安倍の‘ごまかし解散’は、許せない‐毎日の社説や高村薫の指摘など。
毎日の社説は、国家議員の定数削減問題が、まった棚に上がったままであることを指摘。
毎日の社説全文を紹介する。(太字は管理人)毎日新聞の該当社説
社説:衆院解散・総選挙へ 定数大幅削減
毎日新聞 2014年11月21日 02時32分(最終更新 11月21日 11時16分)
◇約束破りの罪は大きい
安倍晋三首相は21日に衆院を解散する。既に指摘しているように国民の信を問う大義に乏しい解散だ。そしてもう一つ、言っておかねばならない話がある。前回の衆院選前、自民、公明、民主3党が「消費増税で国民に負担増を求める以上、議員自らも身を削る必要がある」と約束した衆院定数の大幅削減が実現しないまま選挙戦に入るということだ。
振り返ってみたい。2012年11月の党首討論で、当時の野田佳彦首相(民主党代表)は衆院解散と引き換えに「必ず次の国会(13年)で定数削減する。ともに責任を負うことを約束してほしい」と野党自民党の総裁だった安倍・現首相に提起した。安倍氏も受け入れ、民自公の3党は衆院議員の定数削減を含む選挙制度の抜本改革実現で合意した。
ところが、自公両党が政権を取り戻してからは与野党協議は難航。結局、今年9月、伊吹文明衆院議長の下に設けた第三者機関に検討を委ねることになってしまった。検討は始まったばかりで、しかも結論を出しても各党がそれを受け入れる保証もないのが実情だ。
国の人口と比べて国会議員の数が多いか、少ないか。確かに議論は分かれる。だが3党は「減らす」と国民の前で大見えを切ったのだ。ほごにされては政治不信は強まるばかりだ。特にそれを放置したまま解散する首相と自民党の責任は大きい。
衆院小選挙区の「1票の格差」問題も残ったままだ。今回の衆院選から適用される「0増5減」は当面の格差を2倍未満にする小手先の対策に過ぎない。前回衆院選での「1票の格差」について最高裁は昨秋「違憲状態」との判決を出している。その後も格差は拡大しており、格差が2倍超になるのは確実と見られている。このため、今回の衆院選に対しても司法が「違憲」または「違憲状態」と判断する可能性がある。
47都道府県に1議席ずつを割り振る「1人別枠方式」の問題もある。最高裁は格差の要因であるこの方式が事実上残っており、構造的問題が解決していないと指摘している。これに関しても与野党はほとんど議論をしていない。
今度の衆院選で各党は一体、どう主張するのか。安倍首相は「消費税率を10%にするのは延期するのだから議員が身を削るのも待ってほしい」とでも言うのだろうか。一方、野党は「数十人削る」と大盤振る舞いのような口約束をするのだろうか。いずれの主張も、大半の有権者はもはや信用しないだろう。
国民に約束していた歳出削減策策を棚に上げて、国民の生活をさらに苦しめる消費税増税については、確実に近い将来上げる、と脅しをかけている。
まず、無駄をなくすことが先だろう。
同じ毎日に、作家の高村薫へのインタビューが載っていたので、一部引用する。
毎日新聞の該当記事
この解散の安部の目論見について、まず、高村は斬る。
「今後、アベノミクスの失敗で経済指標は悪くなる。このまま解散を引き延ばせば来年4月の統一地方選で大負けするから、その前に……と安倍さんは思ったのでしょう。要するに経済失政を覆い隠すための手段に過ぎないということです」
そうなのだ。まったくの、‘ごまかし解散’である。
アベノミクスが虚構であることについて、バッサリ。
思い起こせば、米国発の景気低迷が当時の日本を暗く覆っていた。有権者の多くはアベノミクスに期待した。だが高村さんの評価は厳しい。
「大規模な金融緩和で無理やり円安に誘導しても、大企業の製造拠点は海外に移ってしまっており、輸出は期待ほど伸びなかった。円安で輸入物価は上昇し、生活が苦しくなっただけ。この2年間でアベノミクスが失政だったことがはっきりしました」。その言葉を裏付けるように、17日に内閣府から公表された7~9月期の国内総生産(GDP)の速報値は市場予測を大幅に下回り、4~6月期に続く2四半期連続のマイナス成長となった。多くのメディアが「日本経済は景気後退局面に入った可能性がある」と解説している。
製造業の競争は厳しい。それぞれの市場に対応するため、各地域で連携した設計・製造の仕組みを地球規模で構築する動きは止められない。それこそ、‘グローバル’な取組をしないと、生き残れないのだ。
だから、小手先の法人税減税などで日本企業を食い止めることなどはできない。それが、安部の取り巻きにも分かっていない。
高村薫の指摘の引用を続ける。
高村さんが強く疑問視するものが、もう一つある。
安倍政権は7月に閣議決定で憲法解釈を変更し、集団的自衛権の行使容認へとかじを切った。「戦後の歴代政権の内閣法制局が積み上げてきた憲法解釈を、いとも簡単に変更した。しかも、それをしたのは同じ自民党中心の安倍政権。いったい何の権利があって、と憤りを覚えます」。口調が一段と厳しさを増した。「戦後69年、日本人が守り続けた『戦場で人を殺さず、殺されもしない』という歴史に終止符が打たれる。安倍さんの言う『積極的平和主義』で平和が維持できると考えるなんて、それこそ妄想以外の何ものでもありません」
高村さんは安倍政権の問題点を次々と挙げた。2年前の消費増税を巡る3党合意と議員定数是正の公約が置き去りになっていること。靖国神社参拝で中国や韓国などとの関係をこじらせたこと。「戦後レジームからの脱却」を掲げながら、米国の意向に沿って米軍普天間飛行場の辺野古移転を進めたこと……。
安倍首相は、今回の解散・総選挙を一つのお墨付きとすることで、さらなる長期政権を目指しているといわれる。その先には何があるのだろう。
「私には安倍さんが、軍部の台頭を許し戦争への道を歩み始めた昭和初期まで歴史を巻き戻そうとしているように見えます。安倍政権が長期化したら、私たちはどこまで連れて行かれるのか。来年は戦後70年です。この節目の年を安倍首相のもとで迎えることの意味を、私たちはもっと深刻に考えるべきではないでしょうか」
まったく、高村薫の意見に同感だ。
とんでもない男が、国の存亡を危うくしている。
12月14日は、それこそ、‘日本を国民に取り戻す’ための日にしたい。