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幸兵衛の小言

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‘リアリティ番組’の行き先は、‘バトルランナー’か‘ハンガー・ゲーム’か!?

フランスのテレビ局の‘リアリティ番組’制作中に起こったヘリコプター事故で、五輪メダリストを含む犠牲者が出たらしい。
 まず、時事ドットコムより。時事ドットコムの該当記事

五輪金メダリストら10人死亡=ヘリ2機衝突、TV撮影中−アルゼンチン

【サンパウロ時事】アルゼンチン北西部ラリオハ州で9日、ヘリコプター2機が空中で衝突し、墜落した。治安当局は、ヘリに乗っていた五輪金メダリストらフランス人8人とアルゼンチン人パイロット2人は全員死亡したと発表。詳しい原因を調べている。

 ナシオン紙(電子版)などによると、事故はスポーツ選手らが出演するフランスのテレビ番組の撮影中に起きた。犠牲者には2012年のロンドン五輪競泳女子400メートル自由形金メダリスト、カミユ・ムファさん(25)や08年の北京五輪ボクシング男子ライトウエルター級銅メダリスト、アレクシス・バスタンさん(28)が含まれている。
 墜落現場は山間部で、事故が起きた午後5時ごろの天気は良好だった。ヘリのうち1機は州政府の所有だった。(2015/03/10-13:01)



 ロイター日本語版からも引用。ロイターの該当記事(日本語)

アルゼンチンでヘリ2機衝突10人死亡、仏五輪金メダリストも犠牲
2015年 03月 10日 13:50 JST

[ブエノスアイレス/パリ 10日 ロイター] - アルゼンチン西部ラリオハ州で9日、ヘリコプター2機が衝突し、地元当局者によると10人が死亡した。フランスの大統領府は10日、死者のうち8人はフランス国籍で、五輪金メダリストのカミーユ・ムファさん(25)らが含まれると発表した。

大統領府は声明で、ムファさんのほか、ボクシング選手アレクシス・バスティーヌさん(28)、セーリングで知られるフローレンス・アルトーさん(57)らが搭乗していたと発表。衝突はテレビチャンネルTF1の番組撮影時に起きたという。

ムファさんは、2012年のロンドン五輪競泳女子400メートル自由形で金メダルを獲得。バスティーヌさんは08年の北京五輪で銅メダルを獲得した。

地元メディアなどによると、生存者はおらずアルゼンチン人操縦士2人も死亡。撮影していたのはリアリティー番組「Dropped」で、同番組に出演しているサッカーの元フランス代表シルバン・ビルトール氏は、「友人のことを思うと悲しい。震えている。恐ろしい話だ」とツイッターに投稿した。

ラリオハはアルゼンチン西部の山岳地帯。


 非常に痛ましい事故だ。亡くなった方のご冥福をお祈りしたい。

 リアリティ番組とは、台本や演出がなく、現実の予測できない状況下で制作される番組のことで、元祖はあの‘どっきりカメラ’と言って間違いなかろう。私は、度を越して人の心をもてあそぶ‘どっきり’が嫌いだった。
 リアリティ番組は、かつて素人の出演が主流だったが、昨今は俳優、タレント、スポーツ・アスリートなども出演し、なかでもサバイバル・ゲームなどが人気があるようだ。また、複数の人間を動物園の檻に入れるように一か所に閉じ込めて、それを覗き見るような番組もある。そういった番組が残念ながら視聴率を稼いでいるのは、世界的な風潮のようだ。

 たしかに、テレビ番組がマンネリ化する中で、視聴率を稼いだり、ペイテレビの収入を上げるために、ハプニング性が高いリアリティ番組、なかでも、さまざま危険と背中合わせのサバイバル・ゲームは、制作者としては飛びつきたくなる魅力があるのかもしれない。

 しかし、ぎりぎり‘危険と隣り合わせ’だが、周到に事故対策が準備され‘安全’が担保されていなければならないはずだ。
 サバイバル・ゲームでは、フランスや韓国で自殺者が出ているようだ。もちろん出演者への精神的なケアも必要だろう。しかし、抜本的な対策は、そういった番組を作らないことだ。

