発の総被曝線量(1万198人・レム)のうち、約96%を下請労働者たちの被曝が占めている。電力会社社員のそれはわずか4%にすぎない。また同データは、被曝作業の下請化が年々活発になっている事実についても教えている。総被曝線量に占める下請労働者の割合は、76年度は88%だった。その五年後(81年度)には94%、さらにその五年後(86年度)には、先に紹介したように96%にまで増加している。

労働者の被曝線量は操作されている! 
 ところで、通産省発表の同データについては、若干補足説明の必要がある。このデータは、あくまでも被曝状況の概要を示しているにすぎない。使われている数値の信憑性に疑問があるからだ。
 「原子力発電所では・・・・・・放射線に関する安全管理を担当する部門があり、専門的に厳重な管理を行っています」
 放射線管理について「内部資料」が自信たっぷりにこう述べていることもあり、また被爆労働の一端を知っていただく意味からも、やや話は横道にそれるかもしれないが、ここでその管理実態について簡単に報告しておくことにしよう。
 通産省データは信憑性に欠ける、と先に述べた。理由は、被曝線量のごまかしが行われているからだ。
 原発内に立ち入る労働者は、放射線測定器の携帯を義務づけられている。その測定器を物陰に隠しておいたり他人に預けておき、自分は放射能の高い現場で長時間働くといったことが原発現場ではよくやられていた。私自身、幾度かその場面を実際に目撃してもいる。測定器を持たないで作業をするのだから、当然、測定器の値は、労働者が実際に被曝した量よりはるかに低い。そしてその低い数値が個人被曝線量としてそのまま会社のコンピュータに登録され、それがさらに例の通産省データの基礎となるのだった。
 では、なぜ、このようなごまかしが行なわれていうのか。
 いくつかの理由がある。労働者ひとりあたりの許容被曝線量は法によって定められている。放射線の強い区域で働く機会の多い者ほど、その許容量に早く達してしまう。彼らはその後、一定期間、原発内で働くことはできない。下請けによっては解雇してしまう会社もある。下請労働者のほとんどが日雇い契約者だ。解雇されてしまえば、翌日から収入は途絶えてしまう。そうしたことから労働者は、少しでも長く収入を得るために、自分の被曝線量を低くごまかす。また下請会社から線量のごまかしを直接命ぜられることもある。放射線の強い現場では、先に述べたように人海戦術がとられている。それには多数の労働者が必要になる。それだけ人件費がかかる。会社側としてはより少ない人員で作業をすませたい・・・・・・という理由によっている。
 いずれにせよ、《専門的》で《厳重》なはずの放射線管理のその裏では、こうした被曝線量操作がさかんに行なわれているのが実状だ。



 一つ前に書いた内容で、急性白血病によって亡くなった現場作業員の方の被曝線量“0.5ミリシーベルト”を私が疑うのは、こういった線量操作の実態があるからなのだ。

 コンピュータに入力されている数値が“0.5ミリシーベルト”だったとしても、実態はどうだったのか?

 あくまでも、下請会社が線量操作をしていたら、という仮説。下請会社は、その事実を元請や東電に明らかにすることはありえない。作業員の管理体制に問題あり、ということで仕事の発注が減るかもしれないから。そして、元請や東電は下請会社の線量操作を、うすうす分かっていても、その実態を掘り下げて調査するなんてことはしない。。なぜなら、それは自分達の首を絞めることになるから。もし、線量操作をしていなければ、現場作業に従事できる人数が激減するのかもしれない。

 事故を早急に収束することも重要だが、現場作業員の安全管理だって重要である。この二つは二者択一の問題ではありえない。しかし、東電が弱者である現場作業員の犠牲を強いているのなら、それは放置できない犯罪であろう。

 線量操作や、その背景にある問題への疑いがあまりに大きいので、この死亡事故の実態を掘り起こす必要があると思うのだ。結果として、急性白血病と原発作業との因果関係が本当になかったのかもしれないが、メディアが今の段階で引き下がるのでは、余りにも情けないと言わざるを得ない。あの記者会見だけで本件を終らせてならない。それでは、四十歳代で亡くなった被害者にも申し訳ないのではなかろうか。
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Commented by 佐平次 at 2011-09-01 10:53 x
早速予約しました。

Commented by 小言幸兵衛 at 2011-09-01 11:57 x
流石にお早い!
最初の別冊の発行も文庫の初版も、まったく知りませんでした。
こんな企画があったんですね・・・・・・。
私が平和ボケ中だったんでしょう。
大きなメディアに比べて、ややアウトロー的な印象のある宝島社ですが、フクシマ関連では結構頑張っていると思います。

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by koubeinokogoto | 2011-08-31 16:47 | 原発はいらない | Comments(2)

人間らしく生きることを阻害するものに反対します。


by 小言幸兵衛