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幸兵衛の小言

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投票の「義務化」を真剣に考える時か—投票率五割目前で思うこと。

参院選は、予想通りの低投票率が、組織で戦った政党と、いわゆる保守的な高齢者の支持を背景にして政権与党に有利に働いた。「朝日新聞」サイトの該当ページ

2013年7月22日1時23分

参院選投票率52.61% 戦後3番目の低さ

 今回の参院選選挙区の投票率は、各都道府県が発表した結果などを朝日新聞社が集計したところ、52・61%だった。前回の2010年参院選の57・92%を5・31ポイント下回り、戦後3番目の低さだった。

 高かったのは島根の60・89%、山形の60・76%、鳥取の58・88%だった。低かったのは青森の46・25%、岡山の48・88%、千葉の49・22%だった。沖縄以外の46選挙区すべてで前回より投票率が低下した。

 参院選の投票率は1980年に74・54%を記録して以降、低下傾向が続き、95年に最低の44・52%となった。98年に投票時間を2時間延長してからは56~58%台で推移していた。

 政治とカネをめぐる問題や「消えた年金」問題が争点となった前々回の07年は58・64%(04年比2・07ポイント増)と近年では比較的高い投票率を記録。前回10年は消費税引き上げなどが争点だったが、投票率は07年比で0・72ポイントの微減だった。

 今回はインターネットを使った選挙運動が国政選挙で初めて解禁されたことから、若年層を中心に選挙への関心が高まるかどうかに注目が集まっていた。

 公示翌日の5日から20日までの16日間に期日前投票をした人は、総務省の速報値で47都道府県で1294万9982人となり、前回10年参院選の1208万5636人に比べ7・15%増えた。全体の有権者に占める割合は12・36%だった。参院選で期日前投票が始まった04年以降、増加が続いている。



 昨年の衆院選翌日のブログでも引用したが、総務省のサイトから「目で見る投票率」と言う資料(PDF)をダウンロードすることができる。2012年12月17日のブログ
総務省サイトの該当ページ

 参院選の前回までの投票率の推移のグラフを紹介。
投票の「義務化」を真剣に考える時か—投票率五割目前で思うこと。_e0337865_16404298.jpg

 2009年の民主党政権誕生から一時持ち直した投票率が、まさに民主党の崩壊につながる惨敗とともに、投票率の下降傾向に戻ったのだ。
 “二大政党制”への期待は、それが幻影だったと知ることで、再び政治への“無気力”、いわば“有権者の引きこもり”という病を悪化させた、とも言えるだろう。

 一度期待させただけに、民主党の責任は極めて大きい。小沢も鳩山も菅も全員同罪である。民主党という薬は、日本の有権者の政治不信という病気にいったんは効果的だったが、この薬の内部構造が勝手に自己破壊することで、健康を害する毒薬になったとも言えるだろう。薬(drug)が、麻薬(ドラッグ)に変った。

 しかし、民主糖という処方箋の代りに共産糖という薬が、今の日本の症状に効果的とも思われない。

 薬ではなく、ここは日本の有権者に“お灸”が必要だと思う。

 ちなみに、参院選前二回の年齢層別の投票率は、次のようになっている。

投票の「義務化」を真剣に考える時か—投票率五割目前で思うこと。_e0337865_16404299.jpg


 今回の選挙の統計が発表されるのは少し先になるだろうが、二十歳代後半から、四十歳代の投票率は、前回よりさらに下がったであろうと予想できる。

 今回、彼ら重要な日本の働き手を襲っていた“空気”は、次のようなものではなかろうか。

 “たぶん、自民党が勝つだろう。民主党はどうしようもない体たらくだし、橋下じゃしょうがない。他に自民党に対抗できるのは・・・共産党位かなぁ。まぁ、アベノミクスがいつまで持つか分からないが、景気は回復しつつあるようだし、今は自民党でもいいかもしれない・・・どうせ自分が投票に行かなくても、結果は変わらないさ”

 こんな思いで棄権した有権者は、決して少なくないだろう。もっと、政治に冷めている若者も多いに違いない。

 ちなみに過去最低、2007年の投票率44.52は、第一次安倍政権で閣僚の不祥事が続いたことによる有権者のシラケムードが大きく影響している。


 政治的な“引きこもり”を発症させた原因は、環境にもある。たしかに、政治に期待できない状況が政権交代前の自民党、そして民主党時代を経て続いたのは事実だ。しかし、だからと言って、投票の「権利」を四割以上の有権者が放棄していることの言い訳になならない。