 今回のような事故を防げなかったことを、フランスのみならず、世界中のテレビ関係者が深く反省する機会とすべきだと思う。一線を越えている、と認識すべきだろう。
 
 歯止めがないと、人間の欲望は際限なくエスカレートし、より‘おもしろい’ものを求めるようになる。その、おもしろさが、つい、非人間的な残酷性を持つことになることに気がつかないのならば、それは、社会の病気と言ってよいだろう。
 どこかで、歯止めをしないといけないし、そうする理性を発揮することこそが、人間たる所以ではかなろうか。

 理性の歯止めを失ったリアリティ番組の行き着く先は、映画の『バトルランナー』(原題:ランニングマン)の世界ではないか、と私は思っている。

 スティーヴン・キングが別名リチャード・バックマンで書いた原作を元に、アーノルド・シュワルツェネッガーが主演した、1987年のアメリカ映画を覚えている方もいらっしゃるだろう。

 Movie.Walkerから同映画のあらすじを引用する。Movie.Walkerサイトの該当ページ

21世紀。TVによって国民をコントロールする全体主義国家アメリカで、ベン・リチャーズ(アーノルド・シュワルツェネッガー)は警察官としてまじめに勤めていたが、ある日上司の命令にそむいたため、大量殺人の汚名をきせられて投獄された。だが、強制労働の監獄で知り合ったラフリン(ヤフェット・コットー)、ウェイス(マーヴィン・J・マッキンタイア)らと脱獄、リチャーズは2人と別れ、弟の住むアパートヘ向かった。が、弟はおらず、かわりに住んでいたのは放送局に勤めるアンバー・メンデス(マリア・コンチータ・アロソン)だった。彼女はリチャーズがTVニュースで報道されている殺人犯と知り恐怖におののく。リチャーズは彼女を道連れに国外逃亡を計画した。そのころ、ロサンゼルスのICSネットワークでは、視聴率トップの殺人ゲーム・ショー「ランニングマン」の企画者でホストのデーモン・キリアン(リチャード・ドーソン)が、低迷の兆しの出てきた番組をテコ入れすべく“獲物”としてリチャーズに白羽の矢を立てた。一方、そのリチャーズは空港でアンバーが警察に助けを求めたため逮捕された。監獄に逆戻りかと思ったリチャーズは「ランニングマン」に出場するよう強制される。無事に生き残れれば釈放するというのだ。「ランニングマン」が華麗なダンサーたちの踊りで始まった。ホストのキリアンは冒頭にリチャーズがいかに残虐かをデッチ上げフィルムで紹介する。憎悪をむきだしにする観客。だが、彼と一緒に空港にいたアンバーは映しだされた映像がウソであることに気づき、TV局の資料室に忍び込んだ。一方、リチャーズは戦闘場である“ゾーン”へ放り込まれた。共に闘うのは一緒に脱獄したラフリンとウェイスだった。彼らも逮捕されていたのだ。“ゾーン”で彼らを待ち受けていたのはホッケーのスティックを殺人武器に変えたサブゼロ(トール・タナカ)。リチャーズは激しい闘いの末倒す。“ゾーン2”にはチェインソーを自在に操るバズソー(ガス・レスウィッシュ)が待っていた。しかも、資料室で見つかってしまったアンバーが放り込まれて来た。ラフリンがバズソーにやられ、怒ったリチャーズが逆襲。3人目は装甲バギーに乗るダイナモ(アーランド・ヴァン・リドス)。ダイナモが放つ電流によりウェイスが倒れた。そのダイナモを葬り去ったリチャーズに、観衆の中で拍手する者も現われた。苛立つキリアンが切り札として送り込んだのはナパーム放射器を装備したファイアーボール(ジム・ブラウン)。追いつめられたリチャーズが目にしたのは、このゲームで生き残り、リゾート地で悠々自適の生活をしているはずのかつての優勝者たちの死体だった。リチャーズはファイアーボールも倒した。意外な展開にあせったキリアンは、ビデオ合成でリチャーズがキャプテン・フリーダム(ジェシー・ヴェンチュラ)に倒されるシーンをデッチ上げ、観衆をなんとか誤魔化す。そのころ、レジスタンスに助けられたリチャーズとアンバーは武装してTV局を襲撃。同時に、通信衛星をジャックしてリチャーズが汚名を着せられていた真実の映像をアメリカ全土に流した。そして、リチャーズは怒りの銃弾をキリアンにぶち込むのだった。


