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幸兵衛の小言

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「原発事故子ども・被災者支援法」の放置は、法治国家のすることか!?

タイトルが駄洒落のようで申し訳ないが、決してふざけているわけではない。

 大震災とフクシマからの復興のために仕事をしない政治家や官僚が、オリンピック招致などで浮かれている場合ではないのだ。

 東京新聞から引用。「東京新聞」サイトの該当記事

原発事故避難者ら 支援いつまで待てば… 「新法放置」国を提訴
2013年8月23日 朝刊

 東京電力福島第一原発事故を受けた「原発事故子ども・被災者支援法」の成立から一年以上たつのに、国が基本方針を策定しないのは違法だとして、福島県などの住民や自主避難者計十九人が二十二日、国を相手取り、基本方針の早期策定などを求めて東京地裁に提訴した。 

 原告は、放射線量が国の避難指示区域(年間被ばく線量二〇ミリシーベルト超)外の福島市や郡山市、福島県外で線量が比較的高い栃木県那須塩原市や宮城県丸森町で暮らす七人と、全国各地に自主避難する十二人。

 訴えでは、昨年六月に議員立法で支援法が成立したのに、支援対象地域や生活支援策を定める基本方針を理由なく策定しないのは、国の不作為で違法だと指摘。支援対象となる「放射線量が一定の基準を上回る地域」は、年間被ばく線量一ミリシーベルト超が目安だと主張し、事故当時、福島県外で暮らしていた原告も対象になるとしている。

 原告一人につき一円の損害賠償も請求。原告弁護団代表の福田健治弁護士は記者会見で「支援策を実施するよう求める裁判で、原告の個人的利益のためではないことを示すため」と意図を説明した。

 復興庁は「提訴が確認できないので、コメントを差し控えたい。子ども・被災者支援法の基本方針で定めることとされる(放射線量の)一定の基準の検討を進めており、できるだけ早く策定できるよう努めたい」としている。

◆「子どもの健康向き合って」
 「ほとんどの方が声を上げずにじっと我慢している。早くこの法律を具体化してください」。提訴後、会見した原告の小林賢泰(たかひろ)さん(40)は、支援の基本方針を定めようとしない国の姿勢を批判した。

 「四人の子どもを豊かな自然の中で育てたい」と福島県いわき市で林業を営んでいたが、原発事故で生活は一変。放射線量の下がらない古里を去り、山梨県を経て岐阜県内に家族と避難している。

 今の科学では、長期間低線量被ばくした時の健康被害は分かっていない。小林さんのように、自身や子どもの健康を心配し、避難指示区域以外から避難している多くの自主避難者には、国の支援はほとんどない。経済的、精神的に苦しい状況に置かれている。

 支援法の成立により、国の責任で健康や生活が守られるはずだった。一年以上たっても何も変わらない現状に、「国は事故の責任を取らず、被災者救済もしないのに、原発を再稼働し、海外に輸出しようとしている」と失望を隠さない。

 栃木県那須塩原市の伊藤芳保(よしやす)さん(50)は、原発事故から半年後、専門家に測定してもらった自宅の線量の高さにがくぜんとした。妻子は市外に引っ越し、自身は仕事のため自宅にとどまる二重生活を送る。「福島との県境で汚染は区切れない。健康調査など福島と同等の対応をしてほしい」

 福島市から岡山市へ自主避難している丹治泰弘(たんじやすひろ)さん(36)も「一人の不安はみんなの不安につながると思い、提訴した。国は、未来の子どもの健康に真剣に向き合ってほしい」と訴えた。

 <原発事故子ども・被災者支援法> 東京電力福島第一原発事故の被災者の避難生活や健康管理を支援するため、医療や就学・就業、住宅確保などの生活支援を定め、定期的な健康診断や被災した子どもや妊婦の医療費減免も国に義務づけた。支援対象は、放射線量が国の避難指示基準(年間被ばく線量20ミリシーベルト)以下だが、一定の基準を上回る地域の住民ら。自主避難者、避難からの帰還者いずれにも必要な支援を行うとしている。



 この問題については以前にも書いた。2013年6月22日のブログ
太字で一部再度強調。
“原告は、放射線量が国の避難指示区域(年間被ばく線量二〇ミリシーベルト超)外の福島市や郡山市、福島県外で線量が比較的高い栃木県那須塩原市や宮城県丸森町で暮らす七人と、全国各地に自主避難する十二人。

訴えでは、昨年六月に議員立法で支援法が成立したのに、支援対象地域や生活支援策を定める基本方針を理由なく策定しないのは、国の不作為で違法だと指摘。支援対象となる「放射線量が一定の基準を上回る地域」は、年間被ばく線量一ミリシーベルト超が目安だと主張し、事故当時、福島県外で暮らしていた原告も対象になるとしている”


 まったく妥当な主張だと思う。

 20ミリシーベルトという基準の問題は何度もこのブログで書いている。 
 その中から2011年12月16日のブログの内容を元に、放射能と政治について、問題を指摘したい。2011年12月16日のブログ
「原発事故子ども・被災者支援法」の放置は、法治国家のすることか!?_e0337865_16391245.jpg

肥田舜太郎・鎌仲ひとみ著『内部被曝の脅威-原爆から劣化ウラン弾まで』
 
 2011年5月28日のブログでも、ヒロシマで自らも軍医としてその日を迎え、その後、数多くの内部被曝患者の診断を経験した肥田舜太郎さんと、湾岸戦争で使用された劣化ウラン弾の内部被曝によるイラクの人々の被害を明らかにしたドキュメンタリー映画「ヒバクシャ」を制作した鎌仲ひとみさんの共著、『内部被曝の脅威-原爆から劣化ウラン弾まで』を紹介した。2011年5月28日のブログ
 同書「第4章 被ばくは私たちに何をもたらすか」から再び引用。

