人気ブログランキング | 話題のタグを見る

幸兵衛の小言

koubeinoko.exblog.jp
ブログトップ

「昭和の日」第二弾—あの戦争への、“けじめ”のつけ方。

ある文章を、まず紹介。

 わが国は、遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。私は、未来に誤ち無からしめんとするが故に、疑うべくもないこの歴史の事実を謙虚に受け止め、ここにあらためて痛切な反省の意を表し、心からのお詫びの気持ちを表明いたします。また、この歴史がもたらした内外すべての犠牲者に深い哀悼の念を捧げます。
 敗戦の日から50周年を迎えた今日、わが国は、深い反省に立ち、独善的なナショナリズムを排し、責任ある国際社会の一員として国際協調を促進し、それを通じて、平和の理念と民主主義とを押し広めていかなければなりません。同時に、わが国は、唯一の被爆国としての体験を踏まえて、核兵器の究極の廃絶を目指し、核不拡散体制の強化など、国際的な軍縮を積極的に推進していくことが肝要であります。これこそ、過去に対するつぐないとなり、犠牲となられた方々の御霊を鎮めるゆえんとなると、私は信じております。
 「杖るは信に如くは莫し」と申します。この記念すべき時に当たり、信義を施政の根幹とすることを内外に表明し、私の誓いの言葉といたします。



 「杖るは信に如くは莫し」(よるは しんに しくはなし)とは、『春秋左氏伝』の言葉で、信義に勝る頼れるものはなし、の意。何事にもまして信義、誠意が肝要ということである。

 これは、いわゆる「村山談話」の後半部分である。全文は外務省のホームページで読むことができる。
外務省HPの該当ページ

 私は、敗戦から50年を契機に、当時の村山首相から発信されたこの談話を、基本的には強く支持する。日本という国は、あの戦争による日本国民とアジアの隣人を中心とする被害者に、まず心から謝ることなしに、次の一歩は進めない。
 また、この言葉を踏まえれば、先日の「核の不使用」共同声明には積極的に署名することになるはずだ。

 「村山談話」と言ったって、村山首相の個人的所信ではなく、平成7(1995)年当時連立内閣をつくっていた自民党、社会党、新党さきがけ(自社さ連合)政権の閣僚全員が署名した閣議決定によって発表されたものだ。
 
 その後の首相は「村山談話」を継承した。しかし、「核の不使用」共同宣言への対応などを含め、安倍政権は違うようだ。非常に危険な兆候である。

 さて、中国側の、“あの戦争”への公式見解は、いわゆる「周恩来テーゼ」である。
「昭和の日」第二弾—あの戦争への、“けじめ”のつけ方。_e0337865_16400937.jpg

東郷和彦著『歴史認識を問い直す-靖国、慰安婦、領土問題』(角川ワンテーマ21)

東郷和彦著『歴史認識を問い直す-靖国、慰安婦、領土問題』(角川ワンテーマ21、2013年4月10日初版発行)から引用したい。

 日本人一般がこのテーゼを一番初めに広く耳にしたのは、1972年9月25日、日中国交正常化の調印のために田中角栄首相一行が北京についた夜の歓迎夕食会で行われた周演説のようである。
「1894年から半生記にわたり、日本の軍国主義者による中国侵略によって、中国人民は重大な災害をうけ、日本国民もまた、大きな損害をうけました。
 先に起きたことを忘れず、後に起こることの手本とするという言葉がありますが、このような経験を我々はしっかりと覚えておかねばなりません。
 中国人民は、毛沢東主席の考えに従い、ごく少数の軍国主義者と日本国民を厳格に区別します」(『中国語ジャーナル』2002年9月・10月号)
 事柄の重要性にくらべ、この演説の存在はあまり知られていないようである。この夕食会で、田中首相が日中戦争に関して「迷惑をかけた」という表現を使ったことが中国側の不興を買い、翌日の公式会談で問題提起がなされる事態に大方の関心がいってしまったことによるかもしれない。
 しかしながら、この演説に出てきた考え方は、遡ること20年に及ぶことが解った。ノンフィクション作家の保阪正康氏が、2005年雑誌『現代』において、次のような指摘をしている。
「52年、中国ハルビンで日本のスケート選手を招待しようという計画が持ち上がった際、戦争で傷つけられた人たちの怒りが激しく、招待計画が中止になった事件が起きた。これを契機に周首相は、『こうした状態が続けば将来大変なことになると考え、そういう人たちに、日本人兵士もまたひとにぎりの軍事指導者に騙されていた犠牲者だと説得した』という」(『現代』「周恩来の『遺訓』を無視する首相の靖国参拝」2005年7月号、84~93ページ)
 (中略)
 結局中国の考え方は、①靖国神社には、日中人民の共通の敵である日本軍国主義者の代表たるA級戦犯が祀られている、②靖国神社に参拝するのは、A級戦犯に参拝することになる、③だから、靖国神社の参拝は許せないということになる。



 中国政府が、周恩来テーゼを継承しているなら、現在の日本人に戦争責任を求めることはない。あくまで、過去の“軍国主義者”によって、日中両国の国民が犠牲になったのである。

 安倍政権が好きな言葉、“グローバル”な視点とは、地球的視野で未来志向で考えるということだとするなら、実はこういう中国側の、あの戦争への“けじめ”のつけ方にこそ“グローバル”という言葉があてはまるのではなかろうか。

 せっかく、「過去のことは水に流そう」と言ってくれているのに、安倍は「村山語録」を見直そうとしたり、憲法改正を言い出し、靖国参拝を擁護する。せっかく“けじめ”をつけて前に進もうとする中国にとって、安倍政権の態度は、歴史を逆行させようとする行為としか映らない。

 これでは、まったく“グローバル”な視野に立つ政権などとは言えない。日中関係や日韓関係が悪化し、日本経済や国民生活に悪影響が出たとしたなら、それは“平成の軍国主義者”による被害と言ってよいだろう。
 
 安倍“右傾化”政権の、優先順位の分からない、あまりに狭い視野に立つ独りよがりの失政で、国民がとばっちりを受けるのは真っ平御免である。
Commented by 佐平次 at 2013-04-30 10:40 x
安倍はアメリカからやられるかもしれないですね。
頭がおかしくなったのかも。
どうせならお腹が再発して欲しかった。

Commented by 小言幸兵衛 at 2013-04-30 11:55 x
アジアの隣人と良好な関係を築くことより、「国防軍」を持つ“普通の国”になることが優先する“軍国主義”の政治家です。
靖国参拝をやみくもに肯定し、憲法改正を唱えている限り、中国もアメリカも彼とは真っ当な付き合いをしようとはしないでしょう。あくまで、TPPなどで日本を利用するための交渉の相手でしかない。それが安倍は分かっていない。
そのうち、利用価値より害悪が大きいと判断されたら、小沢一郎のように“人物破壊”の標的になるかもしれません。
やはり「銀の匙」を加えて生れてきた、右寄りのボンボンでしかないですね。

名前
URL
削除用パスワード

※このブログはコメント承認制を適用しています。ブログの持ち主が承認するまでコメントは表示されません。

by koubeinokogoto | 2013-04-29 16:26 | 戦争反対 | Comments(2)

人間らしく生きることを阻害するものに反対します。


by 小言幸兵衛