 より‘おもしろいもの’を望む視聴者、より‘儲かるもの’を求める制作者側の、いわば社会病理的な際限のない欲望が、ついに殺し合いを番組化する恐ろしさに警鐘を与える作品だ。
 また、メディアの娯楽を為政者が操ることで、やらせ番組を見ている国民の知らないところで不正がどんどん進んでいるという、政府によるメディアの支配という問題にも目を向けた内容だった。

 映画としての出来は賛否あろうが、原作と映像が訴求する未来への警鐘は、私には強く印象づけられた。

 もっと最近の映画を例にするなら、『ハンガー・ゲーム』(2012年)がある。こちらも、あらすじをMovie.Walkerから引用。
Movie.Walkerサイトの該当ページ

巨大独裁国家パネム。最先端都市キャピトルと12の隷属地区で構成されるこの国では、国民を完全服従させるための見せしめ的イベントとして、毎年1回、ハンガー・ゲームが開催されていた。その内容は、パネムの全12地区それぞれの12~18歳の若者の中から、男女1人ずつの合計24人をプレイヤーとして選出し、最後の1人になるまで戦わせるサバイバル・コンテスト。一部始終が全国に生中継され、パネムの全国民に課せられた義務で、キャピトルの裕福なエリート層にとっては極上の娯楽コンテンツだった。第74回ハンガー・ゲームが開催されることとなり、プレイヤー抽選会が開催された第12地区。カットニス・エバディーン(ジェニファー・ローレンス)は、不運にもプレイヤーに選ばれた12歳の妹プリムローズ(ウィロー・シールズ)に代わってゲーム参加を自ら志願する。男子のプレイヤーに選ばれたのは、同級生ピータ・メラーク(ジョシュ・ハッチャーソン)だった。キャピトルに到着すると、専属スタイリストのシナ(レニー・クラヴィッツ)と対面。ゲームを有利に進めるには、見栄えを良くして積極的にアピールし、スポンサーを獲得する必要があるのだ。続いてカットニスたちは、教育係ヘイミッチ(ウディ・ハレルソン)の指導の下、厳しいトレーニングに打ち込む。そこでサバイバル術や武器の使い方を学びつつ、お互いの力量を探り合う24人。優勝候補は第2地区代表で冷酷非情なケイトー(アレクサンダー・ルドウィグ)。彼は、幼いころからハンガー・ゲームに勝つための特殊訓練を受けてきたプロフェッショナルだった。いよいよ訪れる開戦の日。24人は、カウントダウン終了と同時に、鬱蒼とした森に囲まれた草原のスタート地点から全力で駆け出す。家族のため、自分の未来を切り開くため、狩りで鍛えた弓矢の腕前を生かして戦うカットニスは、やがて想像を絶するクライマックスに身を投じてゆく……。

 

 スーザン・コリンズの原作はスティーヴン・キングも評価し、ベストセラーとなった。
 また、この翌年には「ハンガー・ゲーム2」が映画化された。

 原作者のスーザン・コリンズは、テレビのチャンネルを切り替えているときに『ハンガー・ゲーム』のアイディアを思いついたと言う。一方のチャンネルではリアリティ番組で競争する人々がいて、もう一方のチャンネルではイラク戦争の模様が映されていた。その二つの世界の境界が曖昧になっていくのを感じたことが、発想の元だったと言う。

 コリンズの執筆の動機が物語るように、テレビのサバイバル・ゲームは、人間同士の殺人ゲームを描く映画の世界のすぐ近くまで来てしまったように思う。

 私も、湾岸戦争の様子を映すテレビ画面に、SF映画を見ているような錯覚をしたことを思い出す。
 人は、それが、画面の中で繰り広げられるから自分は安全、と思っている。
 しかし、今の日本は、見ているミサイルの行先が自分の家かもしれない、という発想を、そろそろしなくてはならない危険な状況にあるのではないか。

 東京大空襲から70年目の今日、海外での残念な事故のニュースを見て、こんなことを考えていた。
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by koubeinokogoto | 2015-03-10 19:50 | 幸兵衛の独り言 | Comments(0)

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by 小言幸兵衛