 衆院選の後にも書いたが、投票は「権利」ではなく、「義務」化すべき時に来ていると思う。

 その仕組みが効果的に機能していないかもしれないが、投票を媒介とする「間接民主主義」を選んだ国民は、投票でしか、政治に対して主体的、具体的な影響を行使することはできない。

 衆院選の後にも書いたように、世界には「義務投票制」によって、棄権した場合に「罰則」のある国や地域がある。Wikipediaから、罰則規定の厳格な国のみを引用する。Wikipedia「義務投票制」

義務投票制を採用している国

罰則適用の厳格な国

ウルグアイ  
  :罰則は、罰金・権利の一部制限。罰則適用は、厳格。
キプロス   
  :罰則は、罰金(500キプロス・ポンド以下)・入獄。罰則適用は、厳格。
オーストラリア
  :罰則は、罰金(原則20豪ドルだが、裁判所で争うと50豪ドル以下)。
   罰則適用は、厳格。
シンガポール 
  :罰則は、選挙人名簿からの抹消。棄権がやむを得ないものであったこと
   を明示するか、5シンガポール・ドルを支払えば、選挙人名簿再登録
   可能。罰則適用は、厳格。
スイス   
  :シャフハウゼン州のみ。州法により、連邦選挙における投票も法的義務。
   罰則は、罰金(3スイス・フラン)。罰則適用は、厳格。
ナウル   
  :罰則は、罰金。罰則適用は、厳格。
フィジー  
  :罰則は、罰金・入獄。罰則適用は、厳格。
ベルギー  
  :罰則は、罰金(初回は5-10ユーロ。二回目以降は10-25ユーロ。)・
   選挙権制限(15年間に4回以上棄権の場合は、10年間選挙資格停止)。
   罰則適用は、厳格。
ルクセンブルク
  :罰則は、罰金(99-991ユーロ。初回の棄権から6年以内に再度棄権する
   と、重い罰金が課せられる。)。ただし、71歳以上の者と投票日に海外
   にいる者との投票は任意。罰則適用は、厳格(初回の棄権に対しては
   通常は警告文書が送られるだけだが、棄権が重なると裁判所での判決
   を受けることになる可能性がある。)。



 義務化しなくても投票率の高い国は北欧に多い。最近の国政選挙で、スウエーデン、アイスランド、デンマークは80%を超えている。しかし、他の西欧諸国では、ドイツが約70%、イギリスが60%台、フランスやアメリカの大統領選以外の選挙は50%台で日本に近い。
 しかし、日本の50%とアメリカ、フランスの50%は、同じように語ることはできないだろう。もし投票(間接民主活動)を行なわない場合でも、ボランティアやNPOなど、直接的に社会貢献のための活動を行なう国民が欧米では多いということを考慮すべきだ。ある意味、それはキリスト教精神が背景にある博愛精神の発露でもある。
 
 もちろん、日本にだって「相互扶助」の精神は昔からあったし、味噌・醤油を借りあう長屋文化はあった。しかし、その農耕民族として自然に培ってきて日本の協調の美徳は、今や古典芸能の世界にしか遺されていないのではないか。

 あえて問おう。日本の若年層の棄権者は、投票行動に代わって何か社会のための行動をしているのか。選挙という方法以外に社会と積極的に関わっている若者は決して多くはないだろう。逆に、そういう若者は決して棄権しそうに思えない。

 そんなことも考えると、私は、投票は「権利」から「義務」に変えるべき時を迎えていると強く感じる。どうしても投票しなければならないならば、きっとその投票行動に主体性を持つだろうし、情報も収集するだろう。しかし、「義務化」し、投票率が上がって困るのが、政権与党であろうから、このパラダイム・シフトは、そうそう生易しいことでは進まない。「棄権する自由」も重要だ、という主張もあるだろう。

 私見だが、一票の格差問題と同様に、ここは「三権分立」の「司法」が、「国民の半数が投票しない選挙は無効である」位の主張をしないだろうか。

 しかし、「行政」と「立法」を動かすためにも、結局「投票」によって「投票の義務化」を進める政府を選ばなけれなばならない、というループに陥るのが、何とも残念だ。
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by koubeinokogoto | 2013-07-22 20:29 | 幸兵衛の独り言 | Comments(0)

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