 人類史上、最大の人体実験ともいわれる広島・長崎への原爆投下があっても、内部被曝そのものに関しては長い間、言及されることはなかった。近年、ようやく内部被曝の存在が注目され、国際放射線防護委員会(ICRP)の見解とヨーロッパの科学者グループ、欧州放射線リスク委員会(ECRR)が出した見解がはっきりと二つに分かれるようになった。前者は内部被曝も体外被曝と同様に許容量を定め、後者は内部被曝の許容量をゼロ以外は安全ではないとしている。
 たとえば、たった一粒のプルトニウムが体内に入った場合、ECRRは体内で放出されるアルファ放射線がその人間に癌を発症させる可能性は十分にある、というのだ。ちなみに、この一粒はたばこの煙の粒子の20分の1の大きさしかない。
 ヨーロッパの科学者グループであるECRRが2003年に公表した報告によると、1945年から89年までに放射線被ばくで亡くなった人の数は6160万人になる。ICRPのこれまでの計算では117万人ということになっている。ECRRは現行の国際放射線防護委員会が設定する一般人の許容限度、1ミリシーベルト/年を0,1ミリシーベルト/年以下に、労働者の限度も50ミリシーベルト/年から0.5ミリシーベルト/年に引き下げるべきだと主張している。もし、これが実現すれば、原発の労働者だけでも100倍の人員が必要になる計算だ。これによって増加する人件費が原子力産業にとって経済的に見合わないことは明白だろう。
 だからこそ、ICRPは「合理的に達成できる限り低く保つ」と許容限度を勧告しているのだ。


 “6160万人 対 117万人”の差は、いったい何を意味するのか。ECRRとICRPと、どちらの主張を信じるかは人それぞれだろうが、もちろん私はECRRに軍配を上げる。ECRRの試算について、本書は次のように指摘している。
 

 内部被曝を再評価したECRRの新たな考え方に基づいた計算によると、死亡者数は6160万人に跳ね上がり、そのうち子供が160万人、胎児が190万人となる。これは本当に私たちにとって「容認」できる許容量なのだろうか?このことこそが今問われているのだ。
 内部被曝に関するしきい値を死守することは、アメリカ政府にとって重要な課題であったことは簡単に想像できる。もし、内部被曝の人体に与える影響が明らかになれば、あらゆる核開発の障害になることは確実だった。内部被曝はアメリカ国家の最重要機密になり意図的で巧妙な隠蔽工作が続いてきた理由がここにある。
 広島・長崎における原爆の影響は局所的であり、放射能汚染は問題にならない、放射線そのもので死んだ人間の数は少なく、投下後、三、四週間で死ぬべき者は全て死んだなどとアメリカ政府は喧伝し、放射能の長期にわたる影響を完全にそして公式に否定した。


 ここで指摘されている通り、アメリカ政府は、ヒロシマもナガサキも、あくまで投下直後の体外被曝による被害しか認めず、アメリカにおける内部被曝被害についての数々の指摘についても、「科学的な根拠」がない、とか「統計的に誤りがある」などという理由で、私が何度か取り上げた「マンクーゾ報告」も認めるはずはなかった。ちなみに、本書ではマンクーゾが調査したハンフォードでの内部被曝被害についても取り上げている。その中で、1987年にアメリカ政府が公開した19000ページに及ぶ機密文書によって明らかになった驚くべき事実として、ハンフォードにある9つの原子炉が日々の操業のなかで放出した放射性物質の総量が、スリーマイル島の事故の1万倍にも相当していたことが紹介されている。データは公開しても、アメリカ政府は、その放射性物質と、この地域での白血病やガンの高い発症率との因果関係は、決して認めようとしない。

 アメリカ政府がやってきたことと、日本政府がやっていることは、本質的に変らない。あくまで「政治」的な判断によって、もっと言えば自己の保身のために、数年後数十年後に起こりえる発症で国民が蒙る被害を犠牲にしようとしている。もちろん、問題が発覚した“その時”には、現在の政府関係者も官僚も、政治の表舞台には存在しないだろう。無責任な問題の先送りにしか過ぎない。

 そして、この「政治的な基準」の問題に目をつぶったまま、国民が「自助」努力で避難をし、心身ともに疲弊しているのに、安倍政権はいったい何をしているのか。

 大震災やフクシマのために、「健康」で「安全」な生活を奪われた国民のことに目を向けない国にオリンピックなど招致する資格はあるのか。

 そして、世界で真っ当な判断のできる方は、放射能で地球を汚染するにまかせている極東の島国で、世界大運動会などしようとはしないだろう。しかし、あのイベントも今では政治と経済、金にまみれたものなので、東京に決まるのかもしれない。経済効果はあるかもしれないが、それは先のことだ。
 今、いや3.11からずっと今までほとんど見放されている人達のことに、政府も東京都も、しっかり目を向けるべきだろう。

 何度も書いているが、憲法改正、TPP参加、社会保障制度の改悪などで国民を不幸にしようとばかりする安倍政権は、すでにもっとも国民として不幸な境遇にいる大震災とフクシマの被害者の救済を最優先課題とすべきである。それができないようなら、政治家と官僚には、年間“20ミリシーベルト”を少し下回る地域に、首相官邸、議員宿舎、官庁の施設、そして国会議事堂もつくって仕事をしてもらいたいものだ。そこは彼らが“安全”と主張しているのだから。
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by koubeinokogoto | 2013-08-23 22:54 | 原発はいらない | Comments(0)

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