関西電力の贈収賄事件は、起こるべきして起こった事件。
関電社長の会見での醜態や、賄賂の金額がニュースを賑わわせているが、その根っこにあるのは、悪法「電源三法交付金」だ。
これまで何度も書いてきた。
原発は一度立地すると、その地方自治体がやめることができない構造になっている。
それは、この「電源三法交付金」という“麻薬”が原因である。
四年前の記事と重複するが、どんな悪法なのか、あらためて確認した。
2015年7月7日のブログ 地元に暮らす人が原発再稼働を望み、原発の増設まで要望するのは、そうせざるを得ないようにしている国の問題であり、現状維持を図る‘原子力村’の悪巧みのせいである。
電源三法をあらためて確認。
“原子力教育を考える会”による「よくわかる原子力」というサイトでは、非常に丁寧に原子力や放射能、原発のことが説明されている。使われているデータは今では若干古いものも含まれてはいるが、原発をめぐる基本的な仕組みは変わらない。同サイトから「電源三法」と交付金について引用したい。
「よくわかる原子力」サイトの該当ページ電源三法交付金
いわゆる電源三法とは、1974年6月3日に成立した次の3つの法律をさしています。
•電源開発促進税法
•電源開発促進対策特別会計法
•発電用施設周辺地域整備法
電力会社は販売電力量に応じ、1,000キロワットアワーにつき425円を、電源開発促進税として国に納付しています(電源開発促進税法)。このうち、 190円が電源立地勘定で、235円が電源多様化勘定(2003年10月法改正により「電源利用勘定」に名称変更)となります。2003年予算で、この税の総額は4855億円になります。(電源開発促進税率は、今後段階的に引き下げられる予定。)
もちろん最終的にこの税金の負担は、消費者が電力料金に上乗せされて支払っています。
納められた税金は、特別会計に組み込まれ、発電所など関連施設の立地及び周辺市町村に対し交付金などの財源にあてられます(電源開発促進対策特別会計法)。
我々の電力料金には、この交付金分も含まれているのだ。その交付金がどんな性格のものか、引き続き引用。
そもそも「電源三法交付金」とは・・・・迷惑料
交付金制度の制定は1974年。そのころ通産省(当時)資源エネルギー庁の委託で作られた立地促進のパンフレットには、次のように書かれていました。
「原子力発電所のできる地元の人たちにとっては、他の工場立地などと比べると、地元に対する雇用効果が少ない等あまり直接的にメリットをもたらすものではありません。そこで電源立地によって得られた国民経済的利益を地元に還元しなければなりません。この趣旨でいわゆる電源三法が作られました(日本立地センター「原子力みんなの質問箱�)。」 つまり本来三法交付金は、原発が地域開発効果を持たないことに対する補償措置以外のなにものでもないのです(清水修二福島大教授「原発を誘致する側の論理」1988)。しかし、「雇用効果がない」などとあからさまにいってしまうと、元も子もないので、その後の歴史の中で「地域振興」というまやかしの姿が与えられてきました。そして現在の交付金のしくみでは、電力やエネルギーとは全く無縁の「地域振興」がまさに目玉になった内容へと変身しています。
東京や大阪などの都会の電力をまかなうために、自然や共同体の破壊をいう「迷惑」のために交付されているのが、電源三法による交付金である。
もう少し、この交付金の問題について紹介。
従来の交付金は、「箱物」行政の典型で、公民館・体育館など半恒久的な建築物建設にしか使えず、建てることは建てられても、維持運営費などには使えないものでした。その結果、そうした建築物の維持運営費が、自治体予算を圧迫している状況が生じていました。改訂によりほとんど自治体の独自予算のように、何にでも使える交付金になりました。交付金という名前の、甘いアメを用意して、原発を誘致してもらおうという作戦でしょう。 またこの改訂で、これまでこの交付金の対象であった火力発電所の立地地域を、対象から外しました。原発立地の地元へのアピールをより鮮明にするためだそうです。
個々の自治体にどれくらいの交付金が支払われるかというと、出力135万kwの原発が建設される場合が、資源エネルギー庁のホームページに紹介されています。
◎建設費用は約4500億円。建設期間7年間、という前提
◎運転開始10年前から、10年間で391億円。
◎運転開始後10年間で固定資産税も入れて計502億円。
この説明で分かる通り、交付金は時限制である。これは、交付金を継続的にもらうためには、どんどん原発を増設させることを目論んでいるからだ。まさに“麻薬”的な存在だ。
電気事業連合会のサイトにも、「電源三法交付金」を説明するページがある。
こんなことが書かれている。
電気事業連合会サイトの該当ページ電源三法の振興効果
電源三法交付金は、発電所立地地域の産業基盤や社会基盤を整備する上で大きな役割を果たしています。例えば、道路や公園、上下水道、学校、病院など文化や福祉の向上を図る公共施設、商工業や農林水産業、観光などの地場産業の施設整備や人材育成など地域社会の発展を推進する礎を、地域に暮らす住民の方々と相談しながら築いていきます。
たしかに、箱モノはたくさんできるだろう。無駄なものを含め。
しかし、それは、安全を犠牲にした“悪魔の取引き”によるものである。
いつ事故があるか分らない不安な日々へや、海を奪われたことへの“迷惑料”であり、さまざまな電力会社の横暴への“口止め料”である。
“地域に暮らす住民の方々”と相談しながら、なんて書いているが、違うのだ。
原発立地のキーマンとのみ相談し、交付金による税収の一部は、電力会社に還流する。
高浜町から関西電力への3億円など、この悪法で潤った町の金庫には、まったく問題にならない額。
そんな金があるから、贈収賄事件にもなる。
安全を自然を犠牲にすることへの見返りに、国が迷惑料を払っている、なんておかしいでしょう。
その迷惑料は、我々の税金であり、電気料金から払われているのだ。
もう、こんなこと、やめにしよう。
原発を廃止し、自然を取り戻す中で、安心した生活、仕事を生み出すことは大変かもしれないは、その方がずっと人間らしい。
福井の原発が止まったって、大阪の電気は止まらないのは、実証済み。
関西電力贈収賄事件について、メディアは「電源三法交付金」という悪法についての議論を喚起し、その廃止を訴えるべきではないか。